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一章 5『新たなる夢』

エリシャが扉を開けると其処には大男が佇んでいた。カイトと比べて1.5倍近く身体が大きい。肌は日焼けした様になっていて、筋肉量も多い。右眼は傷で潰れていた。一体どんな人生を歩んできたのだろうか、そう考えつつその大男を眺めていた。


「おいエリシャ、コイツは一体誰だ」


「ヴィレ爺紹介するね、彼はカイトで金も帰る家も無くて、今日からこの街に住むことになったんだ」


「ほぅこの童が……」


ヤバイ確実にヤバイ『見ず知らずの人間を此処に置くわけにはいかない』とか言われないだろうか、此処はなんとか味方アピールをしなければ等とカイトが考えていると、


「ハッハッハそうか、お主はカイトというのか。エリシャが連れてきたんだ。悪い者ではないだろうしな、この街に住むと良い儂が許可しよう。街で出てゆけと言われても、このヴィレンの許可を得たとでも言っておけ。」


見た目と違って意外と気さくな人物で助かった。交友関係が上手いとは言えないカイトにとっては、こういった性格の人物の方が随分良い。

とは言っても未だどういったコミュニケーションを取るべきかと、悩んでいるカイトは一言「ありがとです」と感謝の言葉を述べるに留まった。


「無口な奴よのぉ。まぁ良い今日は誰も来る予定は無いから、ほれ座るが良い」


言われるがままカイトらはカウンター席に奥からエリシャ、カイト、ティオの順に座った。

室内は薄暗くなっていて、壁には書物や剣、槍、弓に、盾といった多くの武器もかけられている。

ヴィレンの館に入る前にエリシャが『皆んなが集まるんだ』と言っていた通り部屋には多くの椅子や机が並べられていた。更には部屋の隅に椅子や机が積まれていたりもする。


カウンターの奥に行ったヴィレンは「どうだ何を飲む」と問いかけてきた。異世界にどんな飲み物かあるのかは未だ把握出来ていない。正直今聞かれても少し困ってしまう。とは言ってもこのまま何も言わないのは駄目であろう。そんなこんなでカイトは「何がありますか」と無難な回答をしたのだった。


「そうじゃな、酒とかどうだ」


「酒は控えます」冗談じゃないカイトは未成年飲酒をするつもりなど更々ないのである。


「そうか、ならコーヒーでも出してやろうかのぉ。エリシャとティオはいつものだな」


「其れで、コーヒーをお願いします。後砂糖とミルクも一緒に」そう答えて直ぐにティオが「カイト兄と同じのを飲もうかな」と言った。

ティオは胸こそ発達してはいるが未だ十四歳にも満たないらしい。最初知った時にカイトはとても驚いたものの、こういうのは気にしてはならないのだと自分に言い聞かせていた事をカイト以外が知る由はない。


ティオは未だ十四歳にも満たないのにコーヒーに手を出そうとしている、この事実にカイトは驚いていた。理由は簡単だ、カイトは高校生になっても尚コーヒーが飲めていなかった。何度も何度も挑戦し、砂糖にミルクを多量に投入してやっと最近飲める様になっていたくらいであったからだ。

故に未だ十四歳にも満たないにも関わらずコーヒーを飲もうとするティオに尊敬の念を向けていたのだったのだが……


「ティオお主はエリシャと同じく紅茶を飲んでおきなさい」


「ティオ、ヴィレ爺の言う通り紅茶にしておこうよ」


やはり二人はコーヒーを飲もうとするティオを止める様だ。紅茶を飲むのは無難であるしその方が良い筈だ。

そうやってティオはエリシャとヴィレンから止められ、ムッとした表情で不満をあらわにしていた。

その様子に辿々しくしていたのは、意外にもエリシャではなくヴィレンだった。いや意外ではないのかもしれない。ヴィレンはヴィレ爺と慕われているし、もしかしたら二人の祖父なのかもしれない。祖父ならば孫に嫌われる……こんな事は絶対にあってはならない事案なのだろう。


ヴィレンはどうにか機嫌を直して貰おうと、「ならばカイトに少し分けてもらえばよかろう」と提案したのだった。

初めは少し驚いたカイトだったが妹の結衣で慣れていた為、同じ容量で良いかと思い安易に許可をしたのだった。

カイトから許可を得た時にティオの頬が少し赤くなっていたのは誰も気付かなかった。


何やかんやありやっとのこと、カイトらは落ち着き議題が挙げられていた。

内容は主にカイトのこれからの方針だった。


「カイト、お主はこれからどうするつもりかのぉ。一応この街に住む以上何が夢を抱いてもらいたいのだよ」


『いきなりこれからどうするつもりか、夢を抱け』と言われても正直に言って困る。未だ異世界に来てから一日も経っていないのだ。故に夢などそうそう思いつかなかったのだ。


「参考がてらにエリシャの夢を聞いていいか」


「カイト……自分の夢は自分で見つけるものだよ」


「其処をなんとか頼む」


「仕方ないね、僕の夢は騎士だよ」


どうやら『帝都騎士学校』の入学試験が二ヶ月後にあるらしい。騎士学校は身分に関係なく試験を受けられるらしく、試験に落ちてもまた翌年の試験を受験出来るらしい。金銭面に関することが気になり聞いてみたところ奨学金制度があり、騎士になった後に学費を返す方法らしい。また成績優秀ならば学費免除の対象にもなるというのだ。


カイトはこの事を聞き、この異世界で生きてゆくための一本の光明を見つけた気がした。


「エリシャ、俺も騎士学校へ入るよ。俺が生きていくにはこれしかない。其れと入る迄は日雇いの仕事でもやって繋ぐさ」


エリシャは瞬く間に笑顔となり、自分が何故騎士になりたいのかを事細かに教えてくれた。

エリシャが騎士になりたい理由はティオと不自由なく暮らしていくにはそれしか方法がないからだという。ただその理由は建前なのだが、カイトはそのことに気付く事はなかった。


「騎士になるのか。其れならばカイトよ、明日自律組合(ギルド)を訪れてみると良い。あそこなら日雇いの仕事も紹介してくれる筈だ。そうとなったら儂が紹介状を認めておこう」 


自律組合(ギルド)という単語が出てきた。ギルドといえば異世界を舞台としたラノベに出てくる組織の定番中の定番だ。そんな自律組合に紹介状を書けるヴィレンとは一体何者なのか益々気になるところだ。


明日自律組合(ギルド)へ訪れることが確定したカイトにエリシャが、


「なら僕も一緒に自律組合(ギルド)へ行くよ、明日帝都でやらなければならない仕事もあるし、カイト行くのは午前中でも良いかな」


「あぁ勿論だ。場所も分からなかったし助かる」


こうしてカイトとエリシャの明日の行動が確定した。


もう少しティオに喋らせたかっだけど無理だった。

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