第47話 ーーー神屋代家ではーーー
ドアを開けるとそこには、全裸の神屋代の親父さんがいた。
『わーー!!何だねーー君達は? おや、君は鈴風君?』
「なっ!何で、神屋代のお父さんがいるんですかーー?」
「何、言ってるんだ。ここは、俺の家だ。居て当たり前だろう?」
「えっ!?」
ドアは神屋代家の脱衣所に繋がっていたらしい。親父さんは風呂に入る為、服を脱いだところだった。
「シロウ様、こちらの方が……シロウ様のお父様なのですか?」
「違います。違います。友人のお父さんです。どうも、間違えちゃったみたいで〜〜」
「わざと間違えて、アンリエット様に醜態を見せるつもりだったのか!このゴミ虫!そこになおれーー!成敗してやるーー!」
「待って、誤解なんだからーー待ってくれーー!」
俺は、脱衣所を出て、神屋代家の廊下を走っている。後ろには腕を取り替えしに来た? 羅城門の鬼が追いかけてくる。
「あっ、シロウ君、うちに遊びに来たの?」
「神屋代ーー!どいてくれ〜〜!」
「えっ!?」
「あ〜〜!」
「キャッーー!」
俺は、神屋代とぶつかって、転げまわり、今は、良い香りのする柔らかいところにいた。目の前にはおへその様なものがある。
「何してんのーー!シロウ君のエッチ!スケッチ!ワンタッチ!」
『ボカッ!』
この騒ぎで、家にいるものが駆けつけて来た。親父さんはお風呂に入らなかったようだ……
◇◇◇
俺は、神屋代家の居間で正座している。アンリエット王女や侍女はソファーでお茶をご馳走になっていた。
「シロウ君、どういう事?ちゃんと説明して!」
「ドアを開けたら、神屋代家の脱衣所だったんだよ」
「それって、あの事?」
「うん」
……[神屋代と念話中]……
『マイルームのドアを開けたらここに繋がってたんだ』
『そうなんだ。わかったわ。ここは、私が上手く誤魔化しとくよ。それと、連れの女性達は誰? すっごく綺麗な人だけど……」
『異世界の王女様だよ。こっちに連れて来なければならない事情ができたんだ』
『王女様ーー!詳しい話は後でね。ちゃんと聞かせてよ』
『わかったよ』
……[念話終]……
「シロウ君、いつでも遊びに来て良いよって言ってもちゃんと連絡してね。それに、私の部屋は、脱衣所ではないからね!」
「すみません……」
……後ろには羅城門の鬼が睨み、前には鬼神と化した親父さんが睨んでる……
「そういうわけで、シロウ君を呼んだのは私なの。それと、そちらのお嬢さん達はリーナさんというシロウ君のお隣さんに住んでるクラスメイトの知り合いなんだって」
「鈴風君!今、何時だかわかっているのかね。中学生が女の子達と出かけて良い時間ではないのではないか……それに君も受験生じゃないのか!遊び回っていて、いいのかね」
……ごもっともです……
「シロウはシロウで何してんの?」
「シアンさん。こんばんわ」
「挨拶は、家に上がる前に済ませるものだーー!」
「おっしゃる通りです……」
「お父さん。煩いよ!もう、夜だよ」
「夜中に、同級生の家に勝手に上がり込んでくる奴に怒鳴って何が悪いんだ!」
「悪いよ。私が、みんなに見つからないように来てねって言ったんだもん」
「す、鈴音がか?」
「そうだよ」
「何で、こんな夜遅くに、そんな事するんだ!」
「だって、お話したかったんだもん」
「何だとーー!」
神屋代がフォローする度、親父さんの怒りは余計、絶好調になる。
「今日は遅いからこの辺にしましょう。鈴音も一言、言ってね。それと今日は遅いから、みんなうちに泊まっていきなさい。古い家だけど、部屋はたくさん余ってるから大丈夫よ。さぁさぁ、もう、お開きよ」
神屋代のお母さんの気配りでどうにか落ち着いたようだ。俺は、また、同級生の女の子の家に泊まる事になってしまった……
◇◇◇
アンリエット王女と侍女ソランジュの事は、神屋代に任せる事にした。うちに連れてきても狭いから泊まれるところがないし、神屋代のお母さんが良い人でこっちにいる間は、泊めてくれると言ってくれた。お母さんは、嬉しいそうにこれからの献立を考えてくれている。
ある程度の事情は神屋代に、念話で伝えてるが、アンリエット王女達は訳がわからないだろう。それも、この時間では、説明しに行けるわけもなく、神屋代にお願いしてしまった。
サツキやリーナ達には、ここに泊まると神屋代家から電話がきて知っていたみたいだ。
俺は、1人でふかふかの布団に寝ている。そして、ある疑問が浮かんでいた。
おかしい……なぜ、神屋代の家にドアが繋がったんだろう?……
アンリエット王女の時といい、これで2回目だ……
キーは、アンリエット王女か……いや、違う気がする……では、どうして?
ドアを開ける時、神屋代の事やあの親父さんの事を考えていた。一番最初の時は、会った事もない異世界の姫様の事を考えていた気がする……
もしかしたら、あのドアは、入った場所に繋がるのではなく、俺の意思で自由に場所を選べるんじゃないのか?
そう考えると、納得できる……
俺は、起き上がりドア1を展開させた。部屋に入り、また、ドアのノブを掴む。
俺は、プレートがあるのは知っていたが、そこに字が現れていた。
そこには、
…………………………
日本国 神屋代家 親父
…………………………
と書かれていた。
「何で、今まで気が付かなかったんだーー」
俺は、今度は、リーナ達の部屋を思い浮かべた。すると、プレートの文字は
……………………………
日本国 サリーナ家
……………………………
と書き直されていた。俺はドアを開けた……
やはり……ここは、リーナ達の家だ。すると、
「シロウ、どうかした?」
リーナが目を擦りながら起きてきた。俺の気配を感じたらしい。
「ドアの実験をしてたんだ。どうやらこのドアは、俺の思ったところに行けるらしいんだ」
「そうなの?転移魔法みたいね」
「そうだね。すごい便利なドアだ」
「あれっ、ソラスは?」
「最近、空を飛んでないから一回りしてくるって出かけた」
「じゃあ、いるのはリーナとミミーだけ?」
「そう。シロウも一緒に寝る?」
「う……ん。明日起きた時、俺がいないとマズイから神屋代のとこに行くよ」
「そう……」
……そういえば最近リーナと一緒にいる機会がないなぁ……
「明日、土曜で休みだからどこかに行こうか?王女達も案内しないといけないし……」
「うん。行く」
「じゃあ、また、明日」
「うん」
俺はドアを開けマイルームに戻った。そして、神屋代の家に戻るのだった。
◇◇◇
朝、俺は、目がさめると、俺のほっぺたを誰かがツンツンしていた。
……また、シアンさんか?……
と思って見てみると、知らないお祖父さんがそこにいた。
「あの〜〜どなたでしょうか?」
「起きたのかい? わしは、鈴音の祖父 黎明じゃあ」
「あっ、退魔師の?」
「鈴音が世話になったようじゃな。お主は鈴音の命の恩人じゃあ」
「助けたのは、俺じゃないですから……」
「リーナとかいう悪魔の姫なんじゃろう。それでもじゃ。お主が手をかさねば鈴音は今、この世におらん。どんなに感謝しても足りないくらいじゃ」
「いいえ、こちらこそ。で、わかりましたから、そろそろどいてもらってもいいですか? 起きたいので……」
「わははは、いや、すまん、すまん。よっこらしょっと……」
……寝起きで老人に馬乗りされてても、嬉しくない……
「お主は、変わった気を発しておるのう。陰と陽が入り混じっておる」
「そんな事、わかるんですか?」
「伊達に歳をとってないもんじゃからの〜〜う」
「鈴音さんもわかるみたいですし、信じますけど、変わってるってどういう事ですか?」
「今まで見たことない気じゃ。朝日のように清しく、深夜のように禍々しい、そんな感じじゃ」
……女神に能力をもらって、悪魔達と契約してるからか?……
「それより、あの掛け軸は見たかのう?」
「達筆すぎてよく読めませんでしたけど『色即是空』って書いてあるんですか?」
「般若心教の一節じゃが、お主、若いのによく知っておるのう?」
「家の仏壇に置いてあったお経の本を見たことあります」
「そうか、先祖を敬う事は良い事じゃ。あれはのう色即是空と書いてあるのではないのじゃ。『色欲最高』とわしが書いたのじゃ」
「はぁ?」
「本能のまま自分をさらけ出すという意味じゃ!」
……このじいさん、ただのスケベジジイだ……
「これは、簡単そうで難しい事なのじゃぞ。この世界で生きるにはのう。ウォホホ〜〜」
「俺には、まだよくわかりません」
「お主もそのうち理解するじゃろうて、そろそろ飯の時間じゃ。お主も支度せい」
「はい」
……神屋代家では、人を起こす時、ほっぺたをツンツンするにが決まりなのか?
俺は、奇妙な老人に起こされるという、とても清々しい朝を迎えたのだった。
◇◇◇
「シロウ君、おはよう」
「シロウは、シロウでおはっ」
「シロウ様、おはようございます」
「ふん、ゴミ虫め!ゴミ回収に出されなかったか……」
「み、皆さん、おはようございます。すみません。何度も厄介かけてしまって……」
「そんな事、ないのよ。シロウ君は鈴音を助けてくれたんだから……」
「こっちこそ、昨日はお父さんから助けてくださってありがとうございます」
「まぁ……シロウ君は面白いわね。気に入ったわ」
「ところで、そのお父さんは?」
「主人は、今日は、仕事なのよ。選挙が近いからその準備があるんですって」
「そうなんですか。大変なんですね」
「普段は、違うのよ。定時に帰ってくるから、こっちとしては、もっと、遅く帰ってきてくれれば助かるのにね〜〜」
……これは、亭主元気で留守がいいって事かな?……
「アンリエット様、昨夜はすみませんでした。眠れましたか?」
「久しぶりに、ソランジュと一緒に寝ましたわ。楽しかったです」
侍女ソランジュは、思いがけないご褒美? に嬉しそうにしていた。
その時、エリックが入ってきた。
「おはよ〜〜うございます」
「エリック遅い!みんなもう、食べ始めてる」
「シアン、そう、大きな声出すなよ。こちとら、黎明爺さんに付き合わされて二日酔いなんだから……あ〜〜頭が痛い……って!そ、そちらの女性は!?」
アンリエット王女達の事だろう。エリックは、身動きできず固まっていた。
「昨夜、シロウ君と一緒に来たんだよ。異国の王女様だよ」
「お、お、お、王女様ーー!」
……あっ!? 多分、エリックさん、一目惚れだ……。間違いない……
「はじめまして。私、ミリエナ国第一王女のアンリエット=ムサシ=ミリエナです。シロウさんに連れられて、日本? という国に来ました。こちらは侍女のソランジュです。お見知り置きを……」
「は、は、は、初めましてデス。私、ローマ聖教のエリック、デス。よ、よ、よよろしくおねげ、がいします……」
……噛んだ。エリックさん緊張感ハンパねぇーー……
「今日、みんなでお姫様を案内するんだけど、エリックさんも行く?」
「何、それ本当!?スズネ、是非、参加希望デス」
……緊張しまくりじゃん。おもろ……
「俺は、リーナ達を連れて来るから、先に回ってて。案内、神屋代に頼んでいい?」
「もちろん、そのつもりよ。シアンさんもいるし大丈夫よ」
「連絡するから……よろしくね」
「シロウ様は一緒に出かけないのですか?」
「アンリエット様、後から連れと一緒に行きますから……」
「そうですか……」
「わ、わ、わ、私がこの命を賭してご案内しますから、大丈夫デス」
……エリックとシアンは、最初に会った時、迷ってたくせに……
「エリック様、では、お願い致します」
「は、は、は、かしこまりーー!デス」
「エリックが壊れた」
「シアン!俺は、壊れてない。ただの二日酔いだ」
「そうしとく……」
その後、俺は、リーナ達を迎えに家に帰った。あとで、みんなと合流予定だ。どこに連れて行けば良いのかわからないけど、この世界を楽しんでくれたら、と思っていた。




