一章10『虚勢』
何処からともなく悲鳴じみた声が聞こえた。体内魔力が異常とはいえど魔法も楽に使えない以上、出来ることは殆どない筈なのだがカイトの身体は勝手に動いていた。
「おい!そんな少女を三人で囲って恥ずかしくはないのか?」
柄の悪い三人は此方を睨んでくる。相当お怒りの様だ。因みに少女というと、と言われたことにお怒りなのか、「だっ誰が少女なのよ!」とカイトに何度も噛み付いていたが、カイトによって其れは華麗にスルーされていた。
「おい兄ちゃん悪い事は言わねぇーからさぁ。さっさと帰ってくれねぇーかな」
当たり前の様に威圧的に接してくる。カイトは、(ヤバいヤバいなんで助けようとしちゃったんだろ)と多量の汗をかき、膝も震えていた。立ち去らないカイトに腹が立ったのか、柄の悪い三人は一斉に襲い掛かろうとした。
そんな彼らを見て、カイトは保身に走ったのか土下座をして、「ごめんなさい、ごめんなさい」と一心不乱に謝罪をしていた。
「ーーいつまでそんなとこで蹲ってるのよ」
そんな少女の声が聞こえてから少し経ってからカイトが頭を上げると、襲おうとしていた者どもがカイトの後ろでうつ伏せで倒れていた。そして声を掛けてきた少女の周りには、袋から飛び出したオレンジやリンゴが転がっていたのだった。此れは当然のことであろう。カイトは一体何があってあの三人が倒れているのか分からなかった。
カイトの予想では今此処にはボコボコにされた自分自身がいる筈だった。しかし実際は腰に両手を当てた仁王立ちの少女が佇んでいたのだった。
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其れはまさに自分の王子様が助けにやってきたかの様に感じられた。オリヴィアは帝国随一の魔法士だ。正直にいえば、こんな三人ぐらい軽く捻れる筈だった。しかし何故か思い通りに身体が動かなかったのだ。実力に対して心がついていなかったのである。
そんな時に「おい!そんな少女を三人で囲って恥ずかしくはないのか?」と自分を助ける声が聞こえたのだ。オリヴィアの心は少しばかり余裕を取り戻した。そしてさっきの言葉に違和感を覚えた。何たってオリヴィアの事を少女と言ったのだ。何と無礼な奴なのだろうと激しく感じた。見た目が少女なのは一番のコンプレックスだった。其れを躊躇なく言われるのは本当に頭に来るというものだ。
感情的になりつつ言った「だっ誰が少女なのよ!」と何度も何度も言っているのに無視された。誰も気づく事はなかったがオリヴィアの目には少しばかりの水分が溜まっていた。
あの異常な体内魔力を持つ少年が三人を華麗に倒してくれる……そんな幻想は直ぐに消え去った。カイトが土下座をしたのだ。襲われそうになって直ぐだ。この男にプライドはあるのかと聞きたくなるほどに華麗な土下座だった。
(期待した私がバカだったわね……)
カイトを襲うことに夢中で背中がガラ空きな三人をオリヴィアは、氷塊を作り三人を一瞬にして気絶させたのだった。
三人は頭に氷塊がぶつかった影響でカイトの後方へ吹き飛んで寝転がんでいる。にも関わらず未だに土下座をして「ごめんなさい。ごめんなさい」と言っているカイトを見ているとイライラしてくるというものだ。
オリヴィアは仁王立ちになり「ーーいつまでそんなとこで蹲ってるのよ」冷たい声で言った。
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カイトは時間が掛かったものの自分が助けようとした少女によって不甲斐にも助けられた事を理解した。
「助けようとした私に助けられるとか、男として不甲斐ないとは感じないのですか!?」
「うぅぅ……返す言葉もない……」
最後の方は薄らと聞こえる程度にまで声が小さくなっている。
(こんなに強いなら助けようとした意味なかったなぁ。にしてもこの少女は何者なんだろう)
「ーー貴方今失礼な事を考えていなくって?」
なんだろう物凄くこの少女は勘が冴える……カイトは身震いをした。
「そういえばですが。貴方先程水晶魔石を割っておられましたよね。場所を変えてお話を聞きたいのですが」
なんだろう彼女は物凄く笑顔なのに何処となく恐怖心が煽られる。心の底からこの申し出を断りたい本当に断りたい……
「あらそうでした。助けようとしてくださったお礼に此方を差し上げますわ」
オリヴィアは笑顔でそう言ってオレンジとリンゴの入った袋をカイトの方へ突き出した。
(神様……この俺には拒否権は無い様です)
カイトは天を仰いでいた。
一章をどう完結させるか未定なので次回更新は遅くなるやもしれません。




