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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第2章

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第42話 ーーー無邪気な幽霊はーーー

 



 米を担いで家に帰ると、リーナの家には吸血鬼マリーンが来ていたようで、俺は、リーナに呼び出された。


「マリーンさん今朝ぶりですね」

「シロウ、聞いてよ〜〜」

「何なんですか。いきなり……」

「早速、バンピーゼ様に血判をもらいに行ったのよ。そしたらね、暴れ過ぎだっていうのよ。好きにしたら良い、って言ってたくせに〜〜。それに忙しいから、早く帰れって追い返されたのよ。酷いじゃない。こっちは、必死になって、血判をもらいに行ったのに、ご苦労様の一言もないのよ〜」


「それは、酷いですねーー。それで、血判はもらえたんですか?」

「もらってきたわよ。じゃないと、私の命が危ないもの。もう、冥府の姫に渡してあるわ〜〜。あ〜〜つかれた。シロウ、何か甘いものちょうだい」

「はい。はい」

「それから、これ、私が手がけたバッグよ。新作よ。誰かに使ってもらって宣伝してくれる?」

「くれるんですか?」

「あげるわよ。他にもいろいろ持ってきたから使ってね。日本では、まだ知名度イマイチなのよね。使って宣伝してよね」

「ありがとう。みんな喜ぶよ」


 リーナ達は興味無さそうだったので、二葉姉達にあげようと思った。


「シロウ、この血判届けに行く」

「今から行くの?」

「早い方が良い。じゃないと面倒くさい」

「わかったよ。行けるのは、リーナとミミーだけかな?」

「アザゼルは、仕事。ソラスはサツキのとこ」


「サツキに聞いてみるよ」


 ……[念話中]……

『サツキ、リーナが異世界に行くって言ってるんだけど、どうする?』

『今日は、パスする。今、ソラスを洗ってるから』

『わかった』

 ……[念話終]……


 ……ソラスの奴。羽根濡れるの嫌いなのに大丈夫か?……


「マリーンさんは?」

「私はこれ食べたらすぐ帰るわ。今、仕事、忙しいから」

「そうですか……あっ、明日花ちゃんは?」


「明日花、行っていいの?」

「大丈夫だよね。リーナ」

「問題ない」

「じゃあ、一緒に行こうか?」

「わ〜〜い。早くいきた〜〜い」


 ……神屋代はお祖父さんが帰って来るって言ってたし、血判届けるだけだし……


「じゃあ、今回は、ここにいるメンバーで行こう」

「わかった」

「早くいきたーーい」

「いくのでちゅう。シロウ、おっぱー」


「おっぱー?」

「テレビでやってた。お兄さんの事、おっぱーって呼んでた」

「それって、隣国のテレビドラマ?朝からやってたんだ」

「そう。今、泥沼の4角関係」

「リーナが今朝、見てたのって、それ」

「そう。おっぱーが優柔不断。あちこち女にいい顔する」


 ……俺の事言われてるみたいで、胸が痛い……


「でも、ここ日本だから、お兄ちゃんの方が嬉しいな」

「おっぱーのが言いやすい。けど、シロウがそう言うならミミーに戻させる」

「そうしてね。リーナ」

「わかった」


「じゃあ、私帰るわね〜〜。情報得たら、また来るわ〜〜」

「いろいろ頂いてしまって、すみません」

「いいのよ。宣伝も商売の内だから〜〜」


 そう言い残し、空間を開けて、吸血鬼マリーンは帰っていった。

 俺達は、血判を届けに、異世界に行くのだった。




 ◇◇◇




 ミリエナ国王都の路地裏に着いた俺達は、まず、孤児院達の様子を全、マップ探索で調べた。特に異常が無さそうなので、リーナとミミーは、フォルネウスの所に向かった。俺達が行くと、更に話が長くなるとの事で、俺とアスカは街を見て回る事にした。


「わーー!何あれーー。馬車……馬車が走ってる〜〜」


 幽霊のアスカは、大はしゃぎだ。


「アスカ危ないよーー。ぶつかるよーー」

「ねえねえ、見て見て。このおじさん、耳ふさふさだよ」

「触っちゃダメだってばーー」


 俺は、アスカの手を退かそうしたのだが、


「何、しやがるんでーー。この、唐変木!」


『ボカッ!』


 と、殴られた……


 ……そうだ。アスカは、他の人には見えないんだった……



 アスカの実体化は、練習したが1時間だけしか無理だった。もっと、練習すれば長い時間実体化できるそうだが、次の実体化まで1時間の休憩が必要だ。

 だから、実体化の時は、食事の時だけと今はそう決めたと話を聞いていたのに……


 透明状態の時でも、声は出せる。物も掴む事ができるが、端から見るとポルターガイスト現象と同じだ。


「ねえ〜〜この女の人、尻尾が生えてるよ〜〜」

「アスカ、それ、触っちゃ……」


『何すんのよーー!痴漢!!』


『ボカッ!』


 今度は、獣人のお姉さんに殴られた……


「ねえーー何で、さっきからシロウさん。殴られてるの?」

「それはね……。アスカ、それ、ダメーー!」


 店に陳列してあった、果物やら野菜を乗せてる棚を、興味深そうに触るアスカ。それを、止めようとする俺。


 結果は、俺が、棚にヘッドスライディング……


「おい、兄ちゃん。弁償してくれんだろうなーー!!」


 如何にも怖そうな厳ついスキンヘッドのおっさんは、俺を見下ろしてた。


 ……審判、アウトなの?セーフだよね。俺、悪くないよね……

 ……アスカ、そのおっさんの頭、ペンペンしないで〜〜!……


 金貨一枚払わされた……


「もう〜〜アスカ!ギルドに行くよーー!」

「ギルドって何?」

「仕事斡旋してくれるとこだよ」

「シロウさん。仕事するんだ〜〜なんで?」


 ……あんたのせいですからっ!……


 俺が、歩く度、周囲にアスカの被害が出るので、街の人も警戒し出した。それに周囲の人達は、俺の事を一人で話している可哀想な人だと思っているみたいだ。


 みんな、俺の周囲から離れていく……


 自由に飛び回れるのが嬉しいのか、アスカは、寄り道しながら散歩を楽しんでいる。そんな、アスカを見てると、父親になった気分にならないでもない。


 周りに被害がでず、俺に迷惑がかからなければの話だが……


「そうだ。アスカ見えないから、アスカが迷子になったら大変だ。全マップ探索でチェックしないと……」


 ……待てよ。幽霊もチェックできるのか?……


 迷う必要も無かった。問題無くチェックできた。


 ギルドに着くと俺は張り出されている仕事を見ていた。すると、ギルド長が通りかかって、


「シロウ殿、先日のワイバーン討伐助かったぞーー」

「いいえ、こちらこそ」

「仕事探しかい?」

「はい。簡単な仕事でもないかと思って……」

「よく言うよ。あれだけのワイバーンを倒したのに……」


 ……俺は、倒してないんだけど……


「もし、良かったら。書類を王宮まで届けてくれないか。俺は、出かけなきゃならなくてよーー。この間の戦争で、派遣した冒険者の名簿と報償金の請求書なんだけど、事務筆頭官のドリトスに渡して欲しいんだ」

「良いですよ」

「おーー助かる。ちょっと待ってろ。今、持ってくるから」


 そう言って、ギルド長は、自分の部屋に書類を取りに行った。


 ギルド長が戻って来たと思ったらアスカがギルド長におんぶしてる。


「この書類なんだが……どうした?」


 俺は、アスカを捕まえようと必死だ。


「何でもないです……」

「そういえば、さっきから肩が凝るなぁ〜〜」


 ギルド長が、後ろを振り返ると同時に俺は、アスカを捕まえようとギルド長に近づく。すると、ギルド長はくっるって元に立ち位置に戻った。


 俺は、ギルド長の厚い胸に抱かれていた……


「シ、シロウ殿、悪けど、俺、そういう趣味ないから〜〜」

「あっ、すみません。そんなつもりは無かったんです」


 ギルド長は、書類を俺に渡して、逃げるように部屋の戻っていった。


 ……俺、完全に誤解されたよね……


 当のアスカは、ギルド内を飛び回り、あちこちで被害が発生中だ。


「アスカーー行くよーー!」


 俺は、誰も見えないアスカに大きな声をかけ、ギルドを退散するのだった。


背後に突き刺さるみんなの視線が痛かった……




 ◇◇◇



 アスカは、もしかして、想像以上に面倒な存在なのでは? と、思い始めた頃、王宮の裏口の通用門についてしまった。


「アスカ、頼むからここではおとなしくしててね」

「アスカ、いつもおとなしくしてるよ。シロウさん変なの〜〜?」


 ……これは!気づいていないの?悪気がないから?どっかの爆弾娘や暴走退魔師少女と肩を並べる存在なのかも……


「と、とにかく、ここではおとなしくしてるんだぞ。頼むから」

「は〜〜い。チェ……」

「アスカ、今、チェ!って言ったよね〜〜」

「アスカ、そんなことしてないよ」

「聞き間違いか〜〜」

「シロウさんは、細かい性格なの?そんなんじゃ、モテないよ」

「いいんです。モテなくて」

「……チェ!」

「い、今、アスカ言ったよね。チェって〜〜」


「おーーこれは、シロウどのでしたか……」


 そう言って現れたのは、警備主任のニールさんだ。


「どうかしたんですか?みんな、慌てているみたいですが……」

「先程、結界に異常が発生したと報告があったので、警備を強化しているところです。そんな、時にシロウ殿が来られたんですよーー」


 ……疑ってる目だよね。これ……結界って、もしかしたらアスカに反応したのか?……


 ……ヤバい。これ、俺のせいじゃん……


 ……アスカ、ダメーー!ニールさんの帽子いたずらしちゃーー!……


「シロウ殿、どうかされましたか?うむ。帽子が飛んだ……。風でも吹いたのか?」


 ……ごめんなさい。俺の連れのせいです……


「では、シロウ殿、応接室にご案内します」

「えっ、ここで書類を渡して終わりじゃないんですか?」

「はい。中身の確認もしないといけませんし」

「そうですか……」


 ……何か、凄く悪い予感がするんだけど……


「こちらです。お待ちください」


 ニールが行くとアスカは、やりたい放題だ。


「アスカ、その壺触っちゃーーあっ!セーフ……」


 ……確かった。こんな高価そうな物割ったりしたら……


「シロウ、ここまでおいで〜〜」

「こら、アスカ、動き回っちゃダメだってば〜〜」


 ……いつの間にか、さんが取れてシロウになってるし……


「わーーダメだよ。そんなことしちゃーー!」


 アスカは、ドア近くの家具を揺すってる。


「わーーい。楽しーーーい!」

「アスカ、壊れちゃうからーー!」


 俺は、アスカを止めようと駆け寄ると……


「シロウ様、お待たせ……キャッ!」


 何故か俺の顔には二つの柔らかい物が押し当てられていた。


 そして、


「ア、ア、アンリエット様に何て事を……下郎め!そこへなおれーー!!」


 王宮内に響き渡るメイド1号の声……

 駆け寄る兵士達……


「また、こんな展開なの……」






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