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第121話 カイトの王都滞在編〜アマンダさんのお尻が!?



「なるほど薬の素材に特化したダンジョンか」


 俺は、サトミと、レクス、グラン、エル、マックニャンを伴って冒険者ギルドにダンジョンの報告に来ている。

 キョウヤと大聖堂組のミシェル神父達は新月の館に帰っている。


 王都の冒険者ギルドには毎日来ている訳では無いからか、依頼から帰って来た冒険者か、又は最近になって王都に来た冒険者なのかは分からないが、俺が受付に向っていると体格の良いベテラン風の冒険者が“おいおい、こんなガキが……”と、俺の肩に手を置いて例のお約束が発生するところだったのだが、周りに居る冒険者に止められていた。

 まあ、そのお約束はこれから冒険者になる者や、新人冒険者に無茶をさせない為の忠告なのだから、俺は特に気にする事なく、その冒険者に挨拶をして受付の列に並び、今はギルドマスターの部屋でダンジョンの報告をしていたところだ。


「ああ、それと最下層に行くなら茶葉持参を推奨します」

「茶葉だと?それはいったい何故だ?」


 ダンジョンの核をチューロ村の近くの森に持っ来てダンジョンを作り、そこに住み着いている悪魔っぽい奴……名は確か“ベルツベル”だったと思うが、そのベルツベルに冒険者ギルドにどこまで話しても良いかと聞いたところ、全て話しても構わないとの事だったので、俺は何故ダンジョンが出来たのか、そしてベルツベルについても大まかにギルドマスターに話した。


 この話を聞いて、どのように扱うかはギルドマスター次第だ。


「ベルツベル……何処かで聞いた事のある名だな」

「ベルツベルもギルドマスターも長命種ですから何処かで接点があっても不思議では無いのでは?」

「そうだな、あり得る話だな。それにしても、これ程優良なダンジョンだったとはな。私はこれから国王に報告に行くが、お前も来るか?」

「いや、遠慮しておきますよ。そろそろ王都を離れて東の国に向かおうと思いますからね」

「そうか、なら準備などもあるのだろう」


 旅の準備でそれ程必要な物はないが、商業ギルドのアマンダさんと、冒険者ギルドのミウラさんには何かしらあるのかもしれないから、ギルドマスターには肯定の意味で頷いた。


「それで、また王都には帰って来るのか?」

「はい、此処にはビショップ達が居ますからね」

「そう言えば、お前らは古くからの友人だったな。東の国に行くには海を渡る必要があるが、最近になって船も出ている事だし、お前等なら何があっても心配は要らないだろう」


 東の国は島国なのか?それなら向こうの食材が此方で普及していない訳も頷ける。


 ギルドマスターの部屋から出ると、併設されている酒場でエールを片手に賑やかに談笑している三人組の冒険者が目に付いた。


「わし等にかかったらホーンウルフなんぞ敵では無いわ。ガハハハハ!!」

「そうだな、あとニ〜三匹いても軽く倒せたろうな」

「最後に追加の収入があった事は僥倖だったな。今夜は思う存分呑んでも良いぞ」


 人間、エルフ、ドワーフのパーティなのだろう。ランクも高いようで頼もしい事を言っている。

 王都の冒険者には腕の立つ者が少なくない。

 俺と一緒にAランク試験を受けた熱血一番、無表情二番、気弱三番、そして微笑み四番の四人の他にも俺が知らないだけで、強い冒険者は沢山居るだろう。

 冒険者だけではなく、ビショップ達が通っている転生者の子孫や、何らかの事象での転移者達が集う施設にもヴォルフ教官の様な強者が多数居る。


 俺とサトミは、周りの冒険者に酒を振る舞っている三人組の冒険者パーティに頼もしさを感じながらギルドを出て、夕暮れ時の町並みに一歩踏み出した。

 レクス達も、どことなく嬉しそうにしている。


「カイトさ〜ん、待って下さ〜い」


 その声に振り返ると、冒険者ギルドからミウラさんが走って追い掛けて来ていた。


「カイトさんはこれから帰るのですか?」

「この辺を少しぶらついてから帰ろうかと思うんだが?」

「あっ!それなら私も一緒にぶらついてもいいですか?」

「ああ、別に良いぞ」

「カイト、それなら商業ギルドに行ってアマンダさんを迎えに行こう?」

「そうだな、サトミ。ミウラさんもそれで良いか?」

「はい!行きましょう」


 俺達は商業ギルドにアマンダさんを迎えに行き、そのまま街の中をレクス達を先頭にして歩いて、賑わう屋台や商店に立ち寄りながら夕暮れ時の散歩を楽しんでいる。


「ソルト、ソルト、向こうに飴細工の屋台があるし」

「待て、シュガー。前を見て歩かんと危ないぞ。走るでない!」

「きゃっ!?」


 その声に気付いて意識を向けたが、時既に遅しで、十字路の角から飛び出してきた女性とアマンダさんがぶつかり、その衝撃でアマンダさんは尻もちを付いて、手に持っていた果実で作ったアイスキャンディを落としてしまった。


「大丈夫か?アマンダさん」

「アマンダさん、怪我は無い!?」

「痛たた……お尻が……はっ!?アイスキャンディ!?ああ……私のアイスキャンディが……」

「いや……アマンダさん、アイスキャンディよりも怪我は……」

「ちょっと!何処を見て歩いているし!」


 相手の女性は鍛えているのか、ぶつかっても平気だったらしく手に持った串焼き肉を振りかざしながらアマンダさんに文句を言っている。

 一方、鍛えている訳では無い一般人のアマンダさんは盛大に尻もちを付き未だに立ち上がれないでいる。

 それにしてもアマンダさん……怪我よりもアイスキャンディを落とした方が辛そうなんだが……


「シュガー、止めないか!悪いのはお前の方だ」

「だって私の服に串焼き肉のタレが付いちゃったし……」

「それでも、お前が前を見て歩かないからだ!……すみませんでしたお嬢様。お怪我はありませんでしたか?」

「あっ、はい……」


 ぶつかって来た女性の連れなのだろう、白い布をターバンの様に頭に巻いた男性が、辛そうに一点を見つめて座り込んでいるアマンダさんに手を差し出した。


「私の連れが申し訳の無い事をしました。その落とされた物は弁償しますので許してやって貰えますか?」


 アマンダさんはその男性の手を取り立ち上がると、気を取り直したのだろう、ニコリと笑って謝罪を受け入れた。


「私なら大丈夫です。それに私にも注意が足りていませんでした。申し訳御座いません」


 流石は商業ギルドの職員だけあって、謝罪をして来た相手には丁寧な対応をするアマンダさん。


「それにアイスキャンディは弁償しなくても良いですよ。そうですよねカイトさん?」

「ああ、問題ない。まだ沢山あるからな」

「そうですか、それは重ね重ね申し訳ない……おい、シュガー。お前も一言謝るのだ」

「う、うん……ごめんなさいだし……」

「私の方こそごめんなさい」


 シュガーと呼ばれた女性が不承不承ながら謝罪の言葉を述べると、笑顔でアマンダさんが答えた。






「アマンダさん、怪我は無かったのか?」

「はい、お尻がまだ少し痛いけど、これくらい大丈夫です」

「一応、念の為ヒールを掛けておこう」


 ソルトとシュガーの二人と別れて、アイテムボックスから代わりのアイスキャンディをアマンダさんに渡しながら怪我の有無を聞いてみると、まだ少し痛いと言うので、俺は人差し指に小さなヒーリングボールを作り、アマンダさんのお尻に飛ばした。

 お尻当たったヒーリングボールで、アマンダさんのお尻が僅かに発光して程なく消える。


「あっ!もう痛くありません。カイトさん、ありがとうございます」

「うん、大事にならなくて良かった」


 大丈夫だとは思うが女性の身体に痣でも残るといけないからな。

 お尻に痣なんて残ったら大変だ。


「それにしても、アマンダさんって大人の対応だったよね。凄くカッコ良かったよ」

「うふふ、サトミちゃんありがとう。私達はギルド職員だから恥ずかしい事は出来ないのよ。ねっ、ミウラちゃん」

「そうですね。心の中ではこの野郎って思っても笑顔で対応してないと、何時誰が見ているか分かりませんからね」

「ふ〜ん、ギルド職員って大変なんだね」


 その後、俺達は暗くなるまで気になる商店や屋台を巡り、魔道具の灯りで照らされた広場での大道芸や吟遊詩人の詩を見聞きして新月の館に帰った。


「サトミィィィィィィイイイイ!!」

「えっ!?何っ!?」


 ぽすん!


 俺達が新月の館に帰ると直ぐに、サトミの名を呼びながら虫っぽい何かがサトミの胸に飛び込んで来た。



いつも読んで頂きありがとうございます。

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