探せ、悪の宮廷司祭長!
そして私は格好良く男の元へ乗り込み男をぶちのめしまして、少女を救うことに成功しました。
「もう大丈夫ですよ」
「ありがとうサンチョ……!」
そして私たちは町に帰りました。そこでは私たちの帰還を祝う人々でごったがえしておりました。
「サンチョサンチョホーテ!サンチョサンチョホーテ!」
人々の声が私の耳に入ります。
私は緩みそうになる頬を頑張って引き締めると、厳かな顔であたりを見渡し手を振りました。
「キャー!サンチョサンチョホーテ様ーー!!!」
ふふふ、悪くない。悪くないですよーー!!
「サンチョサンチョホーテ……サンチョサンチョホーテ……」
「珍しい寝言やな。」
……ふえ?
突然耳元から声がしました。何かと思ってそちらを見ると、そこにいたのは一匹の大きな猫でした。
すうう……と息を吸い込みます。そして
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
それはとてもとても大きな悲鳴だったことでしょう。
〜〜〜第2話〜〜〜
その大きな猫は私の叫び声に軽く目を細めると、ニャアア、と伸びをしました。
「うるさいやっちゃなー。寝起きからなんで自分そんな元気なん。」
「ねねね、猫が喋ってるーーー!!??」
そう驚く私の頭をペチンと猫が尻尾で叩きました。
「今更どこに驚いとんねん。自分今まで悪魔やとか猫とコウモリ足して二で割った感じのヌイグルミやとかと話しとったやろがい。」
それはー……たしかに。って!なんでそんなこと知ってるんですか!!
「なんでそんなこと知ってんねん、って顔やな。」
ニママーと猫は笑みを浮かべ、私の前に飛び降りました。
「一応名乗っとこか。ワシは百万回生きた猫。ずっと昔から生きていとる、いや、死んでは生きてを繰り返しとる。だからこの世のことは色々知ってる物知りさんなんやでぇ」
猫の表情はわかりにくいですけど、それでも分かるくらい彼はドヤ顔を浮かべておりました。
「扉の国壊れた時も丁度そこにおったんよ。まぁ?その代わりに死んでもーたんやけどなー!」
ニャハハ!と猫が笑う。これは、笑い事なのか笑い事じゃないのか微妙なラインな気がしますが……
「さて、んじゃあ本題に入ろか。ワシはあの子に会いにきたんやけど今の状況見るに、ちょっと大変なことになっとるみたいやな。そんで、じぶんはあの女の子のこと、知りたいんやろ。」
「え、ええ。」
私の答えに猫は目を細めました。
「あの子はワシの大事な友達や。助けてくれるってんなら情報提供は惜しまへん。」
真っ直ぐな目で猫はそう言いました。
「つっても大体想像はついてる思うけどな。あの子は昔、自分の故郷を滅ぼされとるんや。そんで、そんときに死んでしもた。でも、あの子の魔力があまりに強ーてな。なんと彼女は、姿こそ反動で子供の姿になってもーたけど、転生する魔法に成功したんや。これは凄いことや。ワシは転生するっていう生き物やから当たり前のようにしとるけど、魔法でそんなことできるってなったらそれは大変なことなんや。」
「そういうことでしたか……でも、あの男はいったい?」
「あの男は扉の国の元宮廷司祭長。彼女の故郷を滅ぼした張本人や。思想が危険すぎてそん時の部下やった男、今の宮廷司祭長のスニフ君に追い出されたんやけどな。あの男は独自でいろんな魔法を作っとる。でも命を延ばす魔法を作ろうとしては失敗してるんや。だから。」
「だからあの少女を追っているってわけですか。」
「どこであの少女が生き返ったことを知ったんかはワシも知らんけどな。」
しかし、十分に情報は得られました。
あの男が想像以上の外道だという事も、彼女のことも。私が必ず彼女を救わなくてはいけないってことも。
「あの男はどうすれば倒せるのでしょう。」
「さぁなー。スニフ君やったら倒せたんやろけど、今はどこにおるやら。」
スニフさんが少女を助けるためのカギを握っているのは間違いなさそうですが……
そもそもここがどこか分からない以上、扉の国を訪ねるわけにも行きませんし、何より時間がない。
「どうしようもないって感じですね。」
「ニャァ。」
私のため息に、猫はため鳴き声で返しました。
しかし、あの訳のわからない力を攻略しない限り少女は救えませんし……
「ニャァ?ニャニャニャニャニャッッ!!!」
突然猫が目を輝かせ立ち上がりました。
「良い知らせや!ワシのネコミュニティから連絡があった!今スニフ君達がこの近くの町に遊びにきとるそうや!!」
「な、なんですとぉぉぉ!!」
ネコミュニティが何かはわかりませんがなんて良いタイミングでしょうか!
「なんたる偶然!いや奇跡!いや物語上の都合……」
「とにかく!解決の糸口が見えてきたやんか、会いに行ってみい。」
そうですね。なんであろうと、少女を救える可能性が見えてきたんです。
ここで行かない選択肢などありません!
「それでは、行ってきますね。物知りな猫さん」
「うん。ほなな。必ず少女を助けたってーな。あの子の作ってくれるご飯は絶品なんや」
「ええ。必ず。」
私は頭を下げ、そう言いました。
***
近くの村、というのは想像以上に近く、徒歩でも2時間たらずで私は街に着きました。
「スオウー!待ってよぉ!」
「遅いよティンク!」
「行くぞー!今日こそパンの首を取る!」
『アイアイサー』
「よっしゃあ見せたらぁ土人魂をよぉ!丁に10万だぁ!」
「姉さん!カッコいいっ!」
ここもなにかの御伽噺の街なのでしょうか、大変賑やかな街でした。
しかし、なかなかの規模の街です。
ここにスニフさんがいるとは言っても探すのはなかなか骨が折れそうです……
『おおおおおぉぉぉぉ!!!』
その時、一際大きな人だかりが見えました。
なんでしょうか?
端の方から覗いてみることにしましょうか。
「さぁさぁ、奇跡の脱出マジックの次は人体切断マジックですよぉ!助手よ、準備をしなさい!」
『ベーネ!』
「よせぇ、よすんじゃああ!ワシはまだ死にたくないんじゃああ!!」
「問題ありませんよマジックですので。さぁそれではお客様ご覧下さい!この老いたデブを今から剣でスパッとやってしまいます。そしてそれを元に戻すという単純なマジックですっ!!!」
……あれはまさか。
「さー行きますよー!大丈夫。失敗しても問題はありません。いやむしろ一石二鳥……ゴホン。それでは、レッツマジーーッ」
「スニフ宮廷司祭長!?」