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第111話 カイトの王都滞在編〜サービスステージ!?


 ゴブリンエンジェルとゴブリンデビルの部屋から出た俺達は、階段を降りて次の部屋の前に到着した。


 薄暗い階段では小さな蝙蝠が飛んでいたが、俺達が近づくと逃げて行った。


「ねえカイト、あの蝙蝠は普通の蝙蝠?」

「そうみたいだな。昔、洞窟とかで見た小さな蝙蝠に良く似ているから、モンスターでは無いと思うぞ……それはそうと、ミシェル神父とファビアン神父は休まなくても大丈夫ですか?なんなら休憩にしますよ?」

「いいえ、私ならまだまだ大丈夫ですよ」

「はい、私もまだまだ行けます。ミシェル神父も私も幾度かの修行の旅を経験していますから、足腰は鍛えられていますからね」

「それに、ここ数日で魔力量が増えたようですしね」

「そうですか。えーっと、マールさんは聞くまでも無いですね。サトミ、キョウヤ、準備は良いか?開けるぞ」


 マールさんも肯いたので、扉の取手を掴み、ゆっくりと開ける。


 地下三階は、木が疎らに生えていて、丈の長い草が所々に繁っている草原だ。

 しかも、地平線が見えるくらいの広さがある。


「凄く広いんだけど……しかも夕暮れなんだね」


 この部屋に入る前に、上を見上げて穴の外を見た時は、まだ空は明るかったのだが、サトミが言うように此処は夕暮れになっていた。


 と……その時何か黒い影が、俺達の前を横切って、草むらの中に消えていった。


「今のは、ウルフ系のモンスターのようだな」

「私には速すぎて良く分かりませんでした」

「ファビアン神父、私も何か黒い物としか認識出来ませんでしたよ」


 ミシェル神父とファビアン神父は良く見えていなかったようだ。

 尤も、いきなりの事だったから仕方が無いだろう。


「カイト殿、この部屋では今の一匹しか見ていないのですが、この広い草原を見渡しても、モンスターが居るように見えないのはどうしてなのでしょうか?」

「気配は所々で感じますよ、マールさん。ほら、あそこの木の後ろに狐の尻尾のような物が見えますよ。それに、向こうの草むらの中には多分スライムが隠れていますよ」

「カイト、そっちの木の上には、おサルさんが二匹居るね」

「どうやらコボルトも居るみたいだよ」


 サトミとキョウヤにもモンスターの居る所が分かるようだ。

 サトミは俺よりも気配や魔力探知が優れているし、キョウヤはダンジョンコアなのだから当然の事だ。


「皆さん良くわかりますね……ミシェル神父やファビアン神父だけで無く、私も修行をやり直す必要があるみたいですね」


 聖騎士団の副団長であるマールさんは、沈んだ顔をしている。


 もしかしたら自信を無くしたのかもしれない。


「マールさん達聖騎士はどちらかと言えば対人戦特化ですから、隠れているモンスターの気配を感じるのは慣れていないのでしょう?人とモンスターは違いますからね」

「それはそうですけど……でも、だからと言ってこのままで良いという事はありません。私はミシェル神父とファビアン神父の護衛として付いて来ましたが、これからは護衛をしながら修行もしたいと思います」


 マールさんは両手を握り締めて、ヤル気満々で気合いを入れている。


「早っ!立ち直り早っ!!」

「フフフ聖騎士ですからね、サトミ殿」


 確かに騎士としては、いや冒険者でもそうだが、切り替えが早いのはいい事だ。



「それにしても、どのモンスターも襲って来ないから、もっと奥に行ってみるぞ」


 入口に近いモンスターは、単体で隠れていて、俺達が近づくと逃げて行ってしまう。

 それならばと、奥に進んで行くと直ぐに、5匹のスライムがぷるぷると身体を震わせながら固まっているのが見えた。


 黒いスライムだ。


「カイト殿、私が行きます」


 マールさんが、腰から剣を抜きながら黒いスライムに走り寄っていく。

 黒いスライムも近付いて来るマールさんに気付き飛び掛かるが、マールさんの剣さばきで確実に仕留められていった。

 叩き斬られた黒いスライムは、黒い靄を吐き出しながら粒子になって消え、小さな革袋が五つドロップされた。


「カイト殿、ドロップ品で……あ……う……私は何故……何の為に生まれて……」


 マールさんの様子がおかしい。

 確か、地下一階の時も少しおかしかったよな。


「エル、マールさんだが……」

「ああ、これは昏い感情とは違うが、一時的に精神に作用してネガティブ思考になっているみたいだぜ」

「黒いスライムを倒した時に出る黒い靄が怪しいニャン」


 だとしたら、黒いモンスターに接近戦はしないほうが良いのかもしれないな。


「あ、あれ?わ、私は今いったい何を……?」

「あっ、元に戻ったよ、カイト」


 少量の黒い靄で、短い時間とは言えネガティブ思考に堕ちたのだから、これ以上あの靄には触れない方が良いだろう。


「マールさんは黒いモンスターが出す靄でおかしくなっていたみたいですよ」

「では、剣で戦うのは……分かりました、カイト殿。あの黒い靄に触れなければ良いだけですね。あっ、これ、ドロップ品です!」


 マールさんは基本、ポジティブな人のようだ。

 だから、直ぐに自分を取り戻したのかもしれない。


 マールさんが差し出した五つの革袋の中には、それぞれ銅貨が五枚入っていた。


「何だか銅貨が五枚ってしょぼくない?」

「まあ、何と言ってもスライムだからな、サトミ」


 それから少し進むと、今度は角がある兎が群れで現れた。


「ホーンラビットだね。カイト君、黒いホーンラビットが数匹混じっているようだよ」

「そうだな……マールさんは黒い靄に触れないように注意して下さい」

「了解です!」



 左手にある森から俺達の前を横切って、右手にある丈の長い草むらの中に入って行くホーンラビットの群れ。


 それを見ていると、それ程広くはない草むらの中からは一向にホーンラビットは出て来ない。

 まるで草むらの中で消えているみたいだ。


「草むらの中に穴があいているのかな?」

「その穴が森に繋がっているかもね、サトミさん。あはははは」

「まさかの無限ループ?」


 サトミとキョウヤが馬鹿げた事を言っていると、俺達に気付いたホーンラビットが一斉に向かって来た。


「全員で迎え撃つぞ!」


 いつもの様に、俺は新月の刀で戦い、サトミは棘蔓で薙ぎ払い、レクスは氷魔法を、グランは身の丈以上のハンマーで、エルは徒手空拳、マックニャンはレイピアで貫く。


 ミシェル神父とファビアン神父は、神に祈りながら神聖魔法を放ち、二人を守る様にマールさんが剣で戦っている。

 マールさんは黒い靄に触れないように、ヒットアンドアウェイで上手く黒いホーンラビットを倒していた。


 キョウヤに至っては、手を翳しただけで、ホーンラビットが粒子になって消えていった。



「今度は銅貨が七枚だね」


 ホーンラビットを一匹倒す毎に、小さい革袋に銅貨が七枚入っていた。

 もう、俺達の前を横切るホーンラビットは居ない。


 二十匹以上のホーンラビットを全て倒して先へと進むと、今度は木の上から石や木の実を投げつける猿の群れが現れた。


「あれはキラーモンキーですね」

「知っているのですか?ファビアン神父」

「はい、キラーモンキーは南部の森に生息するモンスターで、人里に現れては家畜を襲い、畑を荒らすモンスターです。いつも群れで行動して、商人や旅人を襲う事もあります」


 始めて見るモンスターだが、姿はどことなくテナガザルに似ている。


「カイト、来るよ!!」

「鋭い爪に注意して下さい!」

「分かりました、ミシェル神父」


 長い手を振り回し、鋭い爪で攻撃してくるキラーモンキーの動きは早く、マールさんやミシェル神父、ファビアン神父はその動きに翻弄されっぱなしだ。


「ダメです!!かするのが精一杯です!!」

「私達の魔法はかすりもしませんよ。あはははは……」


 レクスは動きの早い小さいサンダーバードで、エルとマックニャンは持ち前の素早さでキラーモンキーを圧倒し、サトミの棘蔓も難なくキラーモンキーを捕まえている。

 キョウヤに近づいたキラーモンキーは、不思議パワーで触れる事なく粒子になって、グランは……


「こいつ!ちょこまかと動くんじゃない!!」


 グランは少し苦労しているようだ。


「マックニャン、ミシェル神父達のフォローを頼む」

「任せるニャン、カイト君」


 そして俺の前に居るのは、倍以上の大きさで、ふてぶてしい顔をした群れのボスだ。

 オランウータンによく似ているその体躯を左右に揺さぶり、素早い動きで俺に迫って来た。

 そして……


「――――――うおっ!?……びっくりしたぞ!!魔法を使うなら使うって言えよ」

「カイトが無茶な事を言ってるよ……」

「あはははは!きっと、それだけ驚いたんだと思うよ」


 長い両手をクロスに薙ぎ払い、風の刃を至近距離から放って来たキラーモンキーのボスに悪態をつきながら、新月の刀で風の刃を断ち切り、返す刀で目の前まで迫って来ていたキラーモンキーを、袈裟斬りに斬り付けて倒した。




「普通のキラーモンキーは銀貨が一枚と銅貨が五枚入っていたぜ」

「ボスの方は銀貨が三枚なの!!」


 エルとレクスが革袋の中を確認すると、またお金が入っていたようだ。


「金額はあれだが、この階はサービスステージなのかもしれないな」

「そうだね、カイト君。確かに金額は少ないけど、数をこなせばこの階だけで日銭は稼げそうだね」




 キラーモンキーを全て倒した俺達は、冒険者がこの階に殺到する光景を思い浮かべながら、更に奥へと進んで行く。


『マスター、SOSです!!』


 ダンジョン地下三階の草原を奥に進んでいると、コンセからSOSの要請が入った。


「マップを展開。コンセ、状況を頼む」


『はい、マスター。街道から外れた山道で、馬車が斜面を滑落。滑落した谷は岩トカゲの巣窟になっていて、現在ゆっくりと包囲されつつあります』


「聞こえたか?急いだ方が良さそうだ」


 レクス以下全員にコンセの声が聞こえたようで、皆が俺の問に肯いた。


 レクスのお陰で随分と便利になったなと思いながら、新月の仮面を付ける。


「コンセ、良いぞ転移だ」


『イエスマスター、3……2……1……転移します』



読んで頂きありがとうございました。

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[一言] 作者様111話(ゾロ目)でございます。
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