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第154話 カイト、帝国に行く〜ゴーダ山のジャイ湖〜



 ゴーダ山に向かいながら、川の水位が上がっている事も確認し、決壊しそうな所には土嚢を積んで補強をしていく。

 先行している冒険者がいるのだろう、既に所々に土嚢が積まれているので、俺とサトミは先に積まれている土嚢を更に補強したり、見落としのある箇所に土嚢を積んでいくだけなのでサクサクと進んでいった。


「見て、カイト」


 サトミがゴーダ山を指差しながら言うので、川からゴーダ山に視線を移すと、山頂から煙のようにもくもくと雨雲が立ち昇って行く様が見て取れた。


「何だ? あれは……」

「雨雲じゃないかな?」

「それは見て分かるが、雨雲ってあんな湧き方はしないと思うぞ」

「そうだね。雨雲は空の雲がいっぱい集まって出来るんだよね」

「それは良く分からないが、とにかく行ってみよう」


 雨雲が出来る過程は、太陽の熱で温められた海や地表の水分が水蒸気となって空気中の塵に付着して、それが集まり雲になると、確か小学校の理科の授業で習ったと思うのだが、うろ覚えもいいところだ。


 まあ、それは今は良いとして、俺達は雨の降る中、ゴーダ山の山頂に向かって走る。途中、川と湖の調査に向かったのであろう冒険者が、袋に土を入れて土嚢を作っていた。


「これを使ってくれ。俺は山頂の様子がおかしいので調べて来る」

「えっ!? ああ……収納魔法か? 助かる」


 俺がアイテムボックスから土嚢を取り出していると、土嚢を作っていた冒険者は驚いていたが、素直に礼を言って川べりに土嚢を積み上げていった。

 アイテムボックスを持っている俺は、重い土嚢を大量に運ぶ事など何てこともないのだが、そうではない者にしたらその場で土嚢を作らなくてはいけないからな。

 俺は、走りながら要所要所に土嚢をアイテムボックスから出して置いて行く事にした。そうすれば、後から来た冒険者が川べりに積み上げてくれるだろう。


「カイトくん!! 水柱が上がってるの!!」

「あれは水竜のブレスみたいだぜ」

「水竜? それじゃあこの雨はやっぱりドラゴンの仕業なのか?」

「ワッハッハッハッハ! カイトよ、雨を降らせるドラゴンなど聞いたことも無いぞ」

「なら、あの水柱は何だ?」

「水竜が何かと戦っているみたいニャン」

「冒険者か……?」


 ゴーダ山の山頂から湧き上がるように立ち昇る雨雲を貫くように、水竜が放ったと思われる水柱が上がっていた。

 何にしても尋常では無い光景に、俺達は急いでゴーダ山の山頂にあるというジャイ湖に向かって行った。


 山道を駆け登って行くと、ズシン、ズシンと地響きが響き渡り、ドラゴンの咆哮も聞こえて来たところで視界が開ける。


「何だ? あれは……」


 本日2度目の“何だ? あれは……”である。


 一番に目に飛び込んで来たのは二匹のモンスターで、美しい青色の鱗を持つモンスターは水竜だと見れば分かるが、もう一匹のモンスターは、ずんぐりとしたカエルのようなのだが、その見た目が何とも言えない悍ましさを感じる。

 その悍ましいカエルのモンスターは、巨体を誇るドラゴンよりも大きく、体色は緑、黒、茶、赤、黃の斑色で、背には一面に大小様々な虚ろな目をしたカエルの顔が幾つも張り付いていて、その口からは雨雲を吐き出していた。

 そして、体表はゲル状の粘液のような物で覆われているようだ。


 水竜は巨大なカエルと戦っていたのだろう、今はカエルの太い前足で頭を地面に押し当てられて、水掻きの付いた前足の爪で抵抗しているようだが、どうやら粘液に阻害されてカエルにダメージは通っていないようだ。


 二匹のモンスターの動きが止まっている間に、周りの状況をさっと確認する。

 山頂の木々の切れ目から、ゴツゴツとした岩が散らばっている草原が広がっており、水竜の背後には大きな湖がある。この湖がジャイ湖なのだろう。

 ジャイ湖から街の方角に流れる川は、長雨の影響で増水し流れも早く、一部川から溢れている所もあった。

 ジャイ湖に流れて来る川が無い事から、どうやら地下水が湧いていると思われる。


「水竜が負けてるよ、カイト。それに、あのカエル……凄く気持ち悪い」

「そうだな。出来れば触りたくないし、新月の刀で切るのも勘弁願いたいな」


 見た目が気持ち悪いし、あの体表を覆っている粘液には絶対に触りたくない。サトミも棘蔓で触れるのも嫌だと思う。


「あれはデビルモンスターだぜ」

「そうなのか? エル?」

「ああ、間違いなくデビルモンスターだぜ」


 今も雨雲を吐き出しているカエルは、水竜の頭を押さえ付けながら、満足そうにゲコゲコ鳴いている。

 水竜よりも強いという事は、エルの言うようにデビルモンスターなのだろう。


「ワシはあのような者をハンマーで叩くのは嫌だからな。ワッハッハッハッハ!」

「グラン?」

「私も大切なレイピアで触りたくないニャン!」

「マックニャンもか?」

「えへへ、私もだぜ。あんな奴を殴ったらトラウマになりそうだぜ」

「まあ、エルはそうだろうな……」

「カイトくん! 私なら大丈夫なの!!」

「そうか! レクス! で、ベラはどうなんだ?」

「うう……。デビルモンスターは私の責任ですけど……今の私では力不足だと思います。ですが、出来るだけ頑張ってみます」

「そうか……それなら無理せず頼むな。それと、サトミも無理はしなくて良いぞ」

「うん。見てるだけで背筋がゾクゾクしてくるよ」

「先ずは水竜を解放しないとな」


 触らずに戦うとしたら魔法しかないだろうと思い、俺はライトニングショットを撃った。

 雷を帯びた魔力弾が黄色い光跡を描き巨大なカエルの頭にヒットする。しかし、ゲル状の粘液にライトニングショットは逸らされて上空に消えて行ってしまった。


「マジか!?」


 二度、三度と、ライトニングショットを放つが、その全てが粘液によって逸らされてしまった。


「サラマンダーなの!!」


 レクスお得意の炎のトカゲが三匹、草原の草を焼きながら巨大カエルに向かっていく。


 ――――――ジュッ、ジュジュジュ


「えっ!? 消えたの……」

「レクスちゃんの魔法が……」


 レクスのサラマンダーが巨大カエルの粘液に触れた途端、水蒸気と化して消えてしまった。


「はあ……? あの粘液は何だ?」

「サ……サンダーバードなの!!」


 ―――――――キュルルルルルルルル


 次にレクスは雷の鳥、サンダーバードを放ち、巨大カエルに向かって勢い良く、高く掲げていた両腕を振り下ろした。




読んで頂きありがとうございました。

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