一章 1『異世界転移』
此れが実際の本編の一話っぽいですね。
って事で今回を一章1にしました。
「何故だ……何故こうなったんだ」
雲一つ無い青空の下、海斗は思い詰めていた。
勿論状況が状況故当然な思考で有ると言える。
目の前には『馬車』の様な物を引く小さな恐竜や巨大な鳥がいる。
大勢の人々が街を行き交い賑わっている。
その人々の中には子供から老人迄、年齢を問わず猫耳を初めとして犬耳、うさ耳等の獣耳を付けている者が居る。
多くの人は単色で柄も殆どない服装なのだが、一部は装いが神父の祭服や騎士なのだろうか、青と白を基調とした騎士服を着ている。
街並みはまるで中世ヨーロッパの様で、遠目だが城の様な大きな建物が見る事が出来る。
此れだけを聞くと、何処かのテーマパークに訪れたのではないかと思うだろうが、決してその様な事は無い。
海斗に一体何が起こったかと聞かれれば、其れは海斗が買い出しに行く為、家を出ようとした頃迄遡る。
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家に帰って来てから既に一時間が経っていた。
海斗は買い出しに行くと決めたものの流石に疲れを癒したいと、ほんの三十分程休憩しようと思っていたのだが、時間も忘れ一時間も休憩してしまっていたのだ。
一時間もの間何をしていたかと聞かれればラノベを読んでいたと答える事になる。
今回の買い出しも休憩をしている間に読んでいたラノベの新刊が一番の目的だ。
新刊の購入以外にも、コンビニに少しばかり用があり、インターネット通販で購入した物を受け取りに行く事である。
とはいえ海斗の不徳の致すところで、時間が無くなってしまったものの、買い出しへ行くには二時間でも充分と言える時間であった。
「また休憩し過ぎてしまった…… 夕食もゆっくりと食べたいし、急がないと少しまずいな……」
海斗はボソボソと呟きながら外出着に着替え、買い物へ行く際には毎回持って行く鞄を手に取り階段を駆け下りた。
海斗は先程読んでいたラノベの影響からか、
「ラノベみたいに俺も異世界行って異世界ライフ満喫してー 勇者になって世界を救うとか……」
と一度は誰しもが妄想し望むであろう、現実には起こり得ない様な事を呟きつつ、玄関の扉を開け一歩を踏み出した。
その瞬間海斗は世界が一瞬だが歪んだ様に思えた。
海斗が違和感を感じて束の間、海斗は突如視界が真っ暗となり、其れと同時に女の声が聞こえ一瞬だが意識が飛んでしまった。
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海斗が意識を取り戻したのは間も無くであった。
しかし意識がはっきりとしたものの、何故かいつも玄関を開けて見れる景色とは明らかに違った景色が広がっていた。
石や木材を建材とした綺麗な街並み、活気ある人々、そして街中を駆ける小さな恐竜等が引く馬車。
カイトは日本の光景ではないと直ぐに悟り、ラノベを読みながら寝落ちしてしまい、夢を見ているのであろうと高を括った。
「遅れると彩奈に怒られるし、さっさと夢から覚めて買い出しに行かねーと」
と言いつつ目覚める手段として強く頬を抓った。
しかし海斗は「痛った!!」と叫んだ。
無論頬を抓れば痛いというのは普通の事であるのだが、頬を抓れば夢から覚めると思っていた海斗は直ぐには事態を把握出来ずにいた。
そして少し時間が経ってから「此れ夢じゃなくて現実なのか……」と事態を把握した。
カイトはトラファルガー広場に似た広場の噴水の縁に腰を掛け、スマホのメモを活用して状況の整理を行った。
・舞台は中世ヨーロッパ風の異世界
・亜人族の存在有り
・魔法の類の存在は不明
・小さな恐竜と馬車?有り
・騎士や神父存在
・流通貨幣不明
・言葉が通じるか不明
・人の顔の載った掲示板を視認
・持ち物
→スマホ モバイルバッテリー 財布(野口さん三枚と三百四円 ポイントカード等) ペットボトル(緑茶) 絆創膏
・服装
黒色のズボン 灰色のTシャツ 黒のロングカーディガン
纏め終わり自身の置かれた立場が鮮明となりカイトは纏めた内容からーー
「圧倒的に初期アイテムが足りないし、勇者として召喚された訳ではないな…… 先ずは貨幣と言葉を調べないと」
一先ずやらなければならない事を確認してカイトは、この世界に転移してから何回目かも分からないため息を吐いた。
カイトは日常から今置かれている立場の様な妄想をしている為、転移したばかりの時には楽観視していた。
妄想通りに事が進めば、目の前には王様が居て『世界を救ってくれ』と懇願され、美少女ヒロインと共に敵と戦うというのが一通りのストーリーだ。
しかし実際には、王様も居なければ美少女ヒロインも周りに居ない。
「現状かなり詰んでる…… 圧倒的に初期アイテムが足りず、良くある特別な力も分からない」
カイトはため息を吐き頭を抱えた。
現代の知識を駆使したところで限界がある。
この世界に対する知識はゼロ、恐らく日本円は使用出来ない為持ち金ゼロ、戦闘になったら勝ち目はゼロ、三つのゼロが積み重なったカイトは現実逃避すら真面に出来ずに項垂れるしかなかった。
「本当に勘弁して欲しい。俺は一体どうしろって言うんだ」
弱音、泣き言がこぼれ、この世界で生きていく自信がない。帰りたい、帰りたいとひたすら願っている。
妄想は妄想のままが最も幸せな事であると、異世界に来て理解した。
異世界では勇者になったりし、無双するのが楽しいんであって、実際に異世界に来たら野垂れ死ぬ以外に何があるのか。
この世界に絶望感を覚えていたカイトは、唖然とした。
何故なら、さっき迄手にあったスマホが無くなっていたからである。
周りを見渡すと一人のフードを被った少女が走り去って行くのが見えた。
次回の更新は不定
前回はふざけ過ぎたので真面目に書くよう努力します……