第25話 ーーールアンダ国ではーーー
一方、サツキ達は、姿、気配を消しながら獣人の国ルアンダ国の国境付近まで来ていた。
「空を飛ぶって、思ってた以上に気持ちいい」
「それは、良かったであります。ホーホーケキョ」
地上には、ミリエナ国の兵士達が国境付近の警備をしていた。結構な人数であり、緊張感が漂っている。
「本当に戦争が起きてるんだね」
「私達悪魔がいなくとも、虫ケラどもはいつも争っております」
「日本がある世界もそうだけど、なんで争うのかなぁ?」
「虫ケラの心も千差万別。争いを欲する者もいれば、平和を望む者もいる。争いを望む者がたまたま、権力者であっただけの話です」
「私は絶対、平和の方がいいなぁーー」
「それは、サツキ様が平和の世の中でも生きていける力を持っているからであります」
「生きていける力?」
「希望とでもいうのでしょうか。争うを望む者は、戦いに自らの生きる活力を見出します。悪魔と同じ、背負った業であります」
「意味はわかるけど、なんか納得できないよ」
「ホーホー。すぐには理解は難しいでしょう。それは、時間をかけて学ぶ事ですな」
「うん」
「虫ケラがちゃくちゃんいるでちゅう。殺すでちゅう」
「ミミーちゃん。可愛いのに過激だよね。ギャップ萌えみたいな……」
「ギャップ?よくわからないでちゅう」
「いいの、いいの、わからなくても。で、どこ行こう?」
「そうでありますね。城下町に行くのが一番かと」
「わかった。そうしよう」
◇◇◇
ルアンダ国の城下町であるルアン森の里は、ミリエナ国の王都とは違い森の中にあり、高原の避暑地のようだ。
サツキ達は、直接里には入らず、森の切り目に降りる。
「すっごい太い木ばかりだね」
「獣人達は、自然を好みます故、大切にしているのでしょう」
「ここには、魔獣とかいるのかなぁ」
「もちろんおりますとも。ほらっ!」
ソラスが広げた翼の先に、巨大な大蛇がいる。鎌首をあげこちらを見ていた。
「うわぁーー何、あの大きさーー!」
「ジャイアントスネークでしょう。毒攻撃がありますので気をつけて」
「ミミーがころちゅでちゅう」
そういうなり、ミミーが突っ込み一瞬でも持ち上げてた首を落とした。動きが速すぎてどんな攻撃をしたのかわからなかった。
「何、それーー!すごーーい。ミミーちゃん」
「雑魚なのでちゅう」
ジャイアントスネークのお腹を見ると随分膨らんでいる。食事をしたばかりで、すぐに襲ってこなかったのだろう。
「う…………」
「あれ、もしかして……」
サツキは、その蛇のお腹あたりから声がしたので、
「ミミーちゃん悪いんだけど、お腹を切り裂いてくれる?慎重に……」
「モツを食べるのでちゅか?」
「ううん。誰か食べられてるみたいなの。助けてあげて」
「わかったでちゅう」
ミミーは、ジャイアントスネークの腹を縦に切り裂いた。すると、中から頭に耳を生やした獣人の男子が出て来た。
「まだ。息がある。どうすれば助けられるの?」
「見たところ、毒でやられている様子。もう、長くはないでしょう」
「そんな……」
「サツキ様。その獣人を助けたいのですか?」
「うん。ソラスできるの?」
「もちろん。サツキ様でも魔法を使えばできますよ。でも、ここは、私が手を貸しましょう」
飛びたったソラスは、倒れている獣人の子に周りをグルグル回り、回復魔法と治療魔法の重ねがけをした。
その獣人の子は、みるみる顔色が戻り、意識がはっきりしてきた。
「ソラス。ありがとう。君、大丈夫?」
「えーーっと、ここは……」
「君は、その大蛇に食べられてお腹にいたのよ」
「そうだ。そうだった。薬草を取りに来てジャイアントスネークに襲われたんだ」
「良かった。意識もしっかりしてるみたい。もう、大丈夫よ」
「貴女方が助けてくれたですか?」
「ううん。ミミーとソラスよ」
「ミミーでちゅう」
「私はソラスであります」
「ありがとうございます。僕は、狸人族で薬師をしてますポンチです」
「ホホーー薬師ですか」
「はい、戦で傷ついた者が多いので傷を治す薬草が不足してたんです。撮りに来て、この有様です」
「そうだったんだ。怪我人がたくさんいるの?」
「はい。良かったら、僕の家まで来て下さい。お礼もしたいですし」
「お礼なんていらないわ。でも、里には行きたい」
「そんな事言わないでください。是非とも来て下さい」
「サツキ様、ここはご厚意に甘えましょう。私達だけでは、里に入るにも一苦労ですから」
「わかったわ。ポンチ君よろしくね」
「はい。……それから、そのジャイアントスネーク持っていってもいいですか?」
「えっ。この蛇を」
「はい。結構、美味しいんです」
「そ、そうなの……じゃあ、ちょっと待っててね」
……確か、亜空間収納が使えたわよね。入るのかな?……
サツキは、スキルで亜空間収納の力を使いそのジャイアントスネークを収納した。
「す、すごい。アイテムボックス持ちなのですね。商人の方ですか?」
「ううん、違うわ。冒険者見習いよ」
「そうなんですか。武器を持っていないので商人の方と思いました」
「そういえば、武器買ってなかったわ」
「えっ?」
「私、まだ、見習いだから……」
サツキは照れ笑いをしながら、誤魔化す。
みんなは、ポンチの案内で里に向かうのだった。
◇◇◇
ルアンの森の里は戦争準備で獣人達が賑わっていた。サツキ達はポンチの案内で家に招かれた。この里の薬剤店らしく、店の奥の部屋に通された。
ここでも、数人の獣人達が忙しく働いており、サツキ達はゆっくり休んでいるのが申し訳ないような気持ちになる。
「ポンチさん。何か手伝いましょうか?」
「何を言ってるんですか。命の恩人にそんなことさせたらバチがあたります」
「でも……忙しそうだし……」
「怪我人の治療薬を作っているのです。ここでは、回復魔法が使える獣人が限られてますので……」
「じゃあ、私、回復魔法使って、怪我人を治します」
「えっ?回復魔法を使えるのですか?」
「多分使えると思います。そうだよね。ソラス」
「はい。サツキ様でしたら、いとも簡単に使えるでしょう」
「命の恩人に、そんなこと……では、お願いしていいでしょうか?お礼ははずみます」
「わかりました。怪我人はどちらに」
「こちらです」
ポンチの案内により、隣接の割と大きな建物に案内された。そこは、怪我をした獣人で溢れていた。白髪の白熊人族の女の子が一生懸命看病している。
「こんなのたくさんいるのですか?」
「はい。この間の戦闘で怪我をした者です。今は、戦争も様子見になっていますが、いつ、この間のような争いが始まってもおかしくない状態です」
「わかりました。ソラス。回復魔法の仕方教えて」
「サツキ様の意のままに」
「魔法を使う時と同じように身体の気を感じます。そして、病人、怪我人を治したいと思うのです。身体の一部が欠損しているものは、元に戻るイメージを抱きます。そして、心のままに【ヒール】と唱えるのです」
「うん。何となくわかった。やってみる」
サツキは、怪我をした獣人達をそれぞれみながら、自分の心のままに
【ヒール!】
と、唱えた。
サツキの魔力は、ソラスとの契約、それと悪魔達の加護の為、尋常ではない大きさだ。
サツキの回復魔法は建物全体を暖かくそして穏やかな光に包み込まれ、怪我をした獣人達を癒していく……
そして、一回の回復魔法で全ての獣人達の怪我を治してしまったのだ。
周りから騒めきと歓声が聞こえ始めた。それは、次第に大きくなり建物が震える程になった。
『おーーー!!』
『治った。治ったぞーー!」
『神様だ。神様が降臨してくださった』
『いや、女神様だーー』
サツキは、自分のかけた魔法があまりにも威力があったので自分でびっくりしていた。
「さすが、サツキ様です。先程の回復魔法は、上級のグランドヒールです。初めて使ったヒールが上級とはたいしたものであります」
「ソラス。自分が一番驚いてるから……でも良かった」
一気に魔力を使った為、余力があるものの疲れが出てきた。
すると、白髪の白熊人族の女の子が近くにやってきて、
「貴女は女神様なのですか?」
「いいえ、違います。ただの人です」
「私も回復魔法を使えますが、こんなに凄い魔法は初めて見ました」
「私も驚いてるんです」
「少し、お疲れのご様子。どうぞ、私の家でお休み下さい」
「今、ポンチ君の家で休ませてもらってたんです」
「いいえ。是非ともいらっしゃって下さい。私は、ルアンダ国王女モモリー=ルアンダです。是非とも城内でお休み下さい」
「えっ!お姫様ですか?」
「はい。役立たずの姫ですけど……」
サツキ達はモモリー達に連れられて城内で休ませてもらう事になったのです。
◇◇◇
城内の接待用の部屋でサツキ達は休ませてもらった。
お茶とお茶受けの蜂蜜たっぷりの焼き菓子がとても美味しい。
「そうでしたか。ミリエナ国の冒険者ですのね」
「まだ、見習いですけど……」
「でも、どうやってここへ。今、国境は封鎖されていると思うんですけど……」
「それは、私がサツキ様を魔法で空から……」
「ソラス。ちょっとダメだってーー」
「えっと、そちらのフクロウさんが魔法で?」
「おい、白い熊っこよ。私はフクロウではない。冥府の大君主……」
「ソラス!もう……失礼しました。エヘへへへ」
「何かご事情がおありのご様子。深くは、お聞きしません」
「すみません。どう、説明したらいいか、わからなくて……」
「ですが、サツキ様は多くの傷ついた獣人達を治してくださいました。失礼とは思いますが、サツキ様。どうか、ルアンダ国にお力をお貸し下さい。お願いします」
「私に出来る事なら構わないですけど……」
「本当ですか?」
……このお姫様。ちょーー可愛いんですけど……あーー耳触りたい……
サツキもシロウ同様巻き込まれ体質だったようだ。




