第28話 ーーー戦争のあとはーーー
俺達は、草原の丘にいた。ここは、堕天使アザゼルが陣を組んでいた場所だ。
みんな、疲れているが、ここである相談をしているのである。
それは……
この後の事が面倒くさいということだ。
まず、
1 戦争の後始末をどうするか?
2 部屋に閉じ込めた堕天使アザゼルをどうするか?
3 獣人の人達に、俺達の能力をいろいろ見られている。
4 復興とか、政治とか関わりたくない。
5 その他、いろいろ
「弱った……」
「シロウ兄、そんなに能力とか知られるのダメなの?」
「そういうわけじゃないけど、いろんな事に利用されたり、巻き込まれたりするだろう。俺は、そういうのが嫌なんだ」
「よく言うよ。ただ、優柔不断で断れないだけじゃん」
「そうですけど、何か?」
「出来る事はできる。出来ない事は出来ないって言えば済む話じゃないの?」
「………」
……それを言えたら、今、こんな風になってないよ……
「シロウは、厄介。くだらない事ばかり考えてる」
「それは、リーナだってそうだろう。すぐモジモジし始めるし……」
「それは……」
「シロウ兄、女の子に言っていい事と悪い事があるんだよ」
「どういう事さ?」
「うるさいっ!バカ、鈍感、変態ーー!」
「ケンカはダメなのでちゅう」
「まぁまぁ、もっと建設的な話をした方が宜しいかと思います」
「ソラちゃん、建設的な話って?」
「サツキ様、例えばですね。これです」
ソラスが羽根を広げた先には、白熊王を始め獣人達が集まって俺達を見ていた。
結局、俺達は、何も解決案の無いまま面倒ごとに巻き込まれたのである。
「そうだ!この人に任せよう。呪術がきっと解除されてるはずだ」
俺は、みんなのいる前だが、マイルームのドア1を開き中にいる人物をここに連れてきた。
「えっーーと、この方が、サラマー国第一王子のライン=シュベルト様だ」
ラインは、何が起きてるか分からず、呆けた顔をしている。そして、
「皆さん、ここはどこですか?何故こんなに人が集まっているのですか?」
さっきまで、呪術にかかり、生死の境を彷徨ってた人物だ。状況が全く呑み込めない。俺は、説明するのも面倒なので、第一王子に押し付けてこの場を去ろうと思っていた。
「詳しい話は、そちらの白熊王に聞いてください。俺達は帰ります。じゃあ」
そう言って。その場を逃げ出そうとすると、白熊王に襟を掴まれ足が宙に浮いた。
「待てーー!」
「そうですよね〜〜。無理ですよね〜〜」
俺達は、取り敢えず、ルアンの森の里に行くことになった。
◇◇◇
リーナの転移で、まとめてルアンの里に着いた俺達は、王城内に招かれ話をさせられていた。
「えっ? すると、サラマー国とルアンダ国は戦争をしてるのですか?」
「ライン王子、申し訳ないけど、話が続かないのでみんなの話が終わってから発言してもらってもいいですか?」
「すみません。長い間寝たきりでしたので世情に疎くて……」
「ですので、ミリエナ国で発見された古代遺跡の中から封印を解かれた戦闘を好む悪魔がサラマー国第二王子に取り憑いて、ルアンダ国と戦争を始めたんです」
「その話を聞けば、納得できる事もあるが、それより、お前達は何者だ!獣人の我らは、身体能力に優れている。お前達の戦いを遠目に見てたが、普通では無い。特に、その女性だ。黒い炎を自由自在に操っておった。そんな、魔法、見た事もない」
……言えない。リーナ達が悪魔なんて……ここは、女神様の力を借りよう……
「白熊王、この事は内密にお願いしてしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「内容によるがな……」
「はい。実は、私達は女神様からある力を授かりました。でも、この事は、女神との約束で話してはないない決まりです。これ以上は、詳しく話せません。これで、納得してもらえないでしょうか?」
「おーー、女神様から……」
「シ〜〜!聞かれたらマズイです。知られたら女神から処分され兼ねません」
「そうか……そうなのか……」
「はい」
「うむ。わかった。この件に関しては、箝口令をしこう。で、戦争はどうなる?」
「それに、関しては、ルアンダ国次第です。サマラー国は、もう、戦える兵士も少ないですし、ライン王子と話を詰めてもらえば、宜しいかと」
「獣人達の被害は意外と少ない。命を落とした者はいないし、怪我を負った者達は、貴殿らが治療してくれた。大事な森は、一部荒らされたが、それも、いずれ再生するだろう」
「私の国、サラマー国はどうなっているのですか?」
「ライン王子、残念ですが殆どの兵士や城内にいた者は魂を喰われています。もちろん、時間が経てば、正気を取り戻す者もいるでしょう。しかし、大半は正気を失ったままだそうです」
「何て事だ……」
「父上と母上は?」
「私とリーナが城内に侵入した限りにおいては、魂を喰われて無い人はライン王子だけだったのです」
「私が、病気だったのが幸いしたのか……何と皮肉な話ではないか……」
「お言葉もありません……」
「私達は政治的な話には、介入しません。この世界のいろいろな事情があるでしょうから。ですので、私達は、これで、失礼したいと思います」
……これで、帰れる……
「待てーー!」
「まだ、何か?」
「今宵は宴じゃ。せめて、この国の特産物を食べていけ。うまいぞ〜〜」
「ちゃべちゃいでちゅう」
「ホーホー、うまい酒はありますかな?」
「シロウ、お腹空いた」
「やったね。おいしいもの食べられるよ」
……帰りたかったのに……
「はい。では、お招き預かります」
まだまだ、帰れそうも無い……受験勉強どうしよう……
◇◇◇
宴は盛大に開かれた。先程の話でルアンダ国の戦争勝利と受け取ったのだろう。みんなが飲んだり食べたり、踊ったりしている時に、ライン王子が俺の側にきた。
「シロウ殿。私をサラマー国に連れて帰ってもらえないだろうか?」
「それは、構いませんが、今、すぐにですか?」
「いや、明日、白熊王と共に行こうと思う」
「いいのですか?白熊王と一緒でも」
「シロウ殿の話を聞き限りでは、もう、サラマー国は機能していないに等しい。現状からの復興は、私だけでは、心許ない。もともと、ルアンダ国とは友好国。先程、助力をお願いしたのだ」
「そうでしたか……」
「今のままでは、民が心配だ。野党達に殺されかねん」
「ライン王子は、きっと素晴らしい王様になりますよ」
「私など、ただの病弱のひよっ子だ。だが、シロウ殿がくれた薬を飲んだら、元気が出てきた感じがする。不思議な回復薬だ」
「何本か置いておきますよ。いざとなったら使ってください」
「かたじけない。こんな王子で民が付いてきてくれるだろうか?」
「人は、自分を省みず誰かの為に一生懸命頑張っている人から力をもらいます。批判する人もいるでしょうが、俺も、私もという人がだんだん増えていくでしょう。きっと大丈夫です」
「それなら良いが……しかし、ウジウジ考えても仕方ない」
「そうですよ。ライン王子。きっと貴方は良い王様になりますよ」
「その時は、一緒に酒でも飲もう。シロウ殿」
「はい。かしこまりました」
「シロウ様」
「あ、モモリー姫。どうかなされましたか?」
「この度は、私達の国を救ってくださってありがとうございました。お礼が言いたくて、ここに参りました」
「そんな事はないですよ」
「いいえ、シロウ様達が来てくださらなかったら、被害が広がっていました。みんなシロウ様達のお陰です」
……感謝されるの、苦手なんですけど……
「シロウ、また、獣っ娘構ってる」
「リーナ。そういうわけじゃないよ」
「ういっく……シロウは変態アニメオタなのに……」
「リーナ。お酒飲んでるの?酔っ払っているよね……」
「酔ってない。甘いジュース飲んだだけ……」
「あっ、きっと、ハニー酒を飲まれたのでしょう。あれは甘くて口当たりが良いから子供でも、美味しく飲めるんですよ」
「私は子供じゃな〜〜い」
『ボッコ!』
……何でリーナ、俺を殴るの? 俺、何も言ってないよね……
リーナは酔っ払っていて、手加減ができなかったみたいだ。俺は、数十メートル先で夜空を見上げていた。




