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パーティーを追放された

「お前さ、今日からここ来なくていいわ」


 パーティーリーダーのアウロが指さしたのは、俺達のパーティーが集合場所に使っている宿屋のラウンジだった。


 早朝のギルドは、割の良いクエストを求めて上級の冒険者達がたむろしている。そのため俺達のような下級の冒険者は絡まれないようにこういう場所で集合し、そこでクエストのための作戦会議を行っているのだ。


「おっ、マジで!? お前もやっと作戦会議の無駄さが分かったのか。そうそう、脳筋がいくら集まって話し合っても良い案なんて出ねぇんだよ」

「いやいや何言ってんだ、そういうことじゃねぇよ。お前はもうパーティーにいらねぇって言ってんの!」


 俺達のパーティーでは、魔法使いの意見を無視して脳筋だけで話し合いが行われる。そのため、作戦会議は常に時間の浪費でしかなかった。


 アウロもそれを自覚して明日から会議はやめるよ、だから来なくて良いよ……と言ってくれたのだと思ったが。どうやら、そういうわけでもないらしい。


「え? なんで俺がパーティーを抜けなきゃいけないんだ?」

「お前が全く活躍してないからに決まってるだろ? 魔導書オタクなんかに分ける報酬はねぇって言ってるんだよ!」


 あまりにも謎が多かったので素直に聞くと、アウロはもっと謎が深まるような答えを返してきた。俺はどういう意味だと熟考して……ようやく、アウロの言っている意味が分かった。


「もしかしてアウロ、俺が役に立ってないって思ってるのか!?」

「そう言ってるだろバカ! 魔法式の読みすぎで人の言葉も分からなくなってんのかよ!」


 まさかという予感が的中して、俺は絶句してしまう。

 確かにアウロは魔法使いを軽視する傾向が高かったように思うが、ここまでだとは思わなかった。はっきり言って、彼の判断は間違いだと言わざるを得ない。


 自慢でもなく単なる事実として、俺はこのパーティーにおける戦闘の中核を担っている。状況に応じて魔法を使い分けることで、アウロのような攻撃系スキルばかり伸ばしているメンバーを徹底的にサポートし、冒険の効率を高めていたのは他でもない俺だ。というか、俺しかそういうの出来ない。


 だというのに、こいつは俺が特に意味もなく魔法を撃っているだけだと勘違いして、パーティーを抜けろと言っているのだ。攻撃は脳筋に任せた方が効率良いから我慢していたのに、こいつは攻撃以外の活躍を活躍だと理解していなかったのだ。


「あぁ、分かった……。そんなに言うならやめてやるよ」


 これまでの努力が全く認められていなかったという悔しさと、悲しさ。それらがないまぜになって、気づけば俺はパーティーを抜けると約束してしまった。


 パーティーも組んでいない冒険者は、ロクな仕事を得られない。すぐに感情的になってしまったことを後悔したが……もう手遅れだろう。俺は観念して、呟くように言い捨てる。


「パーティーを抜けるのも、悪いことばかりじゃないしな」

「はんっ。負け惜しみ言ってるんじゃねぇよ、お前が一人で生きられるわけねぇだろうが」


 俺の言葉を聞いて、アウロが鼻で笑う。確かに負け惜しみだ……が、全くの嘘ではなかった。

 パーティー無所属になるのは痛いが、俺はこの選択に、それ以上のメリットを見出したのだ。それは、脳筋どもが魔法使いの偉大さを理解してくれること!


 俺の夢は、自作の魔法が魔法史を変えるほどの大ヒット商品になることだ。だがそのためには、魔法がどれだけ素晴らしいものなのかを脳筋にも理解してもらう必要がある。

 だから俺はこの脳筋パーティーに俺がいないとどれだけ不便かを思い知らせて、脳筋達が考えを改めるきっかけに利用することにした。


「とにかく、分かったらさっさと失せな。タダ飯喰らいが生きられるほど、この世界は甘くねぇんだよ」


 アウロは俺が全てを諦めたと思ったのだろう。機嫌よさそうにそう言うと、俺を宿屋のラウンジから追い出した。


 色々な魔法が使える俺より、脳筋だらけのパーティーの方がよほど仕事に困ると思うけど……。そんなことはもちろん教えず、俺はソロで受けられる仕事を探しに行った。


 魔法使いの汎用性……なめるなよ?


魔法系ラノベ同時連載企画、第二弾です!

二本同時に進めていくので、連載が遅れたりしたらごめんなさいー!

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