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異世界で引きこもりたいけど周りの女性が許してくれない件について  作者: 涼月風
第2章

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第32話 ーーー神屋代にバレましたーーー

 




「これ、どういう状況ーー!?」


「鈴風君 (うるさ)いわ!聞こえないじゃない」


 今、俺と神屋代は、二葉姉のあとを追って、ご休憩所にいる。ピンクの壁紙に大きな鏡。それに、眼を疑いたくなるような趣味の悪い派手なベッド。


 そして、そのベッドに乗り、壁に耳を当て隣の声を盗み聞きする少女。


「中学生でも入れるの?俺、制服だよ」

「入れたんだから、いいじゃない。それに、私も制服よ」

「神屋代はこういう場所、慣れてるみたいだけど……」

「なっ、何ですってーー!私だって初めてよ。こんな場所!」

「そういえば、神屋代は剣道部?竹刀なんか持ち歩いてるの?」

「剣道部じゃないわ。この長い剣道用の袋、これ中身は真剣よ」

「何ですと〜〜」

「鈴風君いちいち煩いわね。少し黙ってて!」


 ……それもそうだ。焦ってて本来の目的を忘れてた。二葉姉の命の危険があるのだった……


 俺は、さっきから展開してある全マップ探索の機能で音声と視点変更を可能にする。まるで、二葉姉の近くにいるような状況を確認できる。


 話の内容から、二葉姉の勤めてるお店の上客らしい。何度か断ったらしいが今日は、ここまで、来てしまったようだ。


 ……二葉姉のこういう場面を見るのは、家族として精神的にキツイ……


 連れの男は、シャワーを使い始めた。二葉姉は、黙って帰ろうとしていた。するとその男は、シャワーの途中で出てきた。


『黙って帰ろうとするなんて酷いな〜〜かおりちゃん』


 かおりという名は、二葉姉の源氏名だ。


『いいでしょう。ここまで来てやったんだから。約束は、ここに入る事まででしょう』

『そんな事、本気で言ってるの?はははーー呆れるよ。ほんとに』

『煩い!私は、帰ります』

『そうは、いかないんだよ。お食事がまだなんでね』

『食事って?』

『君の事さ』


 その男の口には、2本の大きな牙が生えていた。


「マズい!」


 俺は、ドアを開けて隣の部屋に行こうとした時、神屋代が持っていた真剣を取り出し隣につながる壁を切り裂いた。衝撃音と共に、壁が崩れ落ちる。


 ……これ、コンクリートだよね。そんなもん刀で切れるの……


 でも、助かった。二葉姉が血を吸われる前にその現場に辿り着いた。


「あんたね。最近悪さをしてる吸血鬼は?」

「あんた、誰だい?こんな無粋な現れ方して」

「私は、退魔師よ。覚悟しなさい。吸血鬼!」

「退魔師?なんじゃ、それ?」


 神屋代と吸血鬼が対峙している時、俺と二葉姉は、お互い見つめ合っていた。そして、


「シロウ、何やってんの?こんなとこ来て!」

「二葉姉こそ何してんの?こんなところで!」

「それは……お店の事情とか色々あるのよ。大人には!」

「俺だって、中学生の事情があるんだよ」

「あんたには、まだ、早いわよ!」

「遅いも早いもないんだよ!」

「シロウーー!」

「二葉姉ーー!」


「鈴風君!逃げてーー!そっちに行ったわーー」


 確かに、その吸血鬼は、こちらに向かってきた。でも、俺は今、それどころじゃない。


『お前らもろとも、血の一滴残さず喰らってやるーー!』


「煩い!今、それどころじゃないんだ。ボケッ」


 俺は、向かってきた吸血鬼を思いっきりぶん殴った。


『ギャーー!!』


 吸血鬼は、窓をブチ破り、遥か遠くに飛んでいってしまった。


「鈴風君、今、何したの?」


 神屋代の言葉で我に返った。冷静に考えるとこれは、とてもマズい状況だ。二葉姉に見つかり、人とは思えない力で吸血鬼をぶん殴り、しかも、神屋代に知られてしまった。それに、真剣を持ち歩く少女とご休憩所の破壊がバレると警察のご厄介になる。だって、銃刀法違反だし、器物損壊だし、中学生だし……


 ……ヤバい、ヤバい。従業員たちが駆けつけるまでに逃げ出さなければ……


 マイルームのドアだと、また、ここに戻らなければならないし、リーナの転移に頼ろう。


 ……[念話中]……

『リーナ!リーナ』

『今すぐここに転移して来てくれ』

『わかった』

 ……[念話終]……


 俺は、空間からリーナが現れる前に


「二葉姉、神屋代、ごめん!……」


 二人の殴り、気絶させた。そして、リーナが現れた。


「シロウどうした?」

「マズいんだ。転移して戻ってくれ」

「わかった」

「あっ、ちょっと待って……」


 俺は、みんなの荷物を探して、抱えた。


「リーナ、頼む」

「うん」


 俺と気絶した二人はリーナの黒い影に包まれリーナの家に転移したのだ。




 ◇◇◇



 俺は、また、面倒な事に直面している。リーナの家には、気絶した二葉姉と神屋代がいる。


「どうしよう……」

「二葉さんが吸血鬼に襲われそうになったのはわかるけど、なんでこいつまで?」

「偶然、会ったんだよ。それで、こうなったんだ」

「意味わかんない……」


 リーナは、ちょっと機嫌が悪そうだ。


「まぁ正直に話すのが一番であります」

「そうだけど、なんて言えばいいんだよ。ソラスだって困るだろう?」

「私は、人間ごときのいざこざに困った事などありません」

「あれっ、アザゼルは?」

「おちごといっちゃでちゅう」

「そうか……」

「どうするの?シロウ。こいつ、殺す?」

「イヤイヤダメだって、殺しちゃー」

「だって、こいつ、いつも監視してるしウザい!」

「確かにそうだけど、過激な事はダメだよ」

「シロウがそう言うなら……」


「では、記憶を操作するというのはどうでしょうか?」

「ソラス、そんな事できるの?」

「はい。いとも簡単にできます」


 ……それしか、方法はないか……


「じゃあ、貧血で倒れた事にしてくれる。それで、俺が運んだという事に」

「かしこまりました」


 ソラスは、気絶している二人の頭上をぐるぐる回り出し、魔法をかけた。


「これで、大丈夫です」

「ありがとう。ソラス。じゃあ、二人を俺んちに運ぶよ。ここだと神屋代は色々気づくから……」

「わかった。手伝う」


 俺とリーナは二人を抱えて、隣の俺の家に運んだ。すると、サツキと睦美が来て


「どうしたの、二葉姉は?」


 ……[サツキに念話中]……

『悪い。ソラスに聞いてくれる』

『うん。わかった』

 ……[念話終]……


「どうしたの?」

「睦美、ただの貧血だって、倒れてたから担いで来たんだ」

「そうなんだ」

「睦美、お布団用意する」

「ありがとう。助かるよ」


 睦美の敷いてくれた布団に二葉姉と神屋代を寝かせた。

 上手く記憶が変えられてれば良いのだが……




 ◇◇◇




「ここは、どこ?」

「あーー神屋代、ここは、俺んち。学校帰りに貧血で倒れたんだよ。神屋代の家わからなくて、連れて来ちゃったんだ」

「えっ?何言って……」


「う〜〜ん」


「二葉姉も目が覚めたみたいだ。ちょっと待ってて……」


「あれっ?シロウ何してんの?」

「仕事行く前に貧血で倒れたろう。無理しすぎじゃないの?」

「そうだっけ……そうだったわ。今日は、お店休もうかしら……」

「無理しない方が良いよ」

「ちょっと、スマホ取って」


 ……どうやら、記憶の改ざんはできてるようだ……


「鈴風君、もう私、大丈夫だから帰りたいんだけど……」

「じゃあ、途中まで送っていくよ」

「ありがとう。お願いします」


 俺は、神屋代と一緒に家を出た。すると、神屋代はいきなりリーナ達の家の呼びリンを鳴らしたのだ。


「何してんの?そこは……」

「シロウ、何?」

「あっ、やはり……」


「鈴風君、ちゃんと聞かせて、私、記憶あるよ」

「えっーー!」



 ◇◇◇



 リーナ達の家には、何故か神屋代がいる。ソラスの魔法が効かなかった事になる。


「何、この人達は〜〜!」


「神屋代、声がでかいよ」

「リーナさん、貴女は何者?それに、その小さい子も、そのフクロウも……」


「フクロウとは心外ですな。我は……」

「ソラスは黙っててくれ!それに、ソラスの魔法が効かなかったせいだろう」

「我の魔法は完璧でしたぞ」


「ソラスのせいじゃない。きっとこれ」


 リーナが指で神屋代を指すと、神屋代の服から破れた人形の紙人形が出てきた。


「凄いわねリーナさん。これは、身代わり人形よ」

「身代わり人形?」

「そう。私に何かあった場合、代わりにこの人形が身代わりになってくれるの」


「ホホーーそれで私の魔法が効かなかったのですな。しかし、これは、初めて見る魔法ですな」

「魔法じゃありません。法術です」

「法術?」

「そう。人が長い期間かけて、魔と戦うために編み出されたものよ」

「そうですか。これは興味深いものですなーー」


「鈴風君、リーナさん本当の事を教えて。ずっと貴方達を見て来たけど、悪さをするわけじゃないし、合点がいかないのよ。お願い」

「監視を辞めてくれたら構わない。トイレまで見られるのは迷惑」


 ……そんなとこまで監視されてたの?俺達……


「仕方なかったのよ。一人きりになれるところじゃないと本性が見えないから」


 ……ここまで知られては、隠すのは無理かもしれない。それに、このままだとリーナ達がいつかブチ切れて殺されかねない……


「わかったよ。でも、神屋代。この事は絶対、誰にも言わないと約束してくれ」

「わかったわ」


「実は……」



 ◇◇◇




「じゃあ、鈴風君は、トラックで死んで女神様から能力をもらって異世界に転生する事になったのに、生き返っちゃって、でも、能力はそのまま持ってて、しかも、異世界に行ったり来たりしてて、リーナさん達とは、異世界で知り合って、契約した悪魔だというのね」


 ……なんかサツキの時とデジャヴってる……


「リーナさんの正体はバンパイヤじゃないの?」

「違う。私は、冥府の姫、サタンの位を持つ者」

「えっーー!」

「ミミーは、冥府の公爵の娘でちゅう」

「我は、ソラス。冥府の大君主であります」

「えっーー!」


「神屋代大丈夫か?」

「あまりにもすごい悪魔なので、めまいがしたわ。リーナさんは、アスモデウスの娘で、ミミーさんはベルゼブブの娘さん?そちらは冥府の大君主……」


「それ程でもありませんよ」

「ソラスは黙っててくれよーー」


「鈴風君、バンパイヤ以上じゃない。もう、ここが冥府と一緒じゃない。だって冥府のお姫様がいるんだもん」

「今の冥界は神の力で封印されている。私達は戻れない」

「そうだったの……。これで、胸の支えが取れたわ。それと、私も異世界に連れてって!」


「えっーー!」


「何でそんな事を……?」

「鈴風君だけずるいじゃない。私だって、行きたいわ」

「そんな事、急に言われても……」

「いいわよね。鈴風君!!」

「………」

「連れていかないと鈴風君とホテルに行った事みんなにバラすから〜〜」

「なっ、あれは、神屋代が……わかったよ。もう……」

「ありがとう。リーナさん達もよろしくね。私は、スズネでいいわ」


「面倒。でも監視が無くなるのは嬉しい」

「チュチュね。よろしくなのでちゅう」

「悪魔と行動しようとする退魔師とは面白いであります」


「約束だから、監視はもうしないわ。でも、悪さをしたら、リーナさん達には(かな)わないけど、退魔師の意地にかけても止めてみせるわ」

「やはり、面倒」

「お腹ちゅいたでちゅう」

「我の魔法を跳ね返した、この世界の退魔の術式面白そうですあります」


「鈴風君もよろしくね」

「はい、はい」

「はいを二回も言うのは相手に失礼だわ」

「はい」


 ……面倒ごとがまた増えた。何なの、これ?……





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