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第131話 心霊現象!?



 何かを感じ取ったかのように、何の迷いも無く森の中へと入って行ったレクスとエルを追って、俺とアマンダさんは大きな岩がある所まで走って行った。

 そこから斜面を滑り下りて、森の中へと入って行く。


「アマンダさん、俺から離れないように」

「はい、カイトさん」


 レクスとエルの姿は見えないが、俺には二人がどっちの方角に向かって行ったのか、どの辺りに居るのかが分かる。

 そしてレクスとエルの向かっている先から大きな魔力を感じた。二人はそこに向かっているようだ。


「コンセ、マップを展開してくれ」


(はい、マスター。マップを展開します)


 大きな魔力の気配は青い光点になっていて、敵では無いようだが、油断は出来ない。

 そして、この大きな魔力の影響なのか、この辺り一帯にはモンスターを表す光点が一切無かった。


「ん!? 光点が消えた。何故だ? レクス達はまだ接触していない筈だ。あっ、点いた」


 光点が消えたと思ったら、少し離れた場所に点いた。暫く見ていると、同じように点いては消えるを繰り返している。

 それでもレクスとエルは、何の迷いもなく真っ直ぐに進んでいた。


「これは、レクスとエルを追った方が良さそうだな。モンスターも居ないようだし、マップを見るとかえって惑わされそうだ」


 俺はマップを消して、アマンダさんの手を引いてレクス達がいる方へ歩き出した。




「――――――――――っ!?」


 レクスとエルの前には、長く青い髪で、白い貫頭衣を着た若い女性が、いや、女の子と言ったほうが良いだろうか、見た目はどちらかと言えば子供みたいだ。その女の子は、足には何も履いて無く、空中に浮かんでいる。

 しかも、向こうがすけて見えていて、時々明滅している。


「ゴ、ゴースト!? こんな昼間から出るのか……?」

「えっ? ゴーストですか、カイトさん?」

「ああ、レクスとエルの前で揺らいでいる……」

「あの、私にはレクスちゃんとエルちゃん以外には何も見えないのですけど?」


 アマンダさんには見えない? この世界のゴーストはモンスターに分類されていて、誰にでも見る事が出来る筈だ。アマンダさんには見えないとすると、モンスターでは無いのか? て事は霊? 心霊現象なのか? だとしたら無理だ。モンスターのゴーストでもヤバイのに、本物の霊だったら絶対に無理だ。

 無理無理無理無理無理無理無理無理!!


「――――さん、カイトさん? カイトさん!!」

「あっ? アマンダさん……どうしたんだ?」

「どうしたんだ、じゃ無いですよ。カイトさんこそどうしたのですか? 顔色が凄く悪いですよ?」


「霊だ……幽霊がいる……アマン―――――ひっ!? こっちを見た!! 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……臨兵闘者皆陣烈在前……色即是空色即是空……南妙法蓮華経」


 アマンダさんに説明をしようとしたのだが、垂れ下がった青い髪の隙間から、大きな目が俺を睨みつけた。


「カイトさん! カイトさん! 何があったのですか!?」


 蹲って頭を抱えている俺をゆっさゆっさと揺さぶるアマンダさんの手を振り払った俺は、新月のブーツで上空に駆け上がり、新月の刀を抜いた。


「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏、臨兵闘者皆陣烈在前! 悪霊退散!!」


 新月の刀の刀身を指でなぞり、高密度のヒールサンクチュアリの光を纏わせた俺は、落下しながら新月の刀を逆手に持ち替え、悪霊の脳天から突き刺した。

 これで悪霊は消える筈だ。


「ひっく、ひっく、ごめんなさい……ごめんなさい……私の所為で……」


 ひっ!? き、消えていない? 


「おのれ……悪霊め……」

「あっ、カイトくん!!」

「落ち着けカイト、そいつは悪霊なんかじゃ無いぜ」

「うん、そうだよカイトくん!! 私達と同じ神なの!!」

「え……!? 神……?」





 俺とアマンダさんの前をレクスとエルが歩いていて、その俺達の周りを実体のない女の子の‘神?”が、宙を滑るように、或いは、いきなり消えて、別の所から現れたりしながら、付いて来ている。

 アマンダさんには見えていないようだが、俺には見えているので何とも落ち着かない……。


「カイトさん、あの場所で何があったのですか?」

「いや、大した事じゃあ無い。忘れてくれ……」


 自分でも、かなり取り乱していた事が分かる。出来ればその時の記憶を消したいものだ。


「え……でも……」

「頼む、忘れてくれ」


 アマンダさんが俺の顔を暫く見ていたのだが、恐らく恥ずかしさで赤面していたのだろう。


「うふふ、はい、分かりました」


 はぁ〜、まったく……穴があったら入りたい気分だ。




「クレマンか……」

「うん、どうする? カイトくん!」

「いや、それを俺に聞くのか? 相手は神だろ?」


 新月の館に帰り、俺の部屋にレクス、グラン、エル、マックニャン、そして青い髪の少女神が集まって来た。

 レクス達は既に青い髪の少女神から事情を聞いているようだ。


 その少女神の名はベランジュールと言い、下級神のクレマンを引き連れて、あちらこちらの世界にデビルモンスターの種を蒔いたり、時にはそのデビルモンスターを倒したり、モンスターのいない世界には災害を起こしたりもしていたそうだ。

 本人としては、ちょっとした悪戯のつもりだったらしい。


 そして、クレマンという下級神が何時しか、或いは始めからなのか野望を抱き、レクス達が管理している創造神が居ないこの世界を手に入れて、管理者になりたがっているとか。

 そのために悪魔をさらって、この世界に送り込み、計画が失敗したと見るや、今度は三つ目の種族を送り込んだということだ。

 そして、その三つ目の種族はオークの軍団を作り、王都を襲撃したのだが、王都の騎士団や冒険者によって撃退されたということらしい。


「それなら、そこのベランジュールが元凶なんだから、そのクレマンという下級神を連れて帰らせれば良いんじゃないか?」

「それがな、ベランジュールはクレマンの奴に隔離され、檻に入れられて出られないそうだぜ」

「なら、此処に居るのは何だ?」

「精神体なの、カイトくん」


(マスター、ベランジュールの世界の創造神に問い合わせてみた所“その様な奴等などもう知らんわい。煮るなり焼くなり好きにしてくれ”との事でした)


「何だよそれ……はぁ……分かった、コンセ」


 俺は、大人しく正座をして話を聞いていた半透明のベランジュールを見た。

 そのベランジュールは、ビクッと肩を震わせて、不安そうに目に涙を浮かばせている。


「煮るなり焼くなりね……」

「――――――ひぃぃっ!? ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「いや、精神体なんだから煮ることも焼くことも出来ないだろ? いや、蒸す事なら出来るか?」

「――――――ッッ!? お願いです!! 何でもしますから許して下さい!!」


 神なのに何だか凄く怯えているけど、まさか俺に怯えている訳ではないだろうな? 俺は人間だし、いくら中級神だからと言って、神が人間を恐れるなんてある訳ないな。

 きっと、レクス達上級神に怯えているに違いない。


「それにしても、ゆらゆらしたり、消えたり、現れたりで落ち着かないぞ」

「―――――――ひぃっ!? すみません! ごめんなさい! カイト様……どうか、どうかお許し下さい……ヒック、ヒック……どうか……蒸すのだけは……ヒック……ヒック……蒸すのだけは勘弁して……ヒック」

「あ〜、カイトくんが泣かせたの!」

「カイトよ、子供を泣かせるのはどうかと思うぞ。ワッハッハッハ!」

「そうニャン、そうニャン」

「あ〜あ……やっちまったぜ……」

「えっ!? 俺? レクス、グラン、マックニャン、エル? 俺なのか?」


 レクスもグランもマックニャンもエルも、俺をジト目で見て頷いている。


「ゴホンッ! ゲホンッ……まあ、その、なんだ……別に怒って無いから泣くな。蒸すのは冗談だ。と言っても落ち着かないのは確かだからな。レクス、ベランジュール様の人形は作れるか?」

「うん、カイトくん!! 直ぐに作れるの!!」

「カイトがそう言うのを待っていたんだぜ」

「良かったニャン、ベランジュール。カイト君が許してくれたニャン」

「ワッハッハッハッハッハ!! 良かった、良かった」


 何で? 何で俺の許しがいるんだ? 全く意味が分からないんだが。




読んで頂きありがとうございました。

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