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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第3章

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第51話 ーーーサツキから頼まれた買い物ーーー

 



 俺の朝は早い。今日、午前中は新入生のオリエンテーション。午後からは部活紹介がある。中学の時と違い、給食が無い。今日からお弁当作りだ。


 何時も三季姉のお弁当を作っているので、俺の分を余った材料で作れば良いはずなのだが、何故か俺は、シアンさんとエリックそれとアスカの分まで作っている。それは……



 昨夜、引越しの挨拶に来たシアンさんとエリックは、俺の同級生と担任という事を家族が知り、夕食に招待したのだ。その時、お弁当の話になり、家事スキルの全く無いシアンが困っていたので、三季姉が「シロウが作ってあげれば?」という他人任せのセリフを吐き、現在に至るのである。


 お陰で、朝から忙しい。


「よし!出来たっと」


 俺には、スキル家事手伝いがあるので、これぐらいの事は造作もない。ただ朝、早く起きるのは辛かった。

 

 すると、神屋代から念話が入った。


『シロウ君、おはよう』

『おはよう。随分、早いな』

『お母さんとお弁当作ってたんだ。シロウ君も早いじゃん』

『俺も弁当作りだよ』

『そうなんだ。お昼一緒に食べない?』

『構わないよ』

『じゃあ、学校でね』

『わかった』

 ……[念話終]……


 また、念話だ。


『シロウ、甘いもの食べたい』

『わかった。すぐ行くよ』

『待ってる』

 ……[念話終]……


 俺はリーナの家に行き、マイルームのドアを開いた。そして、冥府に居るリーナの所に向かうのだった。


 リーナとは、公園の夜、冥府に帰ってから、最初の1ヶ月は連絡も取れなかった。

 でも、冥府が落ち着いた頃から、念話が入り、こうして会っている。高校受験の追い込みの時に呼び出されるのは大変だったけど……


「シロウ、遅い!」

「遅いって言うな。これでも、朝から急いで来たんだから」

「そっちは朝なの?」

「あーー、みんなのお弁当を作り終えたばかりだ」

「私も食べたい」

「リーナが欲しいのはこれだろ?」

「そう、もちもちふわふわシュークリーム」

「あれっ、ミミーは?」

「フェニックスのところに行ってもらってる」

「何か用があったのか?」

「涙をもらいに行ってもらった。フェニックスは、私かミミーじゃないと涙をくれない」

「そうか……じゃあ、ミミーの分を置いておくね。それと、ソラスとアザゼル用にお酒も買って来たよ」

「みんな、喜ぶ」

「冥府はどう?」

「だいぶ落ち着いた。けど、不満」

「何が不満なの?」

「自由に出歩けない……」

「そうか……そうだよね。冥府の姫様だもんね」

「私は、シロウといた時の方が楽しい」

「いつでも逢いに来るよ。わがままお姫様」

「シロウはズルい……」


 ここは、冥府の城、リーナの居室だ。リーナは、1ヶ月で冥府を制圧し今の地位にいる。もちろん、ミミーやソラス、そしてアザゼルも力を貸してくれた。


 最初は、人間と契約した姫など以ての外と反対する悪魔も多かったらしい。だが、リーナの纏う黒炎は、冥府の王の証し。黒炎を纏ったリーナを見たものは皆、納得したという。


「今は、まだ、大変な時期だから仕方ないだろう?」

「わかってる……けど」

「他の悪魔に見つかったら大変だし、俺、帰るよ」

「わかった。また、お願い」

「はい、はい」


 俺は、ドアを開き部屋に戻る。リーナの寂しそうな視線が心に残った。




 ◇◇◇



 朝、学校に行こうとすると、サツキから買い物リストを渡された。


「シロウ兄、これ、買ってきてくれる? 書いといたから」

「良いけど……えっ!これ、最後のこれっ、無理だよ。こんなの買えないよ」

「無いとみんな困るの!」

「じゃあ、これだけでも、サツキが買いに行けばいいだろう?」

「私、今日、委員会だから遅くなるの。シロウ兄、お願いね〜〜」


 そう言って、さっさと学校に行ってしまった。

 母さんは、新人研修で2泊3日の旅行に付き添いで出かけてるし、二葉姉は……

 寝てる……。無理そうだ。


 睦美には頼めないし……


サツキの奴!男子高校生にこんなもの買えるわけないだろう! 生理用品なんて……


 学校着いても、俺はその買い物をどうするか悩んでいた。

 女装するか……。

 それこそ、変態だ……。

 何かと一緒にまとめて買えば……ドラックストアーで買うものは他にないし、そんな余裕、鈴風家にはありません……。


「困った……」


「おい、シロウ。何が困ったなんだ?」

「大輝か……妹に買い物頼まれててな〜〜」

「何だ、そんな事か」


 ……そんな事ではなく、本当に大変なんですけどーー!……


「それより、部活決めたか?」

「まだ決めてないよ。大輝はどこにするんだ?」

「俺は、バスケ一筋よ。これでも、中学の時はレギュラーだったんだぜ」

「バスケかーー、大輝はそんな感じするよ」

「あの、シアンちゃんや鈴音ちゃんはどこ入るのか知ってるか?」

「いや、全く知らない」

「シロウ、お前、青春、無駄に過ごしてるぞ!」

「大輝は、欲望そのままだな」

「シロウもなかなか言うな。一本取られたぜ」

「お互い様さ」


 たわいも無い大輝の言葉に俺は閃いた。

 そうだ、神屋代に頼んで買ってもらおうっと……

 でも、同級生の女子に頼むのはいいのか? 生理用品だぞ……下手すれば変態扱いされるぞ……。う〜〜む。これは、却下だ!


 そうだ。三季姉がいるじゃないか……すっかり、忘れてた。


 俺は、休み時間、三季姉の教室に行くのだった。




 ◇◇◇



 三年の教室は3階にある。高校生とはいえ、1年生と比べるとみんな大人っぽい。


 ……三季姉は、確か3組だって言ってたよな……


 俺は、恐る恐る3組の教室を覗き込んだ。すると、


「おい、一年坊、なんか用か?」


 ガタイの良い精悍な顔つきの男子がそこにいた。


「鈴風 三季の身内のものですが、呼んでもらえますか?」

「鈴風の弟か! おい!鈴風ーー!弟君が来てるぞーー!」


 ……この人、声デカイんですけどーー!……


 その声に反応したのか、みんなこっちを向いた。


「あれ、三季の弟君? 結構、可愛いじゃん」

「噂のお弁当男子ねーー!」

「へーー三季の弟なんだーー!」


 ……女子がわんさか集まってくるんですけど……


「シロウ、どうしたの?」

「それより、三季姉、何なの、この状況?」

「何時もお弁当作ってくれてるでしょう。みんな、シロウを見たがってたんだよ」

「それでも、これじゃあ、話、できないよ」


「みんなーー。これ、うちの弟のシロウ。よろしくね。話あるからまたね」


 三季姉に連れられて、女子の集団からやっと抜け出せた。


「何か用?」

「サツキに頼まれたんだけど、これ、帰りに買えない?」

「これ、シロウに頼んだの? サツキ、自分が買うの恥ずかしいからって〜〜」

「そうでしょう。俺、無理だよ。これ、買うの」

「私、今日、忙しいんだよね。午後は、部活紹介のスピーチ頼まれてるし、部活も練習忙しいし……、シロウ、あんたはできる子だよ!」

「無理、無理!俺、買えっこないよ」

「人間、努力だよ。じゃあね〜〜」


 そう言って去って行った……。自分も買うの恥ずかしいんだ。きっと……。


 ……女子が恥ずかしがる物、男子高校生にどうせよって言うんじゃ!……


 俺は、気分最悪のまま自分の教室に戻るのだった。




 ◇◇◇



 学校帰り、何の解決策を見出せなかった俺は、ドラックストアーの前を行ったり来たりしていた。


 ……素知らぬ顔で買えばいいんだ……無理、無理!絶対、無理!……


 あーー、時間だけが過ぎて行く……


 そんな俺を、学校帰りの女子校生達や買い物してる主婦達が怪訝な顔をしてこちらをチラ見して通り過ぎる。


 俺は、ほとほと困り果てていると、


「シロウはシロウで何してる?」


 と、シアンさんから声がかかる。


「シアンさん、一生のお願いです。これを買ってきてもらえませんか!」

「何、何どうした? そんな必死なシロウはシロウじゃない」

「俺じゃなくてもいいですから、これを、是非とも、これをーー!」

「これって、何?」

「これって、アレです」

「アレって何?」

「アレってそれです」

「うむ?」

「えっ?」


「もしかして、シアンさん買ったことないの?アレを……」

「買ったことない」

「何時も、どうしてたの?」

「教会から配給されてた」

「じゃあ、これからはどうするの?」

「エリックに任せる」

「えっーー!」


 ……ダメだ……この妖精っ子は……


「でも、シロウが困ってるなら買ってくる」

「ほ、本当ですかーー!ありがとうございまーーす」

「じゃあ、行ってくる。初体験……」


 ……大丈夫か?……


「シロウーー!羽根が付いてるって事は、これ、飛ぶのーー?」


 ……声デカいよ。シアンさん。それに、飛ぶわけないでしょう!飛ぶなら見てみたいわ……


「シロウーー!ミニと夜用ってなーーにーー?」


 ……あーーみんな俺を見てる。黙って買えないのか! どんな苦行だよ……


 俺は、いたたまれずその場を離れたのだ。


 すると、


「シロウ、どこに行く。どれがいいか選んで!」

「無理です。俺にはどれがどれだかわかりません……」

「シロウの好きなの選んで!」

「俺が使うんじゃないからわかりません!」

「じゃあ、どれが好みなの? 」

「俺にそんな趣味はありません!」


 そんな様子を見ていたのか、見知った叔母さんが声をかけてくれた。


「シアンちゃんと鈴風君じゃない。どうしたの? ナプキン持って騒いで〜〜」


『神屋代のお母さん!』


 俺は、事情を話して神屋代のお母さんにアレを買ってもらった。


「シロウ君も大変ね。男の子じゃ買えないわよね」

「おっしゃる通りです……」


 ……買えない女子もここにいるけど……


「また、夕飯食べにきてね。鈴音も喜ぶから」

「今日は、助かりました。ありがとうございます」

「いいのよ。またね」


 そう言って神屋代のお母さんは帰っていった。


 俺は、シアンさんと一緒に家路に急ぐのだった。



 ……疲れたよ……





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