第57話 ーーー黒十字教の元へ(1)ーーー
「まずは、情報を集めよう。連絡してくるから君達は待っててほしいデス」
エリックは、そう言いリーナの家を出て行った。
「シロウ兄達は戻って来ないし、ソラスお風呂に入る?」
「私は、汚れてなどおりませんが、どうしてもと申されるのならサツキ様の言う通りに致しましょう」
「アスカちゃん。ソラスをお風呂に入れてくるからちょっと待っててくれる?」
「あいあいさァー!」
サツキもソラスを連れて自分の家に帰ってしまうとアスカは、
「チェッ!みんな夜は、これからだっていうのによーーノリが悪いぜ!ちょっくら、街をひとっ走りしてくるか!」
アスカは、窓から霊体になって飛び立った。
今は、逢う魔が時である。幽霊にとって、朝と同じだ。
「最近の若い奴らは、熱くないっていうか、冷めてるっていうかつまんね〜んだよな〜〜。もっと、『飛び出せ!青◯』みたいに熱い気持ちを持たねーーとせっかく、生きてんのによ〜〜ダセー人生送って面白いのか?」
アスカの生きてた時代は、そういう時代だったらしい。
「おっと、第1村人発見ってか?」
何やら歩道橋で思いつめている少年がいた。見るからにひ弱そうだ。
「どうせ僕なんか……ぶつぶつ」
暗そうな奴だな! 成績でも下がったか?それとも、いじめとか? こいつは、見るからにそういう感じだしなぁ……
その少年は、いきなり歩道橋の柵に足をかけた。下には電車が走っている。
「マジかよ! 自殺したって、異世界には行けないぜ!ここで彷徨うだけだ!」
「何、何、誰?」
おっと、声出てたのか、しまったなぁ……しょうがねぇ〜〜乗りかかった船だ。
「おい!少年。そんな事しても楽になれねーーぞ!」
「誰?誰かいるの?」
「あっちは、幽霊のアスカってもんだ」
「幽霊……?」
「信じてねぇみてーーだな〜〜。ちょっと待ってろ。ほいっと」
アスカは、実体化した。少年が見たのは口調に似合わない小学生くらいの女の子だった。
「わぁーー!幽霊だーー!」
「失礼な奴だなーーさっきから幽霊だって言ってるだろうが!」
「本物? ねぇーー本物なの?」
「あーーそうだよ。お前、何してんだよ。その柵乗り越えたら死ぬぞ!」
「いいんだよ。どうせ俺なんか……」
「嫌だねーー、最近の若い奴らはすぐ死にたがる」
「ぼ、僕、幽霊さんより大きいと思うんだけど……それに幽霊に言われても…」
「今、何歳なんだ?」
「13だよ。中学2年になったばかりだけど……」
「もったいねーーなぁ。青春ど真ん中だぜ! 熱い汗かきまくる年齢じゃんか!」
「そんな時代じゃないんだよ……」
「時代なんか関係ねーーぜ!要は、気合いだよ!それに見かけも大事だぜ!格好から入るのはいい事だ。警官や消防官、医者だって制服や白衣を着てるだろう。見かけを整えれば気持ちもそれなりになるんだよ!チェッ!つまんねーー説教垂れちまったじゃねーーか。どうしてくれんだ!おい!」
「急に現れて出て来たのはそっちだけど……」
「一丁前な事を言ってんじゃねーーぞ!取り憑くぞ!」
「わぁーー勘弁して下さい」
「おい、少年。何があったか知らねーーけど、死ぬ気になればなんだってできるんだ。お前は、死ぬ気で何かしたのか?」
「死んだ幽霊に言われても……説得力ないというか何というか……」
「ウジウジした奴だなーー!しばくぞ!こらぁ!」
「ひぃーー勘弁して下さい」
「まぁ、今日は勘弁してやる。二度とこんな事するんじゃねーーぞ!わかったな!」
「………」
「わかったんだろうなぁ?はぁーー!」
「わかりました。わかりました」
「早くそう言えってんだ。ボンクラ! 熱く生きろよ!」
そう言ってアスカは霊体になり飛んで行った。
残った少年は腰が抜けて、立ち上がれない。
その後、近所の中学でやけに熱苦しい少年がいるとネットで話題になった……
◇◇◇
アスカが一回り街を散策してると、今度は、スズネがいた。両手にトイレットペーパーを抱えてぶつぶつ言っていた。
「よぉ〜〜スズネじゃねーーか!」
「アスカちゃん、何、散歩?」
「夜のネオンがあっちを誘うんでなーー、それにしても、その大量のトイレットペーパーどうしたんだ?」
「今日安売りだったんだよ。お母さんに無理矢理買いに行かされたんだ。女子高生が、持つ荷物じゃないよねーーそう思うでしょう?アスカちゃん!」
「何だ。そんな事か。あっちはスズネが大量にう◯こするのかと思ったぜ!」
「な、何言ってんの! そんなに出るわけないでしょう?それに、女の子がそんな事言ってはいけません!」
「全く、これだからネンネなお嬢さんは、めんどくせーーぜ!」
「もう、アスカちゃんは、酷いんだから〜〜」
「もう、あっちは行くぜ! 悪魔召喚とやらをしてる奴をやっつけなきゃならねーーからな!」
「何、それ、どういう事?」
「じゃあなーースズネーー!便器によろしくなぁーー!」
「アスカちゃん、さっきのどういう事なのーー!」
そう言い残し、アスカは飛んで行ってしまった。
◇◇◇
アスカが一回り街を回って戻ってくると、エリックも情報を仕入れて来たところだった。
「おおよその見当がつきましたデス」
「ただいまーー、アスカちゃん、見参!」
「アスカちゃん遅いよ。どこほっつき歩いてたの?」
「サツキよ〜〜夜が呼ぶんだよ。あっちの事を〜〜」
「もう、遅いから心配してたんだからね」
「わり〜〜わり〜〜、それで。外人さんよ。わかったのか?」
「エリックデス。アスカは、口が悪いデス」
「これが今のあっちだから良いんだよ。なぁ〜〜ソラス」
「は〜〜い。とても良い状態です。魂が美味しそうです」
「わぁーー、食うなよな! ソラス。そんな目であっちを見るな!」
「話を戻しますが、大体の見当がつきましたデス」
『ピンポーーン、ピンポーーン』
「誰だろう?こんな時間に……」
「この気配は、退魔師の子ですな」
「スズネさん?」
サツキは、玄関に行ってドアを開けた。そこには、両手いっぱいにトイレットペーパーを抱えているスズネがいた。
「どうしたのスズネさん。それに、そのトイレットペーパー?」
「アスカちゃんから聞いたの。悪魔召喚をしてる奴を退治しに行くんでしょう? 私も行くわ!」
「あ〜〜そういう事か〜〜どうぞ中に入って……これから話し合うところよ」
「サツキちゃん、お邪魔するわね」
「スズネも来たのですか?まぁ、退魔師ですし良いでしょう。それでは、私が調べたところ、どうやら黒十字教の仕業らしいデス」
「スズネーー!ここで、う◯こするのかーー?」
「まだ、そんな事言ってんの? これ以上、変な事言うと討伐しちゃうからね!」
「わりーーわりーー冗談だよ。最近の若い奴らは、お笑いのセンスもないのかねぇーー日本の将来が心配だぜ!」
「ウォッホン!話ができません。困った事デス」
「よぉ〜〜外人さん。そういう時は、オーマイゴットって言うんだよ。その方がウケるぜ!」
「エリックデス。アスカ〜〜これ以上邪魔したら、聖水を浴びせますよ〜〜」
「わかった。わかったよ。おーー怖」
「では、話を始めマス。黒十字教は、今、ある島にいるそうデス」
「島ですか?」
「はい。東南アジアの小さな島らしいデス」
「私、黒十字教っていうから、ヨーロッパのどこかにいるんだと思ってたわ」
「サツキ、黒十字教は、諸点をコロコロ変えるデス。足取りを隠す為だと思います。ですが、ローマ聖教の情報網はダテじゃないデス。黒十字教の中にも、ローマ聖教の配下がいます」
「そうなんだ。すごいわね〜〜」
「ローマ聖教も黒十字教が何かをしてる事までは掴んでいました。悪魔召喚だとは、まだ、知らなかったみたいデス」
「でも、何で東南アジアの島なんて選んだのかしら?」
「そうですね。考えられるのは、人目につかない事、上級悪魔が呼び出されても知られないで済む事、それに……」
「それに?」
「人の命が軽く扱われている事でしょうか」
「そんなぁ……」
「貧困により、お金で子供を売るなんて事はよくある事デス」
「よぉ〜よぉ〜いけねーーな。そんな事しちゃ!お天道様に顔向けできねぇじゃねーーか!」
「でも、事実デス。私達は、それを止めさせなければなりません。皆さん、覚悟は良いですか?」
『はい』
「では、具体的な作戦を練りましょう」
皆は真剣に話しあった。
◇◇◇
ソラスの転移魔法で、その街に一番近い街に転移した。
日本と違い、四月でも気温が30度を越していた。
「温かいというより、暑いわ!」
「もう、夏と同じだよ。この服じゃ熱くて耐えられないよ」
「Tシャツ買わない? スカートじゃ動きずらいからホットパンツ欲しい」
「ほんとだね。でも、この国のお金持ってないや」
「それなら、大丈夫デス。私は、あらゆる世界のお金を持ってマス。カードもありますから、取り敢えずホテルに宿泊の予約を入れときましたから、そこに行きましょう」
「エリックさんって、キレ者だね〜〜。シロウ兄とは段違いだよ」
「シロウ君なら、予約も入れないでホテルに行って一杯ですって断られるタイプよね〜〜」
「そうそう、そんな感じ。そして、落ち込んで捻くれるんだよ」
「肝心なところが抜けてるのよね〜〜」
「アスカちゃんは、暑く感じないの?」
「霊体の時は気温なんて関係ねーーけど、実体化すると多少感じるって感じ」
「そうなんだ。ソラスは大丈夫?」
「私は悪魔ですから気温なんて関係ありません」
「そうなんだ。便利だね」
「はい。もっと褒めてください」
「着きましたよ。あのホテルみたいデス」
「わぁーー豪華ねーー。こんなとこ泊まっていいの?」
「はい。もちろんデス。ローマ聖教持ちですから……」
サツキ達は、黒十字教の討伐の為にホテルを諸点とした。




