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第10話 カイト、商業の街ルトベルクに行く①


 夕方になり、プリンも売り切れたので、屋台を閉めてから商業ギルドに営業許可証を返しに行った。


「アマンダさん、今日は有り難うございました」

「お疲れ様でした、カイトさん。明日も屋台を出されますか?」

「はい、明日も出そうと思います。明後日からは護衛依頼で街を離れますから暫く休業しますね」

「そうでしたか、それでは明日も食べに行きますね」

「はい、お待ちしております」



 川のせせらぎ亭に帰り、シャワーを浴びて、夕食後にグランが作ったテントを裏庭に出した。

 2人用のテントで薄い緑がかった銀色で美しく仕上がっている。


「グラン、割と普通のテントだな。これなら目立たなくて良いぞ」

「ワッハッハッそうだろう、外見は普通に見えるように作ったからな」


 ん?外見はって言う事は……


 俺は、覚悟を決めて中を覗き見た。


「…………」


「どうだカイトよ、空間魔法で拡張して有るから中は広々と使えるぞ」


「アア、ソウダナ」


「それにだな、折角だからベッドとソファーとテーブルを置いてだな、簡易キッチンに、風呂と水洗トイレも完備だぞワッハッハッー」


「ワーイ……」


「それとねカイトくん、自動温度調節とね、自動照明、不壊、清潔、状態維持を付与しているから、ひっくり返っても大丈夫だし、掃除も要らないからね!」


「ソレハ、スゴイナ……」


 これってもう宿屋は要らなくない?


「なあ、レクス、水洗トイレを流した後はどうなるんだ?」

「それはね、カイトくん、トイレには浄化と循環を付与してるから流したら浄化してタンクに循環してるんだよ。とってもエコだよね!」


「あはは…えころじーばんざーい……」





 早朝、川のせせらぎ亭を出て、正門前に来たら、もう既に馬車が5台とパーティーらしき3人が集まっていた。


「冒険者のカイトです。お待たせして、すみません」

「いや、出発はまだ少し後だから大丈夫だ。俺はCランクパーティー、竜の咆哮のリーダーでバランだ」

「僕は竜の咆哮のホイルです」

「私は、ピックよ」


 竜の咆哮のリーダーであるバランさんは、黒髪をオールバックにした髪型で目の色は茶色、鼻筋が通って、整った口髭の細マッチョな、20代後半の映画俳優みたいな男だ。


 ホイルさんは、対照的で20代後半、筋骨隆々、無造作に伸ばした茶髮が肩のあたりまで有り、タレ気味の目は茶色、髭は無くて、唇が厚く、柔和そうな顔つきをした、人の良さそうな印象を受ける礼儀正しい男だ。


 ピックさんは、背中までの金髪、整った顔立ちで青い目をしたスタイル抜群の美人で、尖った耳からエルフだと推測する。故に年齢不詳。



「観察は済んだかしら?」

「あっ、すみません、正直に言うとエルフの人は初めてお会いしたので…」

「そう、あなたみたいな子供に護衛が務まるのかしら?護衛対象が1人増えた、なんて事の無いようにしてほしいわね」


 わお、キツイお姉さんだな。


「おい、止めろピック。すまんなカイト、余り気にするな」

「はい、有り難うございます。バランさん」

「その人形、カイト君はドールマスターなのですか」

「はい、そうですよ。皆んな挨拶するんだ」


 俺はレクス達に言った。


「私はレクスだよ!」

「ワシはグランだ。ワッハッハッ、で、こいつがダイフクだ」

「シャー、シャー」


 元気良く挨拶が出来たな。

 何だか保護者気分だ。


「喋るのか……かなりの使い手だな」

「フン、ところであなた、食料とテントは持参しないといけないのに、人形だけで他に荷物が無いのはどういう事?食料はぎりぎりしか持っていないから分けるなんて出来ないわよ」


「荷物は全部、収納に入っているから大丈夫ですよ」

「ほお、収納持ちか、羨ましいな」


 なんか、ピックさん苦手だな。


「おや、カイト君ですか?」

「ローランドさん、おはようございます」

「今回の護衛は4人ですか。でも、カイト君が護衛に付いてくれるのなら安心ですね」

「よろしくお願いします。ローランドさん」

「皆さん、そろそろ出発しますよ」


 俺がローランドさんと知り合いだという事で、先頭のローランドさんの馬車に乗り、2台目の馬車にはホイルさんが、3台目は飛ばして4台目の馬車にピックさん、5台目の馬車にバランさんが乗り込む。


「カイト君、屋台の評判を聞きましたよ。なかなか繁盛していたみたいですね」

「ええ、おかげさまで、沢山の方に来て頂きました」

「私も、噂のフライドポテトっていう物を食べてみたかったです」


 ローランドさんは忙しい人だから、屋台には来られないんだろうな。


「屋台を持って来ていますから、野営の時にでもお出ししましょうか?」

「それは嬉しいですね。良いのですか?」

「はい、それほど手間でも無いので」

「そうですか、それは楽しみですね」



 街道を西に向けて商隊は進んでいく。晴れ間が広がり、気持ちの良い風が吹いていて、馬車の揺れが無ければ眠ってしまいそうだ。

 レクス達は幌の上で寝転んで、空の青さと流れる雲を見て楽しんでいる。



(マスター前方からワイバーンの群れです。)


 ワイバーンの群れ?まだ遠いが、此方に向かって来てるな。


「ローランドさん、止まって下さい。ワイバーンが来ます」 

「何ですって!?」


 ローランドさんが馬車を止めると、後ろから何事かと聞きに来た。


「ホイルさん、前方からワイバーンの群れが来ます」

「何も見えないですよ」

「すぐに来ますよ。戦闘の準備をしておいて下さい」

「わかりました!」


 ホイルさんは後ろに伝えるため走って行った。

 流石、出来る冒険者は初動が大事だってわかるんだよな。


 竜の咆哮のメンバーが集まって来たので急いで確認をする。


「遠距離攻撃が出来る人は居ますか?」

「ピック以外は近接武器だから降りて来たら戦える」

「ワイバーンに弓矢はよっぽど近くじゃ無いと刺さらないわ。後は精霊魔法だわ」

「そうですか、それなら竜の咆哮の皆さんは商隊を守って下さい。見えて来ましたね。12匹くらいかな」

「12匹……そんなに……待て!カイトは戦えるのか?」

「はい、大丈夫です。ちょちょいと終わらせます。行くぞ!レクス、グラン、ダイフク」


 俺はダイフクを脇に抱えワイバーンの来る方向に走った。


「ここが良いな。グランはどう戦うんだ?」

「おう、ワイバーンの背中に、投げてくれりゃ良いワッハッハッー」

「わかった。レクスは離れている奴を頼む」

「了解だよ、カイトくん!」


 そろそろだな…………


「来たぞ、グラン来い!ダイフク召喚だ!」

「行くよ!サンダーバード!」

「キュロロロ」


 レクスのサンダーバードが馬車に向かっている3匹のワイバーンに向かって飛んで行く。

 俺は、グランを抱えてダイフクの背を駆け上がり、頭を踏み台にして高く飛んだ。


「行くぞ、グラン!」

「おう!ワッハッハッハッハー」


 グランをワイバーンの背に向かって投げると、口からハンマーを出して叩き落としながら隣のワイバーンに飛び移り、これもハンマーでたたき落す。


 俺が飛んだ更に上空を飛ぶ2匹のワイバーンに、態勢を整えレーザーサイトで下顎にマーキング、ライトニングショットを撃つ。

 貫通して、絶命した2匹のワイバーンが落ちて行く。


 俺は、そのまま落下しながら身を翻し、新月の刀で別の2匹の首を落す。


 ダイフクは飛んでいるワイバーンを咥えて首の骨を折っていた。

 胴体には別のワイバーンを巻きつけている。


「ダイフク!」


 ダイフクの背を滑り台のように滑り降りて着地した。


「キュロロロー」


 レクスのサンダーバードが最後の1匹を貫き消えて行った。




**********


 俺達は一体、何を見ているんだ?


「あの女の子の人形、無詠唱だったわ!それに何よ、あの雷鳥は、あんなの見たことが無いわ。何で魔法が鳴くのよ!」

「あの、髭もじゃのハンマーは何ですか?何であんなに大きいハンマーが振れるんですか?ワイバーンが一撃ですよ、一撃!」

「それより、あの蛇の人形が、ホワイトパイソンになったぞ。召喚したのか?10m級だぞ!信じられん!」

「僕は、ホワイトパイソンのダイフクって何処かで聞いたような……」

「あと、カイトだ。指から光の弾を出すわ、ワイバーンの首を一刀で切り落とすわ、ドールマスターっていうのはあんなんじゃねぇよ!!」

「何なのよ、あの子は、本当にちょちょいと終わらせたわよ。こんなの、誰に言っても信じないわ!私達の方が足手まといじゃない!」

「まあまあ、皆さん、カイト君ですから、そんなものだと思って下さい。何しろ113匹のオークと、4匹のオークジェネラルと、オークキングの集落に攫われていた私達家族を、30分で全てのオークを倒して、助けてくれた人ですから」


「カイトは人間なのですか?」


「はい、とても礼儀正しく、優しい、多分人間ですよ」

「「「多分ですか!?」」」



**********



「カイト君、そろそろ野営地に着きますよ」


 ワイバーンを倒した後は、何事も無く進んで行った。昼食は馬車で移動しながら、各々が持ってきた食料を食べた。

 レクス達は幌の上がお気に入りみたいだ。


「あっ、見えて来ましたね。これは野営の為に造られた広場ですか?」

「そうですよ。元は採石場ですけど、大勢が集まって野営したほうが安心ですからね」


 野営地には既に、それぞれ離れた所に3台の馬車が停めてあった。


 5台の馬車が野営地に入った。それでも、まだまだ広さに余裕が有る。

 そして、半円を作るように停められた馬車から馬が放され、少し離れた場所にある厩舎に入れられた。

 

 厩舎が有るのには驚いた。


 厩舎の後ろは、高く切り立った岩山で、その切り立った岩山が街道まで続いている。

 街道からモンスターが来たら逃げ場の無い場所になるが、逆に街道の方向だけ警戒すれば良いということになる。

 

 空から来るモンスター以外は。


「さあ、皆さん、明るいうちにテントの設営をしておきましょう」


 それぞれが、馬車の前にテントを設営していく。

 

 俺はアイテムボックスから新月のテントを出した。

 設営もクソもない、出すだけだ。


「カイト君、もう終わったのですか?杭で固定して無いようですが」

「角に重りが入ってますから、少々の風では飛んで行きませんよ。手伝いますよローランドさん」


 他の人もテントの設営にはもう少しかかりそうだ。


読んで頂いた方有り難うございます。

ブックマークも嬉しかったです。

有り難うございました



バラン(冒険者・竜の咆哮のリーダー)

ホイル(冒険者・竜の咆哮のメンバー)

ピック(冒険者・竜の咆哮のメンバー)

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