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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第88話 ーーー優柔不断なはずなのにーーー




 冒険者ギルドを後にした俺は、少し街をぶらつく事にした。俺は、この世界の事を知らな過ぎる。知る機会がありながらそれを忙しさにかまけて後回しにしていたのでは、いけないのではないかと思い始めていた。


 他人には、できる事をすれば良いなどと軽口を吐き、自分は何もしないのでは、ただの性格の悪いダメ人間だ。


 すると、どこかで見た事のある人物と出会った。俺は、その人の名前を直ぐには思い出せなかったが、向こうは覚えていたらしい。


「これは、これは、シロウさんではないですか? 家の件はどうされました?」


 その人は、以前、この世界に家を買おうとして訪れた商人ギルドのシモンズさんだった。


「いや、まだ、決めていません。ところで、以前紹介してくれた湖の畔の家は、まだありますか?」


「はい。ございますよ。少し値下げをしまして今は、金貨150でお預かりしております」


……金貨150か……買えない事もないが……


「もし良かったら商人ギルドまでお越しくださいませんか?他にも物件が入りましたので」


「はい。お願いします」


 あの湖の家は、何か因縁みたいなものを感じる。どうしても欲しいというわけではないが、他の人の手に渡ってはいけないのではないかと思っていた。


 その家以外興味は無かったが「家」とか「物件」とかいう言葉にどうしても反応してしまう……悲しい習性を持っているようだ。


 商人ギルドに着き、シモンズさんにいろいろな物件を紹介されたが、小さい頃から新聞折込の不動産間取り図を見ていた俺には「ピン」とくる家は無かった。


「今、扱っている物件はこれだけですが、また、探しておきますね」


 シモンズさんは、俺の顔色で乗る気でないのがわかったのか、残念そうにそう言った。


「いいえ、もう、結構です」

「えっ!家探しは諦めたのですか?」

「違います。あの湖の畔の家を買います」

「そうですか……諦めたのですね……なんですとーー!」

「ですから、あの湖の畔の家を買おうと思います。金貨150で良いんですよね。これが代金です」


 俺は、バックの中から金貨を取り出してシモンズさんに渡した。


「ほ、本当に宜しいのですか? 値引き交渉とかしないで即決されて……」


 値段交渉のやり取りをするのが一般的であり、普段なら1円でも安い買い物をする為に、遠くのスーパーまで出かける俺が、こんな思い切った行動に出るなんて自分でもびっくりしていた。


「きっと、あの家に縁があるのですね〜〜」


 シモンズさんの言葉が心に残る。俺もそう思っていたからだ。


「手続きはどれくらいかかるのでしょうか?」


「あの家に関しては、これでおしまいです。書類の作成はこちらでしておきますので、後日、都合の良い時にでも取りに来て頂ければ結構です。商人ギルドの受け渡し証が持ち主の証です。これを今お渡ししますので」


 あの家の建物は、ボロボロだから鍵の受け渡しとかそういうものはないらしい。

 ただ、税金がかかるらしく、シモンズさんがあとで取りに来てくれと言ったのはその書類らしい。年間、銀貨6枚程だと言う。


 俺は商人ギルドを後にして、王宮前広場の近くにある噴水のある公園の俺専用? のベンチに腰掛けさっきの出来事を考えていた。


「わぁ〜〜家買っちゃったよ〜〜しかも、あのボロボロの家を〜〜」


 普通なら嬉しいはずなのだが、よく考えないで大胆な行動をした自分を恥じていたのだ。


「家は必要だよ。でも、俺、まだ、高校生だし……」


 家を買った事は、後悔していない。だが、何だろう。「やってしまった」感が拭えない。


 ベンチに座りブツブツ呟いている俺は、端から見れば、相手の事をよく知らないで結婚の返事をしてしまったが、後で冷静になって大変な事をしてしまったと悩んでいる男の姿に見えた事だろう。


 このベンチで小一時間ほど騒いで、俺は、購入した家に行こうと思った。




◇◇◇




 王都の西門を抜け、湖の家まで歩いて行こうとしている。小一時間程かかるが、陽気も良いので苦にはならない。それより、歩けば、少しでも体力がつくのでは? と考えていた。


 王都から離れると、魔獣もチラホラ出没する。特に「キラーラビット」と言われる魔獣が多かった。その肉は、脂がのって人気があると昔泊まった宿屋のおっさんが言ってた気がする。


 レベル上げにちょうど良いので、俺は、マップを展開しながら魔獣を探し、討伐しながら家に向かっていた。

 キラーラビットは逃げ足が早い。俺は、闇魔法ブラックシャドウを放ち、身動き取れなくなったところを剣で仕留めた。


 今の俺のレベルは12まで上がっていた。この間のセイレーンとの戦闘で少し上がったのだ。スキルポイントも30増えた。リーナの居室にドアを設置した為、少なくなっていたポイント補充も兼ねれば一石二鳥だ。


「ドア2が壊れてしまったし……新しいドアを買わないと……」


 マップで出来るだけ魔獣を見つけては狩って行く。あの湖の家に着く頃には、レベルが15になっていた。


「獲得経験値10倍というのは、本当、チートな能力だなぁ」


 そんな他人事のように思いながら俺は、購入した家をマジマジと眺めていた。


「本当、この建物使い物にならないよ。まぁ、スキル日曜大工もあるし、少しづつ直していこう」


 湖から優しい風が吹いて来た。俺は、エルフのペリンさん達と来たあの丘が気になって見てみると人影のようなものが見えた。マップで確認しても誰もいない。俺は、あの丘に行ってみようと思った。




◇◇◇




 丘の頂上まで来ると少し汗がにじむ。でも、ここは風が気持ちいい。

 ペリンさん達と来た時に、ロザリオを埋めたお墓らしき石の側に腰掛けバックから取り出した水を飲んだ。


「うまいっ!生き返るな〜〜水が一番だ」


 甘いジュースやお茶、大人の人ならビールが良いのだろうが、俺には水で十分だ。


「五臓六腑に染み渡るよ〜〜」


 景色の良いところで飲む水も格別だ。俺は、少し寝転んで空を見上げていた。近くに魔獣や人がいない事は、マップで確認済みだ。


「この世界に渡って何か、はじめて異世界転移した気分だよーー」


 思えば、この世界に来て、すぐ衛兵に捕まって(はりつけ)にされたと思ったら、リーナ達悪魔と出会い、忙しい毎日をこなすだけで自分の時間らしいものを持てなかった。今日は、そう考えると、特別な日のようだ。


「何が特別なの?」


 急に寝ている俺に話しかけて来た。女の子の声だ。マップで確認したら、ありえない人物がそこにいた。


「リーゼ……」


「正解ーー!流石、妹の契約者ね。いろいろな能力を持っているのがわかるわ」


「どうして、ここに?」

「ここは、私にとっても大事な場所になるのよ」

「大事な場所になる?」

「そう、今は、ただの丘だけどね〜〜」


「そうだ。何故、あの時、助けてくれたんだ?」

「あの時って〜〜あぁ、ハルファスにやられた時? いろいろ試したけど貴方が適任だからよ」

「適任って?」

「今は知らなくても良いわ。それより、下から女の子のスカートを覗くのはエチケット違反じゃなくて?」


「わぁーー、そんなつもりはないんだ。いきなりだから焦っただけで……」


「まぁ、見えても別に問題ないしね。私にも水ちょうだい」


リーゼは、いきなり現れて俺の水をゴクゴク飲んでいた。


「わぁ〜〜水って美味しいわね」

「俺もそう思うよ」


 俺は、起き上がり座り直した。リーゼの金色の髪の毛が湖から吹く風に揺られて光り輝いている。その横顔が、何処と無くリーナにそっくりだった。


「リーゼに会ったら、言おうと思ってたんだ。あの時は、ありがとう。助けてくれた理由はわからないけど、今、ここに存在出来ているのは、リーゼのおかげだ」


「礼を言われる筋合いはないわ。あの時、その代償に約束したんだもん」


「そう、それだよ。リーゼには、いろいろ聞きたい事がたくさんあるんだ。話してくれないか?」


「今は、ダメ。でも、いずれきっと話すわ……」


 リーゼは、どこか遠いところを見ているようだった。


「じゃあ、水、ご馳走様。またね」


「ちょっと、待ってくれ!教えてくれないか?少しでも……」


「そうねーー未来に起こる事象は変えられないけど、きちんと向き合って努力すれば、ちょっとはマシになるわ。強くなるのよ。シロウ」


 そう意味深な言葉を残し空間に消えてしまった。マップで確認してもこの世界に見当たらない。


「何なんだーー!あいつは……」


 俺は、リーゼが消えた空間をただ眺めていた……。






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