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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第3章

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第53話 ーーー冥府ではーーー

 




「え〜〜と、アメリカ産の豚ロース293円、ニンニクが213円と、トマトパックが368円、キャベツが170円、バナナが213円と……野菜高いなぁ〜〜、バナナも買っとかないと三季姉怒るし……あいつは猿か! もう、これじゃあ、今月も赤字だよ〜〜」


「シロウ兄、煩い!黙ってやってよ。計算間違っちゃったじゃない」

「サツキこそ、宿題、台所でするなよ。自分とこでやればいいだろう?」

「今、睦美も一生懸命、宿題してるの。邪魔しちゃ悪いでしょ!」

「俺の邪魔はいいのか?」

「シロウ兄は宿題じゃないもん」

「家計を預かる身としては、家計簿つけるのは大事な事なの! ただでさえ、先月は、俺の高校入学で制服やらバックやらでお金がかかったんだから」

「それは、シロウ兄だけの事でしょう? それに、今時、家計簿なんてスマホのアプリでみんな済ませてると思うよ。シロウ兄だけだよ。ノートに書いてるの」

「そんな便利なものがあるの? でも、いいんだよ。これで、家計簿なんてわかればいいんだ」


 ……スマホか……欲しいなぁ〜〜でも、それ買うんだったらフィギュアを買った方が良いに決まってる……


「サツキ……」


 ……なんだ……ぼっーーってして……あっ、ソラスと念話か?……


「シロウ兄、ソラスから念話があって、冥府に来て欲しいって」

「俺もか?」

「うん。シロウ兄も一緒にって言ってたよ」

「わかった。リーナの家でドアを開こう」

「うん、ちょっとまって。用意してくる」


 サツキはそう言って自分のタンスを開け服を見繕っているみたいだ。

 俺は、集めておいた新聞広告の束を抱えてリーナの家に行った。


【スキル、マイルーム ドア1オープン】


 俺はドアを展開させサツキと一緒に冥府のリーナの居室に向かうのだった。




 ◇◇◇



「ごめんくださ〜〜い。あれっ、リーナいないよ。みんなは?」

「ソラスに連絡してみるよ」


 リーナの部屋は、冥界の中心都市、冥府の中心にそびえ立つ城の塔の最上階にある。ここから見える冥府の都市の姿は圧巻だ。

言葉に出せない程綺麗な街並みである。


「いつ見ても、ここが冥府なんて信じられないよなぁ〜〜天界の間違いじゃないのかってぐらい綺麗なとこだよなぁ〜〜」

「そうだよねーー。悪魔達が住んでるなんて考えられないよ」

「ソラスは何て?」

「そうそう、中央の応接室に来てくれって言ってるよ」

「勝手に動き回って良いのか?」

「聞いたけど、大丈夫だってさ」

「じゃあ、行こうか? 一体、何の用なんだろう……」


 中央の応接室はリーナ達を連れてここに来た時に一回来ている。俺は、一応念の為に、全マップ探索を展開しておいた。サツキに何かあったら大変だ。


 応接室の前に着き、中の様子をスキルで確認する。リーナ達はいないようだ。俺はドアを開けようとすると、サツキがさっさとドアを開けて中に入ってしまった。


 ……全く、サツキのやつ、無警戒なんだから……


「ようこそいらっしゃいました。シロウ様、サツキ様。どうぞ、こちらへ」


 迎えてくれたのは、鬼族らしい美人さんばかりだ。俺は急に緊張して来た。


「シロウ様はこちらへ。まず、湯浴みをして頂きます」

「えっ? 湯浴みですか?」

「はい。どうぞ、浴場までご案内致します」


「サツキーー!どういう事? これ?」

「わかんないけど、ソラスが言う通りにしてくれってさ」

「そうなんだ……」


「シロウ様は、こちらへどうぞ。服を脱がさせて頂きます」

「えっ!?」


 サツキも違う浴場に案内されたらしい。


 ……こんな美人さんの前で俺、裸になるの?……


 と、思ってる間に、裸にされていた。思わず、股間を手で隠す。

 慣れたように鬼族の美人さん、3魔に身体を洗われてしまった。


 ……まって、エラい恥ずかしいんですけど……


 石鹸で泡だった俺にサツキみたいな年恰好の鬼っ娘が湯をかけてくれた。

 その子は、他の鬼と違い恥ずかしそうにしているのが印象に残った。


 湯から出ると、新しき取り揃えられた黒い服に着替えさせられた。

 金色のボタンのような装飾が黒地に映えて綺麗に輝いている。


 ……何なの? この状況?……


 意味が分からず、着替えを済ませて応接室で待っている時、リーナに念話した。


『リーナ、リーナいる?』

『シロウ、どうした?』

『何か、ソラスに言われて冥府にいるんだけど、お風呂に入らされて、着替えさせられたんだけど……』

『そう。シロウは、目立つの嫌いだから言わなかったけど、今日は私の冥府の王としての就任式がある。ソラスは、私に黙って、シロウを連れて来たみたい……』

『リーナの就任式だったんだ。言ってくれれば、俺、喜んで来たのに……』

『シロウは、目立つの嫌い。だから、言わなかった』

『そんな事ないよ。リーナのお祝いの日ならそんなの気にしないよ。じゃあ、この後、リーナに会えるんだよね』

『うん』

『話は、その時、聞くよ。取り敢えず、おめでとう。リーナ』

『うん……あ、ありがとう』

 ……[念話終]……


「リーナ、俺に遠慮してたのか……」


 俺と意識共有しているリーナなら俺の考えている事がわかるから無理ないけどこういうお祝い事は別なのに……


 すると、さっきの浴室で見かけた鬼っ娘がお茶を持ってきた。


「め、冥府のお茶で御座います。お召し上がり下さい」


 ……随分、緊張してるみたいだ……


「ありがとう御座います」


 運んでくれたお茶を見てみると、赤黒い色をしていたので嫌な予感がした。


「す、すみません。このお茶は何のお茶ですか?」

「そちらは、バイコーンという二角獣の生血の臭みを抜いたものでございます」

「バイコーンって? 」

「ユニコーンはご存知ですか?」

「はい。馬みたいな奴ですよね」

「そうです。バイコーンは、ユニコーンと似ていますけど、高潔な存在ではなく不純な存在です。冥界では良く見かけるのですよ」

「そうですか……」


 ……人間が飲んでも平気なのか?……


「あの〜〜俺、人間なんですけど、飲んでも大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です。濃厚な味ですが、甘みがありとても美味しいですよ」


 ……そこまで言われたら飲むしかない……けど……


 俺は、目をつぶりグイッと一気に飲んだ。ココアのような味でとても美味しい……


「お、美味しいです。ココアみたいで……」

「ココア? ですか? 」

「俺の世界の飲み物なんですけど、このお茶は、その味に似てます」

「そうなんですか……お口に合って良かったです」


 その鬼っ娘は、嬉しそうに出て行った。すると、今度は、サツキが戻ってきた。

 黒いふわふわのドレスを着ていた……


「お兄、似合う?」

「あ〜〜良く似合ってるよ。今日は、リーナの就任式なんだって? サツキ、知ってただろう?」

「バレた? シロウ兄には、内緒でってソラスに言われてたんだ」

「全く……余計な心配しちゃったじゃないか〜〜」

「えへへへへ、シロウ兄が驚くとこ見たかったんだけど……」

「それくらいで驚かないよ。むしろ、俺もリーナの事、ちゃんとお祝いしたいし」

「そうだよね〜〜、シロウ兄は、リーナさんに夢中だもんね」

「そんなんじゃないよ。まったく……」


 サツキもさっきのお茶を飲み、ココアみたいだと不思議がっていた時、部屋に綺麗な女性が入って着た。髪は金色に輝き、少し眠そうな目つきをしていた。


「シロウ様、サツキ様、用意ができましたでしょうか?私は、この度、ドラキュラ伯爵の跡を継ぎましたドラ……と言いいます。今日は、お二人の案内役を務めさせてもらいます」


「え〜〜っと、ドラ……?お名前が聞き取れなかったのですけど……」

「ド、ドラ……です」

「はい?」

「ドラ子です!」


『はぁーー』


……名前が恥ずかしかったのか……それにしても、うちとよく似たネーミングセンスだ……


「失礼しました。ドラ子さんですね。よろしくお願いします」

「いいえ……慣れてますので……では、会場にご案内します」


……リーナが冥府に帰らなければこの子が冥界を治める予定だったのか……確かに頼りなさそうだ……


 俺達は、ドラ子に案内され会場に向かっている時、ドラ子が


「シロウ様には、末っ子のバンピーゼから血判をもらって頂いたそうで感謝しております。あの子は、本当、わがままで直ぐにどこかに出かけちゃうから困っておりおりました」


 ……バンピーゼって、L PHONEのステーリン・チャプスの事だよね。どう見てもあの人の方が年上に見えるんですけど……


「そうですか……お役に立てて良かったです」


 ……俺は、ほとんど何もしてないんですけど……


「着きました。こちらが会場です。どうぞ、リーナ様の隣の席におかけください。サツキ様は、ソラス様の隣の席にお願い致します」


「何ーーー!こ、これが会場ですかーー!」


「はい、何か問題でもありますか?」

「広すぎて……それに……リーナの隣って、あの壇上の席ですか?」

「はい。ご案内しますので、どうぞお入りください」


 そこは、ドーム球場のように広く、そして、多くの怖そうな悪魔達がたくさんいた。リーナの席は、その中で最も目立つ数段高いところにあり、如何にも王様のような扱いの席である。


 リーナの近くには、ミミーやソラスそしてアザゼルもそこにいた。


 俺とサツキが会場に入ると、悪魔達がざわめき出した。人間がいて良い場所ではなさそうだ。悪魔達が数万魔そこにいた。

 

 サツキを見ると、緊張しているのがわかるが、俺よりも堂々としている。こういうところは、妹でも凄いと素直に思う。


 ミミーが俺に気づいたみたいでニコニコし出した。席を立とうとすると後ろに控えていた爺さんに止められていた。


 ドラ子の案内でリーナの隣に座る。リーナは俺を見て申し訳無さそうな顔をしていた。黒いタイトなドレスがとても綺麗だ。銀髪の髪に金色に輝くティアラがとても美しい。


 俺は、リーナの姿に見とれていると、リーナが


「シロウ、すぐ終わるから我慢して」


 と、小声で呟いた。


「綺麗だよ。リーナ」


 俺は、本心からそう思った。リーナは、モジモジしたいらしいが我慢している。その姿がさらに可愛い。

 サツキもソラスの隣に座ったようだ。会場が一気に騒がしくなった。


『静粛に!静粛に!これより、新たな冥界の王に就任したサリーナ=アスモ=サタン様の就任式を執り行います。進行役は、この私、ドラキュラ家の家長ドラ…が務めさせて頂きます。では、前サタン様の後継人を勤められたドラキュラ伯爵公から挨拶を頂きます』


 会場は、さっきまでと違い静まりかえった。


『うぉほっん……ドラキュラである。先のサタン様がいなくなられて、荒れていたこの冥界も本来の姿を取り戻しつつある。あれは、1000年前の事じゃった。覚えておる者もおるじゃろうが、神族に支配された人間の勇者達がこの冥府にやって来て、黒炎を纏う先代のサタン様を撃ち滅ぼし、挙句の果てに、時の執行役員達を次々と薙ぎ倒して行きよった……あれから、冥界は、荒れ放題じゃ……


 食べ物もろくに食えない弱い者達は、相次いで滅んでしまった……


 ここに、おる者でも当時の事を知らない悪魔達も多いじゃろう。だが、やっと、長き眠りから覚めて、黒炎の姫が帰って来られたのじゃーー。


 もう、冥府では、黒炎を纏う者など、伝説やお伽話の中だけの存在じゃった……


 あ〜〜儂が生まれて育った頃は、黒炎を纏う者は割と見かけたのじゃ。そうさなぁ〜〜3000年前ではの話じゃが、神族と力比べをよくしとったものじゃ。今じゃ考えられん事じゃがな〜〜、ベルゼブブの先代も黒炎を纏ってたものじゃ。


 それと、確か……そうじゃ、そうじゃ。グーシオンも小さいけど纏っておったのう。彼奴は、黒炎よりも力の方が強かったがのう〜〜うぉほほほ、それと……』


『ドラキュラ公様、今日は、その辺で……サリーナ様の就任式ですので……』

『そうじゃった。そうじゃった。すまんのう〜〜ドラ子』

『いいえ……ドラ子って言うなって……ブツブツ』

『という訳じゃ!皆の者、新たな王、サリーナ様に忠誠の証を掲げるのじゃ!』


『オォーーー!!』


 会場内は割れんばかりの悪魔達の咆哮が響き渡った。


 ……凄いなーー、それにしても、ドラキュラ公の話が長いのは本当だったみたいだ。それに、あそこ、席が一つ空いてる……アザゼルの隣だからか?……


それと、全員がリーナの事を認めてる訳じゃ無さそうだ……

あの悪魔は、さっきからリーナに敵意を向けてる……チェックしておこう……

何々、マンモンと言うのか……欲深そうな顔をしている……



『では、サリーナ様のご挨拶を頂きたいと思います。サリーナ様、どうぞ……』


 リーナは、俺の顔を見て、そして、席を立って行った。


『サリーナです。この度、冥界の王に就任致しました。ふぅ……

 ここにおる悪魔達に告げる!元来、悪魔とは自由な存在だ。しかし、誰もが自由に生きれば必ず衝突が生まれる。衝突が激しくなれば争いが生まれ、そして、先の冥界のように弱い者が犠牲になる。弱い者が滅びるのは自然の摂理であるという意見の者がいる事も知っている。それでも、良いと言うなら、私から見れば、ここにいる者達は、皆、私より弱い。私が自由に生きるとすれば全てを滅ぼす事と同意である。それでは、冥界は成り立たない。故に、我らは契約を重んじる。


 これは、人間社会では、規約とかルールとかという言葉と一緒である。


 これからは、私が王だ。無闇に弱い者が滅ぶ事を良しとしない。どの悪魔も皆、私の配下なのだから……。私の配下である以上、魂を無駄にしてはならない。冥界が……それぞれ個人の悪魔達が……悪魔らしく存在できる冥界を築いていきたい。


だから、力を貸してくれ。そして、守ってくれ。各々の魂を大切にすると……

 各々の悪魔の存在を認めると……

 これが、私の望みでもあるのだから……』


『………………………………ォオオーーーー!!』


 会場はさらに大きな歓声に包まれた。俺は、リーナの後ろ姿を見ていて、何だかリーナが遠い存在になってしまったような感覚にとらわれていた。


 それ後は、リーナへの就任のお祝いの言葉を数魔が述べ、舞台は宴会へと移行した。


 悪魔達の宴会も酒やご馳走それに踊りなど人間とさほど変わらない。ただ、面々が怖いだけだ。


 リーナは緊張してたのか、宴会では笑顔が見れるようになっていた。


「リーナ、おめでとう。それと、さっきの挨拶凄かったよ」

「シロウには、聞かれたくなかった」

「何で?」

「何でもない……」


 そう言いながら顔を赤くしていた。すると、ドラキュラ伯爵が俺のところに来て、


「うぉほほほ、其方がシロウじゃな。サリーナから、聞いておるわい」

「はじめまして、ドラキュラ伯爵様」

「バンピーゼから血判をもらってくれたそうじゃな」

「俺は、ほとんど何もしてないですけど……」

「それでも、お主が居らんかったら血判は貰えんかった。礼を言われせてくれ。ありがとう」

「そんなーー頭をお上げください」

「いやいや、わしの頭など霧みたいなものじゃ。気にするではない。それに、サリーナやミミーまで救ってくれおった。お主には、感謝しかないわい」

「救ってません。ただ、閉じ込めただけですから」

「うぉほほほーー噂どうりの面白いやつじゃて〜〜のう〜〜ドラ子」


「ドラ子って言わないで下さい。伯爵公」

「じゃあ何と呼べば良い。わしがつけた名前が気に入らんと数千年に渡って言いよる。おまけに、不貞腐れて寝てばかりじゃ、のう、ドラ子」

「だから、伯爵公、ドラ子って……」


「私は、愛嬌のある可愛らしい名前だと思いますよ。すぐ覚えられて良いですし……」

「ほらっ、ここにも、ドラ子の良さをわかる者がおるぞい」


「そんなのお世辞に決まってます!」

「私も呼びやすいし良い名前だと思う」

「サリーナ様まで、そんなお世辞言うなんて」

「お世辞じゃない。私は、本当の事しか言わない」

「それは、知ってますけど……」


「そうそう、お主に頼みたい事があったのじゃ」

「俺にですか?」

「そうじゃ。ルシファーを探して連れて来て欲しいんじゃ」

「俺がですか?」


「シロウでも無理。ルシファーは、気分屋だから」

「サリーナ、そうは言っても奴は幹部の一人じゃ。承認を得るためのも冥府に来てもらわんといけんのう」


「ルシファーという悪魔がリーナの事を王と認めれば良いんですか?」

「それもあるが、冥界に張られた神の結界を解くには、元天使の王であるルシファーの力が必要なんじゃい」

「ルシファーって元、天使何ですか?じゃあ、アザゼルと一緒なんだ」

「そうじゃ。でも、ルシファーとアザゼルは相性が悪いというか何というか」


「ルシファーって、何処にいるの?」

「私と一緒に封印されてた。今は、きっとエルフの郷にいると思う。前に気配を感じた」

「エルフって、あのエルフ?」

「そう、あのエルフ」


 ……エルフっ娘達に会えるかも……


「今、シロウ。エルフの女の事を考えた!極刑!」

「リーナ、待て、それは、ダメだーー!」


 リーナの纏う黒い炎が拳に変わり俺を殴り飛ばした……


 俺は天井を見つめていた。






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