第39話 ーーー洋館での戦い(2)ーーー
「シロウ。あなたは本当にシロウなの?」
「シロウ、これはどういう事ですか?教えてくれ」
「う〜〜ん。どうしようか ……」
「シロウ、約束する。誰にも言わないと……だから教えて。私の妖精の眼でもシロウ達の事はよく見えないのよ……」
「シアンさん。妖精の眼を持ってるんですね。だから、俺達の事を……」
「そうよ。だから、あなた達の事がわかったの。でも、まだ、上には報告してないわ……」
「わかりました。エリックさんとシアンさんが飲んだのはフェニックスの涙だよ」
「フェニックスの涙?」
「不死鳥と呼ばれているリーナのペットさ。その涙には、回復と再生能力があるんだ」
「そんなものどこで手に入れたんだ!」
「約束したよね。誰にも言わないって……」
「あーー命を助けられたんだ。シロウには逆らわない……」
「リーナ達がいた世界。つまり異世界だよ」
『異世界ーー!』
「では、サタンの姫は、異世界にいたの?」
「そうだよ。事情があって、今はこっちにいるけど……」
「そうか……それでシロウは、契約できたのか……」
「詳しい話は後でもいい?ミミー!このゾンビ達、まだ魂あるの?」
「まだ、のこっちぇるでちゅうーー」
「ミミー。面倒だけど縛って動けないようにまとめてくれるーー!」
「わかっちゃでちゅうーー」
ミミーは、ゾンビ達の魂にかけられている鎖を外す魔法をかけた。鎖を外されたゾンビ達は、その場で止まってしまった。
あとは、ミミーが一箇所にまとめるために誘導している。ミミーの後をゾンビ達が行進し出した。
「なっ何なの……これ……」
「シアン。僕たちは悪い夢を見てるみたいだ……」
……弱ったな……悪魔達は浄化魔法使えないし……元はこの世界の人間達だし…
「そうだ。シアンさん!」
「魂の浄化できるでしょう?」
「できるけど……」
「けど?」
「もう、使える気力がないのよ……」
……気力?魔力のことかな?……
「大丈夫。俺がサポートするから、あのゾンビ達を浄化してあげて、じゃないと
リーナ達に消されちゃうから……」
「わかったわ。やってみる」
俺は、詠唱を始めるリーナさんの背中に手を当て、
【スキル、家事手伝い。魔力譲渡!】
すると、シアンさんが眩しいほどに輝き出した。俺の魔力は契約と加護のため尋常ではない数値だ。
【プリフィケーション!】
シアンさんの浄化が発動した。それは、さっき使ったものとは段違いの威力である。建物を含め半径300メートル程の半球体の浄化能力を発揮した。
「シアン、凄い……」
エリックは、驚いていた。
ミミーが、集めたゾンビ達を含め建物内にいたゾンビも浄化されていく。
リーナ達は、特に影響はないみたいだ。少し、痒がっていたけど……
『やっと……帰れる……ありがとう……お母さん……娘の元に……』
さまざまな魂の声が聞こえてきた。シアンは、涙が溢れ出していた……
……この感じ……そう。……
……そう言えば、シアンさんに薬を飲ませた時にシアンさんの記憶が流れ込んできた時と似てる感じがする……
◇◇◇
その少し前、空では、ソラスが頑張っていた。
【大回転プラス二回転半羽毛ショット〜〜!】
ソラスから発射された羽毛は弾丸のごとくジャージ・デビルに突き刺さる。
ドスン、ドスン、と大きな音をたてて、空飛ぶ馬面の悪魔は落ちてきた。
危うく建物にも落ちそうになったが、ソラスの起こす風で難を逃れた。
空には、もう闇夜を照らす月と星しかなかった。
ソラスは、浄化を終えた俺達のところに来て、自慢げに
「シロウ殿、どうですか?我の大回転プラス二回転半羽毛ショットは?」
「プラス二回転半はいらないんじゃないの?」
「あれは、この間、テレビでやっていたのを真似てみたのであります」
……フィギュアスケートでもみたのか?……
「ふ、フクロウが喋っている〜〜?」
「シアン、俺達は、まだ、夢の途中なんだ……」
「フクロウとは失礼ですぞ。人間。我は、冥府の大君主たるソラス=ストロースであります」
「ソラス?あっ!教会の大図書館で見た事あります。何でも26の軍団を率いるフクロウだと……」
「ですから、フクロウなどという下等な生物と一緒にしてもらっては……」
「まぁまぁ、ソラスは凄いよ。俺が保証するから……」
「まぁ、いいでしょう。この勇姿をサツキ様にお見せできなかった事が残念であります」
「サツキには、俺からソラスがすごい活躍をしたって言っとくから……」
「ホーホー、それなら、勘弁してあげましょう。ケキョ」
「ミミーもちゅごい?」
「ミミーもすごかったよ。偉かったね」
「へへへへ……」
「しかし、この馬面どうしよう?こんなにたくさん、ここに置いとけないし……」
「それなら、ご心配無用です。我の軍団のひとつに始末させましょう」
「ソラス。いいの?」
「はい。顕現せよ。芋虫兵達!」
ソラスがそう言うと、芋虫が途中からわんさか這いずり出してきた。
「お前達。その馬面を差し上げます。喜んでいただくように……」
「ブーーー」
芋虫達は、意味不明な言葉?をあげ、落ちている馬面悪魔を食べ始めた。
「むっ……こ、これは、くるものがある……」
無数の芋虫が馬面悪魔を骨にしていく。そして、その骨まで食べ始め数分で跡形も無くなってしまった。
エリックは、後ろで込み上げてくるものを口から必死に出している。
俺も、そうしようと思ったが、必死にがまんした。
因みに、シアンは興味深そうに見つめていた……
◆◆◆
堕天使アザゼルは、吸血鬼マリーンと対峙していた。
「貴方は誰?気持ち悪いくらいガタイがいいのね〜〜」
「あら〜〜貴女こそ誰なの〜〜。気持ち悪い程センスがないわね〜〜」
「その喋り方、やめてくれる〜〜。キャラ被るじゃない?」
「そっちこそ、やめてちょうだい。気味悪いわ、胸見せつけるのは〜〜」
「何ですって〜〜!」
「何よ〜〜!」
『むーーー!!』
その時、ソラスの攻撃でジャージ・デビルが倒され、空から落ちてきた。
「わ〜〜私のジャージちゃんがーー!あのフクロウね。何なの?もう〜〜」
……[シロウと念話中]……
『アザゼル。そいつ生け捕りにできる?』
『え〜〜こんな雑魚、生け捕りにするの〜〜?』
『頼むよ』
『面倒ね〜〜。まぁいいわ。あとでお酒おごってね』
『わかったよ。それから、周りに被害出さないように力抑えてね』
『本当、煩いわね。モテないわよ』
『いいんだよ。モテなくても』
……[念話終]……
「本当、シロウは細かいんだから〜〜」
「えっ?何言ってんの〜〜貴方、バカなんでしょう。わははは」
「あら、こっちの話なんだけど……」
「貴方、悪魔みたいね。見かけないバカ面だけど……」
「貴女は吸血鬼なんでしょう。雑魚の雑魚だけど……」
「何ですってーー!」
「何よーー!」
『むーーーー!!』
その時、あたりを浄化の光が包み込んだ。
「あらっ、結構、やるわね。あの子。それよりあっちの男の方がいいわね」
「そう?血はあまり美味しくなかったわよ」
「どんな味だったの?」
「薬みたいだったわ。まぁエクソシストだものね。聖水の味がちょっとして苦かったのが減点よね」
「聖水?な〜〜に、それ?」
「貴方、悪魔なのに知らないの?」
「知らないわよ。そんなチンケなもの」
「今までどこのいたのよ〜〜。そんなんじゃやってけないわよ。この世界は」
「しょうがないじゃないの〜〜冥界で神と戦ってたんだから〜〜」
「えっ……冥界……」
「そうよ。知らないの?」
「し、知ってるわよ。それくらい。貴方、名前は?」
「アザゼルよ。人は堕天使アザゼルって言うわ」
「ひっ …………」
「あらん。どうしたの?」
「………………」
「さっきね。シロウちゃんが貴方を生け捕りにしろって言うのよ。私は面倒くさいわって言ったんだけど、お酒をおごってくれるらしいから、少し頑張ろうかしら〜〜。
貴女、吸血鬼でも下の下ね。冥界では、掃いて捨てるほどいたわ。貴女はこの世界しか知らないみたいね。残念ね。下の下の吸血鬼は、串焼きが一番美味しいのよ。それと、ドラキュラ伯爵が貴女の主人を探してたのよ〜〜連れて帰る約束を連れがしちゃったの。貴女も来れば。美味しく食べてあげるから……」
吸血鬼マリーンは、空間に切れ目を入れようとしていた。もちろん逃げる為だ。しかし、アザゼルは、片手を吸血鬼マリーンに向けただけで、動きを封じ魔力さえ封じてしまった。
「シロウちゃ〜〜ん。終わったわよ〜〜」
シロウ達が、駆けつけて来た。アザゼルは、大きな欠伸をしていた。
◆◆◆
洋館の中では……
吸血鬼マラレスが少女の幽霊を片手で捕まえドアの近くでスズネと対峙していた。スズネの体力はもう残り少ない。
……このままだと …お母さんごめんね。いつも言うこと聞かなくて……
……シロウ君……
すると、ドアが開いて、リーナが入ってきた。リーナは吸血鬼の少女を掴んる手を斬り裂き、少女の幽霊を自分の影に入れ、何食わぬ顔でスズネの元に歩いてきた。
「リーナさん……どうして、ここに?」
「シロウが行くって言った。私はスズネのおもり」
「シロウ君が……」
スズネは、張り詰めていた緊張が解け、身体がグッタリする。リーナはそんなスズネに回復魔法をかけた。
「ここまで無視されるのは如何なものかと……それに私の腕を返してもらおう」
「腕が欲しいの。はい」
リーナはそういって吸血鬼の腕を放り投げた。
「貴女はもしかして、冥府の姫ですかな?」
「スズネ疲れた? 休んでる?」
「大丈夫だよ。リーナさんのお陰で回復したし」
「そう。よかった」
無視されていた吸血鬼はプライドが傷つけられて怒っていた。
「私を無視するなど、冥府の姫でも許しませんよ」
「シロウのとこ行く?」
「今? ダメだよ。吸血鬼倒さなきゃ」
「まだ、いたの?」
「ここまで、貶められたことなど私は一度もありません。貴女共々闇に飲み込んであげましょう」
「あっ!シロウから念話だ」
……………
『リーナ。神屋代は大丈夫か?』
『平気。弱ってたから回復してあげた』
『ありがとう。リーナ』
『うん。問題ない』
『その吸血鬼捕まえられる?』
『吸血鬼? あ、雑魚?』
『そ、そう。その雑魚なんだけど……』
『ほっとけばいい。面倒くさいし』
『そうもいかないんだよ』
『シロウがそう言うなら』
『ありがとうな。助かるよ』
『うん』
………………
そのあと、建物内を浄化の光が包み込んだ。
……モジモジ……
「リーナさん、どうかした?」
「何でもない」
「シアンさんかな?浄化の光だわ」
「そうなの?」
「だって、屍が消えていくもの」
「本当だ。キラキラしてる……」
吸血鬼マラレスはイライラしていた。ここまで相手にされないのは初めてだ。しかし、冥府の姫だけあって、黒い何かが周囲を覆っていて近づくことさへできない。
「貴女の名前は何と言うのですか? 聞いといてあげましょう」
「シロウがさっきリーナありがとうって言ってた」
「シロウ君なら言いそうだね」
「シロウは優しい。それに美味しいものくれる」
「リーナさんはホールケーキが好きなんでしょう?」
「丸いやつ。あれはミミーが好き。最近、私はシュークリームとかいうサクサクふわふわがお気に入り」
「あれ、美味しいよね。今度、お店に食べに行こうか?」
「シロウも一緒なら」
「もちろんシロウ君も一緒だよ」
「それなら行く」
「退魔師と馴れ合う冥界の姫などくだらん存在だ。さては、契約した相手が余程の間抜けなのでしょう。そんなバカな奴と契約するぐらいだ。貴女も余程おつむが足りな……」
「シロウをバカと言った。許さない」
リーナの纏う黒い炎が吸血鬼を襲う。あっという間に吸血鬼は無に帰した。
「さぁ、シロウのとこ行こう」
「リーナさん……吸血鬼は?」
「あっ! 殺しちゃった。シロウに怒られる……」
「そんな事で、シロウ君は怒らないよ。私が言ってあげるから」
「そう? スズネは優しい」
「リーナさん、行こう」
「うん。シロウのとこへ」
◆◆◆
俺達は、アザゼルが捕縛した吸血鬼の元に駆け寄った。
「アザゼル、こっちも終わったよ」
「あら、早かったわね〜〜。この吸血鬼どうするの〜〜?」
「どうしよう……」
「シロウ、そいつは吸血鬼の貴族マリーン。ローマ聖教が昔から戦っていたやつだ」
「エリックさん知ってるの?」
「会ったことはない。出会ったら殺されている。そういう存在だ」
「シロウ、どうやってマリーンを封じたの? そちらの方は?」
「あっ、言ってなかったっけ……堕天使アザゼルだよ」
「どうも〜〜」
『堕天使アザゼルーー!!』
「そんなすごい悪魔? 天使? 本の中でしか知らないわ」
「シアン。僕達の夢はなかなか覚めないらしい……」
「シロウちゃん。面倒よ。食べていい?」
吸血鬼マリーンは震えてる。
「ミミーもちゃべちゃいでちゅう」
「吸血鬼は串焼きが一番ですな。ホーホー」
「リーナ達が来たら決めよう。ほらっ。もう来たよ」
◇
「リーナ、神屋代。無事でよかった……」
「シロウ、あのね……」
「リーナ、どうしたの? 」
「あの、シロウ君、リーナさんが吸血鬼やっつけてくれたの。あっと言う間だったよ」
「そうなんだ。で、どこにいるの? 吸血鬼」
「……殺しちゃった……」
「そうだったんだ。いいよ。リーナありがとう」
「ほら、シロウ君。怒らなかったでしょう」
「何の話? 」
「何でもない。こっちの事」
「これから、どうしよう?」
「そうね。ここまで派手に暴れたら言い訳できないよねーー」
「神屋代は、いつも退魔師の仕事で暴れたらどうしてたの?」
「お父さん、お母さんが謝ってた……」
「……そうなんだ」
「ローマ聖教では、緘口令を敷き、住民に秘密を漏らさないと約束させてます」
「エリックの言う事も一理あるけど、ここは日本だし……」
「皆の記憶をすり替えればよろしいのですかな? 」
「ソラスできるの? 」
「私にかかれば、お茶の子さいさいであります」
「それしかないか……お願いするよ。ソラス」
「はい。かしこまりました」
そう言って飛び立ったソラスは周辺をぐるぐる回り何やら唱え出した。
すると、あたりに細かい霧のようなものがかかり地上を包み込んで行く。
「これで、大丈夫であります。皆の記憶から、先ほどの出来事は事故と
してすり替えさせてもらいました」
……また、ガス爆発とか言われるのだろうか……
「アザゼルが捕まえた吸血鬼はどうする?」
「ローマ聖教まで連れていければ、地下の封印場所に入れておくのですが……」
「そんなとこまであるんですね。エリックさんはその場所知ってるのですか?」
「いえ、話を聞いただけですから……でも、貴族である吸血鬼を封印できるのは、ローマ聖教でも限られてますし……」
……話を聞くにしても、このままと言うわけには。仕方ない……
「エリックさん、シアンさん。悪いんだけど目をつぶっててくれませんか?」
「目をつぶればいいんですね」
「はい」
二人が目を閉じている間にドア2を開き吸血鬼を中に押し込んだ。
「もう、いいですよ」
「あれっ。吸血鬼マリーンは?」
「封印しました」
「えっ!」
「ですので、もう安心です」
『シロウ何したんですか?教えてくださいーー』
「これは、秘密です」
『えっーー!』
俺たちは、リーナの転移魔法でリーナの家に帰るのだった。




