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第13話 カイト、商業の街ルトベルクに行く④


 ローランドさん、マルセルさん、バランさん、4人の商人さんが集まって、何やら相談している。


「どうかしたのですかローランドさん?」

「カイト君、この先の事を話し合っていたのですよ」

「と言いますと?」

「私達はデオの村に行って商品を売らないといけません。村人も生活物資が届くのを待っていますからね」

「しかし私共としては一刻も早くルトベルクの領主の館に戻らなくてはならないのです。ですが、私共だけでは安全に、と言う訳にも行かず……」


 なるほど、意見が分かれているのか。


「今からですと、デオの村に行っても行かなくてもルトベルクに到着するのは夜も遅い時間になるのではないですか?それならばデオの村で一泊して、早朝に出発した方が良いのではないかと思いますが?」

「ですが、それですと御主人様が大層ご心配なされると思われます」

「それでしたら、そちらの御者の方が単身でルトベルクに戻り事情を説明されてはどうですか?それならば閉門までには到着出来るのではないかと思いますが?」


 この人なら大丈夫だろう。


「ええ、ええ、それならば確かに閉門までには到着出来ます。ブリュノ、直ぐに準備をして出発して下さい」

「畏まりました。お任せ下さい」


 話がまとまったようで良かった。


「ローランドさんにお願いがあるのですが」

「何でしょうか、カイト君の頼みならこの命を差し出しても……」

「ローランドさん、命は流石に大袈裟ですよ!実は、盗賊の護送馬車をローランドさんの馬車に連結させて頂きたいのですが」

「アハハ、そうですか、そんな事ならお安い御用ですよ」


 御者の人が出発して、馬車の連結も終わり、俺達は領主婦人の乗る馬車と共にデオの村を目指した。


「カイト君、あの御者のブリュノさんは1人で大丈夫でしょうか?」

「ブリュノさんは強いですよ。多分、元冒険者だと思います」


 レクス達は盗賊の馬車の上で景色を眺め、寛いでいる。



 昼を2〜3時間過ぎた頃デオの村に到着した。村の広場に馬車を停めて野営をする許可をもらいテントの設営を始める。


 ローランドさん達商人は、台の上に馬車から下ろした、日用品、酒、塩漬け肉、各種乾物、布、本、紙等、多種多様な商品を村人に売っている。


 村人からは野菜、染め物、服、木工品などを買い取っている。


 領主婦人一行は、村の環境や村人の様子を見て回り、村長の話しを聞いていた。


 領主婦人一行は、村長宅に泊まるそうだ。


「ローランドさん、テントの設営は終わりましたか?」

「終わりましたよ、これから夕飯の準備をします。いい匂いがしますね、カイト君」


 既にオーブンの中に香味野菜たっぷりのローストオークが入っている。

 小鍋にはトマトソースが出来上がっている。


 今は牛乳から分離させた生クリームを、すくい取っているところだ。

 これでバターが出来るはずだから、取り敢えず、アイテムボックスに入れておいて、暇なときに作ってみよう。


「たっぷり有るので皆さんもどうぞ」





「カイトくん!カイトくん!見張りを交代する時間だよ!」

「ありがとう、レクス」


 俺はベッドから起きて、新月のコートを羽織りテントの外に出る。


「ホイルさん、お疲れ様です。交代しますよ」

「ああ、カイト君ですか。それじゃあ僕は寝ますから、後はお願いします」



 焚き火の前にじっと座っていたら眠りそうだから屋台を出して、小麦粉と卵と砂糖でスポンジケーキを焼いて粗熱が取れたら冷蔵庫に入れておいた。


 まだ辺りは薄暗い。剣術の練習をしながら時間を潰すか。




「カイト君、朝から頑張るわね。流れるような動きで踊っているみたいだったわ」

「カイト、今のは何をしていたんだ、本当に踊っていたんじゃあ無いだろう?」


 また見物人がいたようだ。


「これは日課ですからね。バランさん、この稽古は相手を想定して行うんですよ」

「なるほど、手合わせの相手を想像しながら動いているのか」

「その通りです。まだ朝食を作るには早いですから、汗を流して来ますね」

「ん?ああ」

「え、どういう事かしら?」


 訝しむ2人を後にして、テントに入り風呂に直行した。


「風呂と言うより大浴場だな。あ"ぁ

〜」


 朝食を食べて、出発の準備をする。

 後は、領主婦人一行が来るのを待つだけだ。


「カイト君、汗を流すってなに?どうして髪がサラサラで肌がツヤツヤなのかしら?」

「えっ、そ、それは……昨日のレクスのまほ……」

「カイトくんは、お風呂に入ったんだよ!」

「ちょっ、レクス……はぁ、言っちゃたよ」

「ふーん、お風呂ねぇ、その話は私も気になりますわ」


 アリソン様に聞かれたよ……


「アリソン様は早く帰らないといけないのでは?」

「良いのですよ。ブリュノが知らせている筈ですし、あの人には汚い格好を見せたくありませんからね」

「はぁ、ローランドさん、出発が遅れますが……」

「それは、仕方の無い事です。アリソン様のお気持ちもわかりますし……」

「仕方ないですね。女性の方だけですよ。アリソン様、ミシェル様、ナディア様、それとピックさん、此方に、どうぞ」


 新月のテントをもう1回アイテムボックスから出して、女性陣を案内した


「2人用のテントですね。順番に入ると言う事ですね」

「いえ、皆さん御一緒にどうぞ」


 最初にアリソン様が訝しみながら新月のテントに入った。っと思ったら、直ぐに出てきて、テントを見て次に、顔をテントの中に入れて、此方を見る。


「どうぞ、入って下さい。ミシェル様とナディア様もどうぞ」


 立ち尽くすアリソン様の前を通りナディア様、ミシェル様の順で新月のテントに入って行った。


「うわーっ、ミシェルお姉さま!」

「えっ、ええーっ、何これ、どうなってるの!?」

「お母さま、早く来て下さい。凄いです!!」


 ナディア様がキラキラした顔を出して、アリソン様を促す。


「カイト君、ちゃんと掃除してるの?」

「変な想像してないで入りますよ、ピックさん」

「おいおい、2人用のテントに5人入ったぞ。どうなってんだ?」

「バランさん、覗かないで下さいね」

「バカッ、そんな事はわかっているわ。ホイルこそ覗くなよ」


 外でなんか言っているが、こっちはそれどころでは無い。


「カイト君、何ですか此処は?」

「凄いね、ナディア」

「ミシェルお姉さま、テントの中ですよね?」

「そうよね……カイト君だもの……」

「ピックさん、何ですかそれ?さあ、皆さん、浴室に案内しますよ」


 脱衣所に入る戸を開けて、中に入ると、皆がキョロキョロして興奮しているので、説明を始める。


「此処で着ているものを脱いで、この竹籠に入れてから、此方の棚に置いて下さいね。身体を洗うタオルは此方の籠に入ってます。あと、お風呂から上がったら、此方の大きいタオルで身体を拭いて下さい」


 ちょっ、もう脱ぎ始めているよ!ピックさんは上半身すっぽんぽんだし、揺れてるし!皆んな、脱ぐの早すぎ!


「ちょっと、まだ脱がないで下さい!俺がまだ居るんですから!」

「どうして?ひとりずつ入るのかしら?」

「皆んな一緒に入れますが……」

「それなら良いわね」


 また脱ぎ始めたよ……


「あっ、私、つい……アリソン様、私は後で入ります」

「あら、良いのよ、一緒に入りましょう」

「宜しいのですか?」

「良いから早く脱いで行きましょう」




 俺は、後ろ手で戸を閉めて脱衣所を後にした。



「カイトさん、マルセルです」


 ソファーで珈琲を飲んでいるとマルセルさんが声を掛けてきた。


「どうしたのですか、マルセルさん」

「奥様に化粧箱をお持ち致したのですが」


 俺はマルセルさんの手を引いてテントの中に引っ張り込んだ。


「マルセルさん、俺はもう精神的に疲れました」


 マルセルさんはテントの中を見回して、驚いたあとに納得の表情を浮かべる。


「今は、アリソン様とお嬢様方はどちらに?」

「浴室で入浴中ですよ」

「なんと、浴室が……では、そろそろ出て参られる頃ですか。そちらのキッチンをお借りしても宜しいですか?」

「どうぞ、お使い下さい。その為に引っ張り込んだのですから」

「ハハハ、なるほど、では遠慮なく」


 はぁ……助かった……


「レクス、脱衣所に行って皆さんの髪を乾かしてあげて来てくれ」

「了解だよ、カイトくん」





「奥様、失礼します」

「有り難う、マルセル」


 マルセルさんが入れてくれたお茶を飲みながらテントの話しになった。


「噂では聞いたことが有ったけど、この目で見るのは初めてだわ」

「アリソン様、こんなに凄いテントが他にも有るのですか?」

「浴室やトイレが付いているかはわからないけれど、空間拡張された馬車やテントや倉庫は職人に依頼したり、数はとても少ないし、とても高額だけれども探せば有るの。でも、小さな物なら割と出回っているわ。ピックさん達冒険者でもマジックバッグを持っている人も居るでしょう?」


 おっ、なんか丸く収まったぞ。


「奥様、出発の準備が整いました」

「わかったわ、マルセル、行きましょう」



 デオの村を出て、西と南に別れる街道を南に行くと、目の前にはそれほど大きくはない山が有り、その山を回り込むように街道を進む。


「見えて来ましたよ、カイト君。あれが商業の街ルトベルクです」

「流石に大きいですね」

「ルトベルクには各地から色々な商品が集まって来るんですよ。それを我々商人が仕入れて、また各地に散らばって行くのです」

「だから商業の街なんですね」


 正門には長い行列が出来ていた。


「凄い行列ですけど、ここの衛兵も慣れていますから時間はそれほど掛かりませんよ。さあ、最後尾に並びましょう」


 アリソン様は貴族専用の門から入って行ったようだ。


 ローランドさんの言う通り直ぐに正門まで着いた



「身分証を見せてくれ」


 ローランドさんは商業ギルドのカードを、俺は冒険者ギルドのカードを見せた。


「後ろの馬車は何だ?」

「途中で捕らえた盗賊です」

「ああ、お前たちか。アリソン様から話しは通っている。詰所の後ろに回ってくれ」


 ぞろぞろと弱った盗賊が馬車から降りて来る。全員手首を縛り、腰をロープで繋いでいる。


 レクス達は、まだ馬車の屋根の上だ。


「おいおい、何人居るんだよ。それに何で、こいつ等こんなに小綺麗なんだ?」

「58人ですよ。これだけ居ると余りにも臭いから、魔法で綺麗にして運んで来ました」

「そうか、俺達も臭いのは嫌だからその辺は助かる。それにしても58人とはな。落ち着いたらで良いから、もう一度来てくれ。話しが聞きたい」

「わかりました。来るのは俺達冒険者だけで良いですか?」

「できれば商人の責任者からも話しを聞きたい」


 俺はローランドさんの方を見て確認を取った。


「良いでしょう、私も一緒にお話ししますよ。それではカイト君、宿に行きましょう」


 俺は護送馬車をアイテムボックスに入れて、ローランドさんと、竜の咆哮のメンバーで宿屋に向かった。

 他の商人さん達は、先に宿屋に行き、部屋を取ってくれている。


“今夜のお宿亭”と言う宿屋らしいけど良い名前だ。


読んで頂きありがとうございます。


今回の登場人物


ブリュノ(アングラー家の御者、元冒険者?)



前回から名前が出た人物を書き始めました。

1度しか出て来ないモブキャラでも名前が出たら書いていこうと思います。


「後書きで書く事がないからなの!」

「ちょっ、レクス!?」

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