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第16話 カイト、救助活動に行く

途中で視点が変わります。


 昼食の為に公園の屋台に行く途中、レクス達は歌いながら後ろを歩いている。


「楽しそうだな」

「うん、こうやって街の中を歩いているだけで、私達は凄く楽しいよ!」


 屋台で串焼きと野菜炒めを買い、公園に設えてあるテーブルで食べる。


「カイトくん、お話が有るの!」

「新月の仮面の事かレクス?」

「うん、そうだよ!新月の仮面はね、地球で沢山の人達から愛され、助けられて、最後は事故で亡くなった盲目の少女が、今までの恩返しに今度は私がこの世界の人達を助けたいって言ってたから私が作ったの」


 そうか、俺なんてただ、ぶらぶら生きているだけなのに、大した少女だな。


「でね、その子はね、長い人生をそれまで助けた人達に囲まれて笑顔で終えたの」

「それはレクスの望みでもあったんだろ、良かったじゃないか」

「うん、でもね、長い人生の内に助けに行くのが間に合わなかった事が何度か有って、その度にその子は泣いていたの。その泣き顔が忘れられなくて、今回、新月シリーズをアップデートしたの」


 折角のいい話が台無しだよ!神様がアップデートとか言うなよ。


「それで、どう変わったんだ?」

「まずはマップだよ!今まで通り行ったことの有る場所の半径5km以外が真っ黒なのは同じだけど、マップが解放されている場所なら転移が出来るようになったの!」


「凄いな!」

「うん、その転移機能と新月の仮面の機能を連動させて、助けを求めている人がいたらマップに泣き顔マーカーが付くから一瞬で助けに行けるの!」

「いや、それも凄いんだが、何で泣き顔マーカーなんだ?」

「その方がわかりやすいからだよ、カイトくん!」

「レクスは俺に救助活動をやらせたいのか?」

「駄目かなカイトくん、出来れば心から助けを求めている人で、カイトくんが助けられる事なら助けてあげて欲しいの!」

「まぁ、別にこれと言ってやる事も無いし、毎日じゃ無ければ良いぞ」

「ありがとう、カイトくん!次は新月のコートだよ!ポケットをマップと連動させて収納を付与したの!時間経過も空気も有るから生き物でも収納出来るの!」

「それって要るか?いや、凄いんだろうけど……」

「それはダイフクの為なの、新月の首飾りとマップを連動させてダイフクが自由に出入り出来るようにしたの!」


 マップに新しいコマンドが追加されている。収納に意識を向けた。

 すると、画面が切り替わった。


[草原] 見渡す限り草原が広がっている。気持ちの良いそよ風が吹いていて、昼寝に最適。


[森林] 緑豊かな森林が広がっている。近くには滝があり、森林浴をするにはオススメのスポット。


[田園] 何処か懐かしい田舎の風景が広がっている。実り豊かな作物や農夫を眺めながらの散歩は心休まる。


[浜辺] 白い砂浜と青く透き通る広い海。色とりどりの魚や水平線に沈む夕日は絶景。


「レクス、何だよこれは?」

「空間魔法で擬似空間を作ったの!」

「やり過ぎじゃ無いか?一体、何がしたいんだよ……農夫って誰だよ……コートのポケットで生活してるのかよ……ダイフク、こんな所に入ってみたいか?」


(うん、入ってみたい。じゃあ最初は草原に行ってみる)


 目の前に居たダイフクが消えたから、草原に行ったんだろう。


 屋台に食器を返して公園の中をぶらぶらしてると、ダイフクが出てきた。


「どうしたんだダイフク?」


(普段は人形でカイトと一緒に街や街道を歩く方が良いよ)


 本当に要るのかよ、この機能……


「レクス、俺は入れるのか?」

「カイトくんも入りたいの?」

「俺のコートのポケットの中だぞ。気になるだろ、普通?」

「そうだよね!大丈夫、カイトくんも入れるよ!」



**********  



「ねえトロワ、もうこの辺りの薬草は、取り尽くされているんじゃないかなぁ」

「そうだな、もう少しだけ奥に行ってみようか」


 僕たち2人は、常設依頼の薬草採取に来ている。


 報酬は少ないけど、これも大切な仕事だと、先輩が言っていた。


「アン、余り奥に行くなよ」

「うん、わかってるよトロワ。こっちには結構薬草が残ってるよ」


 僕たちは時々休憩を挟みながら、ギルドで貸し出している袋に薬草を丁寧に採取して入れていった。


 この袋に入れた薬草は、ある程度の鮮度が保たれるそうだ。


「アン、そろそろ昼食にしないか?」

「うん、朝早くから来てるからお腹ペコペコ」

「朝早くから来てる割には余り取れて無いけどな。アハハ」

「私達みたいな新人は街の雑用か、薬草採取くらいしか出来ないもの。皆が薬草採取していたら無くなるのも仕方がないよ」


 リュックからパンと干し肉と水を出しながら2人で愚痴を言う。

 それで少しくらいは気晴らしになるから不思議だ。


「トロワ、今日は果物も持って来たよ。デザートにしようね」

「ありがとうアン、楽しみだ」


 僕とアンは幼馴染みで、兄妹みたいに育ってきた。毎日一緒にお互いの家の手伝いをしたり、泥まみれになって遊んだりもした。


 最近、2人で冒険者になって上のランクを目指している。


 アンは魔法が使えるし、僕は、先輩に剣を教えて貰っている。

 今は、ゴブリン2匹なら負ける事は無くなったけど、まだまだ頑張らないと。アンを守れるように……


「どうしたのトロワ、考え事?」

「いや、何でもない。少し食休みしたら始めようか」

「うん、もう少し頑張ろう」



 昼食後、僕達は場所を変えて薬草採取を続けた。


「アン、これだけ採取出来れば良いだろう。明るい内に帰ろう」

「そうだね。明日も有るからね」



「ギャギョ!」


 帰り仕度をしていると、森の奥からゴブリンの鳴き声が聞こえた。


「アン、ゴブリンだ!」


 アンに告げたと同時にゴブリンが飛び出して来た。


「何か様子がおかしいね。何かから逃げているみたい」

「みたいじゃない、キラーアントだ!アン、数が多い。逃げるぞ」

「何をやったのよ、あのゴブリンは」

「クソッ、僕達まで追われてる」


 僕じゃキラーアントの群れとなんて戦えない。情けないけど、アンだけは何とかして守らないと……


「アン、この先は崖下だ。大きな岩の出っ張りが有るから、そこまで登るぞ」

「わかった。急ごう、トロワ!」


 崖下にたどり着き、窪みや木の根を使いながら岩の出っ張りの上に乗ることが出来た。

 ゴブリンは途中でキラーアントに捕まりバラバラにされ食べられていた。


「ねえトロワ、この岩が落ちたりしないよね?」

「わからない。キラーアントが登って来るかもしれないし、岩が落ちるかもしれないし、諦めて帰るかもしれない。とにかく今は、崖に背中を付けて動かないようにしよう」


 もうすぐ日が暮れそうだ。クソッ、どうすればいいんだ?先輩、僕はどうすれば……


「グスン……怖いよぉヒック……助け……て誰か、グスン……助けて」

「アン、ごめんよ、僕に力が無いばかりに……クソックソックソッ……先輩……誰か、誰か来てくれーっ!」



**********



 俺達は擬似空間の草原に来ているんだが本当に草ばかりで何も無い。


「レクス、今の俺達は外から見たら消えている状態になるのか?」

「そうだよ、カイトくん。外に出る時はコンセルジュに任せれば大丈夫だからね!」

「それにしても、見事に草ばかりだな。これじゃダイフクもすぐに飽きて出て来るのもわかるぞ。だが、気持ちの良い所だな」

「ゴブリンを入れておけば、何時でも遊べ……」

「却下!入れるなよ!」

「カイト、今度は森林に行ってみようぜ」

「良いけどエル、滝で修行とか嫌だからな」

「チッ」

「やるつもりだったのかよ!冗談で言ったのに!」

「ワッハッハッハ、カイトも大変だな」


 案外、一番まともなのは、グランかもしれない。


「日が暮れるまでに帰るぞ」



『助け……て誰か、グスン……助けて』


『誰か、誰か来てくれーっ!』


「レクス、声が聞こえたぞ!」

「カイトくん、新月の仮面を付けるんだよ!」


 新月の仮面を付けて、マップを展開すると、泣き顔マーカーが点滅している。


「これかレクス、此処に転移出来るんだよな?」

「うん、出来るよ。ちょっと待って、準備するから!」

「準備?」


 レクス、グラン、エル、が口から仮面を出して付けた。

 レクスがピンク、グランが青、エルが黄色だ。レクスがダイフクに黒い仮面を付けた。


「カイトくん、準備出来たよ!」

「何だか良くわからないけど、コンセ、転移しれくれ」


 変な感じがする。あれか、絶叫マシンの浮遊感?慣れるしか無いな。


 目の前には大きな蟻がうじゃうじゃいる。


「取り敢えず、気色悪いから殲滅するぞ!」


 俺は近づきたく無いからレーザーサイトで照準を合わせ、次々に撃ち抜く。

 レクスは、氷の矢、グランはいつものハンマー、エルはボクシングのような動きで、揃って歌いながら倒している。


「「タンタカタカタカー♪(ワッハッハッ)タカターンタンタカー♪」」


 何時も鼻歌で歌っているやつか?

ノリノリだな。ダイフクは後方の警戒をしながら踊っている?


**********

「アン、キラーアントがぶっ飛んでるぞ!」

「えっ、本当だ。誰かが助けに来てくれた……の?何……あれ?怪しい仮面を付けてる」

「助けかどうかわからない。人なのかかどうかも疑問だ」

「何だか凄く強いんだけど……私達、食べられちゃうのかな……グスン」

「あの怪しい仮面だし、覚悟はしていた方が良い。僕が戦っているうちにアンは逃げるんだ」

「トロワだけ戦わす訳にはいかないよ。私も戦うから……怖いけど……」

「もう、キラーアントが殲滅したぞ。怪しい仮面が此方に来る!」



**********



 戦いはすぐに終わった。岩の上にいる2人は、怯えながらも戦闘態勢を取り此方を見ていた。


 何故か左からダイフク、レクス、俺、グラン、エルの順で横一列に並び、なにか既視感の有るポーズを決めていた。


 仮面は付けたままだった。


「お前ら何をしているん……」

「2人共、新月仮面が来たからもう大丈夫だよ!」


 俺の言葉に被せるようにレクスが大声で岩の上の2人に言った。


 ダサッ、新月仮面……無いわー。


「新月仮面……俺達を助けてくれたの……ですよね?」

「ああ、怪我は無いか?」

「新月仮面、貴方達は人間ですか?もし、俺達を食べると言うなら、戦います!」

「誰が食べるか!っていうか俺は人間だし……はぁ、へこむわー」

「私達は人形だから何も食べないよ!」

「兎に角、街に戻るぞ」


 転移の事は黙っていた方が良いよな。眠らせて運ぶのが良いみたいだ。


「悪いが、少し眠っていてくれ」

「レクス」

「了解だよ!……スリープ!」


 なんかもう、色々と面倒くさくなったから、収納の[草原]に寝かせて正門から離れた場所に転移した。

 ん?意外と役に立つかも……

読んで頂きありがとうございました。

平日は連日投稿が出来なくて不定期になるかもしれません。


登場人物

トロワ(新人冒険者)

アン(新人冒険者、トロワと幼馴染)


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