第60話 ーーーシロウ達とサツキ達は(2)ーーー
ルシファーの引きこもっている館は、池のほとりにある割と大きな建物だった。
「良いとこですね。池もあって、休息をとるにはもってこいの場所です」
「ルシファーの気配がするわ。向こうも私達が来たのがわかったようね」
「くそ〜〜羨まし過ぎる〜〜。こんな良い場所で、しかも、あんな大きな建物に〜〜」
「シロウ様は、変わってますね。そんな事を羨ましがるなんて……」
「うちは、狭くて、忙しいんだよ。こんな良い場所だったら、俺が引きこもりたいよ」
「もう、ルシファーの怠惰の影響を受けたのですね」
「クルミ。きっとシロウ様はそういう性格なのだと思うわ」
「もう、良いから早く行こう!」
ドアをノックすると、エルフの美女が出てきた。
「あの〜〜何のご用ですか?」
「ルシファーに、ドラ子が会いに来たと伝えてくれる?」
「は〜〜い。わかりました〜〜」
何か、気の抜ける返事だった。怠惰の影響で怠け者になっているみたいだ。
「どうぞ、中にお入り下さい。ルシファー様は、奥の部屋です」
「お邪魔するわね」
ドラ子を先頭に俺達は、ルシファーの元に行く。奥の部屋に入ると、ダラけたエルフの美女がたくさんいた。
……何、これ……すっごい羨ましいんですけど〜〜……
「ルシファー、ドラ子よ。用があって来たの。いるんでしょう?」
すると、御簾がかかった奥から声がして来た。
「ドラ子、ドラ子? あっ! ドラキュラ伯爵の生意気なガキか〜〜」
「生意気なガキで悪かったわねーー。話があるのよ。出て来てよ」
「わかったよ……」
かかった御簾が挙げられた。現れたのは、物凄いイケメンだった。
「どうもでぇ〜〜す!」
『………………』
「あれ〜〜どうしちゃったのかなぁ〜〜ルシファーです。チェッゲラ!」
『………………』
「ノリ悪いって〜〜君達〜〜もっとハイにならなきゃ!わぁおーー!」
『………………』
……チャラい……チャラすぎる……
「ヘイ!君達、何のようで、ヘイ、ここまで来たんだヨー、ヨー、ヨー!」
……ラップ調になってるし……完全にチャラ男だよ……この悪魔……
「ルシファーいい加減にして。話ができないじゃない」
「ド、ド、ドラ子のド、ド、ドは、ドレミのド〜〜!サンキュー!」
「何がサンキューよ。馬鹿のひとつ覚えで昔からそればっか言ってーー!」
「アイ、アイ、アイ、マイ、ミー。ヘイ!ユー、ユー、ユー、ユアー、ユーは誰? イエッー!」
……俺の事?……
「もう〜〜話になんないわ……」
ドラ子は、呆れ顔だ。クルミもまさか、ここまでとは、想像できなかったらしい。顔に嫌悪感が漂っている。
「あの〜〜ルシファーさん。俺は、サリーナの契約者のシロウと言います。今日は、ルシファーさんに冥界に来てもらいたくてここに来ました」
「そうなの〜〜シクヨロ〜〜!WAO!そ、そ、そ、この鬼っ娘、君かわうぃ〜〜ね〜〜、フーッ」
……困った……会話ができない……
俺とドラ子そしてクルミは、部屋の角に集まって緊急会議を開いた。
「これ、連れてくの無理じゃね〜〜」
「ドラキュラ伯爵に言われたし、リーナ様とも約束したので連れて帰らないと困ります」
「そんな事、言ったって会話できないんだもん」
「それは、そうですが……」
「もし良かったら何か食べ物で誘いましょうか?私、何か作ってきます」
「そうか……それなら、もしかするともしかして、もしかするかもね」
「シロウ様も面倒くさい言い方、やめて下さい」
俺達が会議している間、ルシファーは、1人でクネクネ踊っていた。
……怠惰の業を背負ってるんじゃないの、踊りは平気なの?……
いろいろ突っ込みたかったが、相手が相手なので遠慮してた。……
「ヘイ!ヘイ!君達、ウェルカム、この後、パーリーする、スル?イエーー!」
「今、連れが食事の用意しに行きました」
「そう、そう、それなら、これから、パーリータイム!WAO!」
……どうなることやら……
◇◇◇
俺は、パーティと称した食事会でルシファーの態度が耐えられなくなり酒を飲んでしまった。ここは、異世界で、俺もこの世界では成人扱いなので問題ない。
……日本じゃ無理だけどね……
「わぁおーー!ルシファーのル、ル、ルーは、ラリルレローのルー!イエー!」
「シロウ、ヘイ!そ、それ意味不だヨーー!フーッ!」
「ルシファー先輩、聞いてくだいよーー俺、もう、何もかも面倒くさいです」
「いいね。いいねーシロウは、見込みあるねーーイェー!」
「先輩の弟子にしてくれませんか?そうすれば、こんな良いとこに引きこもれますし……」
「OK、OK、OK牧場!」
「ホントですよ。エルフっ子かわうぃーし〜〜!」
「そ、そ、それなのよ!こ、こ、ここは、最高!」
「あんた達、何してんの?こんな酔っ払って、どうすんのよ!」
「ドラ子が怒ったーー!ドラ子、ドラ子」
「シロウ、あんたまで酔っ払ってどうするつもり!リーナ様に言うわよ」
「へへーーンだ。ドラ子、ドラ子」
「もう、呆れて言葉も出ないわ……」
「シロウ、まだ、まだ硬いネーー!もっと、リズミカルに言わないと〜〜」
「わ、わ、わかりましたーー、こ、こ、こうですか?」
「イィ、良いね〜〜そ、そ、それだよ!WAO!」
この騒ぎは一晩中続いたそうだ……WAO!
◇◇◇
「もう〜〜昨夜はどうなるかと思ったわ〜〜」
「全くです。シロウ様もあんなに酔っ払って……そろそろ起こさないといけませんね」
「クルミ、頼んでもいい? 私、少し休むわ……」
「ドラ子様、お任せ下さい」
「シロウ様、シロウ様、朝ですよ。起きて下さい」
「………むにゃむにゃ……二葉姉、もう、食べらんないよ〜〜……」
「シロウ様、シロウ様!」
「う……ん。買い物行かなきゃ……むにゃ、むにゃ……」
……困ったわ……起きない……そうだ、サリーナ様から言われてたっけ……
「シロウ様、今日は特売日ですよ。早く行かないと売れ切れちゃいますよーー」
「えっ!特売……急いで支度しなくちゃ……あれっ、頭痛い……」
「やっと起きてくれました。昨夜、お酒を飲んだんですよ」
「クルミ……そうだ。ルシファー先輩と酒を飲んだんだ……あーー痛い……」
「薬飲みますか?」
「うん。待って。俺、持ってるから……」
俺は、バックの中から、フェニックスの涙の入った回復薬を飲んだ。スーっと痛みが消えていく……
「あれ、ドラ子は?」
「気疲れしたようで、向こうで休んでます」
「俺、何かしたのかなぁ?」
「覚えてないんですか?ドラ子様をからかっていましたよ」
「えっ!本当? 悪い事しちゃったなぁ〜〜」
「あとで、謝った方が良いと思います」
「そうするよ……、そうだ。ルシファー先輩は?」
「あちらの奥で酔っ払って寝ています」
「シアンにも連絡しないと心配してるだろうし……」
「私も随分心配したんですからね!」
「そ、そうだよね〜〜ゴメン……」
「今回は、許してあげます。次はないですからね」
「はい。わかりました……」
……クルミにも何かしたのか? 俺……
俺は、シアンに念話を入れた。随分心配してたようだが、俺の声が聞けて安心したらしい。
「じゃあ。顔を洗ってこようかな。みんなが起きたら冥府に行こう」
「はい。朝食の用意をしてきますね」
昨夜、酒を飲みながらルシファー先輩と約束した。冥府に行ってくれると……
……覚えててくれるといいけど……
こちらは、どうにかなりそうだ。サツキはどうしてるだろう?無茶してなければいいけど……と心配になった。
◆◆◆
ホテルに戻ったエリックは、サツキ達を先に日本に帰そうと思っていた。
これから、始まるのは、小規模な戦争だ。こちらも軍の要請を頼んだ。
決行は、明日の夜だ。これでも急いで支度を整えてもらった。
エリックが部屋に入ると、誰もいない。どこかに遊びに出かけていると思い休もうとすると、置き手紙が目に入った。内容をみて、エリックは、すぐに、電話をかけ、急いで部屋を出て行った……。
◆
アスカの声に駆けつけたみんなは、そばで倒れている傷だらけの男の子をみて
「どうしたのこの子、すごい傷ね」
「大変、今、回復魔法をかけるね【ヒール!】」
アスカのそばで倒れ込んでいた男の子の傷が癒えていく……
その男の子は目を覚ました。
「…………」
「ねぇ、君、大丈夫?……そうだった……言葉が通じないんだったわ」
「でも、大丈夫そうよ。顔色も戻ったし……」
その男の子は、身振り手振りで何かを訴えていた。すると、ソラスが……
「どうやら、この子は麻薬? というものの原料になる植物を栽培させられていたみたいでありますな」
「ソラス、言葉がわかるの?」
「はい。私は、悪魔ですから、どの言葉も聞けば理解できます」
「どうしてここにいたのか聞いてくれる」
ソラスは、その男の子と話していた。その子は、フクロウが話すのでびっくりしていたが、すぐに慣れ、ソラスに経緯を話しているようだ。
「どうやら、大陸の方から妹と一緒に拐われたらしいです。男は薬物の製造に女は何処かに連れて行かれたみたいですな。この虫ケラは、妹を探しに施設を抜け出したようです」
「そうだったの……ひどいわね!」
「シロウ兄も私や睦美が拐われたら同じ事してたと思う、許せないわ!」
「いけね〜〜なぁ、こんな事しちゃ!背中の桜吹雪が赤く染まっちまうぜ!」
「妹さんを探しに行きましょう」
「でも、それって、敵の本拠地よね。無闇に行ったら拳銃で蜂の巣だわ」
「あっちも仕事人としての腕がなるぜ!」
「私の魔法で姿を消して忍びこみましょう。ちょっと待ってて下さい」
そう言うと、ソラスの姿が大きくなった。体長3メートルぐらいある。
「ソラス、大きくなれるの?」
「サツキ様に言ってなかったでしたか……失礼しました。私は、体の大きさを自由に変えられるのです」
「そうだったんだ。便利だね」
「はい。小さいままでは、皆さんを包めませんから、では。羽根の中に入って下さい」
「うん、わかった」
男の子を含め、みんなはソラスの羽根の中に入る。羽毛がふわふわして気持ち良い。
「では、行きましょう」
ソラスに包まれると羽毛の中に吸収された。亜空間の中みたいでガラス張りの部屋のように中から外を見渡せる。
ソラスが飛び立つと、サツキ達も一緒に飛んでいた。慣れないと少し怖い。
「兵士がたくさんいるわね」
「見つかると厄介そうね」
「ウォーージェットコースターみたいだ。生きてるうちに乗りたかったぜ!」
「兵士がじゃまですね。少し寝てもらいましょう。【羽毛ショット!】」
ソラスの無数の羽毛が空から降り注ぐ。まるで南国に降った雪のようだ。羽毛に触れると、みんな倒れ込んだ。
「あそこが地下の入り口です。皆さん、用意はいいでしょうか?」
そう言いながら、ソラスは急降下した。サツキ達は、結構、楽しんでいた。洞窟に入ると、少し冷んやりする。サツキ達は、ソラスの羽毛の亜空間から外に出た。
「この奥が広場になっております。多分、ここで召喚の儀式がなされるのでしょう。虫ケラどもは、その奥です。見張りの気配が……10人程あります」
「わかったわ。見張りが10人じゃちょっとキツイわね」
「そうよね〜〜」
「でかい虫ケラどもは殺してしまえば楽なのですが……」
「それは、後味悪いしね……」
「では、私の配下、ムカデ攻撃隊を呼びましょう。麻痺毒がありますので、しばらくは動けないでしょう」
「そ、そう……お願いするわ」
「お任せ下さい」
「さぁーーて、久々の仕事ですよ。殺してはいけません。それと、でかい奴だけでありますよ。行け!ムカデ攻撃隊!」
ソラスの掛け声とともに、地中からウジャウジャとムカデが這いずり出てきた。もう、数を数えられないほどだ。地面がワシャワシャ動いている。
すると、奥の方から多数の悲鳴が聞こえ出した。ムカデが、見張りの人達に巻きついている。
「こ、これは……すごいわね……オェーー!」
「ちょっと、気分が悪くな………オェーー!」
「最高だぜ! オェーー!」
「……………」
さすがに、男の子は大丈夫みたいだ。
「よくやりました。あとで褒美を授けましょう」
ムカデ達は、ソラスの言葉に頷き、地中に潜って行った。
「皆さん、どうかしましたか?見張りはお寝んねしておりますよ。さて、行きましょう」
ソラスは、平然と奥に飛び立って行った。サツキ達は込み上げるものを抑えながら奥に向かった。
◆
奥には、牢屋があり、その中に女の子がたくさんいる。1人、大人の女性もいるが意識が普通ではない。
「今、助けるからね〜〜」
男の子の妹も中にいたようだ。2人は、久々の再会に泣きながら抱き合っていた。女の子達は、怪我をしていたり、衰弱していたりして弱っていた。サツキは、回復魔法をかけ、みんなの傷を癒した。
大人の女性は、薬を打たれていたらしいが、サツキの回復魔法のお陰で回復したようだ。
「さてと、あとは帰るだけだけど……」
さっきの男の子が妹と一緒にソラスに話をしていた。
「このオスの虫ケラが言うには、この島の南にも捕まっている子供達がいるそうです。オスばかりだと言ってますが……」
「麻薬の栽培を手伝わされてた子達ね。そっちも救出しなくっちゃ」
「でも、この子達を連れて行くのでは時間がかかるわ」
「そうね。この子達だけでも先に安全なところに移さないと……」
「では、私達がいたホテルに転移して連れて行きます。そして、すぐに戻ってきますね」
そらすは、羽根を広げ捕まってた人達を羽根に包み転移した。そして、ホテルで解放してすぐにここに戻ってきた。
「ソラスってすごいわねーー感動したわ」
「そうでしょう。ソラスは頭も良いし最高なの」
「全く、シブい奴だぜ!」
「あっ!誰か来たわ。足音からすると2、3人ってとこね。私が行くわ」
スズネは足音のする方に駆け出した。破魔の剣を抜き相手の持っていた機銃を斬り裂いた。そして、手刀で相手の後頭部を殴り、気絶させた。
「ホーーなかなか良い動きをされますなぁ」
「スズネさん、格好いいーー!」
「あっちもがんばんべー!」
「ふぅーー、あと1人いたら撃たれてたかも……」
「スズネさん、すごいよ」
「サツキちゃんだって、天空弾があるでしょう?」
「そうだけど、加減がイマイチ難しいのよね。気絶させるだけだと、威力を大分抑えないといけないし……」
「神様の力だもんね。相手が人間じゃなく戦車とかなら良いのにね」
「それなら、車輪やエンジンに向けて気兼ねなく発動できるよ」
「あっちも、この針で仕事人みたいにやっつけたいぜ!」
「アスカちゃん、刺すとこ間違えると殺しちゃうよ」
「そうだった……まだまだ修行が足りないか〜〜」
「では、島の南に転移しましょう。まだ、兵士達は寝てるでしょうから」
『は〜〜い』
サツキ達は、ソラスの羽根に包まれ、島の南部に転移するのだった。
いつも読んで頂いて有難うございます。
今回登場するルシファーとの会話は、読みにくいかと思いますがご勘弁ください。
書いてる本人も気持ち悪いと思いながら書いてました。




