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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第3章

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第74話 ーーー最悪の日を阻止せよ!(1)ーーー

 




 俺が経験した事を考えると、この世界に来た悪魔達と接触するのはアキバに行った土曜日の午後、ビルの屋上でマンモンに会うのが最初だ。


 それと、その夜、クルミとシアンは、買い物途中でサキュバスに会っている。あの地獄の伯爵ハルファスは、後ろの席の大輝に化けていた。水曜日には、マスクをして声を枯らしていたので、ハルファスが大輝と接触したのは、火曜日の放課後から次の日学校に来るまでだ。


 地獄の大公爵アガレスとは、一度も接触が無かったが、地震を起こしていたのがこいつなら、土曜日の午後に起きたペルー沖の地震や最悪の日に伊豆大島付近の地震は、アガレスの仕業だ。


 最悪の日には、マンモンはスイスに、サキュバスは都内に、ハルファスは俺の前に、アガレスは、伊豆大島に現れる。でも、その日では、もう遅い。


 アキバに行った日迄に奴らを仕末しないと、犠牲者が増える……


「これは、どうやって使うのでありますか?」


 俺達が持ってきた魔具をドラ子、アザゼル、クルミは、装着できたがフクロウの姿のソラスは、身体に付ける場所がない。


「腕輪だから、普通は手に付けるんだけど……ソラスは……羽根に付ける訳にもいかないし……困ったなぁ……」

「ソラス、羽根の内側の亜空間の中にしまっておけば〜〜」

「そんな事できるの?」

「ソラスの羽根は、凄いんだから〜〜ねぇ〜〜ソラス」

「サツキ様の言う通りであります。我が羽根は、冥府でも類をみない素晴らしいものであります。どうです。この色、艶〜〜ホーホケキョ」


 ……ドヤ顔のソラスを見てると何だか、殴りたくなってきた……


「サツキの言う通りに亜空間に仕舞えるならそれで大丈夫だと思うよ」


 ソラスは、せっせと魔具の腕輪を羽根の内側の羽毛の中にしまい込んだ。


「ドラ子、どう?みんなの気配感じる?」

「目の前にみんないるので何とも言えませんが、魔力の流れは感じませんね。基本的に悪魔達は、気配を消すという面倒くさい事しませんから〜〜」


 ……大丈夫か? この悪魔達……


「シロウ、シロウ情報掴んできたぜーー!おっと、その前に、一杯くれよ〜〜」

「アスカ、ミルクでいいんだよね?」

「そうそう、お子様には、毒だけどなぁ〜〜」


 ……子供から大人まで普通に飲んでるよっ!……大丈夫か?この幽霊……


 アスカには、マンモンが化けていた会社、東内木(とうなぎ)投資コンサルタントの社員を調査してもらっていた。


「ゴクッ、ゴクッ!あぁ〜〜効くぜ〜〜この為に生きてんだよなぁ〜〜」


 ……アスカ、君はもう死んでるんだよ……


「で、どうなの?」

「そうそう、何でも、課長の下柳さんは、子供が中学受験で大変らしいぜ。それに、係長の大友さんは、子供が産まれたばかりですぐ帰っちまうらしい。それと、鈴木さんていう女上司は、また、お見合いダメだったらしいぞ。もう15回目らしいぜ。結婚なんかしなくてもいいのになぁ〜〜」


「アスカ、それって、OLの給湯室での噂話じゃないか!俺が知りたいのはそういう事じゃなくてだなぁ〜〜」

「シロウ、何興奮してんだ。まさか〜〜女上司萌えか?」


 ……あ〜〜殴りたい……この怒り、誰かわかってくれ〜〜……


「それと、写真撮って来たぞ。シロウと似てそうな奴って、こいつでいいか?」


 アスカが差し出したデジカメの写真を見て、記憶が蘇った。あのビルの上で包丁持って一番初めに襲いかかって来た男だ。


「それでいいよ。名前わかる?」

大丼田 (だいどんでん)海士(かいし)っていうみたいだ。もちろん、独身の1人暮らしだ」

「そうか……」


 俺は、スキル『ディスガイズ』で変装し、この会社に潜り込もうとしていた。




 ◇◇◇



 木曜の朝、俺はスキル『ディスガイズ』を使って、「大丼田(だいどんでん) 海士」なる人物に化けていた。本物は、昨夜のうちにソラスが睡眠魔法で眠らせておいた。3日は起きないだろうということだ。


 大丼田(だいどんでん)さんから拝借した服を着て、俺にとっては、初出勤だ。サポートにアスカがついて来ている。それと……


「今日からお世話になる冥界人材派遣から参りました宮結木(きゅうけつき) ドラ子と言います。宜しくお願いします」


「話は聞いてるよ。やり手なんだって?」

「そんな事はありません。噛んだり吸ったりするのは得意ですけど……」

「そ、そうなんだ。宜しくね」


 ドラ子は、派遣社員として潜り混んだ。もちろん、裏技は使ったけど……


 ……噛んだり、吸ったりってなんだよ……上司の人、困ってるじゃんか……


大丼田(だいどんでん)君、君、宮結木(きゅうけつき)さんにいろいろ教えてやってくれる?」

「わかりました……え〜〜と……」


『大友係長だよ。全く、シロウは物覚え悪いぜ!』


 ……アスカ!この人見るの初めてなんだよ。名前なんか分かる訳ないだろう……


「わかりました。大友係長」

大丼田(だいどんでん)君、頼んだよ」


 しかし、俺の席どこだ? 会社なんて初めてだしちっともわかんないぞ〜〜アスカが、椅子に座って「ここだ!」って言っている。俺と、ドラ子は、アスカの言う通りに席に座りパソコンに目を向けた。


 何?この表とグラフ……しかも、いろんな会社名がずらりと並んでるぞ……

 数字ばっかじゃん! これ、どうしろっていうんだ?


大丼田(だいどんでん)さん、私、何をすれば良いでしょうか?」


 ……ドラ子、俺に聞くなっ!俺だって、何がなんだかちっともわからん……


 すると、近くの綺麗なOLさんがやってきて、小声で……


大丼田(だいどんでん)さん、今晩、いつものところで……」


 ……なになに、それって、どういう話なの?……


「すまない……今日は、予定が入ってしまって……」

「そうですか……残念です。また、今度、お願いします……」


 ……もしかして、デートの約束とか?羨ましい……あんな美人と……大丼田(だいどんでん)め〜〜


 アスカは好きに飛び回っている。そして、とある男性に興味を持ったらしくそのおっさんをジッと見つめていた。


 ……アスカの奴 何やってんだーー。ま、まさか……


 アスカは、そのおっさんの髪の毛をジッと見つめていた。どう見てもカツラに見える。


 ……ダメだーー!アスカーー!それは、おっさんにとって命より大切な物なんだぞ!……


 俺が、そのおっさんを見ていたのが、その人も感づいて、俺の名前を呼んだ。


大丼田(だいどんでん)君、ちょっと」


 手招きで呼ばれてしまった。すごい偉い人みたいだ……。


「私に何か用かね?」

「いいえ、その〜〜なんでもないです」


 ……アスカ!引っ張っちゃダメだーー!……


「まぁ、いい……仕事に戻りたまえ」


 そう言ったときアスカは、髪の毛を持ち上げてしまった。それを抑えようとする俺。結果は……。


「な、な、何をする〜〜〜!」

「ごめんなさい、ごめんなさい。そんなつもりじゃなくて、その抑えようとして〜〜」

「か、返してくれないか!その〜〜それを……」

「えっ!?」


 俺は、手におっさんのズラを持っていた。


「わぁ〜〜すみません。すみません」


 おっさんは、俺を物凄い目で睨みながら、洗面所に消えていった。

 会社内にはただならぬ雰囲気の空気が流れていた。



 ひと騒動があったが、俺は、パソコン画面に表示されている数字を適当にクリックして、仕事をしているふりをしていた。ドラ子も適当にやっているらしい。すると、今度は……


「A23875スットプ安だーー!担当だれだーー!」

「B50987スットプ高です。担当誰でしたっけ?」


 周りの社員達が騒いでいる。


 ……何かあったのか?……


大丼田(だいどんでん)君、確かA23875は、君の担当だったよね」


 上司の言葉に、みんなが振り向く。


「そうでしたっけ〜〜」

「そうでしたかじゃないよ。社長の方針で買いでしょう?忘れたの?もう、君18億の損害だよ。今から、買い戻して!。それと、ドラ子君は 聞いてた通り優秀だね。もう、13億売り上げてるじゃないか〜〜」


 ……この数字ってお金だったの? 今、俺、億単位のお金動かしてたの?……


「今日入ってきた新人に負けてちゃダメだよ。大丼田(だいどんでん)君」


 上司の大友さんは、顔が怖かった……アスカはニヤニヤ笑っていた……



 午後3時過ぎになると、俺事、大丼田(だいどんでん)は、外回りに行かされた。失った損失分の穴埋めの為に、顧客から資金を調達する為だ。


 ……サラリーマンってこんなに辛いの? 学生の方がまだマシだよー……


『全く、シロウは何やってもダメだぜ!』


 迷惑幽霊は、俺の後をついてきた。


「ところで、社長の東内木(とうなぎ) 慎一郎(しんいちろう)を見かけなかったな〜〜」

『あれっ、言って無かったっけ?明日出張から帰ってくるんだってさ。何でもNEWYORKに行ってるらしいぜ』

「そうなんだ……」


 ……それ、早く言えってっ!……


 公園のベンチで腰掛けてぶつぶつ言ってる俺は、端から見たら「若いのに気の毒な人」と見えただろう。


 ……う〜〜ん。缶コーヒーが苦いぜ!……


 あの会社は、まだ、普通の状態だ……という事は、社長が帰ってくる明日から何か変わるのかもしれない……


 俺は、時間が来るまでこのベンチに腰掛け、考え事をしていた。




 ◇◇◇



 一方、エリックさんとシアンは、魔力探知機を持ってスイスに潜り込んでいた。地元の諜報員ジョンが、


「このスイスにか!? そんな情報があるのか?」

「まだ、確認の取れてない情報デスが、このスイスに核ミサイルがあるらしいデス」

「確かに、第二次世界大戦後、冷戦時代の間にスェーデンと共同で核開発を行ってた事はあるが、もう前の事だし、きっと処分されているぞ」

「それが、処分されずに残っていたとしたらどうでしょう?それも、現在も起動する状態で……」

「まさか……ここは永世中立国だぞ。国連施設もある。信じがたい情報だな」

「もしもの仮定で調査してもらえませんか?私達も情報を集めます」

「わかった。だが、あまり期待するなよ」


 地元の諜報員は半ば呆れ顔で去っていった。


「私達も情報を集めましょうか?」

「もう、やってる。不明瞭な金の流れを追えば、自ずと尻尾を掴める」


 シアンは、パソコンでハッキングして金の流れを追っているようだ。


「ダメだ。最後のパスがわからない……このまま解析すると、相手に見つかる。

1分以内でパスを通さないと閉鎖される仕組みになっている」


「誰のパスが必要デスか?」

「国連事務総長 アレグロ・カターシア」

「ほぉーー随分、大物デスね。わかりました。何とかしましょう」


 エリックは、思考を巡らせていた。




 ◇◇◇




 そして、アザゼルは、ペルーの海岸で日光浴をしていた。陽気は25度前後だが、海岸沿いには、観光客で溢れていた。


「やだわ〜〜ん。この腕輪。オシャレじゃないのよね〜日焼け後ついちゃうじゃないの〜〜もう〜〜」


 白い砂浜に打ち寄せる波。ビーチパラソルを照らす輝く太陽。脇にはトロピカルジュース。どう見てもバカンスに来たオカマだ。


「あら〜〜あの人、胸板厚いわね〜〜結構、好みだわ〜〜魂、美味しいかも……」


 アザゼルだけは、のんびり過ごしていたようだ。







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