第3話 ーーー突然の訪問者ーーー
俺が退院してから数日経ったが、スキル、マイルームを試す事が出来なかった。それは、家に帰ってみると都営住宅の3DKは、汚部屋に変わっており、一郎兄の結婚式やらで片足を引きづりながら忙しく日々を送る羽目になっていたからだ。
「この世界は、俺に優しく無い……」
しっかり者の妹、皐月がいたのだが、片したそばから部屋が汚れていくので、自分の悩みの件もあり、流石に掃除を諦めた様子だった。
でも、悪いことばかりでも無い。家の片付けをすればする程、スキル、家事 手伝いのレベルが上がり、今では、レベルが3になり処理能力も大幅に飛躍した。
スキル 家事 手伝いのレベル上昇により派生スキルが生まれた。因みに、今の俺のステータスは、
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シロウ スズカゼ(14) 人族 平民 職業 学生
Lv 2
HP 18/18
MP 18/18
左足骨折 頭部怪我
SKILL(50P)
鑑定 Lv 3
マイルーム Lv 1
家事 手伝い Lv 3
処理スピード2倍 魔力譲渡
獲得経験値10倍
全マップ探策
言語能力(日本語 Lv 5 英語 Lv 1 ミリエナ共通語 Lv 1)
【称号】 鈴風家四人目 家事担当者 折り込みチラシ研究者 残念趣味道楽家 造形美愛好家 隠蔽者 女神の失態目撃者 奇跡の生還者 松葉杖使い 頼られる者
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家事手伝いがレベル2になった時、処理スピード2倍が得られ、3に上がった時魔力譲渡を獲得した。家事手伝いで何で魔力譲渡が得られたのか意味不明だが、考えても仕方ないし、魔法が使えない自分には、無意味なものだった。
また、鑑定もレベルが2から3に上がり、素材まで分かるようになってきた。
それから、全マップ探索なのだが、これが思ったより凄いスキルだった。グー◯ルアースに似ており、拡大から縮小まで自在にできる。拡大すると、部屋の中まで分かるようになり、人物をチェックしとけば、今どの辺にいるか、何をしているかまでわかってしまう。スキルポイントで拡張機能を追加することもでき音声や、視点変更なども自由自在に操ることもできるらしい。
言わば、人のプライバシーをリアルタイムで覗き放題できるとても素晴らしい……否、危険な代物だった。
俺は、家族のみんなには、とりあえずチェックをいれといたが、これは、ハマると抜け出せなくなる可能性があるので出来るだけ使用を控えた。いや使用したくても、無防備になるので、一人になれない俺にはその時間が無かっただけである。
早くスキル、マイルームを試したいのだが、何も無い空間からドアが現れるので人目のつくところでは使う事が出来ない。そんな時、ひょんな事から絶好の機会が訪れた。
新婚の一郎兄夫婦から食事のお誘いがあり、母さんと姉妹達が行く事になったのだ。俺は、受験勉強が遅れてしまったので、勉強を言い訳に辞退する事になった。
その日は、俺たちの家、都営住宅3DKは、俺だけの城になった。
俺は、家事を素早くやり終え、みんなが帰ってくるまで、スキル、マイルームを試す。もちろん、全マップ探索で、みんなが一郎兄の家に集まっている事を確認しておいた。
【マイルーム】
すると、ドアが現れた。俺は、ジュースやお菓子を持ってドアを開いた。
「おぉーーー俺の部屋だーー!」
最初にスキルを使った時よりも、待たされた分、感動はひとしおだ。
俺は、部屋の中央に座り何も無い部屋を堪能していた。すると、どこからか声が聞こえてきた。
『やっと、これを使ってくれましたね。待ってたんですよ』
声が終わると同時に、何も無いところから空間が歪んで一人の女性が現れた。
「えっ、何? 誰ですか?」
『シロウ、これで、あなたに会うのは2回目ですね。私は女神、女神エリーゼです』
「女神? あっ!あの時の女神様ですか?」
『そうです。シロウと連絡を取りたかったのですが、この能力を使ってくれないと連絡の取りようがありませんでした。それと、あの時の事は……その〜忘れてください。……今日は、シロウに大切な話があってここにきました』
「話ですか? あっ、そうだ。女神様、俺にこんな素敵な部屋をくださってありがとうございます。俺、嬉しいです」
『あっ、うんそうですね。私に感謝して下さい』
女神様は、腰に手をついてドヤ顔だ。
「それで、話って何ですか?」
『実は、この部屋の能力の事と、あといろいろです』
「部屋の能力ですか? そうだ、女神様、ジュースとお菓子がありますけど、食べますか?』
『それは、殊勝な心がけですね。いただきましょう。ゴクリンコ……』
「………こちらです」
そう言って俺は、家から持ってきたジュースとお菓子を女神に渡した。女神は、お腹が空いてたみたいであっという間にジュースとお菓子を平らげてしまった。
『下界の食べ物は変わってますね。味は悪くなかったですが……』
「お口に合ったみたいで良かったです。そうだ、あとプリンもありますけど、どうですか?」
『プリンですか?そのような珍妙な名前の食べ物を口にした事はないですが、是非にとも言われれば、食べてあげてもいいですよ』
「よかった。これ、普段買うものより高級のやつなんです。本当は、自分のご褒美にと買ったものですが、普段は、買えないですよ。うちは、貧乏ですから。でも、ここ数日、頑張ったと思うので、贅沢だと思ったんですけど思い切って買ったんです。でも、女神様に食べていただけたら、嬉しいです」
『そうですか。それは、とても良い心がけです。シロウ』
「こちらです。スプーンでお食べください」
『ほーー、見た目は、スライムみたいにプリプリしてますね。味はどうなのかしら……何っ!これっ!うまっ!』
『ガッ!ガッ!……』
女神は、夢中でスプーンでプリンを食べている。その姿は、とても女神と呼ばれるような姿ではなかった。
「……………」
『ウォッホン!なかなかの物でしたよ……シロウ。貴方に称賛を与えましょう』
「あ、ありがとうございます」
『では、シロウ。お話を致しましょう』
「はい」
『実は、シロウのこのスキル、マイルームでしたっけ?これは、凄い物なんです。どうして、貴方ごとき人間が神と同等の空間を手に入れたのか、謎です。謎なのです』
「謎と言われても……この空間は、神と同等の空間なんですか?」
『そうです。この空間は、我々と同じ世界なんですよ。そんなとんでもない物を一介の人間に与えたとなると私の才覚が疑われてしまうのですよ』
「はぁーー」
『はぁーーじゃありません!全くシロウは事の重大性がわかってませんよ。神と同じ空間を人間が保持しているとしたら、その人間は神と同じという事なんですよ! それに、シロウは急に生き返っちゃうし、バレたらえらい事なんです!』
「バレるって、誰にですか?」
『他の神にです。つまり、私が、シロウを神にしてしまったという意味です』
「 エッーー!? 俺が神なんて!俺は人間ですよ」
『だからです。人間が神になる事は、大いなる偉業を達成した者だけです。それ
もここ1000年神になった人はいません。意味わかりますか!』
「そう言われても……」
『もーーう、はっきりしないわね。あんた!いいっ!この事がバレたらえらい事なの。私は減点されちゃうし、せっかく就職した転生科の仕事も解雇されちゃうの。私が、役の無い神になってもいいの? えーー、役の無い神は、役無し神と呼ばれて、無能のレッテルを貼られちゃうの。私がそんな風になっちゃったら最悪よ。最悪なの! そんな事よくないわよね。よくないのよ。だって、私は……
頑張って、頑張ってやっと神学校を首席で卒業したのよ。そりゃーー死にものぐるいで勉強したわ。他の神が、放課後みんなでお茶を飲んでいる時だって、休みの日にみんなで買い物行くのだって我慢したんだから。一柱で頑張ったんだから。
今までだって、汚点になるような事は一切なかったし、それにーー、良いとこ出のメサイヤにも負けないで、首席だったんだから。あいつ……あいつってメサイヤね。あいつは、事あるごとに私に突っかかってきたのよ。少しばかり、胸があるからって、自慢ばかりして、あんなの脂肪のかたまりでしょう。胸が肥満なだけじゃない。それなのに、私の事、洗濯板って言うのよ。信じられる? 信じられないわよね。私は、スマートなの。モデル体型なのよ。そうでしょう? そう思うでしょう。シロウ!!』
「えーーっと」
『そう思うでしょう!!』
「はい!そう思います」
……女神エリーゼは、いろいろストレスを抱えているみたいだ……
……神学校って何? 神の世界にも学校ってあるの?……
……それに、メサイヤって違う女神のこと?……
『シロウはそう言うと思ってたわ。だって、誰が見たってそうだもの』
「……あのーーそれで、俺は、どうすればいいんでしょうか?」
『そうそう、大事な話なの。シロウには、別世界に行ってもらいたいの』
「えっ? 今、何って?」
『別世界、今のシロウの住んでいる世界とは異なる世界のことよ』
「困ります。困ります。何で俺が……」
『永久にということではないわ。転生できなかったし、転移という形で異世界に行ってもらいたいの』
「今更、無理ですよ。俺、生きてますし、こっちの世界でまだやる事あるし」
『わかっているわ。見ていたから。だから、一日一回異世界に渡ってほしいのよ。それなら、負担は少ないでしょう? 』
「そんな時間ありませんよ。受験あるし、足もこんなだし」
『時間は大丈夫よ。この部屋は、神の空間と同じって言ったでしょう。時間の流れはないのよ。いくらここで過ごしても、部屋を出て行ったら、元の時間に戻るだけだし』
「時間がないんですか。ここ?」
『そうよ』
「じゃあ、ここに一年ぐらいいても、ドアを開けて元の世界に戻った時はこの部屋に入った時と同じという事ですか?」
『そうよ。だから、この部屋から異世界の扉を開くのよ。そうすれば、異世界で何年過ごしても、この部屋から元の世界に戻る時は最初にこの部屋に入った時と変わらない時間に戻ってるって訳。わかった?』
「凄い事は理解できたけど、異世界で暮らした時間歳をとるわけですよね。それでも元の世界に戻る時は、成長した身体も元に戻るんですか?」
『それはないわ。戻るのはドアを開けてこの部屋に入った時の時間軸に戻るだけよ。異世界で成長した姿はそのままよ』
「元の時間に戻れるとはいえ、成長した身体はそのままでは、みんなにバレてしまう……だから、一日一回なんですね」
『誰かに知られたら、私も困るもの。この事は私とシロウだけの秘密ね』
「なんとなくわかりました……」
『とにかく異世界に行ってください。じゃないと、貴方を処分しなければなりません。もう、死ぬのは嫌でしょう?』
「嫌ですよ。痛いし」
『でしょう? 』
……シロウには、異世界に行って神に相応しい偉業を達成してもらわないと…
「でも、どうやって異世界に行くんですか?」
『それはね。ドアにプレートがあるでしょう? そう、そのネームプレートを裏返しにすれば異世界に行けるわよ。因みに、元の世界に戻るにはプレートをまた裏返しにすればいいの』
言われた通りにプレートを裏返しにしてみると、プレートに見慣れない地名?が浮かんできた。それには、ミリエナ国と書いてある。
『どう?字が浮かんできたでしょう。そうやってこの部屋を通じて異世界と元の世界に行ったり来たりしてほしいの。わかった?」
「断れないんでしょう?行くしかないじゃないですか……」
『諦めが良いのは、良いことよ』
『では、行ってらっしゃい〜〜。最初だけは、一ヶ月そこで過ごしてね〜〜』
「えっ!さっきと話違うじゃないですか!一日一回行けばいいんでしょう。そう女神様は言いましたよね」
『最初だけは、一ヶ月いてほしいの。これは命令よ』
……じゃないと、今回の監査に引っかかっちゃうわ……
「何ですか? 監査……?」
『何でもないのよ』
「女神様、今、とても悪い顔をしてますよ」
『そう?顔の運動をしてただけよ』
「でも、この足じゃーー、それに、一ヶ月となるといろいろ揃えて行きたいし」
『そうね。ちょっとまってて……』
女神はそう言って俺の折れた足に手をかざしている。すると、光が俺の足を包んでいく。
【ポミァン。回復魔法 Lv1を取得しました】
俺の頭の中に言葉が聞こえた。
『これで、足は治ったはずよ。本当はこんな事してはいけないんだけど、まぁこれは、女神たる私の慈悲ゆえの行動ね。感謝しなさい。それから、元の世界に荷物を取りに行ってもいいわよ。そのかわり、先ほどのプリンでしたっけ?あれを10個ばかり用意する事。いいわね』
「………」
『いいわね!!』
「わかりましたーー」
『それから、この部屋は、シロウの許可のある人しか入れないから、あっ私は別よ。なんせ、シロウに加護を与えた女神ですから』
「そうなんですね。理解しました。では、荷物を取ってきます。それと、買ってきたプリンはどうすればいいんですか? 荷物を取ってくるまで、少し時間がかかりますけど……」
『プリンでしたっけ?それは、この部屋に置いておいてくれればあとで取りに来ますから大丈夫ですよ』
「わ、わかりました。では、そうします」
『これから、シロウが行く世界は、魔物などの危険な生物も存在します。魔法も使えるわよ。いろいろ、準備しておいた方がいいわね』
「魔法が使えるんですか?」
『えーー、使えるわよ。使い方は、向こうで勉強してね』
「教えてくれないんですね」
『女神はそこまで暇じゃないんです。では、よろしくね』
そう言って、女神はこの部屋から消えていった。
「何だったんだ……せっかく、自分の部屋でのんびりしようと思ったのに……」
すると、
『シロウ!ちゃんと聞こえていますよ!女神への侮辱は許しませんよ!』
声だけが、部屋に響き渡る。
「すみませんでしたーー」
俺は、逃げるようにこの部屋を出ていくのであった。
◇◇◇
何かとてつもなく面倒な事に巻きこれれた感じがする。一日一回異世界に行かなければならなくなってしまったし、最初は一ヶ月間、行きっぱなしだし……せっかく退院して家に戻って来たばかりだというのに……。
「魔法か……」
使えるようになるのであれば、素直に嬉しい。でもなぁ……
取り敢えず、異世界に行く準備をして……バイトの給料でいろいろ揃えないとこのバイト代で、限定『魔法巻毛少女くるくるパッツン』の限定フィギュアを買おうと思ったのに……
そうだ。プリンも買わないと、あとで何言われるか……
女性の甘いものに関することは、経験上約束を守らないとえらい事になる。
俺は、いろいろ納得できないことも多かったが、うちの家族の理不尽さに慣れていたので、異世界に行くための準備に取りかかるのであった。
俺は、早急に買い物に出かけ必要となりそうなものを取り揃えた。結構な量の荷物になってしまったのだが、マイルームに置いておけば、いつでも取り出せるだろうと思い、実際持ち歩くには動きやすい最低限の必要品と分ける事にした。
困ったのは、着ていく服であり、異世界がどういう場所なのかもわからない今、動きやすい学校指定のジャージにした。
俺は、マイルームを開き部屋に入る。
荷物を整理しながら考えていると女神の言葉が蘇った。
「危険な魔物もいるって言ってたし、武器はどうしよう……すぐ、魔法を使えるわけじゃないし、剣なんてもちろん持ってない」
あるのは『魔法巻毛少女くるくるパッツン」愛用のおもちゃのステッキだけだ。
「これは、御守りがわりに持って行こう……」
それと、女神が言ってたように足が治っていた。ギブスは邪魔になるので取り外し部屋に置いておく。使っていた松葉杖は、どれだけ歩くかわからないので補助として持っていく事にした。
二、三日分の食料と着替えをリュックにしまい、おもちゃの魔法のステッキを腰に差し、松葉杖とともに、ドアの前に立った。
「そうだ。女神様へのプリンをわかりやすいとこに置いておかなくっちゃ」
俺は、ダンボールを裏返しにし、それに綺麗なタオルをかけて即席の簡易テーブルを作り、その上に手紙とともにプリンを置いた。お菓子やジュースも一緒だ。
そして、改めてドアの前に立ち、プレートを裏返しにした。その時、俺はこう思ってしまった。
……異世界には、お姫様とかいるのかなぁ。どうせなら一眼見てみたいな……
俺はドアを開けた。
プレートには『ミリエナ国 王宮 第一王女 居室』と書かれていたが、俺はそれに気づかなかった。
◆◆◆
女神エリーゼは、自分のところに戻っていた。
……あっ、そうだ。シロウにプレートの事を伝えるの忘れてたわ。まぁ大丈夫ね。普通は、気づかないし、もし、気づいて悪い事に使われたら大変だもの……
人間は、周りに流されやすい弱い生き物だしね……




