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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第84話 ーーー半魚人族の話はーーー





「すごいカーブね〜〜」

「本当、山に登ってるって感じだね〜〜」


 睦美達の乗ったバスは「いろは坂」の中腹を走っていた。急カーブを走り過ぎる度、視界が開けてくる。

 バスの中では、馬須賀(ばすが) 伊都(いと)さんが「今日、みんなが泊まるホテルは、日光では格式高い由緒あるホテルなんですよ」とか「夜は枕投げとかするのかな?」などしきりに、みんなに話かけていた。車酔い防止のつもりなのかもしれなが、煩いので黙っていてほしい。


 いろは坂を登りきると大きな湖が見えてきた。中禅寺湖だ。すると、バスガイドさんが


「えっ〜〜左側に見えるのが中禅寺湖です。周囲約25Km 最大水深163mです。約2万年前に男体山の噴火により噴き出た溶岩が渓谷を()き止めできたと言われています。今日のお昼は、この湖の見えるレストランで食べますよ〜みんなもお腹が空いたでしょう?」


 睦美は、バスの中でお菓子を食べていたのであまりお腹が空いていなかった。湖を見ると、その畔に着物を着た女性がボンヤリ湖を眺めているのが気になったが、バスは、レストランへと走り去って行った。




◆◆◆



 一方、シロウ達は、半魚人族のカシミールから話を聞いていた。


「私達半魚人族は、1000年前迄はとても権力を持つ種族でした。海の支配者とも呼ばれて良い気になっていたのかもしれません。この世界が荒れていた1000年前に、種族の一部のものが怪物セイレーンと手を組み我々半魚人族は滅びました……」


「身内の裏切りにあったという事ですか?」


「私から見ればそう思いたいのですが、どうも納得がいかない点もあるのです。私は、半魚人族の王家の長男でした。順風満帆に行けば王になっていたでしょう。でも、私の配下の者が、王家の宝玉の1つを盗んでセイレーンに渡してしまったのです。何故、そのような事をしたのか今でもわかりませんが……」


「カシミールさんは、王家の方だったんですか?」


「今は無き国の王です。滅んでしまっては、意味がありません。あるのは宝玉の1つを持っている事だけですが……」


「そんな事はありませんわ。国が滅びても心までは滅びませんもの」


 アンリエット王女の言葉は、同じ王家のものとしての誇りを感じさせる。


「その宝玉は、そんなに大事な物なんですか?」


「そうです。これは、王家に伝わるとても貴重な物です。全部で3個ありました。1つは私、セイレーンも1つ持っているはずです。あとは、私の妹が持っていると思います」


「妹さんがいらっしゃるんですね?」


「はい……今は、行方がわかりませんが……」


「そうですか……」


「1000年前にセイレーンが宝玉を求めて戦いを挑んできました。その時、一族は滅んだのですが、私と妹は、父から宝玉を授かり、転移したのです」


「転移ですか?」


「はい。この宝玉の力の1つです。私は、戦いの最中に転移しました。行き先は冥界でした……」


「えっ!冥界ですか……」


「はい。私は怖くてこの1000年の間、妹を探しながら隠れて生き延びました。しかし、冥界から出る事が出来なかったのですが、つい半年前、封印の一部が解けて冥界から出る事が出来ました。それで、宮殿に向かったのですが、セイレーンに捕まってしまって地下牢に閉じ込められていたのです」


……ルシファーとアザゼルが冥府の封印を解いた時期と一致している……


「では、妹さんも冥界に転移したのですか?」


「いいえ、冥界を隈なく探しましたが妹はおりませんでした。私とは違う場所に転移したみたいです」


……1000年も冥界に隠れて生活してたんだ。本当の事だろう……


「妹様もきっとご無事ですわ」


 アンリエット王女は、この手の話に弱いらしい。目に涙を浮かべていた。


「私もそう思いたいのですが……」


「宝玉は、転移の能力を持つのですね。何故、セイレーンはそれを欲しがるのでしょう?」


「これの本来の能力は封印能力です。この宝玉は、海底宮殿のあるものを封印する為、使用されていました」


「あるものとは?」


「最悪の邪神アンラ・マンユです……」


「アンラ・マンユですってーー!」


「アンリエット様、知っているのですか?」


「はい。王宮の図書で読みました。数千年前、この世界で神と悪魔達が戦っていた時代、あまりの強さに世界が滅びかけたという事です。そこで、神と悪魔達が一時休戦をしてアンラ・マンユを封じたと書いてありました」


「アンラ・マンユ知ってるでちゅう。厄介者だとメーガが言ってたでちゅう」


 ミミーも知ってるって事は、余程、その筋では有名なのだろう。


……神と悪魔が手を結ぶ程強いってどれだけなんだよ……


「その通りです。私達、半魚人族はアンラ・マンユの封印の守り人として繁栄していたのです。この宝玉が3つ揃えば、封印を解く事も出来ます。セイレーンは、その封印を解きたかったのでしょう」


「そんなのが蘇ったらエラい事だ。セイレーンにその宝玉が見つからないで良かったです」


「半魚人族は、脇腹にエラがあります。その中に入れておいたので見つかりませんでした」


「話を聞けば、妹さんを探さない方が良いように思えるけど……」


「カトリーヌ、それはいけませんわ!逆に早く妹様を見つけて保護しないと危険ですわ」


「それもそうね。セイレーンが狙っているんだもん。失言でした……すみません。カシミールさん」


「いいえ。構いません。妹が無事であるならその方が良いと思っていた事も事実です」


「できれば、セイレーンが持つ宝玉も確保しておきたいところでありますね」


 メイド1号は、まともな意見を言った。


「ですが、地下牢に捕まっている間、セイレーンの様子がおかしかったのです。どうも宝玉を持っていないようでした」


「長い期間に紛失したとか?」


「カトリーヌ様、多分、違います。セイレーンも利用されたのではないですか?そのカシミールさんの配下に……」


「ソランジュ、どういう事なのですか?」


「カシミールさんの話では、敵は宝玉を初めから狙っていたとしか考えられません。セイレーン達が、宝玉を欲しがるの理由もわかりません。邪神が復活したら、セイレーンとて、滅んでしまうでしょう。ですので、誰かの意図的な策略があったのではないかと思ったのです」


 メイド1号の見識は、正直鋭いと思った。


「カシミールさん、その配下の人物の名前はなんというのですか?」

「あいつですか……あいつは確か、マンモンと名乗ってました……」


「マンモンーーっ!」


「知っているのですか?」


「え〜〜イヤと言うほど……」


 こんなとこでマンモンの名前が出てきた。俺は、また、面倒ごとが起こりそうな予感を感じていた……。




◇◇◇



 俺達は、入江から王都に転移をして街に戻った。半魚人族のカシミールさんは、アンリエット王女の賓客として王宮の客人としてしばらく世話になる事になった。


 そして、俺とミミーは、冥府に帰り、今、ミミーの執事メーガと話し合っている。


「ミミー様、ご無事のお帰り何よりで御座います。メメーー」


 ここは、冥府にあるミミーの家である。前にもクルミと来たが、大きな屋敷だ。


「ミミーは、帰りたくなかったでちゅうーー!」

「そんな事を言ってはいけません。それと、幼児言葉が直ってませんぞ」

「メーガは、いちいち細かいでちゅうーー!」

「それは、ミミー様の為を思ってですねーーメメーー」


「メーガさん、俺からも良いですか?」

「もちろんです。メメーー」

「ミミーは、どれだけ勉強してるんですか?」

「一日中ですが、何か問題でも? メメーー」

「一日中ですかーー!休みの日は?」

「休みの日などありませんが、何か問題でも? メメーー!」


「メーガさん……それダメです! 悪魔でも休み無く勉強などできるはずがありません。それに、効率も悪いです。息抜きはとても大切なんですよ。メリハリが大事なんです!」


「そんな事はありません。メメーー!」


「それじゃあ、また、同じ事の繰り返しですよ。今回は、ミミーも戻って来ましたが、今度、同じような事があっても、戻って来る保証は無いのですよ。それでは、本末転倒ではないですか? 休み時間と休日を要望します」


「ミミーもお休みほしいのでちゅうーー!」


「う〜〜む。確かに、家出してそのまま帰らない吸血鬼もおりましたし〜〜わかりました。休み時間と、休日を設けましょう。それでどうですか?メメーー!」


「やったーーでちゅうーー!」

「ミミー様、幼児言葉を直して下さい。メメーー!」


「ミミー、それでいいのか?」


「うん。ミミーは、たくさん勉強してシロウお兄ちゃんを守ってあげるのでちゅうーー! シロウお兄ちゃんは、ダメダメでちゅから〜〜」


……これで良かったのか?なんか俺が納得できないんだけど……


「ありがとうな、ミミー。でも、俺もいつまでもダメダメじゃないぞ。ミミーよりも早く強くなって、今度は、俺がミミーを守ってやるからな」


「それは、無理なのでちゅう……もう、私を助けてくれたし……」

「えっ、何か言った?」

「何でもないのでちゅうーー!」


 どうやら、ミミーの件はひとまず落ち着きそうだ。


 俺は、少し安心したのだった。








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