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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第91話 ーーー引きこもり吸血鬼達はーーー





 この孤児院は、いつも元気な子供の声がする。子供達が安心して暮らしている証拠だ。案内してくれた子供がシアさんを呼びに行ってくれた。建物から出てきたシアさんは、俺を見るなりこう言った。


「シロウさん。大道芸人になったのですか? 」


 俺の左手には、背の高いイケメン吸血鬼ドラ太郎が、俺の右手には、可愛らしい男子吸血鬼ドラ次郎が、俺の首と頭を抱えているのはドラ代が、吸血鬼達が俺に纏わり付いて、ここまで歩いてくるのに3倍の力を使ってしまった。


「シアさん、水、水もらえませんか?」

「わかりました。すぐに、どうぞ中にお入り下さい」


 部屋の中に入りテーブルに着くと、吸血鬼達は、キョロキョロしながら自分達が落ち着く場所を見つけて移動した。


……でも、震えてるけど……


 俺は、シアさんから水を頂き、飲んだ後、吸血鬼達の事を人間にたとえて説明した。何か良い案でもあれば良いけど……


「そうだったんですか……長い間、苦労されたのですね……」


 シアさんの目に涙が浮かんだ。


……シアさん、こいつら、ただ名前が恥ずかしくて引きこもってただけですから……


「これからサラマー国に行かなければならないのですけど、これではどうにもならなくて、何か良い方法はありませんか? 」


「そうですね〜〜」


 シアンさんはそれぞれの吸血鬼を見ながら、


「子供達の場合ですと、ここに来る前に酷い仕打ちをされて怯えている子もたくさんいましたけど、成長するに従い自然と治っていきました。そのような子達も、今でもきっと心の中では、葛藤があるのでしょうけど……」


「時間と慣れで解決するという事ですか?」


「そういうケースもあるという事です。でも、本質は、その子が抱えている問題を理解して少しづつ改善していくしか無いと思います。例えば、あの背の高い端正な男性は、恐らく人に対して恐怖心があるように思います。子供達にでさへ目を合わそうとしませんから。それとそちらの可愛らしい男の子は、広い場所が苦手なのではないでしょうか? 今も、壁と本棚の隙間で小さくなっていますし。それにそちらの女の子は、急な場面展開が苦手なようです。子供達の行動が予測できないので頭を抱えているみたいです。環境を急激に変えるのは良くないと思います」


「なるほど……良くわかりました。さすがシアさんです。でも、時間がかかりますよね。困ったなぁ……」


「うちでしばらく面倒を見ましょうか? 子供達も喜びますし……」


……正直、助かる提案だが、相手が吸血鬼達なのでそうもいかない……


「いいえ。大丈夫です。何とかしてみます」

「そうですか? うちの方はいつでも大歓迎です。シロウさんは、特別ですから」

「ありがとうございます。正直、助かります。ちょっと、買い物に行きたいのですが、その間だけ、よろしいですか?」

「はい。大丈夫ですよ」


 俺は、一旦、日本に戻ってある物を仕入れてきた。




◇◇◇



 俺は、日本に帰って急いで買い物をしてシアさんの孤児院へと向かった。孤児院での吸血鬼達は相変わらずだったが、ドラ代だけは、何とか子供達と遊べているようだ。


 俺は、吸血鬼達に買ってきたサングラスをかけさせた。すると、ドラ代は、視界がある程度遮られたお陰なのかどうにか普通にいられるようになった。


 イケメンのドラ太郎は、サングラスをかけても顔を子供達に向けようとしないが、前よりはマシに見える。


 だが、ドラ次郎は、サングラスをかけても一向に前と変わらなかった。仕方がないので、仕入れてきたフルフェイスのマスクを被せその上からサングラスをさせてみると、大分落ち着いたようにみえた。見た目は銀行強盗犯そのものだけど……


 一時的な対処療法だが、時間がないのでこれで慣れてもらおうと思っていた。


……しかし、怪し過ぎないか?……このメンツ……


……そうだ。SPみたいに黒尽くめにしてみればどうだろう?……


 俺は、また、買い物に行きみんなの服を揃えてきた。そして、家から持ってきた大きな鏡で吸血鬼達を写した。


すると、


「これは、カッコいいです」

「……良くわからない。これでいいの? ねぇ、大丈夫なの?」

「素敵です」


 ドラ次郎だけは不安があるが、吸血鬼達は、自分の姿に納得したようだ。


……周りからは、更に怪しい人物にみえるけど……吸血鬼達には内緒です……




◇◇◇




 俺は、残念な吸血鬼達を連れてサラマー国に入国していた。一応、ドアからの転移も考えたのだが、吸血鬼達には急な場面展開が苦手な子もいるので、慣らすためにも、城門から入国した。


 俺を筆頭に後ろに黒尽くめでサングラスをかけた者が3人並んで歩いていると、誰もが、道を開け、遠巻きに俺達を不審そうに眺めていた。


 城に着き、ライン王の面会を頼むと、衛兵が、驚きながら奥へと走り去って行った。


……そんなに俺達を変? あっちの世界ではVIP対応の姿はテレビや映画で良く見るから、そんなに違和感ないけど……でも、ドラ次郎の覆面姿は流石に、ないと思うわ……


 一応、城内の応接室に通された俺達は、ライン王が来るのを待っていた。吸血鬼達も、何とか大丈夫そうだ。


 すると、大きな扉が開きライン王と付き添いの者が入って来た。久し振りに見るライン王は、血色も良く少し太ったみたいで、健康そうだった。ライン王は、俺を見ると、


「おぉーーシロウ殿、何時ぞやは、せっかく来て頂いたのに、追い返すような真似をしてすまなかった」


「お久し振りです。あの時は、仕方ありませんよ。あの事件があって数日の事でしたから」


「そう言ってもらえるなんて、私は、私は……」


 ライン王はいきなり泣き出した。余程、復興が大変だったのであろう。ライン王と一緒に入ってきた男女も狼狽えている。王がこのように感情を表に出すのを初めて見たのかもしれない。


「ライン王、王様に就任されたのですね。おめでとう御座います」

「こ、これも、シロウ殿のお陰だ」

「いいえ。私は、何もしてませんから。みんなライン王のお力ですよ」


 俺達の再開は、こんな風に始まった。


……こんなに感謝されても……本当に俺、何もしてないんだけど……


「ライン王、そちらに控えてらっしゃるのは側近の方ですか?」


「そうだ。紹介がまだだったね。こちらの女性がフレンダ。秘書の仕事をしてもらっている。ミリエナ国にも一緒に同行するんだよ。で、こちらがニール。私の片腕だ。今は、ニールがいなければ、私は仕事ができないほどだ」


「優秀な方々なのですね。私は、スズカゼ シロウです。そして、後ろに控えている背の高い男性がド……」


「わぁーー!」


「どうかしましたか?」


 ライン王は、突然騒ぎ出したドラ太郎を心配していた。


……そうか、名前か……


「いいえ。こちらの背の高い男性は01(ゼロワン)です。優秀で頼りになる人物なのですが、時より持病の(しゃく)が出てしまいまして……」


「そうでしたか……それは、お気の毒ですね……」


「で、その〜〜こちらが02(ゼロツー)です。端正な顔立ちをしているのですが、自分の顔が醜いと思っておりまして、何時も隠して、こうしてマスクを被っているんです……」


「そうですか……心に傷を抱えてらっしゃるのですね……」


「え〜〜まぁ、そんなところです。そして、最後の女性が03(ゼロスリー)です。華奢のようにみえますが、とても強い女性です」


「女性の方でしたか?男装をしているので小柄な男の子だと思いました。皆さん、私がラインです。シロウ殿には、大変お世話になりました。滞在中は、城内を自由にしていて下さい。それと、警護の件受けて頂き感謝します」


「そういえば、何故、私を指名されたのですか? 」

「いけませんでしたでしょうか? 」

「いえ、構いません。私も、ライン王に再びお会いできて嬉しいですし」

「シロウ殿にそう言ってもらえると私も嬉しいです。さぁ、お疲れでしょう。今、部屋にご案内致します。ニール頼む」


「かしこまりました。どうぞ、こちらです」


 俺達は、ニールさんに案内されて各々の部屋に案内された。そこは、まるで貴賓室のようで豪華な装飾が施された見事な部屋だった。夕飯の用意ができるまで自由にしていて下さいと、ニールさんに言われ、俺は、部屋を様子を丹念に見ていると、吸血鬼のみんながそこにいた。


「あれ、みんなの部屋は両隣だって言ってたよ。自由に使っていいんだって」

「そうでは、なくて、その〜〜」


 ドラ太郎はなぜかソワソワしていた。


「もしかして、広いから落ち着かないの?」

「……はい」

「他のみんなも?」

「……はい」


「俺は、一緒でも構わないけど、それでいいの?」

「はい。その方が落ち着きます……」

「わかった。そうしようか」

「はい」


……吸血鬼達にはいろいろ聞きたかったこともあるし……


「この部屋の中では、メガネを取れる? 」

「やってみます……」


 吸血鬼達はサングラスを外した。だが、どうも落ち着きがない。ドラ次郎はマスクをしたままだ。


「名前を知られるの嫌なんだよね」

「はい。イヤです」

「さっきの名前なら大丈夫?」

「先程の名はカッコいいです」


……ただの数字なんだけど……


「じゃあ、これからは、ドラ太郎はゼロワン、ドラ次郎はゼロツー、ドラ代はゼロスリーって呼ぶけど良い?」


『はい。是非とも』


……少しでも吸血鬼達が楽になってくれれば、その方が良い……


「ドラ次郎、じゃないや、ゼロツーは、ここならマスクを取れるかい?」

「やってみます……」


 ゼロツーことドラ次郎は更に落ち着きがなくなった。ブルブル震えている。


「無理は良くないか……ゼロツーの好きにして良いよ」

「はい。ありがとう御座います」


 そう言ってすぐにマスクを被ってしまった。


 先は長そうだ……


 サツキの方は大丈夫か?






「シロクマミミのモモリーちゃんはモフモフで可愛いでちゅね〜〜」

「サツキ様、あまり触らないで下さい〜〜あっ!」


「ホーホーホケキョ!」







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