第23話 ーーー神屋代 鈴音はーーー
いつも読んで頂いてる皆様。ありがとうございます。
年末年始は、更新が不定期になります。
ご了承願います。
私は、神屋代 鈴音 15歳。私の先祖は、陰陽師の流派から派生した修験道の流れを持つ平安時代から続く退魔師の家系。現代では、如何わしい宗教が蔓延る中、唯一、正当な能力を持つと自負している。
この世界は、血縁関係を重視するが実力主義でもある。血縁者は、能力を受け継ぎ安いけど、実力が無ければこの仕事をすることができない。退魔師ならではの未知の敵も多い。
長い歴史の中で、滅んでいった退魔の家系はいくつも存在する。
私の父もその一人だ。退魔の家系に生まれ、能力を引き継ぐ事ができなかったため、今は、区役所に勤めている。今、現在、日本でこの能力があるのは、数名だと思う。その中で私のお爺さんと私は、割と強くこの能力を持っている。
それに、能力があっても、それを使いこなす事が出来ない人は結構いる。
殆どが口伝で伝わるため、宗教関係の本を読み漁り、修行の真似事をして退魔師気取りでいるとすぐに魔に支配され、滅んでいく。魔は魂を徐々に貪り食らうのだ。
だから、正当な継承者は少ない。
私は、幼い頃からの霊現象は当たり前。殆どが、人間に無害だが、中には人に取り憑き悪さをする者もいる。そんな者達をあるべき場所に帰す事を生業としているが、勝手にする事が出来ない。本人の承諾が必要だからだ。取り憑かれていても、本人は病気だと思うし、いくら、説明しても理解が得られない。退魔師にとって、現代は生きづらい世の中だ。
数週間前、この地にとてつもなく強大な力を持つ魔の者が現れた。その詳細はわからないが、複数の強い力を感じる。
お爺さんに聞いてみたけれど、今まで感じたことのない強大な力を感じると言う。もしかしたら、この世界が滅びる前兆なのかもしれないとまで言っていた。
そんな時、うちのクラスに転校生がやってきた。銀髪のとても綺麗な人だった。普通の人が見たならば……
私には、黒い霧に包まれた強大な力を内包する化物に見えた。まさか、私の前に現れるとは……そして、鈴風君と特別な関係らしい。
鈴風君が交通事故に遭い、このクラスに退院して戻ってきた時、鈴風君の周りに黒い霧が見えた。何かに取り憑かれているのでは、と注意深く見ていたが、その理由が、リーナさんが転校してきて理解した。
彼女は、バンパイヤだ。それも真祖クラスの強大な力を持っている。
そうなると、鈴風君はバンパイヤの血の提供者だ。それなら、辻褄があう。
鈴風君に直接たしかめたが、一笑されてしまった。私には、誤魔化せないのに……
今のところは様子をみるしかない。リーナさん程のクラスでは私の力では無理そうだ。でも、退魔師としての誇りも私にはある。だから、もしもの時は、この命を犠牲にしても……
「鈴音、鈴音、あんた何してんの?」
「あっ、お母さん。何って?」
「もう、おやつのカップラーメンのびてるわよ」
「わっ!もう、そんな時間たったの?」
「鈴音。最近変よ。好きな人でもできたの?」
「何言ってるのお母さん。私にそんな暇はないわ」
「まぁいいけど、ちゃんとお母さんには、紹介してよね」
「だから、そんな人いないってばーー!」
「お父さんには、内緒よ。ぶつぶつうるさいから」
「もう、いい加減にしてよーー!」
……あーーあ、カップラーメンのびちゃった……
◇◇◇
俺は、神屋代の事が気になり、リーナに念話した。
『リーナいる?』
『何、シロウ』
『実はさっき、クラスの子にリーナが強い力を持つバンパイヤだって言われたんだ。俺は、リーナの血の提供者でしょうと詰問されたよ』
『そう。あの子だ。でも、バンパイヤではない』
『リーナ、誰だかわかるの?』
『私の気配感知は、特大』
『そうだったね』
『きっと隠せない。わかる人にはわかる』
『そんなもんなんだ』
『そう。でも、この魔法の無い世界にいるなんて不思議。あっちの世界では気づかれたことはない』
『どうしたらいい?』
『どうしようもしない。雑魚は雑魚』
『そうは言っても……』
『じゃあ、面倒だから殺す?』
『それはダメだよ。仕方がない、様子をみるか』
『シロウがそれでいいなら』
『わかった。もうすぐ帰るよ』
『お腹すいた』
『はい、はい』
『はい、は一回でいい』
『わかったよ』
様子をみるとしても相手しだいだよね。神屋代が何かしてこなければいいんだが……
◇◇◇
翌日、神屋代は、俺達を注意深く見ているが、手出しはしてこなかった。
俺は、全マップ探索で、神屋代をチェックしておいた。
昼休み、ミミーやソラスの為に、お昼を用意しようと空き教室に移動した。神屋代は、マップ探索で教室にいたので、ドアを開き中に部屋に入った。
「よかった。神屋代のやつ、何も接触してこないようだ」
「そんな事はない。魔術らしき法で私達を監視していた」
「えっ。どんな?」
「詳細はわからない」
「じゃあ、このドアも見つかったのか?」
「それはない。私が、わからないようにした」
「いつの間に……とにかくありがとう。リーナ」
「うん。問題ない」
ミミーとソラスは、食事を嗜んでいる。リーナもデザートを食べ始めた。
「でも、すごいね。リーナさんの素性をわかっちゃうなんて」
「そうだよね。普通、わかんないよ」
「私も、そういう能力があったらよかったのに」
「サツキは、もう十分だろう。俺より強いし……」
「強さじゃなく、便利なものがほしい。例えば、姿が消せるとか、空を飛べるとか」
「できますぞ。我の契約者であるサツキ様なら」
「ほんとーー。やったーー!でどうやるの?」
「私がその魔法を使う時にサツキ様を認識内におけばよいこと、何せ契約者ですからホーホー」
「ソラスと一緒ならできるんだね」
「そうであります」
「シロウ兄、私もできるみたい。エヘヘへ」
「どんなけ、普通じゃなくなるんだ。絶対他人に見つかるなよ」
「わかってるって」
「これからどうするの?また、異世界に行くの?」
「女神様との約束だからね。この後、行こうか?キングウルフの討伐報酬を貰いたいし、戦争の件も気になるし……」
「それから、孤児院の子達もでしょう」
「サツキはしっかりしすぎだよ。俺、ちょっと忘れてたよ」
「ひっど〜〜い。シロウ兄が首突っ込んだ件なのに……」
「面目無い……」
俺達はドアを開き、また、異世界にやってきた。
◇◇◇
異世界の出口は、王都の路地裏だ。周りに人の気配が無いのは確認済みだ。
まず、俺達は、ギルドに向かいキングウルフの討伐報酬を受け取った。
買取担当のギルド職員は、討伐数が多いのでびっくりしていたが、一匹大銀貨2枚という事で、討伐数132匹 合計 金貨26枚と大銀貨4枚を受け取った。
ギルド長はあいにく留守だったので、早々に冒険者ギルドを後にすると、例の孤児院達の子供達が、広場で遊んでいた。
「あっ、のぞき魔のお兄ちゃんだーー!」
「ほんとだーー!」
……声がでかいぞーー……
周囲にいる人達が一斉に俺の方を向く。「あ〜〜」っとみんな納得したように、俺の周囲から離れていった。
……なんで、そんなあからさまなの?……
「シロウ、この蟻共は何?」
「リーナ、蟻じゃないよ。孤児院の子達だよ」
「ありさんなのでちゅう」
「ノミ男爵のプレゼントは喜んでくれたかのう」
……確かに、リーナ達にとっては、俺達は虫に見えるんだろうな……
「こんにちは。何して遊んでるの?」
「おばちゃんだーーれ?」
「おばちゃんじゃないわよ。このお兄ちゃんの妹よ」
「のぞき魔の妹おばちゃんだーー!」
「ねぇーーシロウ兄、殴っていい?」
「おいおい、サツキまで何やってんだよ」
「こんなとこで何してんだ?」
「シアおねーちゃん待ってるんだよ」
「シアさんを……」
俺は全マップ探索でシアさんを探した。
「あれっ。近くにいないみたいだよ。どこに行くって言ってたの?」
「お金を返すとか言ってたみたい」
「お金?」
……あの地上げ屋達にか?それに関しては、まだ、返さない方がいいって言っておいたんだが……
もう、一度シアさんを探すと、
「あっ!いた。俺達の宿屋だ。そうか、俺がやったお金のことか……」
「シアおねーちゃんどこにいるの?」
「宿屋にいると思うよ。一緒に行くか?」
「うん」
……子供達をこの広場に残しておくのは危険な気がする……
俺達は宿屋に向かった。
◇◇◇
「シロウさん。この間は、サッと帰ってしまって酷いです」
シアさんが宿屋の食堂で待っていた。
「ほーーシロウ兄が、また、フラグを立てたのか〜〜」
「サツキ!お前、口にチャックしろよーー」
「は〜〜い」
「シアさん、すみません。こちら、妹のサツキです。そして、リーナ、ミミー、この鳥はソラスです」
「どうも、はじめまして。この間、悪い男達に因縁をつけられていた所、シロウさんに助けて頂いたシンシアと言います。それから、今日はお金をお返しに来ました」
『シア姉ちゃ〜〜ん』
「あっ、あなた達、広場で遊んでたんじゃないの?」
「のぞき魔と一緒に来た〜〜」
「途中で見かけたものですから、ここで食事でもと思いまして連れてきました」
「まぁそうだったんですか。すみません。お気遣い頂いて」
「どうですか?シアさんも一緒に」
「ご迷惑ではないでしょうか?」
「食事はみんなで食べた方が美味しいですよね。女将さん」
「そうだとも、何にするかい?」
「ちょっとまってて下さい。みんなの意見をまとめるので……」
「注文決まったら言っておくれ」
「はい」
宿の食堂でみんなで食事をする。日本で給食を食べたので、軽いものを注文した。
「ところでお金の件なんですが、お返ししたくて……」
「それは、もう、シアさんと子供達のものですよ。俺達は、今日も冒険者の仕事でそれと同じぐらいの報酬を受け取ってます。ですので、気にしないで下さい」
「シアさん。シロウ兄がこう言ってるんだから、もらっておいた方がいいよ。じゃないと、シロウ兄は、ろくでもない事に使っちゃうから……」
「でも、それとこれとは話が違いますし、大金ですので……」
「では、今度そちらに伺った時にでも、手料理を食べさせてくだされば嬉しいです。これは、その報酬という事で、どうですか?」
「焼き菓子がいい」
「リーナは焼き菓子が食べたいの?」
「そう」
「ミミーもちゃべたいでちゅう」
「ミミーもか。どうでしょう。シアさんは焼き菓子を作れますか?」
「はい。いつも作って子供達にたべさせてますけど、そんなものでよろしいのですか?」
「はい。みんな食べたいと言ってますので」
「シアおねーちゃんの焼き菓子は美味しいよ」
「僕も食べたい」
「子供達も食べたそうですよ」
「わかりました。そんなもので良かったらいつでも作ります」
「では、この話は、もうお終いという事で」
「申し訳ありません。シロウさんには、助けて頂いた上にお心遣いまで頂いて」
「では、今度みんなで伺いますね」
「はい、お待ちしています」
そして、シアさんと子供達は自宅に帰っていった。俺は、監視の意味もあり全マップ探索で、子供達共にチェックを入れといた。




