第99話 ーーー事件は、これで解決? ーーー
犯人の目星はついたが、直接な証拠ではない為、シアンの掴んだ情報だけで捕まえる事は出来ない。
俺達は、エリックさんの部屋で、どうやって犯人を追い詰めるか話し合っていた。
すると、急にシアンの妖精の眼が疼き始めたらしく痛がっていた。
「シアン、どうしたの? これ飲んで」
フェニックスの涙が入った薬瓶を渡し、それを飲み干すと、
「上の階で魔の者の気配を感じる」
「それって、リーナの家? 」
「多分、そう……」
俺は、リーナの家に向かった。するとそこには、
「あんた。どこ行ってたのよ! シロウだったわね」
「えーーと、確か、吸血鬼のマリーンさんですよね」
「そうよ。あれっ! 冥府の悪魔達はどこ行ったの? 」
「みんな、冥府に帰りましたけど、何か用ですか? 」
「そうだったんだ〜〜困ったわね〜〜」
エリックさんとシアンも駆けつけて来た。
「シロウ、大丈夫デスか? 」
「あっ! バンパイヤ貴族のマリーン……」
「あ〜〜この間のエクソシスト達ね。この間は、血をご馳走様」
「どうして、ここに来たのデスか? 」
「冥府の悪魔達に用があって来たのよ。悪い?」
「今はもう、いません。冥府に帰ってしまいましたから」
「それは、シロウから聞いたわ。ところで、シロウ、この間のバックとかどうだった? 」
「マリーンさんから頂いた物は、女性達が凄く喜んでいましたよ。特に化粧ポーチが人気でした」
「化粧ポーチか……あれは、出来るだけシンプルな感じで作ったのだけど、日本では、奇抜な物はイマイチなのかしら〜〜」
「そんな事は無いと思いますよ。あの化粧ポーチだって、デザインはシンプルでしたけど、造りはしっかりしていたし、色使いも良かったと思います」
「シロウは、わかってるわね〜〜。就職に困ったら、うちに来てアドバイザーになってもらおうかしら〜〜」
「俺なんかダメですよ。センス無いですし……。そう言えば、用事は何だったのですか? 」
「そうそう、主人のバンピーゼ様と連絡が取れないのよ。様子がおかしいから、冥府の悪魔達なら何か知ってるかも、って来たのだけど……この様子じゃあ、見当違いだったみたいね」
「さぁーー冥府でも何も言ってませんでしたけど……」
「そうなの〜〜まぁいいわ。急ぎの用でも無いし、気まぐれな方だから、また、直ぐに現れると思うけど。そうそう、今度は、化粧品のサンプル置いていくわ。また、感想お願いね。じゃあね〜〜」
マリーンが置いていった段ボールをみると沢山の化粧品が詰まっていた。男の俺には、価値がわからない。
「何だったのでしょう? 」
「相変わらず、神出鬼没な女」
「シアン、眼は大丈夫? 」
「薬のおかげで治った」
「ここにある化粧品、好きな物持っていってよ」
「興味ないからいらない」
……あとで、二葉姉達に分けてもらおう……
「シロウ、私はこの口紅を下さい」
「えっ、エリックさん、化粧するの? 」
「違います。人形達につけてあげるのデス」
「変態化粧人形好きのエリック……」
「シアン、そう言う君もそろそろ化粧の1つぐらい覚えた方が良いデス。女の子なのデスから」
「興味のないものに価値は無い」
「困ったものデス」
……そう言えばドラキュラ伯爵も行方不明だったよね……吸血鬼の家出が流行っているのか? ……
「しかし、こんなに大量の化粧品どうしよう……そうだ! 俺が変身能力を使って女の子に化けて、囮になるっていうのはどう? 」
「シロウがデスか……気持ち悪いデス」
「エリックさん、感想じゃなくて、作戦だから!」
「シロウの女の子の姿、見てみたい」
「シアン、おもしろがっているよね? 」
「私は真面目。そんな不謹慎な事は考えていない」
……どういう意味? 何考えてるの?……
「わかりました。それで、作戦を練りましょう」
この囮大作戦は、果たして上手くいくのだろうか?
◇◇◇
俺は、小学4年生ぐらいの女の子に化けて公園をうろついていた。服は、睦美の昔の物を拝借した。履き慣れていないスカートが気になって、公園にある遊具で上手く遊べない。仕方がないので、ベンチに腰掛け、本を読んでいた。
エリックさんやアスカと一緒に砂場で遊んでいる。シアンは、家で待機していた。
俺のポケットには、位置情報がわかる端末と胸に着けてあるブローチには、小型の監視カメラがつけられていた。
『CQ・CQ・CQ こちらシアン。シロウ聞こえる? オーバー? 』
『シアン、これ念話だから……無線じゃないし』
『何事も雰囲気は大事。映像、音声共にクリアー、対象との接触まで待機。オーバー?』
『わかったよ。もう、勝手にして』
『シロウ、最後にオーバーつけないとルール違反』
『はい、はい、オーバー! 』
『シアン了解』
……[念話終]……
……よくわからん妖精っ子だ……
打ち合わせの時間になると、エリックさんとアスカは、砂場で遊ぶのをやめ、家に帰るふりをした。
公園には、俺1人しかいない。もう、辺りは暗くなっている。すると、
「君、家はどこだい? もう、遅いから帰らないとダメだよ」
来たーー! 犯人と思われる対象人物だ。
「今日は、遅くまでここにいなさいって言われたんだーー」
「お母さんにかい?」
「うん」
対象人物の口元がニヤリと不気味笑った。正直、気持ち悪い……
「じゃあ、おじさんが一緒にいてあげるよ。危ないからね」
……危ないのは、おまえだ! ……
「そうだ。おじさんがお菓子を買ってあげるよ。一緒に行こう」
「お菓子買ってくれるの? 」
「あぁ〜〜なんでも好きなもの買ってあげるよ」
周りに見られたら、即、通報ものだが、この相手では、誰もが安心するだろう。そう、警察官の制服を着ているからだ……
俺は、その対象人物の後をついて行った。
◇◇◇
行き先は、廃工場のようなところだった。ここでは、少しの音が出ても気づかないだろう。いつも、こうやって誘っているのだろう。慣れている感じだ。それに、この廃工場は、対象人物の隠れ家みたいだ。鍵をちゃんと持っていた。
「ここ、どこ? 」
「おじさん、この奥に沢山お菓子を隠してあるんだ。きっと、気にいるよ」
「そうなの? 」
俺は。奥にあるテーブルに腰掛けさせられた。おじさんは、ジュースを持ってきて俺の目の前に置く。
「飲んでいいよ」
「わ〜〜い。ありがとう」
俺は、そのジュースを飲む。鑑定で調べたら、睡眠薬入りだったが、俺には、効かない。でも、ここは、薬が効いたふりをしないと……
「どうしたんだい? 眠くなったのかな? 」
「う……ん」
そうやって寝たふりをした。男は何やら道具を持ってきていろいろ設置している。どうやら、撮影道具らしい。どこまで変態な奴なんだ!
『CQ、こちらシアン。シロウどう? オーバー? 』
『睡眠薬入りのジュースを飲まされた。今、対象は撮影道具を設置している』
『アスカが、気配を消して近くにいる。エリックは、関係筋に連絡を入れている。もうじき、手配が済む。オーバー? 』
『わかった』
『シロウ、最後はオーバーだよ』
『はい、はい。オーバー! 』
対象は、撮影準備が整ったようだ。着替えを済ませて俺の近くに寄ってきた。これ以上は、気持ち悪くて耐えられない。俺は、起き上がり、その人物を睨みつけた。
「おやおや、どうしたの? ジュースをもっと飲まないとダメだよ」
「睡眠薬入りのジュースなどいらない」
「何言っているの? 君……」
「そっちこそ、警察官がこんな事していいのか? 」
「ちょっと、怖い目に遭わないとダメな子みたいだね」
「怖い思いをするのはどっちかな? アスカーー!」
俺の掛け声と共に、アスカがそのおっさんをロープで縛り出す。はじめ抵抗していたおっさんもアスカのハイスピードな縛りについてこれない。おっさんは、とうとうロープ人間にされてしまった。
「何なんだ。お前は! 」
「それが本性か……おっさん、いつもこんな事してたのか? 」
「してない! 俺は、何もしてない! 」
「ここには、いろいろと証拠がありそうだな? 」
「クッソーー! 」
おっさんは、手を動かし腰にある拳銃ホルダーを開けていた。すかさずアスカが、その手を払い、さらに、今度はガムテープで拘束する。
「あっちがいる限り、下手な事はさせねーーぜ! 」
「誰だ! 他に誰かいるのか? 」
「アスカ、いいよ」
「よっしゃーー! アスカちゃん、見参! 」
アスカは気配を解いておっさんの前に姿を晒した。おっさんは、急に現れた少女に驚いている。そして、アスカは、殺された女の子も連れて来ていた。アスカが鍛えたのだろう。その子も姿を現わせるようになっていた。
「ひっーー! お前は、お前は……」
「おっさんが、悪戯して殺した女の子だ。そうだな? 」
「この人が、私を殺した〜〜」
幽霊の女の子は。アスカに言われたのだろう。身震いする程、迫真の演技だった。
「違う! 事故だ。一緒に遊んでて、事故だったんだ! 」
幽霊の少女は、おっさんの周りを、幽霊らしくうろうろしている。その度に、おっさんは「ひっーー!」っと短い悲鳴をあげていた。
「悪かった! 勘弁してくれ!」
屈強なおっさんは、幽霊相手では、意気地がないみたいだ。
「この女の子を殺した事は認めるんだな? 」
「殺してない……ひっーー!……ちょっと力が入って首を締めてしまったんだ。殺すつもりなどなかったんだ……」
「嘘をつけ! 両親も殺したくせに」
「違う! あれは俺じゃない! 俺が、この子を誤って殺してしまった時には、両親はいなかった。あの家は、両親が共働きで、いつも、夜までこの子1人だったんだ。信じてくれーー」
「本当か?」
アスカは、その事を幽霊に聞いているみたいだ。確かに両親はいつも遅くまで帰って来なかった、っと言っている。しかし、殺された日はよく覚えてないようだ。
「あとは、専門家に任せるか……それでいいか? 」
女の子の幽霊は、頷いている。きっと、少しは満足したのだろう。
遠くで、パトカーのサイレンの音がした。ここには、ビデオやらいろいろな証拠が残っている。俺のブローチを通してシアンは今の映像と音声を録音しているはずだ。もう、言い逃れもできないだろう。俺は、黒翼のマントを羽織り気配を消した。アスカも連れの女の子も気配を消す。
その廃工場には、おっさんの怯えた悲鳴だけがこだましていた。
◇◇◇
ここは、エリックさんの家。
「でも、市民の安全を守る警察官のする事ではないデスね」
「俺は、あの若い方の警官だと思ってたけど、あの交番にいた偉そうなおじさんの警官だったとはね〜〜」
「あの若い警察官は、職務に忠実な感じを受けました。少しやり過ぎなところもありますが……」
「でも、あのおっさん、両親の件は否定してたけど、どうして? 」
「それは、わかりません。これからの捜査で明らかになるでしょう」
「イマイチ、納得できないんだけど」
「それは、私もデス。捜査が進んだら、その内容を伝手を使って教えてもらいます。あとで、シロウにも教えます」
「流石、ローマ聖教だね。いろいろなとこに伝手がある」
「宗教は、いまや、政治の奥深くまで関わっています。本気になれば、FBIやCIAより、多くの情報を得る事が出来ます」
「そうなんだ……」
……あまり、関わりたくない世界だ……
「ところでシアンやアスカは? 」
「幽霊の女の子の浄化をしに行きました。思い出の公園で去りたいと言うので、その場所に行っています」
「そうなんだ。向こうで幸せになれるといいけど……」
「神の御心のままに……私もそう願っております」
その頃、夜空に小さな光が天に昇っていった……




