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一章6 『地獄の訓練』

明日の予定が確定し、話は終わったと思ったカイトは椅子から立とうとしていた。


「カイトよ未だ話は続いておるぞ。ぼけっとしておらずに座りなさい」


カイトはヴィレンに注意されてしまった。というか未だ話が続いているのか。これ以上何を話すのだろう。


立ち上がりかけていたカイトが座るとヴィレンは「カイトに家を建ててやらんとのぉ。」と唐突に提案をしてきた。

ヴィレンは俺が金無しというのを覚えているのだろうか。この人本当大丈夫かと不安気になるカイトを見て「な〜に費用は儂が受け持つし自律組合から帰ってくる迄に仕上げておくさ」

こう言われても益々不安になってしまう。一日で建てるなど、安全基準を完全に放棄しているではないか。いや貧民街に於いて安全基準などないのかも知れない……

「なんじゃ建物の大きさが気になるのか。エリシャと同等の物だから安心せい」

本当にこの人は大丈夫なのだろうか。其処が気になっていた訳ではない。しかし此れ以上不安気な表情をすると面倒くさいことになると感じたカイトは、「ホントイエヲタテテクレルナンテ、ヴィレンサンサイコウデス」と返事をしたのだった。


返事を聞いたヴィレンは嬉しそうにし、「では食事にするか、といっても作るのはティオなんだかな」と笑いながら言っていた。どうやらこの様子だとティオがいつも作っている様だ。気づいた時にはティオはカウンターの中にある扉の奥に進むところだった。


流石に四人分を一人に任せるのはどうかと思う。カイトは一応元いた世界でもきちんと料理をしていた。何かしらの役に立とうと思い、「ティオ俺も手伝う……」と言いかけたところでカイトはエリシャとヴィレンに「さっお主(君)の夢を叶える為に訓練をするぞ(よ)」と言われるがまま外に連れ出された。


一体訓練とはなんなのだろうか夢といえば騎士になると言った程度だが、そうこう考えているうちにいつの間にかカイトの手には木剣が握られていた。状況の読めないカイト余所に、ヴィレンの「始め!!」の声と共にエリシャが「実力測らせて貰うよ」と言いながら突っ込んできた。


一応カイトだって剣術の経験者だ。いつも彩奈に打ち込まれ負けていたが簡単にやられるわけにはいかない。異世界とはいえ負けてしまっては、彩奈の『また負けるなんて海斗はだらしないわね』と言われていたあの頃を思い出してしまうのだ。そんなの御免だと言わんばかりにエリシャの剣先を避けつつ攻撃を入れていった。勿論カイトの攻撃はエリシャに防がれていたのだが。


両者が対峙して既に十分以上が経過したと思われる。初めは両者互角の展開が続いていたものの、カイトの平均以下の体力に陰りが見え始めた頃に一気に均衡は崩れ、エリシャの攻撃を防ぐのに手一杯になっていた。そしてカイトが気づいたときには既にエリシャの木剣がカイトの喉元に突きつけられていた。


「勝負有り」ヴィレンがそう発すると、エリシャは木剣を地面に置きカイトに手を差し出した。


「カイト君凄いよ!この街の強さで上位に位置する僕を相手にここまで善戦するなんて。流石僕をあれだけ追い回しただけのことはあるね」


エリシャに助けられつつ立ち上がったカイトにヴィレンが「儂が鍛えたエリシャと同等に戦えるとは……お主は体力さえつければ騎士学校に入れそうじゃな」


こうしてエリシャとの第一回剣技訓練は終わった……訳もなく「ほらカイトよ、もっと走れ走れお主は体力さえつければ、あとはどうとでもなろう」先程見つかった弱点を補うべくエリシャと共に貧民街を走らされていた。


「カイトもう少しペースを上げようか」完全に鬼だ。そう思いつつもエリシャの笑顔を見ると不思議と元気が湧いくる。力を振り絞りエリシャにやっとの思いで着いていくカイトに追い討ちがかけられた。


「カイトよ気合を入れて走らんか、ティオの美味しい飯を抜きにするぞ」


なんと恐ろしい事を口にするのだろうか。ご飯抜きは流石にキツい。確実にそうなっては死んでしまう。そうならない為にもカイトは走り続けた。

「よし、終わりだ」遂に終わった。地獄のランニングは終了し、さっきみたいにまだまだ続くということは流石になかった。


ヴィレンの館に戻るとティオが、「ご飯出来てるから食べてね」と飛び切りの笑顔で出迎えていた。本当にこの兄妹の笑顔を見ると力が湧いてくる。『絶対に守りたいこの笑顔』と思いつつカウンターに並べられたパンとスープにサラダを一心不乱に食べたのだった。


カイトは食べ終わり、ティオに「ご飯ありがとう。美味しかったよ」と感謝の気持ちを述べた。案外早く調理された料理にありつけた。異世界に来て当分はご無沙汰になると思っていたカイトにとっては、心の底から感謝するものだった。

因みにカイトから「ご飯ありがとう。美味しかったよ」と言われたティオは頬を赤らめ喜んでいた。勿論他の皆は気付くことはないのだが。


こうしてカイトはヴィレンからやっとの思いで解放されたのだった。

次回かその次にオリヴィアが再登場です

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