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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第3章

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第68話 ーーーゼウスの加護ーーー

 


 あれから数日経って、今日は、金曜日だ。放課後、アンリエット王女を迎えに行かなければならない。それに、あの湖の別荘の事が気になっていた。まだ、売れてなかったら、購入しようかと思っている。

 建物は、使い物にならないくらいボロボロだけど、暇な時に少しずつ修理すれば良いくらいの感じで考えていた。他の誰かに売り渡されては、いけないのではないか、という気持ちもあった。


 シアンは、放課後から夜まで、エリックさんと共同で情報収集に当たっている。主な動きはないらしいが、警戒態勢は続いていた。


 シアンは、いつも、眠そうな目をしており、授業中は、爆睡してた。


 屋上でみんなとお弁当を食べてると、スズネが、


「シロウ君、今日はあっちに行くんでしょう?私も行って良い?」

「構わないけど、アンリエット王女を迎えに行くだけだよ。それでも良いの?」

「うん。だって、あっちの世界、楽しいんだもの」


 スズネと2人だけで行く事になりそうだ。ドラ子やクルミ、アザゼルは、こっちの世界においておかないと心配だ。


「じゃあ、放課後、リーナの家で……」

「わかったわ」


 スズネと行く場合、マイルームを経由しないと……時間が経つと、あの親父さんに怒鳴られそうだ。


 この世界の空は、とても綺麗だ。青く輝く泉に白い蓮の花が咲いているようだ。

 俺は、空を見ながらそんなセンチな感傷に浸っていた。すると、


「あれっ……揺れてない?」

「地震みたいだね……ちょっと大きいなーー」


 それは、僅かの時間だったが、結構揺れた感じがした。都内でも震度4ぐらいあったんじゃないだろうか……


「震度4だって……震源地は、伊豆半島沖らしい……」


 シアンは、すぐにスマホを取り出し調べていた。


「このところ、地震無かったのにねーー」

「スズネでも、地震は怖いんだ」

「それは、怖いよーーだって、地面が揺れるんだよ。それが、どんなけすごいエネルギーか、考えただけで身震いするよ」


「ごめん、ちょっとエリックのところに行ってくる」

「シアン、どうしたの?」

「さっきの地震、ちょっとおかしいって妖精が言ってる」

「もしかして、悪魔の仕業……」

「それも含めて、報告してくる」


 シアンは、そう言い残し、足早に屋上から姿を消した。

 この地震が悪魔の仕業なら、うちの悪魔達が気づいているだろう、と考えていた。




 ◇




「あら〜〜ん、目が回るわ〜〜ん。2日酔いかしら〜〜」

「アザゼル、これは、地震であります。地面が揺れる現象であります」

「け、結構、大きかったですよねーー」

「問題ないわ。建物とか形あるものは、いずれ壊れる運命だもの」


 悪魔達は、何も感じてなさそうだった……




 ◇




 マイルームからミリエナ国の路地裏にドアを開くと、珍しく雨が降っていた。傘を持っていない俺は、困惑してると、


「シロウ君、私、折りたたみ持ってるよ。一緒に入ろう」


 スズネは、何でも用意が良い。小さい頃からの癖なのか、こちらに来る時もそれなりの荷物を持っていた。


「ありがとう。いいの?」

「うん」


 スズネは、男女の距離感とか考えないタイプなのか、いつも近い……


 普通なら、嬉しい状況なのだが、スズネを見てると、あの親父さんみたいに心配になってくる。


 王宮までは、すぐそこだ。俺達は、裏門に回って衛兵に今日の用事を伝えた。


「アンリエット王女様ですね。少々お待ち下さい」


 衛兵の1人が奥に入ってくる。少し待つと来たのは、あのメイド2号だった。


「シロウさん。ようこそいらっしゃいました。どうぞ、こちらへ……」


 何故、メイド2号が来たのだろう……確か、ロリンジュさんだったよね……


「あの〜〜ロリンジュさん、何でソランジュさんじゃないのですか?」


「シロウさん!私の名前を覚えていたのですか……なんという事でしょう。あれから、毎夜、私の名前を呼びながら私を脳内であられもない姿を考えていたのでしょう……なんという事でしょう。さぁーー忘れない。私の事など、全て忘れるのです」


 ……そうだった。この人は、こういう人だった……


「シロウ君、このメイドさん、もしかしてソランジュさんの妹さん?」

「そうだよ。スズネは初めてだったよね」

「うん。少し変わった方なのね」


 俺達が通されたのは、いつもの応接室だった。ソファーに腰掛け、お茶を頂いていると、第2王女のカトリーヌが部屋に入って来た。


「シロウさん、お久しぶりです」

「こちらこそ、ご無沙汰しております」

「お姉様と一緒に東国の島国に行く予定をたてた時以来ですね」

「そういえばそうでした」


「シロウ君、こちらの綺麗な方は?」

「スズネは、初めてだったね。こちらは、アンリエット王女の妹さんでカトリーヌ第2王女様だよ。カトリーヌ様、こちらは、私の友人でスズネです」

「スズネさんですね。よろしくお見知りおきを……それにしても、綺麗な黒髪ですね。羨ましいです」

「そんな事ないです。私こそ。カトリーヌ様があんまり綺麗なものですから、見惚れてしまいました」

「カトリーヌ様、スズネはこう見えて剣の腕前が凄いんですよ」

「そうなのですかーー。是非、一度お手合わせをお願いします」


 2人は、どことなく似てるような気がする。もしかすると、良い友人になれるのでは? と余計な事を考えていた。


「それで、アンリエット様はいらっしゃいますか?」

「姉様と侍女のソランジュは、今、お父様に呼ばれております。話が終わればこちらに見えると思います」

「そうなのですか……」


「私は、シロウさんにお聞きしたいことがあります」


 ……カトリーヌ様は真剣な様子だ……何かイヤな予感がする……


「はい。何でしょうか?」

「シロウ様とここでお会いしたその次の日から、お姉様が変わりました。シロウさんは、その理由をご存知ですよね?」


 ……やはり、予感は当たるものだ……さて、どうしたものか……


「私には、見当もつきませんが、アンリエット様の何がお変わりになったのですか?」


「全てです。姉様は、運動が苦手でした。それなのに、今は、王国一の剣士とまで言われております。それに、いつも誰かに依存しているようなお心でした。

 しかし、今は、自らの力で道を切り開ける強いお心をお持ちです。この急な変化は普通では考えられません。きっと、シロウさんが姉様に何かをしたに違いありません」


 ……カトリーヌ様の決めつけるような言い方は、割と的を得てるので困る……


「実は、少しばかりお手伝いをしました。剣を習いたいと言うので、スズネのお祖父さんに剣を教えてもらったようです。私は、その……紹介しただけですので……」


「スズネさんのお祖父様ですか?」


「確かに、うちのお祖父さんとアンリエット王女は剣の練習をしてましたよ。でも、アンリエット様の剣の腕は、ご自身で勝ち取ったものです」


「納得できません。いくら剣を教える達人でも、あの姉様を、数日で剣の達人までに仕上げるのは無理なはずです。それでは、そのスズネさんのお祖父さんに合わせて下さい」


 どう説明したら良いか困っていたところに、アンリエット王女とメイド1号がやってきた。


「カトリーヌ、それ以上、お見苦しい態度はいけませんよ。その事については私が何度も説明したはずです」


「でも、姉様……」

「カトリーヌ!」


 ……2人の王女は険悪モードだ。これでは、姉妹間の絆が壊れてしまう……


「お姉様は、卑怯です。私に何か隠して2人で口裏を合わせているのでしょう。もう、いいです。お姉様なんか……」


「カトリーヌ様。ちょっと待って下さい……わかりました……全てお話します」

「本当ですか?」

「シロウ様、それでは、お約束が……」


「大丈夫でしょう。何かあれば私がフォローします。それより、せっかく仲の良い姉妹が、喧嘩する方が大変な事態です」


「シロウ様……」


 アンリエット王女は、女神との約束を破る事に躊躇している。でも、俺にとっては、仲の良い2人の喧嘩の方が大問題だ。


「カトリーヌ様、他言無用でお願いします。【マイルーム、ドア1オープン!】」


 俺は、この応接室でドアを開いてしまった。もう、後戻りはできない。


「さぁーー中にお入り下さい」


 俺は、みんなを部屋に招き入れた。ドアはもう消失している。


「これは、どういう事ですか?この部屋は何ですか?魔法でもこんな事はできないはずです」


 カトリーヌ様とメイド2号は、驚いている。そして、アンリエット王女とメイド1号は、困惑してた……


「お茶でも入れましょう。それから、お話し致します」


 俺がお茶を入れようとすると、メイド1号がやってきて、手伝いだした。

 後ろめたい気持ちがあったのだろうか? 俺には、想像もつかないが……


「ゴミ虫……少しは、人に近くなったではないか……」


 と、小声で呟いていた。聞こえないふりを俺はしていたけど……

 そして、俺は、こう叫んだ。


「女神様ーー!いるんでしょう?ちょっと話があるんですけどーー!」


 すると、空間が揺らいで、女神エリーゼが現れた。


「シロウ、何の用ですか? 今、ちょうど良いところでしたのにーー!」

「どうせ、誰かの噂話でもしてたんじゃないですか?」

「なっ、何を言ってるんでしょう。シロウは生意気です」

「女神様も、何でこんなに部屋を散らかしてるのですか?いつここに来てるのですか?」

「私の憩いの場なのですからいつ来てもシロウには、関係ありません!」

「ここは俺の部屋です。女神様こそ、勝手に使わないで下さい!」

「シロウーー!」

「女神様ーー!」


 すると、突然、空間が揺らいだ。登場したのは最高神ゼウスの爺さんだった。


「こ、これはゼウス様、また、こんな部屋にお越しになるなんて」

「エリーゼよ。少し、シロウと話がしたかったものだからのう。しばし、借りるぞ」


「は、はい。仰せのままに……」


 女神エリーゼは、最敬礼状態だ。みんなも何が起こっているのか訳がわからないみたいだ。俺は、みんなに出来るだけわかるように説明した。理解してくれれば良いけど……


「最高神ゼウス様……あのゼウス様ですの?」

「アンリエット様、そうです。こちらの爺さん、じゃなかった……ゼウス様です」

「シロウは、説明が下手じゃのう。まぁ良い……。実はのう、シロウには、感謝しておるのじゃ……冥府の結界が一部外れて、魂の循環がスームーズになった。報われない魂も再生できるようになったのじゃよ」


「そうでしたか……でも、それなら、神族で冥界の結界を解けば問題なかったのではありませんか?」


「それは、できん。冥界の者たちは、統率が取れておらんから好き勝手に振舞ってしまう。それに、神族も一枚岩ではない。だが、サリーナ、お主の契約者だがあの者が冥界を治めている間は問題ないじゃろう。シロウは、良き主人を持ったものだ」


「そうでしたか……」


「それと、シロウ。お主の世界に悪魔が渡ったそうじゃな……」

「はい。今の冥界のあり方に疑問を持つ反乱分子たちですが……」

「アザゼルは、お主のところにおるのじゃろう?」

「はい。アザゼルをはじめ、冥府の幹部達が、私の世界で待機してます」

「それなら、問題がないと思うが……一応お主達に儂の加護を授けよう」


「待って下さい。最高神ともあろうお方が、人族の者に加護など以ての外です!」


「まて、エリーゼよ。きちんとした理由があるのじゃ……シロウには、この先も冥界、人界、天界の橋渡しになってもらいたいのじゃ。どの世界にも縁のある、シロウが適任であろう?」


「シロウがですかーー、この生意気なシロウですよ〜〜」

「女神様、今、俺の事バカにしたでしょう?」

「いいえ。しておりません。生意気だと言っただけです」

「女神様の方が横暴です!部屋を横取りしてるんですから……」

「何ですってーー!シロウーー!」

「何ですかーー!女神様ーー!」


「これこれ、もうやめんか……お主達は、会えば言い合いしとる。余程、相性がよいのじゃなぁ〜〜。だが、先程の件は、本当に頼みたい。これから先それぞれの世界が平穏に過ごせる為にものう……」


「私に何ができるかわかりませんが、できるだけの事はしたいと思ってます」


「ほぉ〜〜良い返事じゃ。では、加護を授けよう。そこにおる人族達も何かの縁じゃ、受け取るが良い」


 ゼウスがそう言うと、俺達は、淡い光に包まれ穏やかな気持ちになった。


「では、またのう。シロウ、頼んだぞ……」


 空間が歪みゼウスは消えてしまった。みんなは、何が起きてるか理解できるまで時間がかかった。


「あのゼウス様のご加護なんて、私が欲しいくらいです」

「女神様は、もう立派な神様なんですから、加護を与える方でしょう?」

「シロウは、たまに口が上手くなるので困ります。プリンを頂きます」

「はい、はい」


 俺は、みんなにも、デザートを用意した。ゼウス様用にお酒も頼んだ。

 あとで女神エリーゼに届けてもらおう……


 カトリーヌ様達には、アンリエット王女が説明してくれた。夢のような話に困惑していたが、加護が備わっているのが自分で理解できるらしく喜んでいた。


 俺にも加護が備わっていた。スキルを見ると『ディスガイズ』となっていた。


 鑑定で詳しく調べてみると「変装能力」と書かれていた。





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