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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第2章

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第48話 ーーーリーナと公園でーーー

 




「ただいまーー!」


「シロウ兄、シロウ兄。大変、大変!」

「どうした? サツキ」

「リーナさんちの水道が壊れちゃったの」

「えっ!?」

「ソラスがね。一晩中、空を飛び回って帰ってきたら、喉乾いたみたいで水を飲もうとしたら……」

「飲もうとしたら?」

「蛇口を壊しちゃったのよーー!」

「なぬーー!大変じゃないか。下の階に水漏れしたりしたら……」

「今、ソラスが押さえてるから大丈夫」

「はぁ?」


 リーナの家に行ってみると、壊れた水道の蛇口の上にソラスが乗り水圧を押さえていた。それでも、水は、少しづつ流れている。


 ソラスはびしょ濡れだ……


 俺は、玄関を出て、階段の所にある給排水の設備がある扉を開け水道の栓を閉める。


「どうーー?止まったーー?」

「止まったみたいーー」


 サツキは、ソラスをタオルで拭いていた。俺は、床に溢れた水を拭き取る。


「ソラス、大丈夫か?」

「私にかかればこんな些細なことで……へーークシュん!何ともないであります……」


 ……どう見ても、何ともありそうだけど……


「これ、水道屋さん呼ばないとダメかもしれないな?」

「もう、呼んだよ。もうじき来ると思う」

「そうか。サツキ、ありがとうな」

「エヘヘヘヘ。このぐらい普通だよ」


「これじゃあ、すぐに出かけられないな。神屋代に遅れるって念話しておこう」

「あの王女様連れて来たんでしょう? 大丈夫だった?」

「あーー、今日、町を案内する事になってるんだけど、サツキも行くだろう?」

「行きたいけど……ソラスの様子が良かったらね」

「アザゼルは?」

「奥の部屋で寝てる」

「こんな騒ぎでよく寝れるなーー」

「随分、酔ってたよ」

「あ〜〜それで……」


「リーナ達は?」

「二葉姉達とコンビニ行ってる。シロウ兄がいなかったら、ご飯、買うんだって」

「そうか……悪い事しちゃったな〜〜」

「平気だよ。リーナさん達、コンビニ気に入ってるから」

「そうなのか?」

「食べたい物がたくさんあるって、喜んでるよ」

「そういえば、サツキも濡れたんじゃないか? 着替えてきなよ」

「そうする。パンツまで濡れちゃったよ〜〜」

「そういう事は、口にするんじゃない!」

「今、想像したでしょう? シロウ兄のムッツリスケベ!」

「馬鹿言ってんじゃない。早く着替えてきな。風邪引くぞ」

「は〜〜い」


 俺は、神屋代に念話をいれた。

 ……[念話中]……

『神屋代……聞こえる?』

『うん、聞こえるよ』

『リーナの家の水道が壊れちゃって、修理呼んだんだけど、直るまでいるから少し遅れるね』

『は〜〜い。こっちは大丈夫だよ。シアンさんもエリックもいるし……』

『悪いな。また、連絡入れるよ』

『わかったーー』

 ……[念話終]……


 ……大丈夫かなぁ?シアンさんもエリックも頼りないけど……


 俺は、ドライヤーでソラスの羽根を乾かしていた。


『へーークシュん!ホーホーゲキョ』




 ◇◇◇




「スズネ、どこ行くの?」

「そうだなぁ〜〜まず、お姫様とソランさんの服かな?お母さんの服借りたけど、いまいち、あってないのよね〜〜」

「私も服を買う。持ってきた修道服では目立つ」

「じゃあ、まず、お買い物ね。シロウ君から軍資金の金貨預かってるから、これを換金しよう。大人のエリックさんじゃないと換金できなさそうだし〜〜」

「わかった」


 アンリエット王女達は、一歩家を出てすぐにカルチャーショックを受けていた。


鉄の塊が道路を走っていたからだ……


「何でしょうか? あの走る鉄は……?」

「アンリエット様、危のうございます。私の後ろから歩いて来て下さい」

「ありがとう。ソランジュ」


「あ、あ、あれは、車と言います。ガソリンという燃料で動くのデス」

「エリック様、ガソリンというのは魔法でしょうか?」

「いいえ。この世界には魔法という概念はありますが、存在はしません。あれは、地下資源から採掘された化石燃料の事です」

「地下からですか……」

「はい。そうでありますデス」


「今日のエリックさん、なんか変よね?」

「エリックは人形遊びのし過ぎで壊れた……」

「そういえば、エリックさん。傀儡師でもあるんだよね」

「そう。黎明に教わったらしい。いつも、人形を見てヘラヘラしてる変態」

「シアンさんとはいつも一緒だね」

「同じ孤児院で育った。兄妹みたいなもの」

「そうだったんだ……なんか変な事聞いちゃってゴメンね」

「大丈夫。慣れてるし、全然気にならない」


「あの大きな建物はこの国のお城でしょうか?」

「アンリエット様、危険です。前に出られては……いつ、敵が襲いかかってくるかわかりません」

「大丈夫そうよ。みんな、普通の歩いてますもの」

「そうはおっしゃっられても……」


「あれは、マンションと言って建物の一つです。あの中に、人々が暮らしているのでありますデス」

「そうなのですか〜〜きっと貴族の方々が住んでいらっしゃるのね」

「この国には、爵位という制度はありません。皆、平等なのデス」

「貴族も平民も一緒なんですか? 何て素晴らしいんでしょう」


「もうすぐ駅に着くわよ。今度は電車に乗るからね」

「電車? 何でしょうか?」

「そうね〜〜。乗合い馬車の大きなものかな?」

「そうでしたか……大きな馬車なのですね」

「うん。そんな感じだけど……ちょっと、違うかも……あっ!ちょっと待って」


 その時、シロウからの念話があった。


「シロウ君ちょっと遅れるみたい。何でも家の水道が壊れちゃったんだって」

「まぁ……残念ですわ」

「水道とは、何でございましょうか?」

「ソランさん。水道はね。水が出る施設の事かな?」

「水というと井戸ですね」

「うちにもあったでしょう? 蛇口を捻ると水が出たでしょう。あれの事だよ」

「確かにありました。あれは、スズネの所だけではないのですか?」

「うん。どの家にもあるんだよ」

「なんと……アンリエット様。大変です。この世界はどの家にも個別の井戸があるらしいです」

「それは便利な事ですわ。民の皆さんが水汲みに苦労されなくてすみます」

「おっしゃる通りです」


 ……シロウ君。お姫様の案内、思ったより大変かも……




 ◇◇◇




『シロウ君、大変、大変!』


 ……神屋代から念話だ……


『どうした?』

『シロウ君から預かった軍資金の金貨、10枚換金したら98万だって……』

『そうかーー、それぐらいすると思ったよ』

『ねぇねぇ、これで、お姫様様達の服とか買っていいんだよね』

『そのつもりで渡したんだよ』

『じゃあ、私もいい?』

『構わないよ。残りは神屋代家に渡そうと思ってたんだし……』

『シアンさんも欲しいって……』

『わかった。姫様達、よろしくな。こっちはまだ、水道屋さん来ないんだ』

『任せて!じゃあね〜〜』

 ……[念話終]……


 あの金貨は、この間、スキル、日曜大工で作ったやつだ。必要になったらまた作ればいいと思っていた。


 すると、リーナが帰って来た。


「おかえりーー。あれっ、ミミーとアスカは?」

「二葉と睦美と一緒に三季の練習見に行った」

「そうなんだ。陸上の練習なんて見てもつまらなくないのか?」

「学校行けるのが楽しいらしい。特にアスカが」

「学校休んでたって言ってたし、楽しいのかもしれないけど、まぁ、いいんじゃないか」

「ソラスは?」

「サツキのとこにいるよ。何でも水道ソラスが壊しちゃって、今、乾かしたところなんだ」

「そう」

「水道屋さんが来たら、俺たちも出かけよう」

「わかった。待ってる」


 その後、水道屋さんが来たが、修理に45000円も取られた。


 ……今月、お金、厳しいのに……


 結局、お昼過ぎてしまい、みんなも帰って来なかったので、俺とリーナだけ姫様のところに向かうのだった。


「リーナと2人きりなのは久し振りだなぁ」

「そう。もっと、こういう時間を作るべき」

「わかってるんだけど、なかなか、時間作れなくて……」

「シロウは、あちこちにいい顔し過ぎ」

「そうしたくて、してるんじゃないけど、自然とそうなちゃっうんだよ」

「まぁ、いい。それもシロウ」

「まだ、お昼食べてないだろう? 神屋代達もお昼食べているだろうし、何か食べて行こうか?」

「お腹は空いてる。賛成」


 俺は、子供の頃、家族とよく行った駅近くの公園に行こうと思った。電車を乗り継ぐけど、山が公園になっており見晴らしも良い。それに、博物館や食堂もある。


「リーナは、こっちの世界に慣れた?」

「出かけるのは、面倒。電車とかバスとかまだ、慣れない。それに、人が多すぎる」

「転移魔法使えるから、乗り物とかあっちの世界でも利用しなかったもんね」

「向こうでは、人と接する事はほとんど無かった。いつも、冥界にいたし……」

「冥府の姫様だもんね。おいそれと出かけられないなよね」

「うん。でも、リーゼはよく出かけていた。目を離すとすぐいなくなる」

「リーゼって、リーナの姉さんだよね」

「そう。小さい頃は、仲良かった……」

「そうなんだ……」

「何であんな事をしたのか、理由を知りたい……」

「あんな事って、冥界を滅ぼした事?」

「そう……」

「あの吸血鬼マリーンさんが言うには、こっちの世界にいるような事を言ってたけどリーゼさんは、自由に世界を行き来できるの?」

「それは知らない。私は、リーゼの能力を全て知っているわけではない」

「実際、この世界に居たんだから、時空を渡れたんだろうけど……」

「それは、シロウも同じ。時空を渡れる」

「そういえばそうだね。深く考えなかったよ。というか、考える時間が無かったよ」

「シロウは、自分から面倒ごとに巻き込まれていく、変態」

「リーナ、それ、酷いよ」

「事実だから仕方ない」

「もう〜〜」


 俺達は、山の公園に着き、食堂で蕎麦とお稲荷さんを食べる。リーナは、不思議そうに蕎麦を食べていた。


「美味しいけど、食べづらい」

「慣れないとね……でも、それも、食べる楽しみだよ」

「そういうもの?」

「そうだよ。ここは、春になると桜が綺麗なんだ。今度、見に来ようよ」

「桜?」

「綺麗な花だよ。あちこちに木があるだろう。ほとんどが桜の木なんだ」

「あの木に花が咲くの?見てみたい」

「春になったら来よう。お弁当持って」

「お弁当?」

「ご飯の事だよ。いろいろな美味しいものをたくさん持って花を見ながら食べるんだ」

「お弁当……うん。わかった。見に行く」


 ……花より団子みたいだ……


「そういえば、ドラキュラ伯爵の話は何だったの?」

「血判を渡すだけだったけど、また、話が長くなった」

「大変だったね」

「そう。でも、気になる事がある」

「気になる事って?」

「冥界が荒れている事……」

「そうなんだ……」

「ドラキュラ伯爵は、私に戻って来いと言ってた」

「えっ! そうだよね。冥府の姫様だもんね……」

「今は、ドラキュラ伯爵が冥府を何とか抑えているらしい……でも、歳だから……」

「だから、血判が必要だったんだ。リーナもそれで急いで渡しに行ったんだね」

「でも、後継が頼りないらしい。冥府を治める器じゃないっと言ってった」

「だから、リーナに戻ってきて欲しいんだ……」

「今、その事を悩んでいる……」


 ……リーナの居場所は、元々冥府なのだから戻るのが一番なんだろうけど……


「リーナはどうしたいの?」

「戻っても利用されるのは嫌だ。けど、冥界の秩序が乱れ、弱い悪魔達が滅ぼされるのは見てられない」

「そうか……。俺は、リーナの好きにしたら良いと思う」

「シロウはそういうと思っていたけど……私が冥界に帰ったらシロウはどうする?」

「リーナとは契約してるし、離れるの寂しいけど、俺は、こう思うんだ。人、または、リーナ達や神族達も皆、やるべき事があって、存在してるのだと思う。リーナは、冥界の姫様なのだから、その役割は大きく明確だと思うんだ。俺みたいな人間ではその役割や生きる意味がなんだか、理解できるまで時間がかかるけど……」


「それは私も理解できる。私にしかできない事が明確なのも……でも、シロウもその役割はきちんとある。今は、シロウ自身理解できてないみたいだけど……」


「リーナには、俺はそう見えているんだ……俺自身、まるっきりわからないけど」

「いずれ、シロウも理解できる」

「それなら良いんだが……一生やるべき事が見つからない人もいるだろうし……」

「シロウは大丈夫」

「リーナに言われると安心するよ。でも、冥界は、封鎖されているんじゃないの?」

「フォルネウスの腹に入って、水転移で行ける。ドラキュラ伯爵もそうやってきた」

「あーーあの半分人間の姿をした毒の湖の奴か……」

「そう」


 俺とリーナは、食後の散歩がてらに見晴らしの良い場所に移動した。寒くなってきたので人も少ない。


 ベンチの腰掛けると、神屋代から念話がきた。


『シロウ君。お姫様達、疲れちゃったみたいだから家に戻るね』

『そうか、人多いもんね』

『そうみたい。また、家に着いたら連絡するよ』

『悪かったな、神屋代』

『大丈夫だよ。エリックさんがほとんど相手してくれたし、服も買っちゃったし……』

『そうなんだ。じゃあ、また』

『またね』

 ……[念話終]……


「姫様達、家に帰るって言ってた。俺達も帰ろうか?」

「うん。でも、もう少しここにいる」

「いいよ」


 都会の喧騒が聴こえてくるが、ここは、自然の囁きも聞こえる休むには良い場所だ。


「あっ!俺のドアなら冥界に扉を開けないかな? 」

「神の力を宿してるからできそう」

「でも、ダメだ……明確なイメージが無いと思ったところに出られるとは限らない」

「冥界のイメージが必要なの?」

「多分ね。俺には想像もつかないから……」

「わかった。シロウ、目を閉じて……」

「えっ、うん。わかった……」


 俺は、目を閉じると唇に暖かい感触が……それに、口の中に、柔らかいものと一緒に僅かな液体みたいなものが流れこんできた。


 少し、冷たい風が周囲を包み、葉を舞い上がらせる。


「リーナ! 待って、これって……」

「シロウは、煩い。黙って飲み込む」

「わかったよ……」


 それは、リーナの唾液だった。飲み込んだ瞬間、リーナの世界が一瞬にして映像のように流れ込んでくる。


「血じゃないから安心して。私の記憶の一部をシロウに共有させた」

「うん。わかってるけど、こっれって、キスだよね……大人の……」

「シロウとは、契約の時に済ませてる。問題ない」


 ……そう言いながらリーナはモジモジしてるし……


 キスは、別として、確かにリーナが住んでいた冥府の城や部屋までイメージできる。それに、他の記憶も……


「シロウ、乙女の記憶を貪るのはよくない。必要のない事まで見たら、極刑!」

「わかったよーー。見ない。見ないからーー!」

「シロウの考えは私に伝わる。嘘ついても、ダメ!」

「もう、見ないからーー入浴シーンなんてーー!」


『ボカッ!』


 俺は、リーナに殴られた……






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