第50話 ーーー高校生になりましたーーー
「シロウ兄、ハンカチ持った? ティッシュは?」
「はい、はい」
「シロウ、ネクタイ曲がってるわよ」
「はい、はい」
「シロウって、何かうちの学校の制服似合わないよね〜〜」
「はい、はい」
「シロウお兄ちゃん、友達1000人できるといいね」
「はいって、睦美、できないよ。そんなに〜〜」
「さぁーー。みんな並んでーー!撮るわよ!はい!」
『チーズ!』
『パシャ!』
俺は、鈴風四郎、15歳。今日は、高校の入学式だ。
……家族写真なんか撮らなくてもいいのに……
と、まぁこんな具合で、家族と自宅である都営住宅の前で写真を撮っている。
思えば、中学三年の時は、いろいろあった。
……俺、あんな状況で良く高校生になれたよ……うん、頑張ったよな、俺……
俺が通う高校は、家から近場の都立高校で三季姉も通っている。三季姉は今度三年生だ。
都内では、そこそこの学校だが、進学率が高く部活にも力を入れている。
……俺には家事があるし、近いとこじゃないといろいろ忙しい……
それと、神屋代も同じ高校に受かり、また、一緒だ。
また、腐れ縁の大林 隼人は、サッカーの強い私立校に推薦で入った。
三季姉は、今年最後の部活で100メートル走でインターハイを狙っている。
俺は、高校では、目立つ事なくひっそりと穏やかに過ごしたいと願っていた。
「あとで、見に行くからねーー」
「いいよーー!来なくてーー!絶対だよ。来ないでよ」
……二葉姉が来たら、目立つだろうし、何か家族と一緒だと恥ずかしい……
「シロウも思春期なのかしらねーー」
……母さん。俺にだって思春期ぐらいあるよ。無きゃおかしいでしょう!……
俺は、家族の声援? を背に高校の入学式に向けて歩き出す。家の周りにも桜の木があり、ちょうど、満開だ。風にそそのかされ、花びらが落ちてくる。
俺は、リーナの事を思っていた。あの公園での出来事を……
桜が咲いたら、お弁当を持って見に行こうと約束してたっけ……
それと、アノ事を……
「シロウ!エッチな事考えてただろう」
「何だ。アスカか……脅かすなよ」
「幽霊は脅かすものだろう?」
「それはそうだけど……まさか、学校までついてくる気じゃないだろうな?」
「当たり前だろう〜〜。もちろん、そうさっ!」
「マジかーー! 今日は、大人しくしてくれよ。それでなくても、初っ端から、目立ちたくないんだ」
「な〜〜に〜〜?シロウはあっちがいると迷惑なんだ。そうなんだ〜〜」
「そういう訳じゃないけど……」
「なら、決まりね」
「あ〜〜嫌な予感しかしない……」
リーナ達が冥府に帰ってからというもの、アスカは、受験勉強をしてる俺をこき使い散々邪魔した癖に……
アスカは、訓練して実体化を6時間までできるようになった。もっと、鍛錬すれば、一日中も夢じゃないらしい……
俺は、透明になっているアスカと喋りながら学校まで向かっていた。
俺の行き先を人は避けている。その事に、俺は気づいていなかった。
桜の花びらも気の毒そうに俺を避けていた……
◇◇◇
高校の校門を潜り、俺はクラス分けを書き込んである掲示板を見ていた。
「おっ、あった。俺、1組だ」
自分の名前を見つけて、さっさと教室に入る。席も決まっているみたいだ。
俺は、黒板に張られている席順を見て、自分の席に着いた。真ん中の後ろから2番目の席だった。
……窓際の1番後ろが良かったな……
そう思っていると、後ろの奴から声がかかる。
「俺、瀬戸 大輝 よろしくな」
「あーー俺は、鈴風 四郎だ。シロウでいいよ」
「じゃあ、俺は、ダイキでもセトでもいいぜ。シロウは、どこ中よ?」
「◯◯◯中だよ。ダイキは?」
「俺、△△△中だよ。◯◯◯中って、あの綺麗な銀髪の留学生がいたところか?」
……リーナの事か?……
「多分、そうだけど……」
「俺、見に行ったんだぜ!何かモサイ男と一緒だったけど、あの子、綺麗だよなぁ」
……モサイ男で悪かったな!……
「あぁーー」
「でも、帰っちゃったんだろう。母国に……言い様だぜ!モサ男」
……モサ男って言うなって!……
「このクラスにも、留学生がいるみたいだぜ!ほら、斜め右の和風美人と話してるだろう?」
「そうなんだ……」
……あれって、神屋代? 同じクラスだったんだ。それに、留学生って……
「おい!こっちくるぜ!和風美人と留学生がっ!」
「シロウ君、同じクラスだね。また、よろしくね」
「シロウはシロウで、こんにちわ」
「何でシアンさんがいるの? 同じ歳だったの?」
「あれっ?言ってなかったっけ?」
「聞いてないよーー」
……外人さんって年齢上に見えるし……
「シアンさん、こっちに引っ越して来たんだよ」
「神屋代は聞いてたんだ?」
「先月、挨拶に来てくれたからね」
「おい、おい、シロウ。紹介しろよ……」
「あぁーーこの人が同中で神屋代 こっちの人がシアンさんだよ」
「お、俺、瀬戸 大輝です。△△△中出身です。よろしくお願いします!」
「よろしくね。私、神屋代 鈴音です」
「私はシアン」
「で、2人とも同じクラスなんだ」
「そうだよ。嬉しくないの?」
「そんな事はないよ。中学の時と変わらないと思ってさ」
「知り合いがいると安心するでしょう?」
「あぁーー、それにしても、神屋代、背が伸びた?」
「わかるーー?毎日、ジャンプと昼寝と牛乳飲んでたんだぁ」
「はい?そんなんで背が伸びるの?」
「伸びたんだからいいでしょう。シロウ君とそう変わんないよ」
……確かに、俺と同じくらいの背丈だ……
「あっ!先生来たみたい。またね」
「おい、シロウ。なんだよあの美人達は……随分、仲良さそうじゃん」
「たまたま同じ中学出身なだけだよ」
「こいつーー!」
「はーーい。皆さん。席に着いて話をストップしてくださいデスね」
教壇に現れたのは、紛れもなくなく、あのエリックさんだ……
「私は、このクラスを担当するエリック、デス。教科は英語を教えます。よろしくデスね。これから、講堂、じゃなく体育館に集まりますデス。移動デス」
『キャッーー!カッコいい』
女生徒達からは歓声が上がる。
……マジかよーー!担任がエリックさん!?おまけにシアンさんまで、ローマ聖教、いらん事に金とコネを使うなって……
その時、遊びに行ってたアスカが帰ってきた。知ってる面々を見て声を出す。
「エリックとシアンじゃん。なんでこっちにいるの?」
突然の声に、クラスは驚いていた。
「バカ!アスカ。声出すなって!」
俺の声もクラスに響き渡っていた……
◇◇◇
俺は、完全にクラスから浮いていた。もちろん、あのアスカの声のせいだ。
「鈴風って、何者なの?」
「へんな声聞こえたよね。それに、あの鈴風って男、答えてたよね」
「幽霊でも着いてんじゃん。それとも、憑依されてるとか?」
「宇宙と交信してんじゃねーーの? それとも厨二って奴?」
俺は、高校初日から残念男に成り下がっていた。
「気にするなって!あっちがいるから寂しくねーだろう?」
「アスカ……頼むから黙っててくれ……」
「わかったよ。シロウのチキチキマ◯ンのケンケン!」
……ケンケンって何? それって悪口なの?……
そう言ってアスカは散策に出かけてしまった。
体育館で入学式が済み、このクラスの自己紹介も済んだ。あとは帰るだけになったので帰ろうとすると、この高校は部活に入らないといけないらしく、明日から部活見学できるとエリックさんが言っていた。
……参った……部活してたら家事ができなくなる……
俺は、殆ど活動らしい活動をしていない部活に入ろうと決めた。
すると、後ろの席の大輝が、
「シロウ、連絡先交換しようぜ。RINEしてるだろう?」
「あーーわかった」
俺は、ガラケーを取り出し大輝と連絡先を交換した。
「今時、ガラケーか? 珍しいな。それと、シロウ。神屋代の連絡先とシアンさんの連絡先知ってたら教えてくれ?」
「それは、相手がOKなら良いけど、俺、連絡先、知らないよ」
「マジかーー!あんな仲良さそうなのにか?」
「あーー自宅の電話なら家に帰ればわかるけど……」
「シロウって、お前、なんか生きててつまんなくねーーの?」
「いきなりそれはないだろう?」
「そうもそうだな。わははは」
……大輝と言う奴は裏表のない奴らしい。話してて、こっちも楽だ……
俺は、急いで家に帰る。今日は、近所のスーパーで、ジャガイモが半値のセールだ。それに、ティッシュも5個158円で売られてる。絶対、買い逃したくない……
俺は、家の都営住宅に着くと、俺達の住んでる下の階で引っ越しが行われていた。
……401号室と402号室は、先月出てったばかりだから、新しい人が越してきのか?……
よく見ると、引っ越しの家具がとても豪勢だ。俺が欲しかった北欧の家具もある。
……金持ちが、都営住宅に越してくるなって!……
俺は、嫉妬心からそう思うと、そこには見知った顔がいた。
……まさか……
「シロウはシロウで、私はここに住むのでよろしく」
「シ、シアンさんーー!って事は、隣は……?」
「401号室は私。402号室は、人形好きの変態、エリック」
「マジですかーー!」
……ローマ聖教って、お金とコネの使い方、絶対、間違ってるよ……
俺の高校生活は、こうして始まった。




