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一章9 『騒がしい人々』

今回は短いです。

割れた水晶の魔石を見て人々は様々な反応を見せていた。それはカイトも例外ではなかった。まさか自分にこれ程の力があるとは思っていなかったからである。


もっとも実際にはカイトの体内魔力(オド)量は平均的な容量であるのだが。

カイトの体内魔力(オド)量が平均的にも関わらず、割ることが出来たのは空気中を満たす魔素(マナ)体内魔力(オド)に変換する速度が超人的であるからである。

ただし、カイトがそのことに気づくのはまだまだ先のことになる。


(やばい、やばい、割ってしまった……そんなつもりは無かったのに。もし弁償しろなんて言われたら直ぐにこの国から出て行こう。そうしよう)


カイトは目を点にした状態のエリシャに苦笑いをしつつ話しかけた。


「此れって弁償しなきゃだめなんかな。知っての通り金ないんだけど」


「どっどうだろうね……」


カイトが水晶を割ったことで、周りは本当に五月蝿い。そんなに騒ぎたいなら外に行って欲しいくらいだ。

カイト、エリシャ、ミリーの三人は時間が止まったかの様に誰一人話すことなく唯々呆然としているだけであった。その堅苦しい空気感を打ち破ったのはその空気感に耐えかねたカイトの言葉であった。


「すいません。此れは俺が弁償しないといけないのかな……」


「ひぁい!? えっとその……弁償はしなくてもだっ大丈夫でちゅ、あっ大丈夫です」


(なんなのこの人……なんで水晶を破壊できるのよ)


どうやら弁償はしなくてもいいらしいくカイトがホッとして胸を撫で下ろしていると、奥の方より初老の男がやってきた。見た目からしてここの責任者なのだろうか。此方にやってくるとその男は落ち着いた口調で、「……先程の醜態誠に申し訳ございません。登録は済んでおりますので、如何でしょう。何か依頼を受けられますか?」とカイトに提案した。


依頼を受けるか悩むカイトを横目にエリシャがその申し出を「すいません。依頼は結構ですよ」と断っていた。

どうやら本当に今日は登録だけしにきたらしい。

やる事が終わったなら今すぐにでも此処から抜け出したい。カイトの登録が終わったと見るや人々がカイトに「何処の出身なんだ」「俺らのグループに来る気はねぇーか」と声を掛けられていたのだ。本当に気が滅入ってしまう。


「エリシャそろそろ出ようぜ」


エリシャはカイトの様子を見て苦笑いしつつ、「カイトは先に帰っておいてくれるかな。僕は依頼を受けるからさ」とお願いをした。


「あぁそうさせて貰うよ」


どうにか自律組合(ギルド)の建物から抜け出したカイトは疲弊困憊だ。なんだか異世界に来てから疲れてばかりの気がしてならない。そろそろ穏やかな異世界生活を本当にしたいものである。 


そう考えつつ貧民街の方へ歩み出すと、「やめなさい!何をしようというのですか!」という叫び声が聞こえた。やっぱり穏やかな異世界生活は暫く訪れないらしい。

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