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第103話 カイトの王都滞在編〜悪魔ベルゼブブ!?

 仲間達が戦っているのに、俺が戦っていないわけがない。


 俺は皆の状況を見ながら、新月のナイフを蝿に突き刺し、魔力を送り炎を吹き出す。


「しかし良く燃えるな……」


 少しの炎で消し炭になる燃えやすい蝿。

 溶解液さえ気を付ければ、数が多いだけの雑魚モンスターだ。

 いったい何処から湧いて出たのだろうか……


 上空には、まだまだ数多くの蝿が飛んでいる。

 どうやら街中に広がっていた蝿が、大聖堂前の広場に集まって来ているようだ。



 俺は新月のナイフに魔力を送った。


 イメージするのは灼熱の燃え盛る炎の領域。



 魔力を込めた新月のナイフは眩いくらいに真っ赤に発光している。


 俺は上空に群がる蝿に新月のナイフを投げた。

 新月のナイフは一匹の蝿の頭に突き刺さる。



「メルトダウン」



 ゴォォォォォォォォォ――――



 魔力が放出され、領域に居る大量の蝿は一気に灼熱の炎に包まれて跡形もなく燃え尽きた。

 可能な限り広範囲の領域をイメージした結果、上空に残った蝿は僅か数匹になった。


「シェリー、残りは頼むぞ」

「オーケー!任せてカイト」


 その残った蝿は、シェリーが炎の矢を次々と突き刺し、落下するまでに全て燃え尽きた。


「カイトくん、何か来るの!!」


 レクスが言った直後、俺も大きな魔力を感じ取る。

 しかも、その魔力は……


「サトミ!!後ろだ、気を付けろ!!」


 サトミの背後の空間が歪み、サトミが反応するより前に歪んだ空間から腕が伸びて来た。

 そして、後ろからサトミの首を掴む。


「クッ……な、何が!?」

「おやおや、私の可愛い蝿達が……そうですか、貴方達が燃やしたのですね」


 歪んだ空間から姿を現したのは、蝿の頭でタキシードを着た太った悪魔だ。

 昔、本で読んだ事がある、ベルゼ……ベルゼバブ?いや、バルゼベル?いや、名前よりも今はサトミだ。


 俺はマップ機能の転移で、サトミと蝿男の間に割って入り、蝿男の喉元に新月のナイフを突きつけた。


「さあ、その手を離してもらおうか」

「転移ですか?この世界にも強者が居たのですな。フォッフォッフォッ」

「そんな事はどうでも良い……手を離さないのなら燃やすぞ」

「そうはいきませんな。私の可愛い蝿達の仇を討たなくてはいけませんからな。それに、私はそう安々とっ!?」

「うおっ!何だ!?」


 それは一瞬の出来事だった。いきなり粘着性の強い糸が、俺と蝿男をぐるぐる巻に巻きつけ、俺と蝿男は抱き合う形になってしまった。


「な、何だこの糸は!?」


 ……いや待て、この糸には覚えがあるぞ。

 俺は後ろを振り返り、サトミを見る。


「やっぱりお前か!!なんで俺まで巻きつけるんだ!?」


 サトミの頭の上でピョンピョンと飛び跳ねている緑色のイモムシに文句を言うが、当のイモムシは俺の言っている事が分っているくせに、分からないふりをして、身体を“?”の形にする。


「あっ、コイツ……ムカつく……佃煮にしてやろうか?」

「あ〜あ、カイトまで巻きつけたんだね、ダメだよミントちゃん」

「名前をつけたのか?」

「うん、緑色だからミントちゃんだよ」

「そうか、今夜のおかずはミントの佃煮だな」


 イモムシのミントは、サトミの頭の上で大きく一回跳ねて、髪の毛の中に隠れてしまった。


「私の事を忘れてはいませんかな?」

「あっ、蝿男……」

「蝿男……いや確かに蝿ですけど……では、自己紹介をいたしましょう。私はベルゼブブと言う者です。どうか、お見知りおきを」

「あっ、これはご丁寧にどうも……俺はカイトで、そこに居るのが……」

「サトミだよ!!って言うか、何で自己紹介をしているの、カイト?そのおじさんは悪魔だよね?」

「そうだ、どうもミントのせいで調子が狂ってしまったようだな。ところでベルゼブブ……」


 俺はベルゼブブに向き直り話しをしようとしたが、あまりの顔の近さに思わず新月のナイフを持つ手に力が入ってしまった。


「刺さっています、刺さっています。そのナイフを離して下さい!!」

「いや、別にこのまま刺し貫いても良いんだが」

「なんとっ!?いや、確かにそれは尤もな御意見ですが……はぁ……私は目的も果たせずに此処で死ぬのですか……」

「目的?お前の目的とは何だ?」

「良くぞ聞いてくれました。私の目的とは、この世界に来ている同僚を探し出す事ですが、気配も魔力も感じ取れず、私の可愛い蝿達に探させていたのです。しかし、貴方達が私の可愛い蝿達を……」

「そうか、それは悪かったな。しかし、この世界ではあんなに大量で大きな、しかも溶解液を吐くような蝿は、モンスターとして討伐されても仕方がないぞ」

「しかし……」

「蝿なら直ぐに増えるから、そう気を落とすな」

「それもそうですな。フォッフォッフォッ!そう言えば、私も増えすぎた蝿を良く殺処分していましたなフォッフォッフォッ!」

「って言うか、何時までくっついているんだ?いい加減に離れろベルゼブブ!!」

「いやいや、そうは言われましても、先程からこの糸を切ろうとしているのですが、いやはやなんとも強靭な糸でしてな、私には切る事が出来そうにありませんな」

「それなら俺が切るから待っていろ」


 俺は、糸に新月のナイフを当てて切ろうとしたが、全く刃がたたない。

 まるで包丁でワイヤーロープを切ろうとしているような感じだ。


「なんで切れないんだ?おい、ミント!!」


 ミントを呼ぶが、サトミの髪の毛の隙間から顔を覗かせて、直ぐに隠れてしまった。


「ヨシュア、お前の力で引きちぎれないか?」


 蝿も居なくなり、ビショップ、シェリー、ヨシュアが、近くまで来ていた。


「ウッガーァァァ!!!」

「どうだ、切れそうか?」

「うがぁ〜」

「そうか、ヨシュアでも駄目か……なら、焼くか」

「イヤイヤイヤイヤ!ちょっと待って下さい!焼くのだけはやめて下さい!私が燃えてしまいます!!燃えやすいのですよ私は!!」

「そうか、良し焼くぞ!」

「あ、悪魔ですか!!この人は悪魔ですかぁぁぁぁ!!」

「悪魔のお前に言われたく無いわ!!つか、分かったから暴れるな!うわっ!!」


 ベルゼブブが暴れるものだから、俺達はもんどり打って倒れてしまった。


「痛っ……重っ!!重いぞ……おい、上に乗るな!蝿だろがお前は?何でそんなに重いんだ?それでちゃんと飛べるのか、ああ?いったい何を食べたらそんなに太るんだよ!?ダイエットしろ!今すぐ痩せろ!!つか、早くどけよコラッ!!」

「カイト……それはちょっと言い過ぎじゃないのか?」

「何だとビショップ?それじゃあお前がこのおっさんの下敷きになってみるか?」

「あっ、いや、それは……すまんカイト、余計な事を言った」

「フォッフォッフォッ!良いのですよ。私も自覚がありますからな」

「ゲホッ!笑うな……振動で余計に重い……」

「それはそれは、申し訳ないですな。ではひっくり返りますぞ……フン!」

「うげっ!……ふぅ~……あぁ~重かった」


 俺は今やっとベルゼブブの体重から開放されて、ベルゼブブの腹の上に乗っている状態だ。


「嫌だ、この態勢は嫌だ……」

「フォッフォッフォッ!!」

「笑うな!!」


『マスタ、何故転移しない?前にも同じような事を言ったような?デジャブ?』

「セルジュ……」

『そう……転移したらサクッと抜けられる』


 ……もっと早く言って欲しかった。


「俺は糸から抜けるからな、ベルゼブブ。隙間が出来たらお前も抜けられるだろう」


 俺は早速マップ機能の転移で、サトミの隣に転移した。

 うん、サクッと抜けられたな。


 ベルゼブブはというと、粘着性の強い糸を剥がしながら、もぞもぞと抜け出て来た。

 だが、絡まり縺れて団子になった糸が羽にピッタリとくっついている。

 少しの間羽を動かして、くっついている糸を取ろうと頑張っていたが、最後には諦めたようだ。


 その間俺達は武器を構え警戒をしていたが、両手を上げたベルゼブブの言葉で、取り敢えず警戒を解いた。


「今更私には戦うつもりはありません。フォッフォッフォッ!それにカイト殿には私の力など到底及ばない事が分かりましたからな」

「おい、ベルゼブブ!何でそこで赤くなる!?」


 ベルゼブブが事もあろうに、もぞもぞと気持ち悪い動きで、俺をチラチラと見ながら赤面している。

 蝿の顔なのに何故か見ていて分かる程だ。


「カイト……殿」


 ――――ポッ!


「えぇぇぇい、止めんか!変態オヤジ!!」

「あはははは!カイト、モテモテだね。あはははは!」

「サトミも言うな!!」






「カイト殿には包み隠さず知っている事全てを話しますぞ」


 大聖堂前の広場で、俺とサトミ、ビショップ、シェリー、ヨシュア、大聖堂を代表して司教様、そしてベルゼブブが、テーブルを囲んでアイスコーヒーを飲んでいる。

 勿論、テーブルと飲み物は俺がアイテムボックスから出した物だ。

 因みに、アイスコーヒーのオーダーをしたのはサトミだ。


 それともう一つ、驚いた事に蝿の頭を脱いだベルゼブブだ。

 やはり体型通り丸顔だが、櫛で黒髪をオールバックに整え終えると、口髭も伴って、何処かの会社役員のような風貌だ。

 それと、蝿だからなのだろう、眼球に白目が無く、全体が複眼になっている。


「私が魔界の空を獲物を探しながら飛んでいると、いきなり薄暗い場所に転移させられましてな、何事かと思い警戒をしていると、目の前に大きな顔が現れ……」

 



いつも読んで頂きありがとうございます。

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