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第115話 カイトの王都滞在編〜大活躍の三人


 地下三階から出た俺達は、続く階段を降りて行く。

 先行しているのはレクス、グラン、エル、マックニャンで、次が俺とサトミ、その次がミシェル神父とマールさんで、その後ろがキョウヤとファビアン神父だ。


「キョウヤ殿、あの人体模型ですが、本当に動き出さないですよね?」

「あはははは!ファビアンさん、あの時のは冗談ですから安心して下さい」

「それなら良いのですが……」


 キョウヤとファビアン神父の話しが聞こえてきたが、ファビアン神父は余程恐かったのだろう、思い出しただけで青褪めた顔をしている。


 良く考えたら此処は異世界で、俺にも何が起こるか分からない。


「例え人体模型が動いたとしても、俺は別に驚かないがな。あはははは」

「へ〜、そうなんだ」


 ん?サトミの俺を見る目が何だかじっとりしているぞ……


「着いたぜ、カイト」

「地下四階なの!!」


 俺は地下四階の扉に手を掛けた途端に、背筋に冷たい物が走る感覚を覚える。


「カイト殿、如何されたのです?震えているではないですか」


 ミシェル神父が指摘するまで気が付かなかったが、俺は震えていたようだ。


「それに顔色も悪いですよ?何処か具合が悪いのですか?」

「いえ、マールさん……何故かいきなり悪寒がして……」


 何故だ?レクス謹製の身体は、そう簡単に状態異常にはならない筈だ。


「この扉に何か仕掛けがあ……」

「カイト、代わって!私が開けてみるよ」


 サトミが俺の言葉を遮り前に出て、ゆっくりと扉に触れた。


「ん~扉には何も仕掛けは無いみたいだよ……あっ!はは〜ん」


 何故かサトミが面白い物を見るような目で俺を見る。


「カイト、此処はアンデットの部屋みたいだよ」

「そういう事か。それならマールさん、これを使って下さい」


 俺はアイテムボックスから、ドロップ品の聖剣を出してマールさんに渡した。


「良いのですか?カイト殿」 

「ええ、この階はアンデットらしいからミシェル神父とファビアン神父、そしてマールさんをメインにして攻略しましょう」

「修行ですね、カイト殿」


 修行と聞いたミシェル神父とファビアン神父は、前に出て来て颯爽と並び立つ。

 その二人の前には、聖剣を持つマールさんが緊張した面持ちで、目の前の扉を見据えていた。

 穴の底から吹き上がる風が、ミシェル神父とファビアン神父の神官服と、マールさんの騎士服を靡かせ、まるで映画のワンシーンを見ているようだ。


「うわーっ、なんか凄くカッコいいね」

「そうだね、これで稲光と激しい雨が降れば雰囲気出そうだよ」


 ――――ピカッ―――――ゴロゴロゴロゴロ――――ザザァ―――――――――


 いきなり激しい光と雷鳴が轟き、大粒の雨が俺達の身体を打ち付けた。


「えっ!?キョウヤ君、何かした?」

「いやいやいや、僕は言っただけで何もしていないよ!?」

「まさか……」


 俺は振り返り、レクスを見た。テヘペロしている……。


 この状況でもミシェル神父達三人は微動だにせず、扉を見据えている。


 確かにカッコいいし、抜群の雰囲気だ。

 だが……


「レクス、もう良いだろう。いい加減にしないと風邪をひくぞ」

「はいなの!!」


 雷鳴と激しい雨がピタリと止み、レクスが魔法で皆を乾かす。

 サトミはいち早く雨を吸収したようだ。


「あれ?もう終わりですか?」


 ファビアン神父が振り返り聞いて来た。


「いやぁ、今のどうでしたか?なかなか決まっていたと思うのですが」

「何だか自分に酔っていました。修行だというのにスミマセン……」


 ミシェル神父……マールさん……


 マールさんが扉を押し開けると、湿り気のある岩肌の続く洞窟になっていた。

 洞窟の中は、見えない程では無いが薄暗く、冷たい空気が流れ、腐臭を運んでいる。


「よ、良し!ミシェル神父、ファビアン神父、マールさん、頑張って下さい」


 俺は入口に立ち、大聖堂組の三人に激を飛ばす。


「はい!皆さんは私達の後から付いて来て下さい」

「えっ!?い、行くの?」


 つい、漏れた言葉に三人が振り返り、サトミとキョウヤは口を抑え、頬を膨らませている。


「サトミ、キョウヤ、笑いを堪えているようだが、何か面白い事でもあったのか?」

「ううん、何でも無い。行くよカイト!マールさん達だけにする訳にはいかないし、此処も調べるんでしょ?」

「あ、ああ……そうだな」


 スケルトンやゾンビならば平気なのだが、ゴーストだけはどうも苦手だ。

 サトミにしっかりと手を握られて引かれると、行かない訳にはいかないな。




「神よ、死して彷徨う憐れな魂を導き給え――――癒しの光……ホーリーシャワー!!」


 ミシェル神父の魔法で、スケルトンの頭上から癒しの光が降り注ぐ。


「初めて見る魔法ですね」

「はいカイト殿、この魔法は我々神官に伝わる対アンデット用の魔法なんですよ」


 ファビアン神父の説明によると、この魔法で浄化されたアンデットの魂は、神の元に送られた後、更に神の手によって清められて新しい生を授けられるとか。


 レクスを見ると首を傾げているが、目の前でスケルトンが浄化されているのは確かなのだから深く突っ込まないでおこう。


 ミシェル神父の“ホーリーシャワー”によって浄化されたスケルトンは、小瓶をドロップして粒子になった。

 その小瓶を手に取ったミシェル神父が俺に手渡してニッコリと笑う。


「これは薬の材料ですね」


 小瓶の中には白い粉末が入っていた。何の薬か敢えて聞かずに、アイテムボックスの中に放り込んだ。

 スケルトンの粉が材料の薬なんて知りたくも無い。


「この世の未練を断ち切り、神の下へ(いざな)う道標となれ――――安らぎの光……ホーリーシャワー!」


 腕を前に突き出し近づいてきた三体のゾンビに、ファビアン神父の“ホーリーシャワー”が降り注ぐ。


「グアァァァァ……」


 ゾンビが粒子になって消えた後には、三個の、いや3粒の小さな魔石が転がっていた。


 俺はその魔石を受け取り、こんなに小さな魔石に使い道があるのだろうかと思いながら、アイテムボックスに入れる。




 薄暗い洞窟を進んで行くと、次に現れたのは、二体のマミーだ。


「このマミーは私が倒します」


 聖剣を両手で持って走るマールさんは、すれ違いざまに二体のマミーを切り付ける。


「エイッ!!」


 切る瞬間に薄く緑色に聖剣が光を発し、切られたマミーはその光に包まれて粒子となり消えていく。


「カイト殿!!これは素晴らしい剣ですね」


 ドロップ品のゾンビよりも少し大きな魔石と包帯を手に、満面の笑顔でマールさんが振り向いた。


「良かったらその聖剣はマールさんが使って下さい。やっぱり、聖騎士には聖剣ですよね」

「あ、有り難う御座いますカイト殿。大切にしますね」


 マールさんは、妖精が作ったとされる聖剣の刀身を撫でながら、恍惚とした表情を浮かべていた。


「グラン、あの聖剣は使っても大丈夫だよな?魅入られたりしないよな?」

「ワッハッハッハッハ!心配は要らんぞ。聖剣と言ってもランク的には低いからな。使用者に影響を及ぼす程の強力な力は備わっていないぞ」

「そうか、それなら安心だな」


 その後もミシェル神父、ファビアン神父、マールさんの三人で、湧いてくるアンデットを倒しながら進む。


 大活躍の三人だ。



「カイト、震えてるよ。大丈夫?」

「く、来る!」


 ヒャァァァァァァァァァァ…………

 イィィィィィィィィ…………

 キャァァァァァァァァァァ…………


「ひぃぃっ!!無理無理無理無理!南無阿弥陀、南無阿弥陀、悪霊退散、悪霊退散、来るな来るな来るな……」

「カイト、落ち着いて!!カイトはバローのダンジョンで倒したじゃない!それに今回はミシェル神父達が居るんだよ。だから大丈夫だから落ち着いて!」

「む、無理だ!あの時よりリアル過ぎる……」

「カイト殿……?」

「もしかしてカイト殿は……」

「うん、カイトはゴーストが苦手なんだよ」

「そうですか。カイト殿にも苦手な物が……ぷっ!」

「ファビアン神父、笑ったら失礼ですよ。誰にでも苦手な物は一つや二つあるものっぷっ!」


 ミシェル神父とファビアン神父が笑っているが、俺はそれどころでは無い。

 青白く発光している半透明の髪の長い女が、無表情で滑るように俺に向かって近づいて来る。

 その後ろに三体のゴーストを従えて、それぞれが俺を見ながら耳をつんざくような叫びを上げている。しかも、無表情でだ。


「ひぃぃっ!?と、飛んだ!?」

「カイト殿、大丈夫です。お任せ下さい。――――死して迷える憐れな魂よ、聖なる光と共に神の御許へ――――慈愛の光……ホーリーライト!」



何時も読んで頂きありがとうございます。

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