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第126話 オークの襲来


 王都の外壁前の草原に、ゴブリン、コボルトを含めたオークの軍勢が隊列毎に縦に長い陣形を敷いている。


「何だ、あの陣形は?」

「ガハハハハ! あれでは一部隊ずつでしか突撃出来ぬではないか」


 外壁の上からオーク部隊の動向を観察している王国騎士団の指揮官は、所詮はオークと、外壁の上から降りて行った。


「しかし、何故奴らは動かないんだ?」

「俺に聞いても分かるわけが無いだろう」

「そうだな。兎に角、まだまだ距離があるから、あの陣形が変化する事も考えられる」


 後に残った王国騎士団の騎士達は、森の中にまで伸びる長い陣形のまま動かないオーク軍に、動きがあれば直ぐにでも知らせに行けるように見張りを続けるのであった。


 同じく此方は外壁の上で待機している弓兵と魔法部隊。


「まったく、何時になったら攻めて来るんだ?」

「言えてる。もう直ぐ日も暮れるしな。今日はもう攻めて来ないんじゃないか?」

「おい! お前ら。気持ちは分かるが、何時でも動けるように準備だけはしておけよ」

「「はいっ! 了解です!」」


 そして、外壁を守るように陣形を敷いている王国騎士団の面々も、何時まで経っても攻めて来ないオーク軍に対し苛立ち始める。


「おい、どうするんだ? このまま此処で夜営する事になるのか?」

「まさか暗くなって攻めて来るって事は無いよな……」

「奴らはモンスターだから、俺達人間よりも夜目が効く筈だ。もし、そんな事になると相手がオークでも少々厄介だぞ」

「どうなっているんだ? モンスターが戦略を立てているのか?」


 ある意味、これが普通のスタンピードであるならば、なだれ込んで来る正気を失ったモンスターを倒せば良いだけなのだが、とは言っても、それはそれで大変な事なのではあるのだが、この度のように隊列を組んで攻めて来たにも関わらず、草原の奥でこちらの出方を伺うように陣形を整え動かずにいられては、不気味過ぎて不安に煽られてしまうのも仕方の無い事なのであろう。

 



「良いかお前ら、良く聞け。まだ奴らは草原の奥からは動いていないという報告が入った。隊列を組んで進むとなると、外壁まで一時間以上はかかるだろう。奴らが何を考えてあの場所から動かないのかは不明だが、今の内に軽く何か食べるのも良いし、仮眠を取るのも良いが、分かっていると思うが、満腹になるまで食べるなよ。それと、酒は禁止だ。良いな! 奴らが動き始めたらCランク以上は騎士団と共に外で迎え撃て。それ以下は外壁の中でサポートしろ。以上だ」

「「「「「「おおー!!」」」」」」


 王都の冒険者ギルドでは、ギルドマスターのセリアが冒険者達を集めて説明をしていた。

 冒険者達は男女の別無く、総じて士気が高い。何故なら、セリアは口調こそ男のようではあるが、エルフであり、見た目が二十代の絶世の美女である。そういった事から冒険者達からの人気が非常に高いのである。

 

 アニメ声なのがいささか残念ではあるが……。(カイト談)







「ビショップ、お前達はこの状況をどう見る?」


 王城の中にある応接室の一室では、ゼノマイル国王とビショップ、シェリー、ヨシュアが、オークの襲来に付いての話し合いを行っていた。


「黒幕がいる事は間違いは無いと思うのですが、何故攻めて来ないのか意味が分かりませんね」

「やはりお前達にも分からないか。それにしても、娘が予知夢で見た巨大な悪魔では無かった事は僥倖であったのかもしれぬが……いや、まだ巨大な悪魔が来ないとは言い切れないのか?」


 ゼノマイル王国は勇者が興した国であり、その勇者の血を代々引き継いでいる事で、その勇者が持っていたスキルも劣化版ではあるが引き継いでいるのである。そして、数あるスキルの内、予知夢のスキルを色濃く受け継いだ王女が見たという巨大な悪魔の出現に備えて、国王とビショップ達は準備を進めていたのであった。


「いえ、陛下。その巨大な悪魔が襲って来る未来は無くなったと俺達は思っています」

「何故そう思う? 確かに、ここのところ王女もその予知夢を見たとは言って来なくなったので不思議に思っていたのだが……」


 王女には巨大な悪魔の予知夢を見たら、必ず知らせるように言ってある。

 その訳は、予知夢を見る間隔が短くなればなる程、更には、毎日予知夢を見るようになると、近いうちに現実に起こると云われていたからなのである。


「あー、何と言うか……」

「何だ、ビショップ? 言い難い事なのか?」


 何とも歯切れの悪いビショップであるが、果たして国王に言っても良いものかどうか、言ったとしても信じてもらえるのかどうかと悩むのも無理は無いだろう。


「ビショップ、どうせカイトの事だから私達が黙っていても、いつかは周知の事実になると思うわよ」

「それもそうだな……えーっと陛下、実はカイトなのですが、魔王と友人関係になりまして……」

「何!? 魔王だと!? しかしまあ、魔族であるお前の親友なのだから何ら不思議な事でも無いのでは無いか?」

「いえ、魔国の魔王では無くて、悪魔を統べる魔界の王の事ですけど……」


 ビショップは、カイトとアラディブの出合い、そしてバフォメットとの戦い、ベルゼブブとアラディブを交えた大聖堂前のお茶会に至るまでの話をするのであった。


「なるほど……では、その魔界の王は人間の味方と思っても良いのか?」

「人間と言うよりも、カイトの味方と言った方が良いと思います」

「ふむ。それで、カイトは今どうしているのだ?」

「カイトでしたら、もう既に東の国に向けて旅立ちました」

「そうか。良い旅になるよう祈ろうではないか」


 そして、ゼノマイル国王は目を閉じて腕を組み暫く考えてから肯く。


「では、その巨大な悪魔の事はもう心配は要らないという事だな。そして、魔界の悪魔も我々人間には不干渉だと考えても良いようだ」

「そうですね。巨大な悪魔の驚異が無くなった今、次に警戒しなくてはいけない事はオークを操っている黒幕でしょうか」

「そうだな。オークだけならば我が国の騎士団と冒険者達だけで事は足りる。ビショップ達の戦力までは必要無いだろう。であれば、ミスターPの組織にはその黒幕を調べてもらった方が良さそうだ」





 夕暮れ時、王城を後にしたビショップ、シェリー、ヨシュアは、川向うの転移者や、その末裔が集まる訓練施設に帰ってきた。

 ゼノマイル国王が言う“ミスターPの組織”とは此処に集う者達の事である。


「……と言う事だ。ヴォルフ教官。俺達は今回の黒幕がどういった奴かを調べる事になった。それと同時にオークの監視も引き続き行う方が良いだろう」

「分かった。それでビショップ達はどうするんだ?」

「俺達は奴らに見つからないようにオーク軍の偵察だ。もしかしたら、その黒幕が指揮を取っている可能性もあるしな」


 ビショップからしたら、黒幕が直接指揮を取っている可能性は極めて低いと考えている。

 何故なら、あれだけの大群が統率をもって動いているのだから、既に黒幕の手からは放れているのではないかと思っているからである。

 それでも、可能性があるのならば、それを調べてみなくてはいけない。それには転移が出来るビショップ、シェリー、ヨシュアが適任なのである。



「ヴォルフ教官。或いは、その黒幕が既にアニエスに入り込んでいるかもしれない。だから、ヴォルフ教官には街の中に怪しい人物がいないかチェックをしてもらいたい」

「ああ、分かった。では此方は班分けをして直ぐにでも取り掛かろう」

「頼む。シェリー、ヨシュア、暗くなったら俺達も行動開始だ」

「ええ、分かったわ」

「ウガー!」




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