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一章 2『人々の優しさ』

一章2

カイトは走り去った少女を追いかけていた。

どれ程の時間追いかけているのだろう。

既に息は途切れ途切れになり、脚も次第に動かなくなり安定性が欠けてきている。


カイトは走る事に関しては、クラスの中でも遅いグループに属していて体力も平均以下である。

そんなカイトが未だに追いかけていられるのは、スマホを取り戻したいのただその一言に尽きるであろう。


ただその意志は頓挫してしまった。

この世界に来た当初よりも太陽は昇り、次第に暑くなっていた。

カイトは水分を摂ることなく走り続けてきた。

次第に意識は虚となり、頭痛も酷い……

あぁ此れは確実に熱中症だろう。

こうして遂にカイトは倒れてしまった。








〜〜〜〜〜〜








薄らと意識が回復してきていたカイトは誰なのだろう、言葉をかけられている事が分かった。


「おい兄ちゃん、おい兄ちゃん、大丈夫か⁉︎」


「うっうぅぅ……」とカイトは本能のまま反応をし、声を掛けている人が髭面の30代半ばくらいの男性である事を確認した。


男性は未だ意識が朦朧としているカイトに、水の入ったコップと籠に入った、蜜柑と良く似た食べ物を差し出している。


「大丈夫か⁉︎ いきなり店先で倒れて!」


少しばかり沈黙時が流れ、カイトはいきなり何かを思い出したかの様にーー


「ーースマホ!!絶対に取り戻さねーと!!」


と大声をだした。


「おい兄ちゃん!そんなに大声出して、びっくりするだろう。てかスマホってなんだい」


と困惑した顔で男性がカイトの方を見つめている。


「まぁそんな事は置いておいてこれでも食いな。店先で倒れられた挙句死なれちゃ、今後商売が出来なくなるからよ」


そう言って差し出していた水と蜜柑の様な物を手渡した。

此方の世界に来てから何も食べていなかったカイトは、一心不乱に蜜柑を頬張り水を一気に飲み干した。


「あっ蜜柑と水ありがとうございます」


「蜜柑?あぁ此れのことか、此れはオレンジって言うんだ」


カイトの知るオレンジといえば、蜜柑よりも皮が厚く剥きにくい筈だが、此方の世界に存在するオレンジは蜜柑の様に皮は薄く、とても剥きやすい物であった。


「此れをオレンジというのか……」ボソッとカイトが発すると、


「なんだい兄ちゃん、オレンジも知らんのか」


「いやいや俺の知っていたオレンジとは少し違ったものだから。ともかくありがとうございました。お代をお支払いしたいけどこんな硬貨は使えないよな……」


といいつつ財布から小銭を取り出した。


「なんだこの硬貨。初めて見るものだな。うちの国では、大きく分けて金貨と銀貨其れに銅貨の三種類だけだぜ」


「そうなのか……そうすると俺は必然的に無一文となった訳か」


「まぁ代金は気にすんなよ。で何があったんだい、こんな所で倒れるなんてよっぽどの事があったんだろ」


カイトはスマホをフードを被った少女に奪われてしまい、追っている最中に、意識が朦朧として倒れてしまった事を正直に明かした。


「ーー悪いなぁ兄ちゃん。これじゃ力になれそうにないわ。他に気づいた事はないのか」


「う〜ん、そういえばフードから青色の髪の毛が見えた様な気がする」


「青髪の少女か……確か貧民街に青髪の奴が居ると聞いたことがあるな」


大きなヒントを貰いカイトは男性に感謝の意を伝えた。

そして直ぐに青髪の少女からスマホを取り戻すべく、街外れに存在するという貧民街に向かった。


いち早く貧民街へ着きたいそんな思いを表すかの様に、カイトは人目も憚らず全力で走っていた。

建物の角を曲がり暫く走っていると、カイトは一人の少女にぶつかりそうになった。


勿論そのままぶつかった訳ではない。ぶつかる寸前で体勢を崩して避けたのであった。避けた流れで最大にこけてしまったのは誤算なものの、避けた筈なのだ。ただ『きゃっ』っと少女の悲鳴が聞こえたのは気のせいそうでなければならない。でなければその少女の背後に祖父なのだろうか、一人のご老人が居たのだ。あれは怖い人間だ、絶対に何かしてくるとカイトは感じた。案の定「おい貴様何をしたか……」と言われた。やはり怒っている。このままではマズい、そう感じカイトはその場から逃げ出そうとした。しかし「ちょっと待ちなさい」の言葉と共に腕を掴まれてしまった。逃してはくれない様だ。


光加減によっては銀髪にも見える紫色の髪が特徴的な少女はこちらの腕を掴み見て言葉をかけてきた。

この時カイトは走るのに邪魔なロングカーディガンを脱ぎ、腕もまくっていた。それが仇となり腕は擦り傷で溢れていた。


「やっぱり擦り傷だらけじゃない。回復魔法もかけずに走り出そうとするなんて」


回復魔法……どうやらこの異世界には魔法がある様だ。しかしいきなり魔法と言われてもどう反応すべきかなどカイトには使い方も分からず、ただただ呆然としていた。

その呆然としたカイトを見て少女は驚いていた。


「えっまさか貴方回復魔法を使えないの……魔法適性のない人間でさえ使える基本魔法じゃない」


どうやら魔法を使えないのはこの異世界ではマズい様だ。しかも基本魔法らしい、しかも見た目自分よりも歳下に指摘されるのは精神的にかなり堪える。


「えっと回復魔法って……」


「仕方ないわね」そう一言言うと少女は呆れた様子で、カイトの傷を回復魔法で癒してくれた。

すると見る見るうちに傷が消えてゆく。そして気づいたときには完全に傷が消えている。カイトは傷を癒してくれた少女に見入ってしまっていたものの、スマホを取り戻すその目的の為に「君傷を癒してくれてありがとうな。いつかこの借りは返すぜ」と感謝の言葉を述べカイトはその場から走り去った。


「おい貴様待ちたまえ」とら少女の側にいたご老人の言葉はカイトに届くことはなかった。


「不思議な者でしたな、オリヴィア様へ無礼な態度を取ったことを後悔させておきましょう」


「ハイルヴィヒ気にすることはないわ。放っておきなさい。それと確かに気になるわね見かけないあの服装……」


「仰せのままにお嬢様。それに幾らお嬢様のローブに認識阻害の効果があるとはいえ、目の前にしては効果はない筈でしょう」


「そうね、でもこのローブそんな欠陥品なのかしら。このローブの効果が的面だったそうしておきましょ」


二人はそうやり取りをしその場を去ったのだった。

少女が去り際に「またいつか会えるといいわね……」と誰にも気付かれない声で発した。








〜〜〜〜〜〜








貧民街に到着した時には既に日は傾きつつあり、遠い空は鮮やかな橙色に色付いていた。


カイトは貧民街に目を向けた。

其れは貧民街と言われなくとも分かる程に、見るからに廃材で作られた家々が建ち並び、所々に貧民街の中での成功者なのだろうか、周りの廃材で建てられた家とは違い立派な建物も存在した。


思っていたよりも貧民街の人々は優しい。

よそ者が何をしに来たんだとかいった視線が向けられ、妨害もあると想像してしていただけに拍子抜けも甚だしい。

とはいえ日も次第に落ち周りが暗くなっている為、妨害が無いのは嬉しい限りだ。


カイトは青髪の少女を探し貧民街の奥へ、更に突き進んでいった。


「おい兄ちゃん、見ない顔だな。貧民街になんの様だ」


冷たい声が聞こえた。

二十代後半だろうか細い男性で、右の頬と左目には傷痕がある。

やはり貧民街の暮らしはとても厳しい様だ……


「てめぇ……用がないならさっさと出て行け」


「いや……その青髪の……探してて」


「青髪……あぁ奴なら、この道を進んだ先にある小さな家にいる筈だ」


「あっありがとうございます」


男性に恐怖を覚えつつ教えて貰った家へ向かった。

教えて貰った通りに進むと、とても家とは言えそうにないものがあった。

此れが家なのかと困惑しつつ家へ近づくと、後ろから誰なのだろう、


「おい人の家の前で何してるのよ」


そう声が聞こえてから直ぐ、カイトは襲われてしまった。


次回更新は近々に……


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