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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第2章

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第38話 ーーー洋館での戦い(1)ーーー

 




「エリック、多分、あの建物の中にスズネはいる」

「わかった。間に合ってくれよーー」


 エクソシスト達が、古い洋館に近づいた時、周辺の地面が盛り上がって

動く屍が湧き出てきた。


「シアン、防げーー!」


 シアンは咄嗟に防御壁を張った。背後から既に湧き出ていた屍に襲いか

かられていたのだ。

 防御壁はエリックとシアンを包み込んだ。


「この数、普通じゃない。こんな事ができるのは……」

「そう。バンパイヤの貴族、マラレス……」

「このままじゃ、スズネが危ない!」

「あっ!」

「シアン、どうした?」

「目が……痛む……。来る。もう、一体来る……」

「何だってーー!」


 建物の頭上に空間に裂け目ができた。すると、そこから、30代ぐらい

のボンテージ服を着た女性が現れた。


「あ〜〜マラレスったら、もう、始めちゃってるのね〜〜。アタイもやら

なきゃ、おいしいとこ全部持ってかれちゃうわ〜〜。

 おいで、アタイの可愛いシモベ達」


 その女性がそう言うと、別の空間が裂け、中から翼を持つ馬面の悪魔が無数

に飛び出してきた。


「あ、あれは、ジャージー・デビル……しかも、こんなにたくさん……」

「あの女は、多分、バンパイヤ貴族、マリーン……」

「シアン、大丈夫か?」

「大丈夫。妖精の目が穢れただけ……すぐに回復する……」

「聖水を使え。すぐに痛みはなくなる」

「うん」


 空には、一面に馬面の悪魔が飛び回っている。


「エリック、防御壁、もたない。そろそろ、限界」

「シアン、用意はできてる。いつでも、いいぞ」


「さぁーー出番だよ。僕の可愛い人形達」


 エリックの周りを、フランス人形達が取り囲んでいる。そして、その手には金色に輝く弓を構えていた。


 シアンの防御壁が解かれた。エリックは持っていた弓でバンパイヤ、マリーンを狙い放つ。


 屍達とエリックの操る人形達が交戦している。シアンは、うずくまり、何かを唱えていた。


 マリーンに向けて放たれた弓矢は、光を帯び真っ直ぐに飛んでいく。しかし、


「な〜〜に、この矢は……えいっ」


 マリーンの手前で急に威力がなくなり止まっていた。


「はは〜〜ん。あなた達ね。こんなくだらないもの投げつけてきたのは〜〜。

エクソシストかしら……あははは。久しぶりね。こんなとこで会えるなんてとても、楽しみ〜〜」


 その時、シアンの詠唱が完了した。


【主よ、永久なる世を治める神よ。全能にして、栄光なる神よ。永遠にして

 偉大なる主よ。誠に斯く有れかし。プリフィケーション!】


 シアンが浄化の言葉を口にする。すると、周りを囲んでいた屍達は、動きを

やめ、光に包まれた。


 数体は、浄化できただろう。だが、周りには無数の屍がいる。

 空から、ジャージー・デビルが襲いかかる。エリックは、人形達で防いだが、シアンは、もう、体力が残っていない。思いっきり体当たりされ投げ出されてしまった。


「シアンーー!」


 それも、そのはずである。1人で一体の魔物と対峙するだけでも大変なのに、この数である。エクソシストといえでも、これだけの数相手では、武が悪い。


 エリックは、投げ出されたシアンに気をとられた。目の前には、バンパイヤ、マリーンがいた。


「エクソシストシストの血は久し振りだわ〜〜」

「いっ、いつの間に……」


 エリックは、首に痛みを感じる。マリーンに血を吸われていた……

その目で、シアンを見た。倒れたところを屍の群れに襲われていた……




 ◇◇◇



 洋館の中では、スズネが破魔の剣で屍の群れと戦っていた。斬り裂いても次から次へと地中から屍が湧いて出てくる。これでは、消耗戦だ。

 自分の体力が無くなれば、ここで終わる。屍の群れの先には吸血鬼がいる。なんとか、彼奴に一太刀入れたいと考えていた。


「これは、体力を使い過ぎるので、使いたく無かったけど……」


 出し惜しみしている状況ではなかった。屋根の上に、物凄い不気味な気配を感じとったからだ。


 破魔の剣で応戦しながら、片手を懐に入れた。取り出したのは、2枚の護符だった。


【来たれ!朱雀、白虎!急急如律令!】


 投げた護符から、人間大の赤い鳥と、白い虎が現れた。


「朱雀、白虎!周りの屍をやっつけなさい!」


 短い鳴き声とともに朱雀は飛びながら屍に体当たりをし、白虎は勢いよき走り出し、屍の群れをなぎ倒した。


「ほ〜〜う。これは召喚、いや、式神ですか?また、珍しい法を使いますね」


 朱雀と白虎が、吸血鬼マラレスまでの道を開いた。

 スズネは、朱雀と白虎を呼び出した隙に、印を組み終えていた。そして、


【ゆるくとも、よしや許さず、縛り縄。不動の心あらん限りは!バン。ウン。ダラク。キリク。アク!】


 不動金縛の法を放ち、破魔の剣を前に吸血鬼に向かって走り出していた。


「うっ……」


 吸血鬼は、口もきけず、動きもできない状態になった。


「このまま、あるべき元に還れーー!」


 スズネの破魔の剣は、吸血鬼に突き刺さる。そして、黒い霧となって霧散していった。


 しかし、朱雀と白虎はいまだ、屍の群れと戦っていた。スズネは、気力、体力共に疲れていた。


 ……術者が消えたのに、屍が消えないなんておかしい……


 その時、屍と戦っていた朱雀と白虎は炎にまみれた。スズネの術が消されたのである。強制的に解かれた法術は、術者に、はね返える。スズネは、その負担でその場の片膝をついてしまった。


「なかなか面白かったですよ。久し振りに、術をかけられました」


 吸血鬼マラレスは、スズネと反対にドア付近にいた。手には捕まえたとみられる白いワンピースを着た幽霊の女の子がいた。


「なんで……」

「ハハハハ、その剣、確かに業物ですね。霧化させられたのは何百年ぶりでしょうか?ハハハハ」

「霧化……そんな事ができる吸血鬼なの?あんたは……」


「そうですね。まだ、名乗ってませんでした。私は、主人バンピーゼ様から直接血を分けて頂いた4人目のマラレスというものです。西洋では、闇の支配者様と呼ばれております」


「そう。私は、神屋代 鈴音。1000年続く退魔師の家系。私で175代目よ」


「名乗りも終えた事ですし、そろそろ始めましょうか?」

「そうね。吸血鬼。永久に寝てなさい!」


 二人の気迫で建物が震え出した……




 ◇◇◇




「ひゃ……。何これ〜〜聖水じゃないの……」


 エリックが血を吸われながらもポケットに忍ばせていた聖水を吸血鬼マリーンに浴びせた。その隙に、シアンの元に駆けつける。しかし、血を吸われすぎたのか思うように身体が動かない。袖に忍ばせていたナイフをシアンに襲いかかっている屍に投げつけた。屍は、浄化されたように消えていく。


「シアンーー!」

「私は……大丈夫……」


 そう言いながらも、シアンは頭から血を流し顔半分赤く染まっていた。見ると右手も肘の部分から欠損していた。


 ……数体なら俺達でも何とかなったかもしれないが、この数では……


「エクソシストさんどこいくの〜〜。私はこちらよ〜〜」


 吸血鬼マリーンは余裕そうだ。


 ……せめて、シアンだけでも逃せないか……


 エリックは、操れるだけの人形をシアンの保護に向かわせた。


 ……あとは、この、弓だけだが……あいつは一度止めてるし……


 その時、建物が振動した。ここまで、凄まじい気が流れてくる。


 ……スズネか……あの祖父さんの孫だけある……


 吸血鬼マリーンは、その振動に気をとられた。その隙に、エリックは浄化の弓矢を放つ。


 矢は、真っ直ぐマリーンに向かった。だが、その矢もマリーンの手前で止まってしまった。


「もう……これ、さっき効かなかったでしょう。学ばないエクソシストね」


 マリーンが矢を打ち払おうとした時、矢に仕込んであった聖水が溢れ出た。


「キャアーー!」


 エリックは2本目の矢を放っていた。今度は、左肩に突き刺さった。


「心臓に刺さらなかったか……」


 次々と矢を放つ。しかし、もう、マリーンはその隙を与える事などなかった。

 周りの屍は、引っ切り無しに襲いかかってくる。空には、ジャージ・デビルが飛び回っている。付近の人々を襲いかかっている様子だ。遠くから人々の悲鳴が聞こえてくる。


「結構、楽しめたわ。でも、もうあきちゃった〜〜」


 そう言った吸血鬼マリーンは、エリックに向けて手を差し伸ばした。と

同時に無数の剣が向かってくる。血を失い過ぎたせいか動きが悪く数本がエリックの身体を突き刺した。そして、最後の剣がエリックの心臓めがけて飛んできた。


 スローモーションのようだ。周りの動きがゆっくり流れている。

 頭の中には、今までの出来事が浮かんでは消えていた。


 ……走馬灯……これが……


 エリックは死を覚悟した。剣はもう直ぐ心臓を突き刺すだろう……

 エリックは、静かに目を閉じた……


「あら〜〜ん。結構、いい男ね〜〜ん」


 不気味な女言葉を喋る低い男の声がした。

 目を開けると、巨体の男が剣先を指で掴んでいた。


「えっ?俺、死んだんじゃ……」


 すると、


「エリックさん、エリックさん大丈夫ですか?」


 ……シロウだ……


「エリックさん。意識ある?これ飲んで!」


 エリックは無理やりシロウに何かを飲まされた。身体に突き刺さった剣

は抜けている。傷がどんどん回復していくのがわかる……


「シロウ。こ、これは……」


「大丈夫そうだ。ここは、アザゼル任せる。リーナ建物の中にスズネがい

る。向かって!ミミーは、周りのゾンビをお願い。ソラスは、空の奴を任

せる。みんな、頼んだぞーー!」


『は〜〜い』


「シロウ、シアンが……」

「わかってる。ちょっとまって……」


 シロウはエリックを担ぎ上げシアンのとこに向かった。屍どもを蹴り飛

ばしながら……


「シアンさん。シアンさん!」

「……シロ……ウ……」

「良かった。意識あるね。これ、飲める?」

「………」

「無理そうか……意識しっかりしててね。流し混むから絶対飲んでね。じゃないと肺に入っちゃうから……」

「……うん……」

「これっ、ノーカンだからーー!」


 シロウは、口に薬を含みシアンの口に直接、その液体を流し込んだ。

 すると、シアンの身体は、淡く光り出し、欠損した腕が生えてきた。

傷も塞がり始めている。


「シロウ……これは……?」

「説明は、後でいい? 今は、この状況をどうにかしなきゃ」


「さぁーー悪魔退治をしますか……」


 シロウは、あのシロウじゃなかった……






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