第33話 ーーーまた、異世界へーーー
………………
『今日、夕方、◯袋北口の繁華街のホテルでガス爆発がありました。怪我人は出ていませんが、爆発した窓から人が飛ぶ出すのを目撃したという人が複数人いる模様で、警察関係者は詳しい事情を聴衆し、事件の可能性も含め窓から飛び出した人物を探している模様です』
………………
「随分、派手にやりましたなぁ。シロウ殿」
「しょうがなかったんだよ。殴ったら飛んでっちゃったんだから……」
「これ、おいちいでちゅう」
「鈴風君、お醤油取って」
「生の魚な癖に美味いのは生意気!」
「それ、ワサビだよ。付けすぎると……」
「大丈夫。鼻にくるけど問題ない」
「ねーー、神屋代は家に帰らなくて大丈夫なの?」
「今日は、遅くなるって言っといたから平気よ」
「そういえば、あの刀何なの?コンクリートの壁を切り裂くなんて」
「あれは、うちに伝わる破魔の剣よ。何でも、すごい威力があるから、抜いちゃダメだって言われてるの」
「そんな物騒なの振り回したのか?」
「いいじゃない。それで、助かったんだから……」
……ここにも暴走少女がいた……
「ホーそれは興味深いですな。あっ、サツキ殿から念話がありました。ここに来るそうです」
「サツキまで来るのか。もう、勘弁してほしい……」
「おかわりなのでちゅう」
「はい、ミミー。よく噛んで食べるんだよ」
「ミミーだけ優しいのはズルい」
「リーナにだって優しいだろう」
「そんな事はない。使うだけ使って、ほっとかれてる」
「ダメよ。鈴風君。女の子には優しくしないと」
「誰のせいだよ」
「私のせいって言いたいの?」
「後先、考えずに暴れるからだよ」
「暴れたのは、鈴風君でしょう」
「お待たせーー。あれっ、ご飯食べてたんだ。シロウ兄、うちのご飯は?」
「あっ、忘れてた」
「睦美も三季姉もお腹空いたって言ってたよ。私もだけど」
「ごめん。すぐ用意するよ」
「みんな、こっちで食べればいい」
「いいの?リーナさん」
「構わない。どうせシロウが作る」
……おいおい、でも、ほんとだけど……
「じゃあ、みんな呼んでくる」
「神屋代、サツキ以外この事は知らないから、頼むな」
「わかったわよ。約束だし。それに、私は鈴音でいいわ。さっきも言ったでしょう」
「いきなりは、ちょっと……」
「私はシロウ君って呼ばせてもらうわ」
「わかったよ。どうぞご勝手に……」
「今度いつ異世界に行くの?」
「まだ、決めてないけど」
「ホーホー、孤児院の子達が気になるであります」
「そうだね。明日の昼休みにでも行こうか?」
「わかりました。また、ノミ男爵のプレゼントをしてあげましょう」
「そうだ。痒み止めの軟膏持っていなきゃ」
「明日の昼休みね。私も用意しなくっちゃ」
「程々にね」
鈴風家のメンバーもこの後加わり、夕飯は賑やかに過ごしたのだった。
◇◇◇
次の日の昼休み。何時ものメンバーに加え、神屋代が空き教室にいる。
「あれっ、アザゼルは?」
「昼は、眠いから今日は、パスと言ってた」
「大丈夫か、置いてきて」
「問題ない。向こうで暴れたから、暫くこっちにいた方が安心」
「それは、そうだけど……」
「アザゼルって、あの堕天使アザゼルの事?」
「神屋代はよく知ってるな?」
「それは、退魔師ですもの。でも、アザゼルまでいたなんて、もう、豪華すぎて、言葉にならないわ。みんな、伝説級の悪魔なんだもん」
「じゃあ行こうか」
俺は、ドアを開きマイルームに入る。
部屋は、ゼウスと会った時以来だ。
……あのベッド、せっかく買ったのに一回も寝てないよ……
「割とシンプルなのね」
「ねえねえ、神屋代先輩、シロウ兄とは付き合ってるの?」
「そんな事あるわけでないでしょう」
「ほんとかなぁ〜〜?」
「ほんとです。私とシロウ君とは仕事の関係よ。それ以上でも以下でもないわ」
「どこかのOLが言いそうな事ですね。神屋代先輩」
「スズネでいいわよ。サツキちゃん」
二人が探り合いをしている間、ソラスとミミーに食事を出す。他のみんなも食べ始めた。
すると、空間が歪み女神エリーゼが登場した。
……何でみんな勝手に入ってくるんだろう。もう、ここ俺の部屋じゃなくて宴会場だよねーー……
「何、この方。凄い神々しいオーラよ。ねぇーーシロウ君どなた?」
「女神エリーゼ様だよ」
「えっーー!女神様。という事は神様なの?」
「シロウ、また、新しい人を連れ込んだんですか?」
「自分の部屋に取っ替え引っ替え女性を連れ込むモテ男みたいな言い方、やめて下さい」
「でも、信心のある人みたいですね。ほらっ」
神屋代を見ると、エリーゼに土下座状態だ。
「神屋代さん、何してるの?」
「だって、神様よ。神屋代家で神様に直接触れたのは、開祖以来よ。未熟者の私なんかが、直接、話すなんておこがましいわ」
「良い心がけです。今日は、気分が良いです。プリンを食べたいです」
「結局、食べるんですね。太りますよ」
「シロウは、その娘の事をもっと見習うべきです。私を敬って甘えさせなさい」
「そんな事言っても……」
「それに、私は、太りません」
俺は、女神用にプリンを出す。美味しそうに女神は食べ始めた。
「凄い、凄い。女神様がお食事をなさってる」
神屋代の目はキラキラしている。まるで、憧れのアイドルに直面してるかのようだ。
「そこの子は、退魔師ですね」
「は、はい。そうです。神屋代 鈴音と言います」
「シロウと連れだって、別の世界に行かれるのですね」
「はい」
「今日は、気分が良いので私の加護を与えましょう。そうすれば、向こうで言葉に困る事はないはずです」
「私のようなものに宜しいんですか?」
「今日は、特別です。エイッ!」
神屋代は淡い光に包まれた。
……[念話中]……
『聞こえますか?スズネ』
『はい。これ、何ですか?』
『念話と言います。テレパシーと日本では言っていたと思います。相手を思い浮かべ頭の中だけで会話ができます。それと、今、話している事は、皆に内緒です。
『はい。わかりました』
『貴女には役目を一つお願いします』
『はい。何でしょう?』
『シロウ達の監視です』
『実は、今まで、監視してたんですが、シロウ君達の秘密を教えてもらう替わりに監視はしないと約束してしまったんです』
『四六時中、見張る監視ではありません。出来るだけ行動を共にし、シロウ達が道を違えそうになった時、止めるという意味です』
『それなら、大丈夫です。元よりそのつもりでしたから』
『そうでしたか。貴女は賢い子ですね』
『あ、ありがとうございます。女神さま』
……[念話終]……
「そういえば、シロウ、もしかして、メサイヤに何か言いましたか?」
「何でそんなこと聞くんですか?」
「質問を質問で返すのは愚かな事です。まぁ、いいでしょう。最近、メサイヤが私を見て、ニヤニヤしてるのです。とてもキショいのです。不気味なんです」
「エリーゼ様のこと、好きなんじゃないですか?」
「なっ、何言ってんでしょう。シロウは。御免こうむります」
「仲良くすればいいじゃないですか。同じ女神同士なんですから」
「シロウは、知らないんです。あのねっとりとした視線。鳥肌ものです」
「俺は、何も知りませんよ」
……話さないって約束だし……
「そうですか?貴方からメサイヤの加護を受けた感じがするんですけど〜〜」
「女神様の勘違いじゃないんですか?それとも、働きすぎで、おかしくなったのではないですか?」
「働かせたのはシロウのせいでもあるんですからね」
「それは仕方がなかったんです」
「ミミーにが、ホールケーキおかわりだって、シロウ兄聞いてるの?」
「あっ、わかったよ」
……もう、ゆっくりしたい。アキバに行って、フィギュアを眺めてたい……
◇◇◇
そんな訳で、今、俺達は異世界にいる。ここは、以前ドアを開いたサラマー国の城内だ。
「おーーシロウ殿」
「これは、ライン王子、どうですか?その後……」
「お陰で、大分、体裁は整って来ましたが、まだまだです」
「ライン様、この件はどうしたらよろしいですか?」
「ライン様、城壁の補修の件ですが……」
次々と、ライン王子の決断を仰ぐ人達が押しかけて、とても忙しそうだ。
「ライン王子、お忙しそうなので、また、お伺いします」
「シロウ殿、すまんな。接待も出来ずに……」
「お気になさらずに……では」
俺達は、人気の無いところでリーナの転移魔法でミリエナ国に移動した。
◇◇◇
「シロウ、どこいくの?」
「孤児院の子達のところに行こうと思ったけど、全マップ探索で見たら、大丈夫らしいので、ギルドに行って仕事を受けようと思う。ちょうど神屋代の冒険者登録もしておきたいし……」
「冒険者って魔獣とか退治するんでしょう?」
「そうだけど、仕事をしないと、お金が稼げないよ。美味しい物も食べれなくなるし……」
「わかったわ。頑張ってみる〜〜」
俺達は、ギルドに行き、まず、神屋代の冒険者登録をしてもらった。他の者は、仕事を選んでる。
「シロウ兄、これなんかどう?」
「何々、北部山脈に巣を作ったワイバーンの討伐……却下。俺達のランクじゃ受けられない仕事だよ。ランクC以上って書いてある」
「そういえば、私達のランクは?」
「Fですけど、何か?」
「最低ランクじゃん。それじゃあ、ろくな仕事無いよ」
「いいんです。コツコツやれば、いつかその手の仕事も受けられますぅ」
「もう、何してたんだか……」
「おっ!これは、シロウ殿、久しぶりですな」
「あっ、ギルド長、こちらこそ」
「この間のキングウルフの討伐、助かったよ。しかし、凄い数を討伐したもんだ。あの後、その話題で、持ちきりだったよ」
「あーー、そうだったんですか……」
……あれは、リーナとミミーが討伐してくれたんだっけ……
「今日は、何かようか?」
「仕事を探しに来ました」
「そうか、そういえば、シロウ殿のパーティーはFランクだったよな。Cランクに格上げしとくよ。あの数のキングウルフを討伐したんだ。それでも、低いくらいだけどな」
「良いんですか?」
「あーー、受付にも言っておくよ」
「ありがとうございます」
そう言って、ギルド長は忙しそうに去っていった。
「よかったね、シロウ兄。これで、この仕事受けられるね」
「いいのか?ワイバーンって強いんじゃないの?」
「大丈夫だよ。ほらっ」
サツキが指差したそこには、リーナ達が焼きリンゴをたべていた。
「そうだよね。リーナ達がいれば、すぐ終わるよね〜〜」
「そうだよ。この仕事受けよう」
そう言ってサツキは、受付まで走っていった。




