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第105話 カイトの王都滞在編〜新たな同行者!?

「急に静かになったわね」


 シェリーの言うように、アラディブとベルゼブブが帰った後の大聖堂前の広場は、テーブルを囲んでいる俺達以外には人っ子一人居ない状態だ。


 魔界の門が消えると、空は晴れ渡り、心地よい微風が髪を踊らせている。


 アイテムボックスにテーブルを仕舞い、俺達は司教様と一緒に大聖堂に入っていく。

 すれ違いに、大聖堂に避難していた人々が広場に出て行き、各々が向うべき場所に歩を進めた。


「カイト殿……貴方は、神ですか?悪魔ですか?」

「いきなりそれですか!?ミシェル神父!?俺はふつ……いや俺は人間ですよ!?」


 ミシェル神父とファビアン神父、そして聖騎士団副長のマールさんが、俺を畏怖の籠もった目で見ている。


「今、普通って言いかけて止めたわよ」

「やっとカイトも自覚したのか?」

「ウガッウガッ」

「人間って言うのも怪しいよね!あはははは!!」

「おい、サトミ!それにビショップ、シェリー、ヨシュア!!お前等……」

「まあまあカイト殿、今のは冗談ですから。喧嘩は良くないですよ」


 いや、その冗談が元ですけど?


 ミシェル神父は俺にニッコリと笑いかけ……


「司教様、私達はカイト殿の治癒魔法を見て、嫌と言う程勉強不足を痛感しました。今まで拙い治癒魔法で胡座をかいていた事が恥ずかしく思います……」


 突然、ミシェル神父とファビアン神父が、神妙な面持ちで司教様に話し始めた。

 俺達は邪魔をしないように踵を返し、外に出ようとするが……


「カイト殿、お待ち下さい。カイト殿と皆さんにも聞いて頂きたい」


 俺達はファビアン神父に引き止められた。


「司教様が外で話しをされている間、私とファビアン神父も、修行に出て更なる知識を得て、魔法の力を高めるべきだと話していたのです」

「ふむ、それが先の言葉に繋がるのですね?」

「はい、司教様。それに付きまして、カイト殿にお願いが御座います。どうか、私達を同行させて頂きたいのです。普通に私達だけで旅をするより、カイト殿の元で研鑽を積めば、より多くの知識を得られるのではないかと思うのです」


 どうなんだろうこれは……と思い、レクスを見るとレクスはニッコリと笑みを浮かべて頷いた。

 とすれば、この二人を迎え入れる事によって、この世界に良い影響を与える事になるのだろう。

 とは言え、俺と行動を共にしたところで、ミシェル神父が言う多くの知識が得られるかは疑問だが……


 レクスが良いと言うなら、俺に断る理由は無い。


「俺なら別に構わないですが、司教様のお許しは無くても良いのですか?」

「司教様は今、お考え中です」


 司教様を見ると、何やら難しい顔をして腕を組み、ブツブツと思案していた。


「―――――――――――と思いますが……カイト殿の許しが出たのなら……ふむ、そうか、口うるさい二人が居なくなれば私は自由に……この際だから、もう一人口うるさいマールを…………」


 なんか、考えている事が口に出ているけど大丈夫なのだろうか……


「分かりました。教会としては貴方達に抜けられるのは痛手ですが、貴方達が身に付ける技術や知識は、将来の教会の為に、しいてはこの世界の為になる事でしょう。くれぐれもカイト殿にご迷惑をお掛けしないように研鑚を積んで、得た知識を教会に持ち帰って下さい。そしてマールにはこの二人の護衛を命じます。教会にとってミシェル神父とファビアン神父は掛け替えの無い人材ですからね、宜しく頼みますよ」

「畏まりました、司教様。ところで、誰が口うるさいですって?」


 マールさんの司教様を見る目がジト〜としている。

 ミシェル神父とファビアン神父の目もジト目だ。


「えっ!?あっ……な、何の事ですか?ベ、別に私は口うるさい貴方達が居ない間に翼を修理して飛んだり、夜な夜な娼館に足を運んだりといった事は、これっぽちも考えていませんよ……あっ……」


 司教様、語るに落ちる。そして、ミシェル神父達のジト目が深まる。


「はぁ、貴方という方は……良いですか?今回の怪我で貴方は死にかけたのですよ。カイト殿が居なかったら間違いなく貴方は死んでいたでしょう。それでも懲りずにまた飛ぶつもりですか?」


「そ、それでも……」


 ミシェル神父に窘められた司教様は、悲しそうな顔をして何か言おうとしたが口を噤む。

 その司教様の悲しそうな顔を見ると、何となく許してあげたくなるから不思議だ。

 これはもうスキルのような物かもしれない。


「はぁ……仕方が無いですね。娼館は兎も角、尖塔の上から飛び降りるのだけは絶対に駄目です。せめて二階の屋根くらいにして下さい」


 えっ!?二階の屋根なら良いの?それでも大怪我をすると思うけどな。


 斯くしてミシェル神父は、司教様の悲しそうな顔のスキルで譲歩させられる事になった。







「レクスとグランとヨシュアとサトミは倒壊した家の瓦礫を撤去してくれ!キョウヤとシェリーとビショップとマールさんは瓦礫の下の怪我人を広場に集めるんだ!アマンダさんとミウラさんは重傷者と軽傷者を振り分けてくれ!重傷者は俺に、軽傷者はミシェル神父とファビアン神父の所に頼む!エルとマックニャンはキナコとワラビに乗って、上空から周囲の状況を見て来てくれ!」


 ライトの魔法を空に打ち上げ、明るくなった村の中は、倒壊した建物だらけで、地面がひび割れた所もある。

 被害を免れた村人達は右往左往していて、更にあちらこちらから泣き声や喚き声が聞こえて来る。


「ミウラさん、ギルドに連絡ができるか?」

「はい、カイトさん。文字なら送る事ができます」

「良かった。この状況をギルドに伝えて、人員と食料やテント等の救援物資を頼めるか?」

「はい、問題無いと思います」




 俺は呆然と立ち尽くしている体格の良い男性に声を掛けた。


「大丈夫か?」

「あ、ああ……今のはいったい……」

「恐らく、地震だ。また揺れるかもしれないから気を付けてくれ」

「じしん……?」

「――――リック、助けて!!夫と子供がまだ家の中に居るの!!」

「なに、エンゾが!?」


 どうやら男性の知り合いのようだ。


「頼めるか?出来れば動ける人は手を貸してもらいたいのだが?」

「ああ、わかった。大丈夫だ任せてくれ。――――――おーいっ!動ける奴は手を貸してくれ!!」


 リックの一言で右往左往していた村人達が一斉に動く。

 ある者は瓦礫の撤去に、そしてまたある者は怪我人の運搬にへと散って行った。





 此処は王都から歩いて一日の距離にあるチューロ村だ。


 大聖堂からミシェル神父、ファビアン神父、聖騎士のマールさんが新月の館に来た翌日の夕食後に、俺達は二階のリビングで各々好みの飲み物をメロディーちゃんに作ってもらい、飲みながら歓談していた。


「何度も言うようですが、このような立派なお屋敷に住まわれているとは驚きました」

「しかも、食事がとても美味しいです!見た事も聞いた事も無いお料理でしたが、美味し過ぎて沢山食べてしまいました」


 ミシェル神父もマールさんも上機嫌だ。勿論ファビアン神父も例外では無く、新月の館に来てから驚き顔とニコニコ顔の繰り返しだ。


 夕食のメニューはカツ丼、青菜のお浸し、じゃがいもの味噌汁、そして、くず野菜を浅漬けにした漬け物だった。


 マールさんとアマンダさんはカツ丼のお代りをしていたが、それは明らかに食べ過ぎだ。

 この世界の胃袋はどうなっているんだ?


『うわっ!うわうわうわ!!何だ!?何が起こった……』

『うぐっ……た、助けてくれ……』

『キャ――――――逃げて!!早く……』

『あぁぁぁぁん痛いよぉぉ……お父さん……お母さ……』


 いきなり頭の中に助けを呼ぶ声が聞こえた。

 新月の仮面を付けてマップを確認すると、大きな泣き顔マークが点滅している。


「レクス、SOSだ」


『マスター、少しお待ち下さい。レクス様がアップデートされて、コンセルジュが状況を確認する事が出来るようになりました。これによって夫婦喧嘩や盗賊等のSOSか、実際に命の危険に晒されている人のSOSかを事前に知り、助けが必要か否か見極めることが出来、状況によっては事前に準備をする事も可能になります』


「そうか、わかったコンセ。直ぐに状況確認だ」


 この前の盗賊のSOSに機嫌を悪くしていたからな……レクスには後で礼を言おう。


『マスター、チューロ村で局地的な地震が発生したようです。家屋の倒壊や地面の陥没を確認しました。倒壊した家屋の下敷きになっている村人も多数確認しました』


「チューロ村で地震発生だ。怪我人も大勢居る事が予想される。チューロ村に急ぐぞ。エルはビショップ達を連れて来てくれ」

「了解だぜ!」


 エルがビショップ達を連れて来るまで、ミシェル神父、ファビアン神父、マールさんに説明をした。


「“習うより慣れろ”ですね。恐らく向こうは酷い状況だと思います。到着次第直ぐに動けるように心構えをしておいて下さい」


 そして、エルがビショップ、シェリー、ヨシュアを連れて来てくれた。


「行くぞ、チューロ村に転移だ」



読んで頂きありがとうございました。

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