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一章 0『最後の日常』

いつもと変わらぬ朝、時計のアラームで目覚めた仁科海斗はまた憂鬱な一日が始まると落胆した。覚めたと言っても起きる訳ではなく、憂鬱な一日から目を逸らすかの様に、いつも通り二度寝をした。

カーテンから漏れ出る太陽の暖かな光で、海斗はこれ以上ない心地よい至福の時間を感じていた。


「うぎゃっ」


衝撃で強制的に至福の時間を奪われた。

未だ眠気のある中海斗が目を開くとベッドの上には黒髪のポニーテールの制服姿の可愛い少女が立っていた。

誰なのか分かるには少し時間が掛かったもののようやく分かり海斗は話しかけた。


「あぁおはよう。最愛なる妹結衣よ」


「あぁおはようじゃあねーよ。早く起きろって。」


そんな攻撃的な言葉と共に、海斗はベッドから突き落とされた。

この様な暴力的なところさえなければ、人形の様に可愛いお淑やかな少女なのだが。

そういった一面を少し残念に思いながら、


「態々突き押す事はないだろ……」


「--突き押さなければいつも起きんでしょ。」


「まぁそうだけどさぁ……もう少し優しく起こす方法があるんじゃ……」


「むぅーーつべこべ言わない!」


起こされ不機嫌になったものの結衣の「むぅ」が聞けて上機嫌になった海斗は、黒色の制服に着替えた。

朝の支度を済ませて結衣と共に階段を降りていると、ダイニングの方より焼けたトーストのあま〜い香りが漂ってきた。

朝食が準備されているのに気づき急ぎ足でダイニニグに向かった。

ダイニングでは父が先に朝食を摂っていた。

海斗と結衣はほぼ同時に、


「おはよう」


「二人ともおはよう」


いつも通り挨拶を済ませると二人は「頂きまーす!」と言い朝食を食べ始めた。

朝食はトーストにコンソメスープとサラダだ。

家族は机の上ににあるマヨネーズをかけているが、海斗はマヨネーズをかけずにサラダを食べる。因みに海斗はマヨネーズとドレッシングが苦手だ。


「あっま〜たそのままサラダ食べてる!それっ!」


海斗は一瞬の隙を付かれて結衣にマヨネーズをかけられたと同時に、「あ"あ"あ"あ"あ"あ"」とどの様に発音したのか分からない様な声を発した。


「なんで…そんなことを……」


涙目になりながら海斗はキレ気味で、


「なんでマヨネーズかけるかな!俺は生で良いの!」


「まぁまぁ、怒らなーい怒らなーい。怒ったって仕方なーい」


「……」


「ねぇお兄ちゃん。時間大丈夫なの?怒らせちゃうんじゃないの?」


結衣に言われて時計を見るとそろそろ家を出る時間になっていた。

急いで朝食を食べて家を出ようとすると結衣がドアを少し開け此方を見ながら、「ほらマヨネーズ食べれたじゃん」とニヤけながら言った。

当然不機嫌になり其れに対して、怒ってやろうかとも思ったがそれよりも時間がないので、怒ることは諦めて家を出る事を優先した。

玄関を開けると美しい茶髪の長髪のお下げの少女がいた。

海斗が出てきたのと同時に、


「おはよう海斗!」


彼女は、海斗の幼馴染で家が隣という事もあり、いつも海斗と一緒に高校へ通っている。


「ん〜おはよう彩奈さん」


「ねぇー!いつになったらさん付けやめてくれるの?」


「あーその、うん、そうじゃないんだ。本当にごめん。彩奈さん」


「そっか~。うん、海斗くん。私の事は〝彩奈〟って呼んで欲しいって、何度言わせるつもりかな?」


 僅かに頬を膨らませて彩奈は、不満をあらわにする。正直なところ圧倒的に可愛い、しかし海斗には幾ら幼馴染といえ、呼び捨てにするのは抵抗感が高いのである。


「いや、彩奈さん、それはちょっと無理で……」


「いいから彩奈って呼んで?」


「いや、そのだからあの……」


「あ・や・な ほら言いなよ?」


海斗は薄らっと頬を赤く染めながら


「その……えっえっと、あやな……」


「うん。良く出来ました!」


と彩奈は満足気に言うと、海斗よりも先に進んで「じゃあ行こっか」と海斗の方へ振り返りながら言った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


駅に着くと此方をチラチラと見てくる人がいる。

確実に彩奈が原因だ。

視線が物凄く痛いにも関わらず、彩奈は分かっているのか、いないのか何故か身体を更に近づけてくる。

それを見た人々は、『朝から見せつけやがって』『唯のアピールかよ』『なんであんな奴に……』と嫉妬等の感情が込められた視線を向けてくる。

海斗は視線に耐えかねて


「彩奈さん身体が近うございます」


「呼び捨てと敬語禁止……」


『こんなとき迄呼び捨てに拘るとは』と内心海斗は思いつつも


「彩奈身体が近い」


「むっ仕方ないか」


そう呟きながら彩奈は"少し"だけ離れた。

これで海斗は痛い視線が弱まると思っていたものの、更に強くなっていた事にかなり困惑した。

仲睦まじい光景を見せられて感情に逆撫でされただけなのだが、その事を理解できなかった海斗は彩奈に話しかけ、人々の感情を更に逆撫でしてしまった。


少し経って快速電車が到着し乗り込むと、いつも通り二人が乗る車輌だけ混雑している。

他の車輌は乗車率百%にも満たないのに……

ただ謎なのは男性よりは少ないものの女性の割合もかなり多いのである。

海斗は彩奈の魅力が男女問わない事には触れない事にした。

『頼むから一人にして欲しい』そんな彼の心の悲痛が届く事はなかった。


〜〜〜〜〜〜


様々な問題にぶつかったものの、どうにか海斗は四時間目を乗り切った。

この時には海斗の正気はかなり減っていた。

そんな海斗に追い討ちを掛けるような試練が訪れた。何を隠そう昼食の時間だ。

海斗は一人でお弁当を広げた。すると案の定彩奈はやってきた。


「海斗また一人で食べようとしてる。他の人と食べる方が楽しいでしょ」


そう言いながら当たり前のように、彩奈は海斗の机にお弁当を広げた。


「彩奈さん私にお構いな……」


「呼び捨てと敬語禁止。何度言わせるの」


朝に比べてなんだか口調がキツくなった気がする。海斗は恐れつつ彩奈の顔をチラッと見てみると、なんだか彩奈の額に青筋が見える。本能的に危険を察知をしたものの海斗は、「彩奈は俺に構わず、友人と一緒に食べなって」と言ってしまった。

彩奈は少しも考える事もすること無く「ん〜いやかな」と即答した。更に額の青筋が出ている気がする、しかも笑顔が怖さを増幅させる。


しかし海斗が怯えてる事にも気づくことなく周りからは『いつも通りの夫婦芸か』『なんで彩奈様と陰キャの仁科が……』『幼馴染だからって調子に乗りやがって』嫉妬の言葉に海斗はなす術なく遠い目を向けていた。

一体海斗は何を見つめているのだろう。

海斗が気づいた頃には周りは彩奈の取り巻き女子に囲まれてしまっていた。

海斗の正気は益々削られるのだった。








〜〜〜〜〜〜








周りの男子のみならず女子からも嫉妬の視線を受けながらも、海斗はどうにか帰宅の途についた。

海斗はやっと一人になれると思いきや隣には当然の様に彩奈が居る。


「彩奈は部活を……剣道部とかどうですか」


海斗は片言な日本語で聞いた。

海斗君は既に放心状態なのだ。


「ん? 海斗もやるなら部活やるよ」


「えっと、絶対私が帰宅部をやめるつもりがないのを知ってていってるよね」 


普段海斗の一人称は『俺』なのに『私』なんて使ってるではないか、海斗君の正気度が尽きかけている。


彩奈は今日一の笑顔で「当たり前でしょ」と言っている。

マズい海斗君が千鳥足になってしまった。


〜〜〜〜〜〜


やっての事で家に着いた。

海斗はやっと解放されたと思ったものの、彩奈から言葉が掛けられた。


「じゃあ道場に行く時に迎えに来るからね!」


「あっはい」


海斗は力のない声で返事をした。

海斗君は残念ながら逃げられないのである。

とはいえ三時間の自由時間が出来た海斗は『取り敢えず何か買い出しに行くかぁ』と考えて自室に向かった。

未だ本編に入ってない感じがヤバい。

此処までそれなりにしっかり日常書いたのに、今後家族に彩奈が登場する予定がないので、本編よりも番外編って方がしっくりくるかもしれないって思ってきた……

後マヨラーの皆様ごめんなさい。


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