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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第4章

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第83話 ーーー暴走した幼女悪魔はーーー





 海底宮殿内の広間では、暴走してしまったミミーが黒い瘴気を纏っていた。

 怪物のセイレーンは、ミミーの身体から湧き出る瘴気に触れ苦しみ出して息絶えていった。


 これは、ミミーが持つ疫病を撒き散らす能力のひとつだ。きっと海水に溶け込んだ毒を吸い込んだのだろう。


「このままだと、王女達が危険だ……」


 毒耐性を持っていない王女達をどうにか避難させなければ……


『ゴミ虫!何だ、これはーー』


 メイド1号が影渡でやって来た。


『王女達をすぐ、避難させて下さい。毒が海水に溶け込んでいます』

『毒だと……わかった。でも、ミミーちゃんは、どうするんだ?』

『俺が、何とかします。あの入江で落ち合いましょう。早く逃げて下さい』

『きっと、ミミーちゃんを連れて帰るのだぞ! ゴミ虫の武運を祈ってやる』


 どこまで上から目線なんだ……


 メイド1号は影渡で王女達のところに戻ったようだ。

 避難し始めているが、1人多いけど……誰?


 ミミーの暴走は止まらない。もう、生きているセイレーンは一体もいなかった。


『どうしたら、ミミーを止められる……どうしたら……』


 俺は、マイルームのドア2を展開させた。だが、海の中なので浮力で浮いてしまい、思うように操れない……

 しかも、ミミーの移動速度は速い。これでは、ドアを使えない……


『殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、みんな死んでしまえーー!』


 ミミーの悲痛な思念が流れ込んでくる……


「ミミーは、悲しんでるんだ……止めなきゃ……」


 王女達は、上手く脱出できたようだ。でも、死の海水は徐々にその範囲を広げていった。


「ミミー!待ってろ!絶対、どうにかしてやる!そのあとは、くすぐりの刑だ!」


 俺は、ミミーを捕まえようとミミーの背後に迫った。でも、瘴気を纏ったミミーは、すぐに気配を感じ俺の側から離れる。そして、俺に向かって魔弾を撃ち込んできた。


「俺の事が分かってないのか?」


 ミミーの放つ魔弾は凄まじく、避けるだけで精一杯だ。


「海の中では、黒翼のマントも羽織れないし……あの攻撃を避けながら捕まえるのは至難の技だ……」


 すると、リーナから念話が入った。俺の焦った気持ちが感覚共通を持つリーナに通じたのだろう。


『シロウ、何かあった?』

『すまん……ミミーを暴走させてしまった……』

『そう……』

『リーナ、どうすれば暴走は止まるんだ?』

『暴走した悪魔を止める方法は無い。あるのは、神の浄化、または、シロウの部屋に閉じ込めるだけ……』

『わかった。何とかして、ミミーをマイルームに押し込むよ』

『その方法は、ミミーも気づいてる。多分、無理……』

『じゃあ、どうすれば……』

『殺すしか無い……』

『えっ!?』

『シロウ、ミミーを殺しなさい!』

『リーナ!何、言ってんだよ。無理に決まってるだろう。あのミミーを殺すなんて、できるわけないだろう!』

『シロウが出来ないのなら、私が殺す……』

『リーナ、どうしちゃったんだ?』

『悪魔の暴走は連鎖する。ミミーを殺さなければ、その近くにいる悪魔も暴走する。次第には、冥界全土に及ぶ……以前、そうだったように……だから、私が殺す。もう、あのような過ちを繰り返さない為にも……』

『リーナは来るな!俺が絶対、何とかするから……』

『わかった。少しだけ待つ……』

……[念話終]……


「ミミーを殺すなんてできるわけないだろうーー!」


 くそっ!俺がもっとちゃんとしてれば、ミミーをちゃんと見てれば……こんな事にならなかったのに……


 俺は、ドアを担ぎ、ミミーの後を追うが、ミミーの動きは早く追いつけそうもない。


「この広間を出られてしまったらもう、抑える可能性がなくなる……」


 俺は、ミミーの放つ魔弾を避けながら、ドアを担ぎミミーに迫る。しかし、ミミーは、そのドアを見て、持っていた剣でドアを切り裂いてしまった。


「マジか〜〜ドアが……切り裂かれるなんて……」


『そんなもので私はやられてあげない……死ね、死ね、死ね、死ね!』


 ミミーの攻撃がさらに速くなった。避けるのも限界だ。


 ミミー、ごめん……

 ミミー、俺が悪かった……

 ミミー、俺にはこれしかできない……



 リーナ、さようなら……



【ブラックシャドウ!】


 俺は、ミミーに向けて闇魔法ブラックシャドウを放った。闇魔法に特化した悪魔達には、目眩しなんて、ほんの一瞬しか効果はない。


 ミミーがブラックシャドウをに包まれると俺は、ミミーのそばに駆け寄り、そして、抱きしめた。


「ミミー、もう、離さないぞ!」


『離せーー!死ね、死ね、死ね、死ね……』


 俺は、ミミーに何度も刺されていた。ストックのフェニックスの涙を飲みながら、何度も、何度も……


『死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね……』


 ミミーに刺される度に激痛が走る。フェニックスの涙を入れた小瓶が海中に何本も漂っていた。


「ミミー、ごめんよ。俺は、ミミーをわかってなかった……」


『死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね……』


「ミミー……」


 痛みで、意識を失いそうだ……でも、俺は、絶対、この手を離さない!


『死ね、死ね、死ね、死ね、離せ!離せ!離せ!』


「いやだーー!絶対、離さないーー!ミミーが戻るまで絶対にだ!」


『離せ!死ね、離せ!死ね、離せ!死ね』


 そう叫んでいるミミーを抱きしめている俺は、ミミーの肩が僅かに震えているのがわかった。それは、まるで泣いているかのようだった。


「いやだーー!絶対離すもんかーー!ミミー!『ミミーッ!』」






 ……暗い……



 ……何も見えない……



 ……俺は、死んだのか?……



 ……痛みは無い……



 ……ミミーは、どうなったんだ……



 ……止められなかったのか……



 ……ミミー……



 ……リーナ……




『何?』


『えっ!?』


『シロウ、私の名前、呼んだでしょう?』


『呼んだ……リーナ?』


『そう』


『どうして、ここにいるの? 夢?』


『違う。転移してきた』


『転移……そうだ!ミミーはっ?』


『あそこで寝てる。疲れたみたい』


『暴走は? ミミーはどうなったの?』


『シロウがミミーの暴走を止めた。冥界では異例のこと』


『じゃあ、ミミーは、死ななくて済んだんだよね』


『そう。シロウ、よくやった。これは、褒美』


 リーナの顔が近寄ってきた。俺は、その綺麗な瞳を見つめていると、口に暖かい温もりを感じた。熱いものが体内に流れ込んでくる。


 俺は、また、リーナに助けられたようだ……。




◇◇◇



 あの後、リーナは冥府に転移で帰っていった。ミミーは、しばらく俺に預けるという。


 リーナから聞いた話では、俺の身体はボロボロだったらしい。腕は取れ足も捥げていたそうだ。リーナの血を飲まなければ死んでいただろう。


 ミミーは、疲れたのかぐっすり寝ている。時より


『シロウお兄ちゃんはダメダメなのでちゅう〜〜むにゃむにゃ……』


 というダメ出しの寝言を言いながら……


 寝ているミミーの顔は、いつものミミーだった。どうやら本当に暴走は抑えられたようだ。


 俺は、ミミーを抱えこの広間から出て行き、王女達が待つあの入江へと泳いで行く。


 海底宮殿周囲では、セイレーンや魔魚そして普通の魚の死体が漂っていたが、宮殿から離れて行くに従って普通に泳ぐ魚も増えてきた。ミミーの毒の影響は宮殿周囲500メートルから1キロ圏内で収まっていた。いずれ、拡散され毒も薄くなるだろう。


『あれっ、シロウお兄ちゃん、何してるでちゅか?』


 ミミーが目を覚ましたようだ。


『ミミー、起きたの? 今、みんなのいる入江に向かっているんだよ』

『そうでちゅか……なんでミミーは、シロウお兄ちゃんに抱っこしてるでちゅか?』

『ミミーは頑張ったから、疲れて寝ちゃったんだよ』

『ミミーはシロウお兄ちゃんに何かしたような気がするでちゅう……』


 暴走時の記憶は曖昧らしい。でも、その方が良い。


『多分、それは、俺の事、ダメダメだと言ってた事だよ。そんな事を言うミミーには、くすぐりの刑を執行しなければいけない。こちょこちょ……』

『くすぐったいのでちゅう。やめてほしいのでちゅう。もう、言わないのでちゅう〜〜』

『わかればよろしい』

『シロウお兄ちゃんは、意地悪なのでちゅう。もう、知らないのでちゅう!』

『そんな事を言うミミーもくすぐりの刑だぞ』

『わかったのでちゅう〜〜、もう、言わないのでちゅう〜〜!』


 ミミーは、とても機嫌が良さそうだった。俺は、そんなミミーを見て安心するのだった。




◇◇◇




 入江に向かう途中、レヴィアタンに会った。王女達を入江まで運んでくれたらしい。ミミーの暴走の事は内緒にしてもらった。


 俺達もレヴィアタンのヒレに掴まり、入江まで運んでもらった。

 入江では、俺達の帰りを待っていた王女達がソワソワしながら砂浜を歩き回っていた。


「シロウ様ーー!心配致しましたわ」

「よかった〜〜シロウさんもミミーちゃんも無事で〜〜」

「ミミーちゃん、良かったです……ふん、フナムシは生きてましたか……」

「私の水着姿を脳内削除して下さい!」


 王女達、特にメイド達は、相変わらずのようだ。

 俺は、王女達の側に見かけない紳士がいるのを見かけた。王女達が逃げる時、1人多かったのはこの人の事だろう。


「皆さん、心配かけました。それと、その方は?」

「この人は、半魚人族のカシーミールさんです。海底宮殿の地下牢に閉じ込められていたのをお助けしたのです」


 アンリエット王女達は、セイレーンとの戦いの中で人助けをしていたらしい。


「そうだったのですか……でも、なんで捕まってたのですか?」

「それはですね……」


 アンリエット王女が話そうとすると、その半魚人族の紳士カシミールさんが話し出した。


「それは、私からお話ししましょう」


 俺は、その半魚人族の話を聞き入ってしまった……。






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