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一章13『灰色の世界』

ティオの態度に少なからずショックを受けつつも、カイトは足取り重くオリヴィアの元へ戻っていた。


距離としては全くもって遠い訳ではない。一分もかからない距離である。


しかしオリヴィアの元へ向かう時間は、異世界に来て以来最も長く感じられた。


出会ってからたった一日過ぎただけとはいえ、それなりに良い関係性を築いていけると思った矢先に、無視されるのは流石にキツいものがある。


「何をしているの?早く入りなさい」


ボーとしていると澄んだ声で声をかけられた。

どうやら扉の前でうろうろしていたらしい……


言われた通り扉を開けるとそこには女の子座りをする美しい幼……美少女がいた。オリヴィアである。


彼女は家に不釣り合いな程に輝かしく見える。

服装は見るからに高く、街中を歩けば道ゆく男共は二度見いや三度見するのではないかと言う程にである。


彼女の美しさにカイトが見惚れていると、耳を赤くしたオリヴィアが「早くわ、渡しなさい」と言った。


何故赤くなるのかは分からないが、ここは渡しておくのが無難と思い、カイトは紅茶を渡した。


気品よく紅茶を飲むと真面目な顔にスッと変わったオリヴィアから話しかけられた。


「早速だけど魔法の練習をするわよ。あれだけの素質があるんだから、私が教えれば帝国随一の魔法使いになれる筈よ」


「……」


確かに魔法を教えてくれるのはとても嬉しいのだが、正直今は何故か怒ってしまったティオと話をしたい気分だ。


「何故返事をしないの?まぁ……いいわ。貴方には拒否権なんてないんだから」


「……ゑ?」


「『え?』じゃない。早く練習よ。れ・ん・しゅ・う」


という訳で魔法を練習することとなりそうです。


「先ず魔石水晶が何色に光っていたのかを教えてくれる?」


正直割れてしまったことの印象が強い……ただ空覚えながらも何色に光っていたのかを思い出した。


「えっと確か、黒と白だったかな?」


カイトがそう答えるとオリヴィアは小さなお口を目一杯に広げて驚いていた。


(嘘……光と闇の両方だなんて。光と闇を操るもの他の属性も操る……)


「カイト……貴方全属性に適性があるかもしれないわ」


「……」


正直全属性に適性があると言われてもよく分からないものだ。なんせ異世界に来てから一日しか経っていないのだから、この世界は魔法がどの様な立ち位置なのかすら分からないのだ。


「なんで黙ったままなのよ!私ですら基本属性しか操れないのよ!」


「……其れは凄いことなのか?」


一応聞いて見るがオリヴィアの反応を見る限り凄いことなのは分かっている……まぁ確認という奴だ。こういうのは必須であろう。


「凄いのも分からないの?良いわ絶対に帝国いや……世界一の魔法使いにしてあげる」


「う…うん」


なんだか嫌な予感しかしないが、つい反射的に返事をしてしまった。本当に嫌な予感しかしない。昔から嫌な予感はよく当たっていた記憶がある。

あぁ……足が震えてしまっているではないか。


「じゃあ。魔力衝突をするわよ」


「……あぁ」


怯えているカイトを知ってか知らずかオリヴィアが何か提案をしてきた。衝突ってなんだ衝突って物騒な予感だ。


「簡単な説明をするわ。互いに手を合わせて魔力を放出するの。魔石水晶を使う余裕のない冒険者達が良くする手法よ。やり過ぎると死ぬ危険性があるけど、その前に止めるから安心してね」


「……う、うん」


なんだなんだ『死ぬ可能性だって?』なんて物騒な……よく分からんがどうせ拒否権はないのだろう。


カイトはなし崩し的にオリヴィアと手を合わせることになった。


手は小さく柔らかくそして温かい……ふと顔を見ればなんだか顔が赤いがどうしたのだろうか?


「じゃ行くわよ。貴方も放出するのよ」


「あっえっ……」


魔力の出し方なんて教えて貰っていないのだがしかしオリヴィアはもう初めてしまっている様だ。

(もうどうにでもなれ!!)そんな気持ちでカイトは『魔力放出』とかを念じていた。


「嘘……な…ん……で………魔力が…………どんど…ん………溢れ……」


そう言いつつオリヴィアは意識を失った。カイトは咄嗟にオリヴィアを抱き抱える形となった。

彼女からはもの凄い良い匂いがした。


その時だった。カイトが強い頭痛に見舞われたのは……








〜〜〜〜〜〜








其れは色も何もない灰色の世界だった。

音も何も聞こえない、まるで五感を全て奪われた様な感覚である。


色も、音も、匂いも、味も、触覚も、何も感じない。


手の中にはオリヴィアに似た美少女がいる。しかし抱いている感触は一切感じられなかった。


なんなのだろう。漠然と疑問を浮かべていると、扉が開いたのが視界の端に見えた。


扉の奥にはその容姿には不釣り合いの双丘をもった美少女がいた。


まるでティオの様に……ただ灰色の世界の中ティオという確信は持てなかった。


口が何やら動いている。何か喋っているのだろうか?


只々見つめていた。


彼女の顔は鬼の形相と一気に変化した。


実際の時間は短く、ただそれまでの感じられる時間はこの上なく長かった。


ティオによく似た少女は自分の懐にいる。


果物ナイフは胸に突き刺さっていた。


そして灰色の世界の中、俺は意識を失った。

キリが良いので此処で止めました。

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