第49話 ーーー秋は、別れの季節ーーー
あれから俺とリーナは、公園の人気のないところで……
転移魔法で家に帰った。
……そうそう、皆さんが期待するような展開にはなりません!……
俺は、姫様達をほったらかしたのが気になっていたので、神屋代家に出向く。すると、庭先から、威勢の良い姫様の声が聞こえてきた。
「おりゃーー!」
「おーー!凄いです。アンリエット様。そんな動き普通の人間では出来ません」
「ごめんくださ〜〜い。鈴風です」
「あっ!シロウ君だわ」
神屋代が玄関に現れた。
「神屋代、今日は悪かった。それと、さっきから庭先で姫様の声が聞こえるんだけど、どうしたの?」
「それがね。凄いの〜〜!アンリエット様、お祖父ちゃんの剣の相手をしてるのだけど、何でも、一眼見ただけで、その動きを模倣できるのよ」
「へーーすごいね。アンリエット様」
「そうなんだよ。早く庭に来てよ」
「わかったよ」
俺は、神屋代に引っ張られて家の中から庭を見渡せる縁側に向かった。
姫様の気合の声とそれを賞賛するメイド1号の声が聞こえる。
そこには、アンリエット王女とあのエロ祖父が剣の打ち合いをしていた。
お互い、真剣な眼差しで向かい合っている。そして、アンリエット王女が動いた。その動きは、素早く剣筋も見えない。
「おりゃーー!」
「ほーーいっと!」
エロ祖父は、その剣をいとも簡単に受け止めてしまった。
……ただのエロ退魔師祖父じゃなさそうだ……
「ね〜〜、凄いでしょう。姫様の動きはお祖父ちゃんの動きを真似たものなんだよ。神屋代家に伝わる神屋流の剣なのーー。一眼見ただけで覚えちゃったんだよ」
「うん。すごいよ。俺なんか剣筋が見えなかったもの」
俺の声が聞こえたのか、アンリエット王女が俺のところにやって来た。
「シロウ様、わ、私の剣、見てくれました?」
「凄いです。姫様! 剣の達人だったんですね」
「いいえ。違いますわ」
「えっ!?」
「ちょっと、お耳を……」
アンリエット王女は俺の近づき内緒話をし出した。メイド1号とエリックさんの目が怖い……
『これ、きっと女神メサイヤ様のご加護のおかげですわ。私は、運動が苦手で剣もろくに握った事がないんですもの……』
『そうだったんですか……でも、凄かったですよ。さっきの動き……』
『どうも、見たものを真似する事が出来るみたいなんですわ』
『では、色々なものを真似できるんですか?それは、本当に凄いです』
『私も嬉しいですわ。何の取り柄も無かった私が……』
『聞いた話ですと、女神様のご加護は、その人の心の奥底にあるものが得られると伺った事があります』
『そうですの……私は妹のカトリーヌみたいに剣も運動も得意じゃありませんでしたし、魔法も中の上くらいでしたから……もう、お嫁に行くかお婿さんを貰うしか、お国に役立つことが出来ないと思っておりました……………だから、きっと女神様が、私の奥底にしまい込んでいた願いを聞き届けて来ださったんですね……』
そう言いながら、アンリエット王女は涙を流していた……すると、
「このゴミ虫ーー!アンリエット様に何をしたーー!」
……話を聞いていただけですけど!?このメイド1号は、本当に空気台無しだよ……
「ソランジュ、違うの。私は、シロウ様に感謝をしてたの」
「アンリエット様がこ、このゴミ虫にか、感謝を……ですか?」
「そうですわ。私を、この日本という国に連れて来てくれた事に感謝を言ってたのですわ」
「そ、そうでありましたか……私は、てっきりこのゴミがアンリエット様に無礼な事をしたのだと思いまして……」
「シロウ様は、そんな事、致しませんわ」
「そうでありますか……」
……メイド1号の目がさらに怖くなったぞ……
『アンリエット様、この世界には色々な剣術や拳法などがあります。もし、模倣ができるのでしたら、それをご覧なられてはいかがでしょうか?』
『そんなものもありますの? 是非に、見てみたいですわ』
『わかりました。あとで映像を記録したDVDを借りてきますね』
『DVDですか?』
『はい。それを見ればきっとお役に立つと思います』
『あ、ありがとう御座います。シロウ様』
そう言われながら抱きつかれてしまった。メイド1号の目に殺気が走った……
◇◇◇
アンリエット王女の加護、女神メサイヤから受け取ったのは【モーション・コピー】というスキルだった。俺は、王女の許可を得てスキルを見させてもらったのだ。
そこで、気になるのがメイド1号のスキルなのだが……これも本人の許可を得て見させてもらった。【ハイド・シャドウ】というスキルで、影の中に隠れたり、影渡りができるみたいだ……。
本人もスキルを持てて喜んでいた。
……影に隠れるって、メイド1号の心の奥に何があるんだ?……
あれから、アンリエット王女とメイド1号は俺が借りてきた、この世界の武術やスポーツを始め、ありとあらゆるDVDを見まくって、3日後に元の世界の送って行った。
東国の島国への旅行は、もちろん取りやめになった。第二王女のカトリーヌは、不思議がっていたが……
それと、姫様のスキル、モーションコピーは、動きは真似できても、それに見合う体力と柔軟性が無いとあとで大変な筋肉痛になるらしい。俺は、フェニックスの涙を含んだ回復薬を数本渡しておいた。姫様はあっちの世界で、まず体力作りをするそうだ。
メイド1号には、怖かったけど孤児院の事を話しておいた。手紙を事務官のドリトスに渡した事も話しておいた。
それから、エクソシストのエリックとシアンはローマ聖教に帰っていった。報告を済ませる為らしいが、エリックは、アンリエット王女に会えないと落ち込んでいた。
あのエロ祖父さん事、退魔師の黎明さんは、また、旅に出かけた。何でも、旅をしながら、妖魔退治をしているそうで、昔の行脚僧のような事をしているらしい。
そして、リーナ達だが……
公園から戻ったその日に、ミミー、ソラス、そして、アザゼルを連れて冥府に帰って行った……
俺のマイルームからドアを開き、冥府に行くことが出来た。俺は、リーナ達が冥界を落ち着かせるまで、待つ事にしたのだ……
契約者同士なら、冥府とこっちの世界でも念話が通じるし、寂しくは無いのだが……
俺は、今、リーナ達の住んでいた隣の家で受験勉強をしている。
狭いと思っていた、この3DKも1人では、広すぎるくらいだ。
……暖房の効きが悪い……
いつか、リーナ達が戻って来てもいいように、この部屋の賃料を俺は、金貨を換金して払っている。
誰も居なくなってしまったこの部屋で……
いつでも、帰って来れるように……。
いつも読んで頂いてありがとうございます。
第2章は、ここまでです。
次からは、シロウの高校生編、第3章が始まります。




