表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/132

第85話 ーーー肉と強さと石とーーー




 俺はミミーに家の帰りにリーナに会って邪神の事を聞こうと思っていた。リーナの居室に行くと、クルミがせっせと部屋の掃除をしていた。


「シロウ様、お帰りなさいませ」


 お帰りなさいなさいと言われると、ここが自分の家のように思えてくる……


「部屋綺麗になったね。クルミ、リーナいる?」

「サリーナ様でしたら、今、吸血鬼一族と会食をなさっています」

「吸血鬼って、ドラ子達と?」

「はい。そうです。ドラ子様がシロウ様の世界にいた時、美味しいお肉を手に入れたらしいので、その試食会です」


……ドラ子、いつの間に肉なんて手に入れたんだ?……


「そうなんだ。じゃあ、ここで帰りを待ってようかな〜〜」

「シロウ様もご一緒にいかがですか?」

「ドラ子が用意した肉なんでしょう? 遠慮するよ」


……前にゴブリンのモツを食べてたし……きっとロクなもんじゃない……


「そうですか……滅多に入らない確か、松坂牛のAー5ランクの肉とか言ってましたけど……」


「頂きましょう。すぐ伺います!」


 俺は、無理矢理?肉の試食会に参上するのだった。


……本当、無理矢理だから……




◇◇◇



「シロウ、来たんだ」


 その試食会には、リーナを始めドラキュラ伯爵とドラ子、そして見たこともない吸血鬼達がぶ厚い肉を美味しそうに食べていた。


「シロウ様、すぐ、シロウ様の分を用意致しますね」


 クルミは、俺をここまで案内して、すぐに厨房に行ってしまった。


「おーーシロウ殿、お主の世界の肉は格別じゃな〜〜」

「ドラキュラ伯爵、お久しぶりです」

「良い機会じゃ。みんなを紹介しよう。ほれっ、挨拶せんか」


「私がみんなを紹介しましょう」

「ドラ子よ。頼んだぞい」


「はい。シロウ様、この者が私の弟のドラ太郎です。そして、2番目の弟のドラ次郎です。最後が、妹のドラ代です」


「よ、よろしくお願いします。俺は、スズカゼ シロウです」


……このネーミングセンスは、うちと似たような感じがする……


 ドラ太郎さんは背の高いイケメンだ。それにドラ次郎さんは可愛らしい感じの男子だ。ドラ代さんは、ドラ子に似て綺麗な子だ。


……吸血鬼って顔で選んでるの? ……


「名前は、みんなドラキュラ伯爵がつけたんですよ。みんな恥ずかしがって、柩から滅多に出てこないんですけど、今日は、無理矢理、起こして連れてきたんです」


……名前のせいで引きこもってるのか? 吸血鬼達は……


「俺は、良い名前だと思いますよ」


「ほれっ、みんな聞いたか? シロウ殿は、お主達の名前が良い名前だとおっしゃっている。もっと、自信を持ちなさい」


「シロウ、ここに座って。ミミーは大丈夫?」


「あぁ〜〜メーガさんに厳しくしないように納得してもらったよ。休み時間と休日ができただけだけど……」


「前よりはマシ」

「そうだといいんだけど……」


「ベルゼブブの娘も大変じゃったらしいのう〜〜」

「えーーでも、もう大丈夫だと思います」

「流石、契約者じゃのう〜〜」


 すると、クルミが肉を持ってきた。


「シロウさま、お召し上がりください」

「ありがとう……うまっ!」


「シロウ様、喜んで頂いて恐縮ですわ」

「ドラ子、いつ、肉仕入れたの?」

「シロウ様が学校に行かれている時、弟のバンピーゼに会って肉をもらってきたのですよ」

「そうなんだ〜〜それなら納得……。そう言えば、バンピーゼさんだけ名前のセンスが違ってるけど、どうして?」

「それは、ドラキュラ伯爵が最初は、ドラ五郎ってつける予定だったのですが、兄妹達が反対してバンピーゼにしたんです」


……まるっきりうちと同じじゃんかーー!……


「そうだったんだ。俺も名前で苦労してるから、その気持ち良くわかるよ」


『そうですよねーー』


 今まで暗かった吸血鬼兄妹達が一斉に明るくなった。同じ境遇の者同士何故か話が盛り上がった。


 会食が終わる頃、俺は邪神の事をリーナに聞いた。


「邪神アンラ・マンユは名前を聞いたことがあるけど詳しくは知らない。私が産まれる前の話」


「そうなんだ……」


「吸血鬼達なら知っていると思う。その時代も存在していたから」


「私達は小さかったのでよく覚えてないです。ドラキュラ伯爵はご存知だと思いますけど……」


ドラ子も詳しくは知らないらしい……。


「アンラ・マンユか……久しくその名前を聞いておらんのう。確かに、彼奴は最悪の邪神と言われておった。だが……いや、なんでもない。儂も歳じゃのう。記憶が曖昧じゃ〜〜」


「そんな昔の話なんですね。それなら、復活なんて気にしなくても大丈夫ですよね」


「そうさのう〜〜。もう、何処に封印されているのかさへわからんからのう〜〜」


 気にし過ぎなのかも知れない。でも、マンモンの事は後でリーナに聞こうと思っていた。


 俺達は、久し振りに和やかな食事を楽しんだ。




◆◆◆



 俺が日本に戻った時は、睦美を修学旅行に送り出した後だった。マイルームを経由していたので時間の進行はない。


「でも、これから学校行くのちょー面倒いんだけど……」


 時差ボケならに時空間ボケである。今の俺は、もう、夜寝る前の感覚だ。


「あぁ〜〜学校なんか行かないで引きこもっていたい〜〜」


 そんな俺の独り言を二葉姉が聞いていた。トイレに起きてたらしい。


「シロウ!何言ってんの! せっかく入った高校、ズル休みしたらお姉ちゃん、許さないからねーー!」


「二葉姉、起きてたの? わかったよ。ちゃんと行くから……」


 二葉姉得意のスリーパーホールドだ。どこでこんな技、覚えたのやら……


 俺は、眠そうな二葉姉を置き去りにして、さっさと学校に向かうのだった。


……睦美は今頃、バスの中か?……大丈夫だろうか?……


 心配する必要のない事まで気になっていた。俺は、異世界の数日間で、すっかり臆病風に吹かれていた。それは、ミミーに刺された感覚が残っていたからだ。俺は、強さとは何だろうと考え始めていた。






 眠かったので、学校が終わったら早く帰ろうとしていたら、不思議研究倶楽部の高志間 章先輩に捕まってしまい、強制的に部活に参加しなければならなくなった。


 部室を訪れると、3年の銅嶋 翔先輩が本を読んでいた。


「鈴風君、今日は来たのか?」

「すみません。いつも顔を出せなくて……」

「君のお姉さんからの話で大体の事情は知っているよ。家の事を殆ど引き受けているんだって?」

「三季姉を知ってるんですか?」

「あぁ〜〜同じクラスだからね。この間、弟を頼むって念を押されたよ」

「すみません。強引な姉で……」

「そんな事はないさ。クラスの人気者だから、僕も話しかけられて嬉しかったしね」


……素直にこんな事を言えるのは何か凄いと思う……


「そういえば先輩。強さって何だと思いますか?」

「いきなりだね〜〜そういう話は嫌いじゃないけど、その強さは武術やスポーツの事かい? それとも精神的な事なのかい?」


「両方です」


「それは、欲張りな質問だね。僕は強さにもいろいろあると思うんだ。例えば、武術や喧嘩など腕っ節の強さは鍛えたりすれば身につくだろう。でも、精神的な強さは、直ぐには身に付かない。元々の性格があるからね。もし、気弱で運動神経のない僕が強くなろうとするならば、身体を鍛える事はもちろんだけど精神的な面を重点に鍛えると思うよ。僕にはスポーツや喧嘩のセンスが無いからね。それなら、少しでも得意な分野である学問とか研究とかに力を入れて補おうとすると思うよ。勉強もセンスが必要だからね」


「センスですか……」


「そう、センスだよ。君のお姉さんは運動のセンスがあるよね。だから、少しの時間で難しいと言われる事をこなしてしまう。僕が同じようにできるようになるには、きっと倍以上の時間が必要だと思うし、もしかしたら、時間をかけてもできないかもしれない。でも、運動センスのある人は、いとも簡単にできてしまうんだ。それに加えて努力をされたら叶いっこ無い訳さ。これは、勉強もそうだけど、センスのある人は、ちょっとの時間で問題の核心を見極め重要な部分がわかってしまう。だけど、勉強のセンスが無いとどれも重要に思えて倍以上の時間がかかってしまうんだ」


「それって、生まれ持った能力とか天才とかの話じゃないんですか?」


「いや、違うよ。もちろん天才的な人物はいると思うよ。でも、今、騒がれてるスポーツ選手や頭の良い人達は生まれ持った能力だけで努力をしなかったと思うかい?」


「いいえ、きっと、凄い努力をしてると思います」


「そうだよ。センスを磨いてさらに努力を重ねた結果だと思う。それを天才というなら、その人に失礼だと僕は思うんだ。本当の天才とは、努力も無しにできてしまうものだと僕は思うからね。それと僕はできればセンスがなくとも頑張っている人に好感が持てるよ。そういう人の姿は、何も持ってない僕に勇気を与えてくれるからね」


「そうですよね。俺もそう思います……」


……俺は自分の能力をろくに知りもしないで、使いこなしてもいない……


「その努力の過程で強さは身につくものじゃないのかな? 僕もまだ、途上だから、偉そうな事は言えないけどね」


「ありがとうございます。先輩の話はとても身に沁みました」


「君が今、何を思い、何を感じたのか僕は全くわからないけど、少しでも役に立てたのなら嬉しいと思うよ」


 銅嶋先輩は、俺の取り留めのない質問を真剣に答えてくれた。きっと優しい人なのだろう。こういった事でも真剣に向き合うのも強さの1つなのではないかと、俺は、先輩の言葉の意味を噛み締めていた。




◇◇◇



「睦美ちゃん、あっちで写真撮ろうよーー!」

「待ってーー!今、行くからーー」


 睦美はカメラを持って来てないのでシロウ兄が貸してくれた携帯で写真を撮ろうと思った。携帯をポケットにしまい同級生を追いかけると、後ろから声がかかる。


「お嬢さん、携帯落としましたよ」

「えっ! 本当だーー。ありがとうございます」


 よく見るとその人は、湖を見ていた着物を着た女性だった。歳は40歳前後だろう。落ち着いた雰囲気が、堂に入っていた。

その着物の女性が携帯を睦美に渡そうとした時、着物の胸口からペンダントが垂れ下がった。大きな赤い楕円形の綺麗な石だ。


「ありがとうございます……」


 睦美は、そのペンダントの石から目が離せなかった。それを見ていた女性が、


「この石は、価値はないものなんですよ」

「えっーー!ルビーとかじゃないんですか?すっごい綺麗ですけど……」

「そんな高価な物ではないんですよ。でも、私にとっては、何より大事な物なんです」

「わかります〜〜その気持ち〜〜」


 女性は、この手の光り物には興味は尽きないらしい。


「お嬢さんは、旅行ですか?」

「はい。学校の修学旅行で来ました」

「あ〜〜そうでしたか〜〜いけない、そんな時間なのね。多分、お嬢さんとはまた、会えるわよ」

「えっ、そうなんですか?」

「えぇ〜〜だって……それはお楽しみにしておきましょう。それじゃあ、またお会いしましょう」


 そう言って、その着物の女性は足早に去って行った。急ぎの用事があるかのようだ。


睦美は、あの女性のペンダントの石が気になっていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ