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一章7 『登録』

ヴィレンと別れた後、カイトらは小屋に戻っていた。

今は床一面に布が引き詰められている。布団として使っているらしい。当然カイトのベッドの様にふかふかしている訳もなく翌朝は身体中が痛くなる事が容易に想像出来る。

カイトはエリシャを中央とするつもりだったものの、ティオたっての希望でティオが中央となり左右をカイトとエリシャで固めることとなった。

ティオの警戒心が殆ど見受けられないのを不思議と思い、カイトは明日にでもこっそりと聞こうというのを決心した。


寝る為横になろうしたときカイトは、エリシャに呼び止められた。

カイトと面と向かったエリシャは「カイトに渡す物があるんだ」そう言って一本の短剣を手渡された。

エリシャが言うにはこの街の周辺には魔物やら危険な生物が出没するらしく、護身用として使って欲しいとの事だ。


「魔物がいるのか……最大限気をつけるよ。じゃあエリシャとティオおやすみ」


「カイト(兄)おやすみ(なさい)」


エリシャとティオがスヤスヤと寝ている頃カイトは未だ寝れずにいた。

決して疲れていないから寝れないのではない。魔物が出るその情報で少しばかりワクワク感を抑えられずにいたのだ。

異世界といえば魔物の討伐があるといっても過言ではない。カイトは今迄幾度となく魔物討伐シュミレーションを行っていた。ただそのシュミレーションは魔法を使っていた為、現在魔法適正があるか不明のカイトの役に立つ訳はないのだが……

そういったことに気づくことなく、遂にカイトは眠った。

やっとのことでカイトの異世界生活一日目は終了した。









〜〜〜〜〜〜








何かしらの生き物の鳴き声でカイトは目が覚めた。どうやらエリシャとティオはもう起きている様だ。


「おはようカイト目が覚めた様だね」


「あぁおはよう」


挨拶を済まし太陽の日を浴びようと外へ出ると、ティオが鼻歌を歌いながらご機嫌な様子で朝食を作っていた。カイトが外へ出てきたのに気づいたのか、「カイト兄もうすぐご飯出来るからね♪」と笑顔で教えてくれた。

どうしてこの兄妹はこれ程にも可愛いのだろうと思いながら、エリシャに連れられるがまま川へ行った。


川では顔をすすいだり、洗濯をしたりする様だ。

エリシャに井戸はないのかと聞くと、あるにはあるらしいものの数が少ないから川の方が楽らしい。確かに川は澄んでいて美しい。此れなら洗ったりしても問題はないように思えた。


小屋へ戻るとティオが朝食を並べて待っていた。

今日もご飯は非常に美味しそうだ。

「頂きます」そう言って食べ始めようとすると、エリシャとティオはキョトンとした顔をしていた。どうしたかと尋ねてみると、「頂きます」の意味がわからないらしい。

カイトは此処が異世界であることを少しばかり失念していた。簡単に「頂きます」の意味を教えると、エリシャもティオも「頂きます」と言い食べ始めた。


今日もティオのご飯は美味しい、美味しい食事があるのはこの異世界を生きる上で活力になる。本当にありがたい限りだ。この生活を維持し続けるのならば、今のカイトは出し惜しみするつもりはない。「ごちそうさま。ティオ美味しい食事をありがとな」元の世界では恥ずかしくて言えなかった様なフレーズだって言えるのだ。

感謝を述べると、ティオは頬を赤らめモジモジとしている。

また意味が分からなかったのかと思い「あぁごちそうさまのい……」と説明しようとすると、ティオは「ど……どういたしまして」と言って外へ出てしまった。

何か失礼な事をしてしまったのだろうか……後で謝っておこう。


エリシャが話しかけてきた。どうやらもう出発の時間の様だ。

自律組合へ向かう道中、カイトはエリシャに自律組合(ギルド)体内魔力(オド)について改めて聞いていた。

昨日どういったものかは聞いていたが、念には念を入れて聞いておくことにしたのだ。


・等級という区分があり、上位から白金→金→銀→黒→白→黄→赤→青と分けられる

・冒険者は依頼を選択して依頼を達成すると、報奨金が得られる

・受けられる依頼は上位等級になるほど増える

・討伐依頼以外にも配達等様々な依頼が存在する

・魔法適性や体内魔力量検査についても料金はかかるが調べる事ができるらしい


カイトがエリシャから聞き終えた頃、二人はに自律組合(ギルド)到着した。

自律組合(ギルド)の中は多くの人で賑わっていて、様々な武器を持っていたり、当然のように女性もいた。中には義手などをしている人がおり、冒険者というものの危険性が見受けられる。


「カイトこっちだよ」エリシャに新規者登録用受付に並ぶ様に指示された。新規者用の受付は一つだけで、その他の受付は五つあり朝だというのに全てが埋まっていた。新規用ですら人は並んでいる。もしも新規者用の受付が無ければ、気の遠く成る程受付するのに時間がかかるだろう。

予め用紙に記入させてから受付を行えば早いものの、皆椅子に座り態々受付で記入している。


そしてカイトの番が訪れた。若い受付嬢は青い制服を着ていて、亜人なのだろう犬耳があり物凄く可愛い。こういった人を見ると正にザ・異世界という感じだ。


「いらっしゃいませ。初めての方ですね。では書類をへの記入をお願い致します」


そう言って手渡された紙を見ると書いてある文字が全く読めない。会話が出来ていたから文字も読めるものだと勝手に思ってしまっていた。

このピンチを脱する為にはやはりエリシャに代筆を頼むしかなさそうだ。

カイトはエリシャに小声で


「字が汚いから代筆を頼めないか」


「仕方ないなカイト。特別だよ……」


呆れられつつも、なんとかエリシャに代筆を頼むことに成功した。それよりも此れは早急に文字の習得に勤しんだ方が良さそうだ。


エリシャが代筆してくれている間カイトは、ミリーと名乗る受付嬢から説明を受けていた。この説明は殆どヴィレンやエリシャから聞いいたものと違わなかった。


スラスラと記入してゆくエリシャを見て、カイトは書類が其処迄面倒くさいものではないことが分かった。

エリシャが書き終えると書類をミリーに渡した。


「カイト様、本日よりこの帝都自律組合(ギルド)所属、青等級として登録を致しました。こちらの青等級の徽章は依頼を受ける際に必要ですので無くさない様に気をつけてくださいね」


この自律組合(ギルド)は誰であっても簡単にできるらしく、もう少し厳しくした方が良いのではとら感じる程であった。


カイトがエリシャに「無くしそうだったら服につけておくと良いよ」と勧められたものの、カイトの服には着ける場所はなく、適当にズボンのポッケにしまった。


一通りの受付が終わりミリーから「カイト様、お困りのことがなにかございましたら、私共にお気軽にご相談ください。自律組合(ギルド)が空いてる時間には大抵此方に居ますので遠慮は要りませんよ」と終わりの挨拶を受けた。


受付が終わり帰ろうとしたカイトは、ヴィレンから紹介状を受け取っていたことを思い出した。最重要事項であった筈なのに、周りに圧倒されていて完全に忘れてしまっていた。とはいえ丁度相談して欲しいと言っているし渡すのは容易そうだ。


「あの最初に渡すべきだったのですが紹介状です」


カイトは渡しそびれてしまっていたヴィレンの紹介状をミリーに手渡した。

其処からのミリーのテンパり様は凄かった。

「ひゃっ!ん?ヴィレン様!?あっ、あっ、その少々……お、お待ちください」

受付嬢でここまでテンパるのだ。本当にヴィレンとは一体何者なのか気になってしまう。


「カイトさん紹介ということで特別に魔法適性と体内魔力(オド)量検査を無料で行わさせていただきます」


流石プロだ先程のテンパり様は何処へやらしっかりと落ち着き接客をしてくれている。


ミリーは他の受付の方から水晶玉を引っ張り出してきた。


「うぅ……普通新規冒険者が検査なんてしないわよ」


カイトらに聞こえない程度の小声で愚痴を言った。幾ら人当たりが良いとはいえ人間だ。愚痴の一つは言いたくなるものだ。


ミリーに勧められるがまま水晶玉に触れると、数秒間白や黒に光り続けたまま


パリッ、バリーン


と大きな音を立て水晶玉は割れてしまった。

美しく透明感溢れていた水晶玉は割れて粉々になり、破片は白く濁ってもいたる。

ミリーは呆然と立ち尽くし、自律組合にいた人々は「おいアイツ魔石を割りやがったぞ」「あれを割れるのは、魔王様や上位の魔法使いだけぐらいだぞ」「魔石が割れるわけはない!これは夢だ……」と目の前の光景が信じられないとばかりに、皆多様に言葉を並べていた。


ただローブを羽織り顔をフードで隠している人間だけは他の者ほど驚くことなく、「回復魔法も使えない彼に、あれほどの体内魔力があったなんて……益々気になるわ」そう呟いて自律組合(ギルド)から出て行った。

人名や国名等は今後適当に決めていく予定です。

それと次回はオリヴィアの行動編になると思います。

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