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最恐の仲間スニフ司祭長

「それで、いったいなにをしてたんですかスニフ司祭長。」

「これはこれは、あのボケ老人…失敬。ドンキホーテ様の金魚の糞…失敬。従者のサンチョ様ではございませんか!我々はフローラ姫との新婚旅行の最中に、勝手についてきたこのアホ…失敬。国王のせいでお金が底をつきましたので路上パフォーマンスでお金を稼いでいたんですよ。」

短い間になかなかの悪口を言われた気がします。

「こんな異邦の地でお会いするとは。珍しいこともあるものですな。どうされました?迷子か何かですか?」

違いますよ、そう言いかけて口を閉じました。よく考えたら今の私って確かに迷子です。

「確かに迷子みたいなものですけど、実はあなたに用が有るんです、スニフ司祭長。」

スニフさんは目を細めて笑いました。

「ほう!私に!何用ですかな?」

「実は……」


私の話を聞いたスニフさんは突然くっくっく…と笑い始めました。少々不気味です。

「なるほどなるほど。あの男、まだそんなことをしていたのですねぇ」

「やはり、知っているのですね彼のことを。」

「ええ、とても。しかしここでは少々邪魔が多いですね。ミランダ!マルコ!」

『ベーネ』

「国王とフローラ姫を本日の宿舎にお連れしろ。身辺警護は怠るな。」


二人の従者にそう告げると、スニフさんは私の方を見て言いました。


「それでは、行きましょうか。」


***

「……スニフさん、いったいどうしてまた教会に。」

「一応宮廷司祭長ですので。やはり落ち着くのですよ。まぁ、教会を訪れる人間は神を恐れていることが多いゆえ、恐怖を魔力の源にしている私としては都合が良いというのが本音ですが。」

この人は心の声を漏らさないと死んでしまう病気にでもかかっているのでしょうか……

「さて、本題に戻りましょうか。私の前任者。元宮廷司祭長スフィアの話に、ね。」

「スフィア……」

スニフさんはダンッと立ち上がると神の像の前に立ちました。


「彼はとても優秀な魔導師でした。さまざまな魔法を自分の力で創り出すことができた。しかし、魔法の研究に取り憑かれすぎ、魔法の研究のためだけに御伽の国を無用に破壊することもしばしば。この国の王となろうと企んでいた私としては、未来に統べることになる国を破壊されるのは非常にまずい。だから彼を殺すことにしたのです。その時私はスフィアに仕えておりましたので、まぁクーデターというやつですな。」

「でも、あの男には攻撃が全然通じなかった。」

「そう。あの男は恐ろしい魔法を完成させていたのです。彼の魔法、それは全ての0ではない確率を100にできる魔法。偶然を必然にする魔法!その名も『運命(Destiny)』!」

スニフさんは両手を挙げ、そう叫びました。

「スフィアに攻撃を加えたとしても、それが外れる可能性が少しでもあれば当たらない、逆に向かうの攻撃は少しでも当たる可能性があれば当たってしまう。それだけにあらず、全ての確率を操れる以上、全ての攻撃は会心の一撃にすらなりかねないのです!!!」


なんと……そんな魔法、もうズルイじゃないですか!

だれも勝てるわけが……って、あ!!


「スニフさんはそんなスフィアさんを追い払ったってことは、勝てたんですね!」

スニフさんが勝てたということは別に無敵というわけではないんだ、きっと何とかできるはずです。

そう思ったら私の心を見透かすようにスニフさんは私の正面に降り立ち、チッチッチ、と指を振りました。

「残念ですが、私は厳密には彼には勝てませんでした。私は彼を追い払いたかったわけではない、殺したかったのです。だからシンプルに私は毎日彼を殺し続けました。」

「え。」

「ある日は、底に剣を大量に設置した落とし穴を堀り、ある日は空から巨大な岩を落とし、ある日は突然魔法を撃ちまくり、食事に毒を混ぜたり普通に刺したり爆破してみたり。」

いったい誰が悪なのか。なんだかよく分からなくなってきました。

「……」

「様々な方法で毎日殺し続けたのです。彼の魔法は受動的な物、不意打ちで意識の先手を取れば殺せるかと思ったのですが、その攻撃自体が当たっても生き残る可能性がわずかにあるだけで生き残ってしまう。当時の戦いは熾烈を極めました……」

スニフさんは大げさに頭を抱えました。

そして、ゆっくり顔を上げ、今度はカッと目を見開きました。

「しかーーし!」

この人は普通に喋れないのでしょうか。

「毎日殺され続けるという事実に先に奴の心の方が音を上げてしまったのでしょう。しばらくして、彼は姿を消しました。」

「すなわち、スフィアさんの心が病むまで殺し続けたってことですか。」

「ニュアンスの違いはあるものの大方その通りです」

やっぱり本当に危険なのはこの人なんじゃないでしょうか。

でも活路も無いことはないということが分かっただけでも収穫でしょう。

「つまり相手が知覚できない攻撃なら当たるという事ですよね。」

「それはそうですが、それでは殺せませんよ?」

「いや別に私は彼を殺したいわけではないので……」

「まぁいいでしょう!!!」

うわっ。突然スニフ司祭長がダンッと地を蹴り、空に浮かび始めました。

「私も少し周りのお人好しどもの気性がうつったのかもしれません!バカンスの方は一度お休みしてあなたのお手伝いをいたしましょう!」

「本当ですか!」

賢いのかアホなのかわからない上に、悪意と卑劣さをぐちゃぐちゃに固めたみたいな男ではありますが、その魔力の強さと魔法のセンスは本物です。彼が手伝ってくれるなら心強い。

「……何か失礼な方を考えていませんか?」

「滅相もありません。」

「なら良いのですが。まぁ、ここでスフィアを殺しておけば私としても邪魔者を排除できますし、件の少女も少し気になりますし、win-winでございましょう。ふははははは!」

やっぱり少し心配になって来ました。


「さて、それではいきましょうか。」

「……え、どこへですか?」

「魔導師はある程度、他者の魔力を感じられるのです。それにスフィアとは長く共にいましたからね。もう私には奴がどこにいるのかわかっております。」

なんと!

「奴がいるのはここから少しばかり離れた古びたお城、かつて御伽の国の吸血鬼が住処にしていた場所です。」

心強いなんてものではなかった。彼さえいれば大幅に無駄なストーリーを短縮できるのでは無いでしょうか。


「ふふふ。大船に乗った気持ちでいるが良い。さぁ、しゅっぱーーーつ!!!」


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