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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第94話 ーーーここにも引きこもりがーーー





 ルアンの森の里に着いた俺達を出迎えしてくれたモモリーは、


「皆さん、早いお帰りで良かったです。怪我もしてらっしゃらないようで」

「モモリーちゃん、ただいまーー」

「サツキ様、耳を触らないで下さい……」


……サツキは、エロじじいかっ! 俺も触りたい……


「皆さん、危険なので逃げて来られたのですね。良かったです」

「違うよーー、あのね。ド、じゃない。ゼロツーが1人でやっつけちゃったんだ。すごく強いんだよーー」

「えっ!? キメラですよね……」

「うん。凄かったよ。モモリーちゃんにも見せたかったなぁ〜〜」

「本当なのですか? 信じられないです」


「モモリー様、本当ですよ。ゼロツーのお陰で、俺達は、出番がありませんでした。これが、キメラの遺体です」


 俺は、亜空間バックにから先程、ゼロツーが倒したキメラ三体を取り出した。それを見て、モモリー姫を始め、その場にいた獣人達が驚きの歓声を上げる。


「凄いーー!キメラだぞーー!」

「これがキメラなのか? 見るのは初めてだ」

「すごい牙、それに鋭い爪、これなら、良い武器や防具が作れるだろう」


……そうか、キメラなどの魔獣で武器や防具が作れたんだ……


 みんなの騒ぎ声を嗅ぎ付けて、シロクマ王がそこに現れた。


「キメラじゃないか! それも三体も〜〜」


 相変わらず声がでかい。


「シロクマ王、お久しぶりです。妹のサツキがお世話になりまして……」

「シロウ殿、お主達が仕留めたのか? 」

「いいえ、そこでマスクを被っているゼロツーが討伐してくれました」

「何と、お主がーー」


 シロクマ王に突然、手を握られてソワソワしているゼロツーは、満更でもなさそうだ。


「シロウ殿、頼みがある。このキメラの遺体を儂に売ってくれ! 」

「別に構いませんが……ゼロツーどうする? 」

「ぼ、僕はキメラなんかいらない……」


 今にも消えそうな小さな声だった。でも、この状況の中で喋れたのはすごい進歩だ。


「それなりの報酬は約束しよう」

「わかりました。ご自由にどうぞ」

「そうか、そうか」


 シロクマ王は嬉しそうだ。


「疲れただろう。食事をすぐ、用意させる。食べていってくれ」

「ありがとうございます。遠慮なく頂きます」


 それから、俺達は、王城の個室に案内されたのだった。







 王城の個室は木の香りがしてとても落ち着く。が、落ち着かない吸血鬼達は、それぞれの部屋ではなく、また、俺の部屋に集まっていた。


「やはり、ここも落ち着かないの? 」

「……はい」


「でも、だいぶ慣れてきたと思うよ。みんなは、凄いよ。俺なら、そんな短期間で戦闘できるようになれないよ。流石、冥府の吸血鬼達だ」


 実際、そう思っていたが、褒める事で自信がついてくれればという思いもあった。


 吸血鬼を褒めまくっていると、ソラスが飛んできて、


「吸血鬼達は、戦闘力は高いですが、すぐサボろうとします。そこが難点です」


……ソラス、今、褒めまくってテンション上げさせようとしているのだから、貶すのはやめてくれ……


「特に、ドラ代はヒステリー吸血鬼として有名でした。見境もなく誰彼構わず殺すのですから、弱ったものです」


「私は、ヒステリーなんかじゃない。バカにされたから、仕返ししただけ」


「それにしたって、あの時、止めようとしたドラ次郎を思いっきり切り裂いていたじゃないですか? 」

「それは、ドラ次郎が、ニタニタ笑ってたから、バカにされたと思って切っただけ」

「僕、笑ってないよ。あの時も言ったでしょう。もともとこういう顔なんだって」

「でも、そう見えたの! 」

「見苦しい兄妹喧嘩はやめなさい」

「ドラ太郎兄さんこそ、戦い出すと凶暴になるくせにーー」

「そうよ。ドラ太郎兄さんこそ、一番、凶暴だよ」

「そんな事はないぞ。あれは、そう、運動をしてただけだ。身体が鈍っていたからね」


 あの時が、どの時なのかわからないが、過去に兄妹達が揃って戦闘をした時の事だろう。


「みんなが強いのはよくわかったよ。あとは、自分で食事ができれば普通に冥界で暮らせると思うよ。また、練習してみよう。慣れれば、上手になるよ」


「そうなのですが……」


……吸血鬼達は吸血行為を自然とできるまで、俺が実験台になるしかないよね……

……憂鬱だ……






 キメラの遺体は、牙や爪そして皮は武器や防具になり内臓は薬として使えるらしく、捨てるとこがないらしい。俺は、キメラの遺体をシロクマ王に売却して、白金貨 300枚を手に入れた。それ程、貴重なものらしい。


 そして、まだ日数に余裕があった俺は、エルフの郷を訪れる事にした。エルフの郷は、俺ひとりで行った方が良さそうだ。吸血鬼達をサツキに預かってもらい、俺は、エルフの郷にドアを開いた。


「だれだ! 人族が入りこんだぞ!」

「 何だ。お前か……」


 エルフの族長の家のテラスにドアを開いたが、いきなり数人のエルフに取り囲まれてしまった。その中で、俺を知っているエルフがいたらしい。すぐに解放され、族長のところに案内された。


「お主1人か? あの妖精っ娘は来ないのか? 」


 族長は、シアンがお気に入りらしい。


「今日は、ひとりです。少し、話があって参りました」

「うむ。真面目な話のようじゃな。ほれっ、これでも飲んで話そうじゃないか」


 族長に出された、お茶を頂きながら、ドアーフ達の事を訪ねた。


「ドアーフ達か……それは、無理じゃな。あいつらは気難しい」

「エルフは、ドアーフ達の恩人って伺いましたが……」

「それは、そうじゃが、仕事の件は別じゃ。あやつらは、鍛治師の誇りを持っている。それを、恩だ、義理だ、で左右される事はない」

「そうなのですか……」


……族長が言うからには本当の事なのだろう……


「それに、人族を助ける筋合いもない。この件は聞かなかった事にするぞ。それと、ペリンに会っていけ。あやつも、今、ひとりで寂しそうじゃからな」


「ペリンさん、落ち込んでいるんですか? 」

「明るく振舞ってはいるが、内心では、泣いておるのじゃろう。もし良かったら、少し外界の空気を吸わせてやってくれ。その方が、落ち着くじゃろうし」


「ペリンさんはよく薬草取りに出かけてましたけど、今は出歩いてないのですか? 」


「薬草取りは、父親のためじゃあ。目的が無くなっては、出歩くのもシンドイじゃろう」


「わかりました。帰りに会ってきます」


「そうしてくれるか、助かったわい。そうじゃのう、ドアーフのところにでも行けば、気分も落ち着くじゃろう」


ニヤっと笑った族長の笑みは、優しそうな感じを受けた。


「そうですね。わかりました。ペリンさんをお借りします」


俺は、族長の心中を察し、ペリンさんに会いに行った。




◇◇◇



「ペリンさん、ペリンさんいるーー? 」


 おかしいなぁ……返事がない。窓は閉じたままだし、どうも様子が変だ。


「ペリンさん、いるなら返事してくれる。じゃないと、ドアから勝手に入るよ!」


 すると、ドアが少しだけ開いて、目だけがこちらを見ている。


「ペリンさん、返事ないから心配したよ。少し話があるんだけどいい? 」

「…………どうぞ」


……ペリンさん、様子がおかしいぞ……


「えっ〜〜と、ここ、ペリンさんちだよねーー」


 以前来た時と違って、整然と片付けられていた部屋の中はごちゃごちゃで座る場所もないくらいに散らかっていた。


「ペリンさん、どうしちゃったの? 」

「シロウさん、何しに来たんですか? 」

「族長に言われてペリンさんを外に連れ出してくれって……」

「私、外になんかいきません! 帰って下さい!」


「もしかして、あれ以来、家を出てないの? 」

「何か問題でも? 」


……あぁ……ここにも、引きこもりがいる……


「実は、ペリンさんに話があるんです。俺と一緒に外に行きませんか? 」

「嫌です。外は、怖いです。人族もたくさんいるし、それにあの家ももうありませんし……」


……あの家って、もしかしたら……


「ペリンさん、あの家に行きましょう。きっと落ち着きますよ」

「何を行っているんですか! あの家は、あの湖の家は、もう、とっくに人手に渡っています。お父さんの治療費の代わりに売り渡してしまったのですから!」


「そうだったんですね。でも、それを私が購入したとしたらどうしますか?」

「えっ! シロウさんがですか? 」

「はい。つい先日、商人ギルドの方から購入しました。これが、その時の証書です。俺は、あの家が見ず知らずの人に渡ってはいけないのではないかと思ってました。もし、宜しかったら一緒にあの家を直して、前みたいに住めるようにしませんか? 」

「…………でも」

「ペリンさんの力が必要なんです」


「私の……?」


「はい。あの家の前の様子を知っているのはペリンさんだけです。お願いします」


「……でも、外は怖いです。お父さんの為ならと思って薬草を採りに行ってましたが、内心はビクビクしてました。もう、怖い事は嫌です」


「そうだったんですか……でも弱ったなぁ〜〜あの家買ったはいいけど、ペリンさんの力を借りれないとすれば、誰かに、また、売るしかないかなぁ〜〜」


「…………」


「今度、買う人は、きっと、派手派手な家を作るかもしれないし、あの湖に似合わない家だったら最悪ですよねーー」


「…………」


「そうだ。俺が、家を建て直そうかなぁ〜〜真っ赤な家がいいかもしれない。目立つし、湖と合いそうだ」


「赤い家はダメです。あそこは木のぬくもりを感じる家じゃないと合いません!」


「そうは、言っても俺、センスがないしなぁ……木のぬくもりってよくわからないし〜〜」


「私が、行って指導します! 」

「ペリンさん来てくれるんですか? 」

「シロウさんみたいな感性のかけらもない人では、あの家の良さを引き出せません!」

「そうですか……それでは、ペリンさん、お願いしますよ」

「わかりました。元に戻して、シロウさんをビックリさせてあげます!」


 あの家を買っておいて良かった……こんなとこで役立つなんて……


 俺は、ペリンさんと出かける前に、まず、この家の掃除から始めるのだった。




◇◇◇




 ここは、湖の畔の家。


 俺は、ペリンさんと2人でこの家を訪れていた。

 建物は相変わらずボロボロだし、直すにも人手がいる。資金は、キメラ討伐のお金があるので、とりあえずは大丈夫そうだ。


「随分、ボロボロになってしまいました……ここで、よく薬草を乾かしていたのですよ。それと、ここでは、採った木の実をつけて保存していたんです」


 ペリンは記憶を辿って、いろいろ思い出している様だが、今は、その面影は全くない。土ほこりと瓦礫が散乱しているだけだ。


「建物を直すのに人手がいりますね」

「嫌です! 人族の方は信用できまません! 」


 そう言うだろうと思っていたが、他に思い当たる節がない……そうだ!


「ドアーフの方の力を借りられないでしょうか? 」

「ドアーフですか? 」

「それなら、ペリンさんも気兼ねなく指示できるのではないですか? 」

「そうですね。ドアーフの方々なら、怖くないです……でも、やってくれるでしょうか? 」

「ダメ元で頼んでみましょう? ドアーフ達は今、何処にいますか? 」

「ミリエナ国北部の山脈にいます。温泉もある迷宮都市です」

「あーーあそこかーー。ペリンさんと初めて会ったのも、その近くの森の中ですよね」

「そんな事もありましたが、あの時は、怖くてよく覚えてません」


……人族と接触するのは、そんなに怖いものなんだ……


 ペリンさんの心の傷も深そうだ。これは、思った以上に大変かも……


 俺は、迷宮都市に行く前にみんなと合流しようと思っていた。俺だけ、温泉に浸かってのんびりしていては、サツキにバレた時が怖い……


 ペリンさんを説得して、俺は、ルアンの森の里にドアを開いた。






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