第89話 ーーー公園で俺はーーー
サラマー国に行ってライン王に会おうと思っていたが、家を買ってしまい、、そしてリーナの姉、リーゼと会ってしまった為、落ち着いていられなくなり、一旦、日本に帰ろうと思った。
サツキにもシロクマ耳っ娘の件を伝えなければならない。それに、今日は、睦美が修学旅行から帰って来る日だ。疲れているだろうから、少しでも疲れの取れる食事を用意しなければと考えての事だ。
放課後、1人で帰宅しているとアスカが、また、やってきた。ふわふわ浮いているので着ているワンピースがめくれ白い物がチラチラ見える。今日はパンツを履いているようだ。
「シロウ、あっちのパンツ覗いてたろう?」
「ただ、確認してただけだ。この前のような事は、もう、懲り懲りだからな」
「嬉しかったくせに〜〜って、変態!早く忘れろーー!」
「わかったよ。記憶を封印しておくよ。永遠に」
「シロウ、どこ行くんだ?家はあっちだろう?」
「買い物だよ。睦美が帰って来るから、食事を作らないと、アスカも実体化して、買い物手伝ってくれ」
「マジかーー!お菓子を要求するぜ!」
「わかってるよ。ひとつだけならOKだ」
「うぉっしゃーー! やったぜーー!」
アスカは、実体化して俺と並んで歩いている。こうしていると誰もアスカが幽霊だとは思わないだろう。
近道をしようと公園の脇を通ると、アスカと同じぐらいの年恰好の女の子が1人ブランコに揺られていた。
「シロウ、ちょっと待っててくれーー」
アスカは、その子の側に行き何やら話し込んでいた。俺は、ベンチに座り、2人のやり取りを見ていたら、
「君、ちょっといいですか?」
「はい?」
「高校生だよね。こんなとこで何してるんだい?」
「あそこにいる知り合いの子を待っているだけですけど……」
「ふぅ〜〜ん。知り合いの子ね〜〜」
俺に話しかけてきた人物は、厳つい制服を着込んだお巡りさんだった。どうやら職質されているらしい。
「何か用ですか?」
「いや、何、最近多いんでね。小さい子に悪戯する人物が……」
「お、俺は違いますから〜〜本当に、ただ待っているだけですけど」
「本当に君の知り合いなのかね?」
……疑い深い警察官だ。そんなに俺、怪しいか?……
アスカを呼ぼうとしたら、気配を消したらしく、ブランコに乗っていた女の子と一緒に消えていた。
……どこ行ったんだ?……
「君の言ってた知り合いの子はもう帰ったみたいだね。知り合いなら声をかけないで帰るはずはないよね。ちょっと、交番まで来てくれるかな?」
「えっーー!」
ここで何だかんだ言っても無駄そうだ。騒げば、公務執行妨害とか理由をつけられて立場が悪くなるばかりだ。俺は、仕方なくそのお巡りさんと一緒に交番に行くのだった。
……アスカ、本当にどこ行ったの?……
◇◇◇
「ここに住所と名前を書いてくれる?」
交番に着くなりその警察官は横柄な態度になった。不審人物だと決めつけているらしい。
「最近、この界隈で、小さな女の子が悪戯される事件が頻発しててね。君じゃないの?」
マジか……疑ってる人物の誤解を解くには、証拠がいる。でも、俺にはその方法が思いつかなかった……
「俺は、何もしていません。知り合いの子を待っていただけです」
「その知り合いの子はいなくなっちゃったじゃないか? 嘘はいけないよ」
その警察官は、30歳前後だと思うが、優しそうな雰囲気に見えても目は鋭かった。
……困ったなぁ……何もしてないのに、すぐに帰れそうもない……
俺が住所と名前を書くのを拒んでいたら、だんだんと口調が荒くなってきた。もう、犯人扱いだ。そこに、50過ぎぐらいのおじさん警察官がやってきて、その若い警察官をたしなめていた。奥で会話を聞いていたらしい。
「そこの名前と住所を書いてくれれば帰っていいから」
そのおじさんの警察官はそう言ったが、書く気にはなれなかった。どうも罠っぽい。すぐに帰っていいと言わなかったからだ。制服で学校はバレてるし、顔も知られてしまった。俺の事を調べるのにそう時間もかからないだろう。
俺も「何もしてないので書けません」と頑固になっていた。
「じゃあ、君を帰すわけにはいかないなぁ〜〜」
優しそうな口調でも、どこか威圧的だ。俺も警官も困り果てていると、そこにエリックさんが通りかかった。学校の仕事が終わったらしい。
「エリックさん!」
「シロウ、こんな近所で道に迷ったデスか?」
「えーーと、貴方は、この子の知り合いですか?」
若い警察官がエリックさんに尋ねると、
「そうデス。この子の担任で家も同じ団地デス。シロウがどうかしましたか?」
「この子には、幼女悪戯の嫌疑がかかってます」
「シロウがデスか? わっはははは。久し振りに笑いました。腹痛いデス」
「アスカを公園で待ってたら、ここに連れて来られたんだよ」
「アスカなら、さっき向こうでシロウを探してましたよ」
「アスカの奴、警察官が来たら姿消したんですよ。酷いでしょう?」
「アスカらしいデス。この子は、そんな事する人物ではありません。すぐに解放して下さい」
「そうはいきません。規則ですから」
「これは任意の取り調べでしょう?シロウは貴重な時間を割いて警察に付き合っただけデス」
「う……む。わかりました。貴方がこの子の身元を保証するなら解放しましょう。ここにサインを頂けますか?」
「お安い御用デス」
エリックさんのお陰でその後すぐに解放された。警察官達は、どうも納得してない様子だ。
「エリックさんのお陰で助かったよ。全く、人を疑うなんてーー!」
「彼等はそれが仕事デス。地道な活動が犯人検挙に繋がるのデス。気にしてはダメデス」
「そうは言っても、納得できないよーー!もう、アスカはーー!」
俺は家に着いて、買い物する事を忘れていた。
◇◇◇
睦美は疲れた様子も無く修学旅行から無事に帰ってきた。そして、今夜は、すき焼きが良いと贅沢な事を言い出した。旅館で食べたのが美味しかったらしい。予算オーバーな要望だが、俺も肉が食べたくなったので、今夜は、すき焼きにしようと買い物に出かけた。
すると、また、アスカがやって来て、
「シロウは、マッポに連れていかれちまうし参ったぜ!」
……マッポって何だよ!……
「アスカが、気配消すから面倒になったんだろう!お菓子は抜きだからな!」
「そうそう、シロウ、あの公園の子、成仏させてやってくれねーーか?」
「ブランコに乗ってた子か? 幽霊だったのか?」
「気づかなかったのか? 最近、誰かに殺されたらしいぜ!犯人は見てないらしいけど」
「えっ!そんなニュース知らないぞ!」
「まだ、遺体が発見されてねーーらしいぞ。だから、事件にもなってねえ。さっき一緒にそれを見てきたんだ」
「マジか?」
「そう、マジ、マジ」
「わかったよ。でも、親とかいるだろう? それに俺には浄化は無理だからシアンかスズネに頼むよ」
「親か……そいつも一緒に転がってたぜ!」
「どういう事? 」
「あの子の家には、家族の遺体があったって事さ」
「それ、大変じゃないか!」
「あぁ……あっちもそう思うぜ。できれば、犯人も捕まえてやってくれ。殺される前に悪戯されたらしいぜ!もう、トラウマもんだよ。そんな犯人、許せねーーぜ!」
「そうだな。わかったよ」
俺は、シアンとスズネに念話を入れて状況を説明した。
◇◇◇
シアンに状況を説明したら、人間同士の争いには、エリックを参加させた方が良いと言われたので、アスカを連れて今、エリックさんの部屋に来ている。
この家には初めて入ったが、何というか……人形の数が多いし、怖い。
「犯人は、変態人形好きエリックだと思う」
「シアン、冗談はやめてほしいデス。スズネにも伝えたのデスか?」
「うん。伝えたけど、親父さんに出かけるのバレて今、軟禁状態だと念話で連絡があったよ」
「わかった。犯人は、スズネのお父さん」
「シアン、ただ、探偵みたいに言ってみたいだけでしょう?」
「なぜ、シロウにバレた?」
「何となくそう思っただけ」
……全く、不謹慎なシスターだ!……
「アスカ、その家族の遺体がある場所はわかるのデスね」
「あたぼうよ!すぐにでも案内するぜ!」
「いや、やめておきましょう。下手に入り込んで証拠が台無しになってもしょうがありませんし、勘違いされて犯人に仕立て上げられても困ります。そうデスよね。シロウ」
……これ、俺を面白がってるよね。変態エリックめ!さっきの感謝返せ!……
「じゃあ、どうすんだよ〜〜あの子かわいそうだぜーー」
「シアン、地図を開いてアスカに場所を教えてもらって下さい。それと、海外経由のプロキシーで通報願いマス。あと、周辺の監視カメラのハックもお願いしマス」
「わかった。アスカ、こっち」
アスカはシアンのところでパソコンを覗き始めた。
「事件を公にするの?」
「はい。このままにはしておけませんし、公になった方が、情報も入りやすいデス。それと、シロウは、この件から手を引いて下さい。今日の件で目をつけられている可能性がありマス」
「俺も何かできる事をしたいんだけど……」
「こういう事は、私達の領分デス。それに、犯人はすぐに動くと思いマス。その時、お願いしマス」
「わかった……」
俺は、後の事は、シアンとエリックさんに任せて夕飯を作りに帰った。多めに作ってここに持ってこようと思っている。
しかし、許せない犯人だ。これが、睦美やサツキだったら、と考えるといてもたってもいられない気分になった。
◇
家に帰って夕飯を作っていると睦美が俺の携帯を返しに来た。
「シロウお兄ちゃん、あとで睦美が撮った写真を印刷してくれる?」
「わかった。楽しかったか?」
「うん。枕投げって自然と始まるんだね〜〜。睦美は、誰かの合図で始まると思ってたよ」
「修学旅行の感想がそれなの?」
「だって、遊ぶ時って、何々するから遊ぼーーって言ってからみんな参加するでしょう。でも、枕投げは、気づいたらしてたんだよ。凄くない?」
……何かわかる気がする……
「人それぞれだと思うよ。あれ、この人誰?綺麗な着物きた美人の人」
「あぁ〜〜睦美達が泊まった旅館の女将さんだよ。睦美が携帯落としたのを拾ってくれたんだ。その時、仲良くなって写真一緒に撮ったの」
「綺麗な人だね〜〜異国の人にも見えるけど着物姿が似合ってる」
「そうでしょう。睦美もそう思ったんだ」
俺は、携帯に写っているその女性が何故か気になっていた。




